注意:キャラ崩壊
私、
「ユカちゃん、どうしたの……? 朝からずっと、唸ってるけど、悩み事……?」
と、幼馴染兼クラスメイトの白金燐子にも心配される始末である。ちなみに席は隣で、お昼休みの今は席をくっつけてランチタイムである。
「私でよければ、相談に乗るよ……? 寧ろ、ユカちゃんのことなら、何でも話して、欲しいな……」
箸を止めて潤んだ瞳でジッと見つめてくる燐子。心配してくれるのはありがたいんだけど、ちょっと顔近いよ? またあらぬ噂を立てられるから離れなさいって。
「うーんと……確かに、燐子には話しておかないといけないことよね」
「うん……ユカちゃんのことなら、何でも、知りたいから……」
「何でもを連打するのはやめときなさい」
欲に塗れたHENTAIが湧いてくるから。ほらそこの女子数人、座りなさい。ガタッじゃないからガタッじゃ。
「燐子、『Faking』ってガールズバンド知ってる?」
「うん、知ってる……最近凄く人気が出てきた新人バンドだ、って氷川さんが言ってたから……」
どうやらRoseliaのメンバーから聞いているようだ。なら話は早いわね。
「実はね、そこからスカウトを受けたの」
と、悩みの原因を話していく。人生の岐路だの大袈裟に言ったけど、実際私には重大なはな――
「………………えっ?」
……あれ、幼馴染がすごいショックな顔してるんだけど。具体的にはフォークに刺してた卵焼きが弁当箱に落ちるくらい。
「燐子? おーい、りんちゃーん?」
「…………あっ。ご、ごめんねユカちゃん……」
目の前で手を振ってしばらく、燐子はようやく復帰した。
「いや、私は構わないけど……大丈夫?」
「う、うん。大丈夫、だから……続き、聞かせて……?」
「えっと、じゃあそうね……昨日、音楽の授業が自習だったじゃない? 燐子と一緒に歌ってたのをリーダーさんが聞いてたらしくて、
『その歌声に惚れ込みました、私達と一緒にバンドをしてくれませんか?』
って、その日の放課後に勧誘されたのよ」
まあ、『ベルベット○ーム』の初代曲を聞いて誘うのもどうかと思うけど。
「……き、聞かれてたんだ……みんな、あっちこっち行ってたから、私達のことは、気にしてないと思ってたのに……」
「多分、聞いてた物好きはその人だけだと思うわよ。燐子と一緒だったから、気を遣って放課後にしたんでしょうね」
「……うん、ユカちゃんと一緒に演奏するの、楽しかった……」
「そうね、燐子と一緒にやるのは久しぶりだったわ。最近はロゼリアの練習で貴方も忙しいしね」
「そう、だね……でも、また、一緒にやりたいな」
「もちろん」
頷くと、燐子は少しはにかんだ満面の笑みを見せてくれた。ウチの幼馴染はこんなにカワイイ(確信)
「というわけで、スカウトされたんだけど……」
「……あ、でもユカちゃん。おと……むぐっ」
「しーっ」
いらんこと言いそうになった燐子の口を塞ぐと、コクコク頷いてくれたので手を離す。あとビックリしたからだろうけど、掌を舐めないでね? 変な気分になるから。
「まあ、その辺は大丈夫だと思うわよ」
「……どうして?」
燐子が小首を傾げて(かわいい)尋ねるので、
「だって今いる四人のメンバー、半分は
軽い調子で、とんでもない爆弾を落としておいた。
「…………え。それ、ホント?」
意味の分かった燐子がビックリ仰天な顔するので、「以前直接見たときに、ね」と肯定しておく。当時は私も驚いたけど、スカウトしてきたリーダーさんはこっちの正体を分かっているのだろうか。
ガールズバンド『Faking』。マイナー路線のアニソンや同人曲を手掛けているカバーバンドで、メンバーは現在ボーカルを除いた四人。その内ギターとキーボードの担当が、
そして私、黒峰悠華も同じく女装少年、もとい男の娘である。こうなったのは自分の趣味とか妙なものを拗らせているのではなく、母親の『女の子が欲しい』という願望+自分の女みたいな容貌によって、『女子として』育てられた結果である。しかも本人は全くの悪意なくやっているので性質が悪い、私も今更男に変えて生きるのは無理があるし。
結果、生物上は男だけど外見は女、心は男女半々と思っている男の娘の出来上がりである。私服も中性的とはいえ女性基準のものだし。
