FAIRY TAIL ─Salamander of the another One─   作:そーめん

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────この出会いは運命か、必然か





第一話 Salamander of the another One

「なんで誰も責めねぇんだよ!!!」

 

 日中、フェアリーテイル。薄暗い店内の中で、一人の男が立ち上がった。

 グレイだ…。

 

「俺たちは…死んだナツを置いて逃げてきたんだぞ…!!あいつは俺たちにクエストのクリアを託した…なのに…俺たちは…」

 

「グレイ…落ち着け、お前らのせいじゃねぇ。」

 

 立ち上がったグレイをエルフマンが制す。

 そうだ…誰も責められるわけがないのだ。元々《イルミナティ》は戦闘特化集団では無かったのだ。百年クリアされなかった理由はゼレフ書の悪魔の《加護の呪い》が奴らを守っていたから…。つまり、ゼレフが死んだいま《イルミナティ》はただの宗教団体のはずであった。

 

 しかし突如現れた《七つの大罪》。評議員のビンゴブックや《闇ギルド》にもその名前は登録されていなかった。

 

 ルーシィとウェンディ、シャルルそして、ハッピーはギルドの一番端のテーブルに腰をかけていた。グレイの憤慨する姿は見ていられなかった。

 

「ギルドが…いつもとは違いますね。静かです…」

 

 ウェンディの不意のつぶやきに、ルーシィとシャルルは拳を握る。そして…

 

 ドガシャァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

 いつもの様にテーブルが壊れる音がした。しかし次に発せられた声はいつもの騒がしい声とは違った…。

 

「この状況で落ち着いていられるかってんだ!!!」

 

「うるせぇつってんだろ!グレイ!!」

 

 グレイの苛立ちの声にガジルが立ち上がり、グレイの方へ向かってる歩いていく。そして、胸ぐらを掴み壁に叩き付けた。

 

「てめぇらがサラマンダーを殺したと思ってんなら、一生そう思っていやがれ!!!それともなんだ!?あぁ!?お前はずっと「グレイのせいじゃない気にするな」とでも言われ続けてぇのか!?飛んだ甘ちゃんじゃねぇか!!」

 

「黙れ!!!」

 

 その言葉に逆上したグレイは今度はガジルの胸ぐらを掴み、地面に叩きつける。

 

「じゃぁ逆になんでてめぇはそう平然といられる!!?ナツが死んだ方がいいとでも思っていたのか…ドラゴンスレイヤーが一人減れば自分の存在価値が上がるとでも思っていやがったのか!?違ぇだろ!!

お前は自分を偽ってるだけだ!!」

 

「お、おいやめろお前ら!」

 

「グレイ様!」

 

「ガジル!」

 

 ジュビアやレビィを初めとしたメンバーが二人の喧嘩を止めようと抑えるが、二人は止まらずお互いを睨みつける。

 その視線は…今までの《敵》を見る目と同じだった。

 

 憎い、邪魔…その感情が二人の視線から滲み出ている。

 

 

「やめてよ!!!」

 

 

 突如発せられた声に、一同は動きを止める。その声の主、ハッピーは二人の元へ駆け寄り、今にも泣き出しそうな声で口を開いた。

 

「やめてよ…ナツはこんな事望んでないよ…。ナツはそんな目で《仲間》を見ないよ!!」

 

 ハッピーはそう言ったあと、振り向きルーシィに近寄る。

 

「ねぇルーシィ…なんでナツは死んじゃったの?なんでオイラを置いて行っちゃったの?なんで…なんで…」

 

「っ…!!」

 

 ハッピーの涙で崩れた顔を見た途端に、ルーシィはハッピーを抱きしめた。自分の目にも涙が宿る。

 

「なんで死んじゃったんだよぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 ハッピーの悲痛の叫び声はギルド中に広まった。

 ギルドメンバーは俯き、元の場所へ戻る。涙を流すもの、虚ろな表情になるもの、ギルドを出て自分の家に帰るもの…。

 

 もう、戻ってこないのだろうか…。あの楽しかった日々は…。

 

「ごめんね…ルーシィ…。」

 

 そう言ったハッピーはルーシィの胸から顔を離すと、ギルドをあとにした。

 

「ごめん…ウェンディ、シャルル…あたしも…今日は帰るね。」

 

「る、ルーシィさん…!」

 

「ウェンディ」

 

 何かを言いかけたウェンディの手を掴んだシャルルは無言で首を振った。

 ウェンディは一人ギルドをあとにするルーシィの姿を見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドンっ!!

 

 

「きゃっ!!」

 

 突然ギルドの入口から現れた人