なお、何故女子の制服を着て女学園にいるかというと(小中も女子の格好だったが)、母親の強い要望と燐子の泣き落とし(これが来ると逆らえない)による。最初は共学に通うつもりでしたが、二つの家族ほとんどに反対されました。
まあ、一人で共学に通ったらボロが出るのは予想できたし、燐子のフォローで恙なく学園生活を送れているので、今更文句を言うつもりはないが。
「そ、そう、なんだ……」
燐子ちゃん、話を聞いて軽く引く。小さい頃から一緒だったとはいえ、他の女装少年はダメだったか。
「え、えっと、それで……ユカちゃんは、どうするつもり、なの……?」
「そう、ね……一応、受けてもいいなと思ってるわ。変わってるとはいえジャンルが好みのものも多いしね」
メインの一つに妖精○國を選ぶあたり、よく分かっていると思う。
「……そっか」
燐子は寂しそうに顔を伏せたが、
「……じゃあ。ユカちゃんが入れるよう、困ったら助けてあげる、ね。
もし入れたら、私とはライバルだね」
負けないよ、とむんって気合を入れている。
「……意外。反対されるかと思ってた」
「……なんで?」
「だって、いつもべったりな燐子の事だから、嫌がるかなーって」
「もう……私、そんなに子供じゃないよ?」
「ふふ、そうね。ごめんごめん」
笑いながらサラサラの黒髪を撫でる。始めは不満そうだったが、すぐに目を閉じて気持ち良さそうにしている。昔から頭撫でられるの好きなのよね。
「あっ……」
あと、手を離すと寂しそうな顔するのも。なんだろう、犬耳が垂れてる姿を想像してしまう。
私は、自分に嘘を吐いている。
「でも、ホントにどうして?」
「……ユカちゃんは、私がロゼリアに入る時も、バンドのみんなが困ってる時も、助けてくれたから……だから、恩返しが、したいなって」
「別に、アレは燐子が自分の意志で決めたことよ。私はほんのちょっと手助けしただけ」
大袈裟なんだから、と肩を竦めているが、そのほんのちょっとがどれだけ救いになったのか、ユカちゃんは分かっていないだろう。
『私のことは気にせず、見たい夢があるなら追いかけた方がいいわよ』
『方向性も価値観も違うのは当たり前。なら、どこが納得の出来るラインかを決めないとね。そのままお別れなんて、あまりにも辛いでしょ?』
……話を聞いてくれて、縛られたように動けなかった足が、一歩先に進めるのを感じたのだ。本当に、感謝してもし切れない。
……だけど。
「……じゃあ、勝手に感謝して、勝手に、手助けする、ね……?」
「……それ、私のセリフなんだけど」
苦笑するユカちゃんが、バンドに入るのを手助けしたいというのは、嘘。恩返しはしたいが、ユカちゃんと離れる時間を増やしたくはない。
……好きな人が、離れるのは辛い。自覚したのは最近で、気付かないくらい一緒にいるのが当たり前だったけど。
私は黒峰悠華に恋している。ユカちゃんも気付いてると思うけど、お互い口にすることはない。この距離感が当たり前だから、だと思っている。
スカウトに反対しないのは、私のワガママでユカちゃんを縛りつけたくないから。ユカちゃんにはユカちゃんの時間があるのだ、他の人とも付き合いはあるし、ユカちゃんがやりたいことなら応援してあげたい。
…………だけど。
「ふふ。もし入ったら、燐子達よりも凄いバンドになるかもね?」
「……負けない、よ。ロゼリアは、最高のバンド、だから……」
軽口を叩いて笑っているユカちゃんに対し、私は笑えているだろうか。心は平静じゃいられない。
もし、バンドに熱中して一緒にいられる時間が無くなったら?
もし、バンド同士の関係で仲が悪くなってしまったら?
……もし、バンド仲間と仲良くなり、取られてしまったら?
もし、もし、もし。不安の種は尽きず湧き、私の心を蝕んでいく。ユカちゃんが離れていくのを想像するだけで、胸が張り裂けてしまいそうだ。
「あと、燐子。ユカちゃんはそろそろやめなさい」
「……? ユカちゃんは、ユカちゃんだよ……?」
何を言ってるんだと返す私に、なんでここだけ聞き分け悪いのかしらと溜息を吐くユカちゃん。だって、この呼び方は、私だけの、もの――
……もし、そう呼べなくなる時が来てしまったら?
それは、それだけは――
いや、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!
……それだけは、耐えられない。ずっと一緒だった証まで無くなってしまうなんて、とてもじゃないが耐えられない。
……ごめんね、ユカちゃん。私、弱い子なの。
「……だから、ユカちゃんを、閉じ込めたの……」
「よしちょっと待て、極端すぎるだろ燐子さんや」
幼馴染の愛が重すぎることにビックリである。
「……ふふ。ユカちゃんの男の子っぽい喋り、久々に聞いたね……?」
「ピンチの時にしか出ないからな」
つまり今、絶賛ピンチである。私の脳内警報的な意味で。燐子の目が明らかにヤバイし。
「前は、中学生の時に私が足を挫いた時かな……? ユカちゃん筋力ないのに、頑張っておぶってくれたよね……カッコよかった……」
「あったな、よく覚えてるよ」
まあその時何が大変だったかというと、色々成長しだしてた燐子の色々な部分が当たってて平静を保つことだったけど。一番驚いたのは私にその手の欲求があったことね。
場所は通い慣れた燐子の部屋。お茶に誘われて来てみたらいきなり鍵を閉められ、プチ監禁状態になってから燐子の心情を聞かされた直後である。
……燐子が私を好きなのは分かっていたが、流石にここまでは予想外だった。というか病んでる領域に入ってるわよねこれ。
「……流石に監禁なんてしたら、怪しまれると思うけど」
「……大丈夫、お母さんにはお泊りってことで話してあるし、大事な話があるから出てこないって伝えてあるから……
……あ、ユカちゃんのお母さんにも話しておいたよ。『子供出来るくらいなら幾らでもフォローするから、何日でも泊めちゃって頂戴。燐子ちゃんと悠華の子供はさぞかしかわいいでしょうねえ』って……」
オイ母親、寛容すぎるだろマジで。流石男の格好をすると「誰?」と素で言うマイマザーである、なんであんな人嫁にしたのよ父さん。
「大丈夫。学校には一緒に行くし、ご飯も、ゲームも、お着替えも、お風呂も……おはようからおやすみまで、ずっと一緒にいよう?」
「それが大丈夫じゃないんだけど」
白金燐子からは逃げられないってこと? シャレになってないからそれ。
「あ、あと……ユカちゃんがしたいなら、その……え、えっちなことも、して、いいよ……?」
「待って、どうしてそうなる」
「だ、だって、ユカちゃんのお母さんにも、期待されちゃったし……」
誰かウチの母を止めてくれ。というかあの人私を女子として見てるくせに、なんで燐子と一緒の時だけは正常なんだ。
母親に軽く絶望してると、近寄ってきた燐子に抱きしめられ、そのままベッドに押し倒されてしまった。あれ、これ逆なのでは?
「い、痛いって聞くけど、頑張るね……? ユカちゃんは、気持ちいい、だけなのかな……?」
「待って待って、そもそもしたいって言ってないから」
「……したくないの?」
「……いや、そういう訳じゃないけど……」
全身を使ったハグにより、いつもの私服越しでも感じられる胸や太ももの柔らかさ、華奢な腰回り。燐子の熱い吐息、興奮で赤くなっている顔もよく分かり、私の本能を強く刺激し、彼女が欲しくなってくる。他の女子では全く反応しないのに、不思議と燐子だけはそう感じ、見てしまう。
私の戸惑いと興奮を察したのか、燐子が蕩けるような笑みを至近で向けてくる。まつ毛長いなあ(現実逃避)
「良かった……ユカちゃんに拒まれたら、どうしようって不安で……それに、そういう目で見てくれたんだ。嬉しいな……」
「……そりゃあ、まあね」
誤魔化しようがないので頷くと、燐子の目にある歓喜と狂気がより深くなる――が、次の瞬間表情を歪めた。
「燐子?」
名前を呼ぶと、燐子は密着していた身体を離す。
ポタッ、ポタッ。私の顔に暖かい雫――彼女の涙が落ちてきた。
「ご、ごめん、ね、ユカちゃん……私が、ロゼリアに入る時、あんなに、応援してくれたのに……私ばっかり、いっつもわがまま、言って、困らせて……
ユカちゃんは、ユカちゃんなのに、でも、我慢出来なくて、不安で、いなくなっちゃ、嫌だから……」
ごめんね、ごめんねと壊れたように謝り続けながら、涙を落とし続ける燐子。やがて声もなくしゃくり上げ始めた彼女を見て、
「ひくっ……? ユカ、ちゃん?」
私は身体を起こし、燐子を真正面から抱きしめてやった。
「ほらりんちゃん、泣かないの。もう、こんなことで不安になるなら、ちゃんと口に出して欲しいわ」
子供の頃のあだ名。私は言わなくなってしまったけど、別に嫌だからではない。
「ユカ、ちゃん……怒って、ないの?」
「別に、怒ってないわ。バンドだって興味程度だし、りんちゃんが嫌なら断るわよ」
「……でも、ユカちゃん、が、したいこと、なのに……私の、せいで」
「いいわよ、別に。そっちよりもりんちゃんの方が大切なんだから」
「……あっ」
大切。そう言った燐子の顔は嬉しさと、申し訳なさが同居したものだった。
「そんな顔しないの。私はりんちゃんが笑ってる姿の方が好きなんだから。そのためなら、今のままでも構わないわよ。
ほら、不安なら私に好きなことしていいわよ?」
「……なん、でも? それ、本当?」
「本当。でも、出来る範囲でね」
私が言うと、ようやく泣き止んだ燐子はしばらく俯き、
「…………あた、ま」
「ん?」
「頭、撫でさせて、欲しいな……ユカちゃんが、ここにいてくれるって、分かりたいから」
と、恥ずかしそうに言った。正直貞操失うくらいは覚悟してたので、それくらいなら安いものだろう。
「それくらいなら構わないわよ」
「っ……うん、ありがとう。あの、ユカちゃん……反対、向いてくれる?」
「ん、こうかしら?」
「うん……じゃ、じゃあ、失礼します」
そうして燐子はそっと後ろから抱きしめ、私の髪を撫で始める。顔は見えないが、安心しきった気配は感じられた。
しばらく無言の時間が流れるが、それは心地いいもの。『雪みたいで綺麗』と言われて以来染めたままの白髪を撫でられ、背中を彼女に預ける。
「ユカちゃん……」
「ん? 何?」
「これからも、よろしくね……?」
「こちらこそ」
そう言った私達は、きっと微笑んでいることだろう。
「うん……。これでユカちゃんは、ずっと、私と一緒……私のもの……」
「……」
聞こえてるんだけど。オチを付けるなよ……
「そういえば燐子、変なことしようとした罰をあげないとね」
「え……?」
「急に監禁されかけたんだから、それくらいいいでしょ?」
「え、えっと、えっと……い、痛くないように、してね……」
(かわいい)「大丈夫よ、じゃあ目を閉じなさい」
「う、うん……」ギュッ
「……」スッ
チュッ
「……ふぇ?」
「はい、これで終わり。次から何か不安があれば口にしなさいよ?」
「あ、あう、あう……あの、ユカちゃん。今のって」
「私が燐子のものなら、燐子も私のものでしょ? だから、その証拠に一つ貰っておいたのよ」
「~~~~~。ゆ、ユカちゃん」
「何?」
「い、今の凄くて、もっと、欲しいなって……ダメ?」
「……変な癖付きそうね」
この後めちゃくちゃキスした。
おまけ 後日
「……というわけで、『Faking』の勧誘は断りました」
「……そう。貴方とは良い競争相手になるかもしれないと思っていたけど……事情があるならしょうがないわね」
「湊さんにそこまで言ってもらえるなら光栄ですよ。機会があれば一緒にやりましょう」
「そうね、楽しみにしているわ。……ところで、そのチョーカーは?」
「色々と妥協した結果です」
「? そう」
「…………♪」
「りんりん、なんかご機嫌だね?」
「うん。ユカちゃんと、お揃いだから……」
※最初は手錠とか提案されました。
登場人物紹介
黒峰悠華(くろみねゆうか)
白髪(染め)黒目でスレンダー系美少女……と見せかけた男の娘。服装は中性的なタイプが多い。なお、私服は燐子チョイスor燐子の手作り。
大抵のことでは動じない。燐子の重い愛も受け止める。ただし度量があるのではなく、燐子という『特別』だからである。
燐子とは同い年でご近所の幼馴染。「何でウチのいかれた母が燐子のお母さんと仲良いのか分からん」とのこと。
本人曰く名前について、『誰だこの漢字にしたの』とのこと。
歌は女性曲を中心としたロック・バラード系が得意。
白金燐子
病んではいるけど何か違うと思うキャラになった。ユカちゃん大好きだけは何があっても変わらない。
悠華と二人っきりの時は、喋り方が少し早くなる。
なお、悠華が離れようとすると泣いて止める。自覚はないが、これが相手に効く一番の方法と理解している。
アニソンとかも弾けるのは悠華の影響。
後書き
ヤンデレって何だ(哲学っぽい問い)
どうも、ゆっくりいんです。というわけで突発的にバンドリの燐子SSを書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
燐子は一番好きなロゼリアの中でも一番好きですが(語彙力不足)、正直ストーリーがおぼろげな上に多分こんな感じではない気が……燐子&ロゼリアファンの同士の方々、コレジャナイ感が凄かったらすいません。
次回は特に予定してないです。ツイッターか感想でリクあれば考えますが、ロゼリア意外は書ける気がしないなあ……あと、リアルが忙しくてクソ状態なので( ゚Д゚)ファッキンシゴト
では、今回はここまでで。感想・誤字脱字・評価などしていただければ軌跡を歌いつつ喜びます(嘘です)
次回の話は燐子とそれ以外、どれがいいですか?
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続けて燐子のヤンデレを
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Roseliaの誰か(希望は活動報告で)
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他キャラクター(希望は活動報告で)
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いいから続きを書けやオラァン!!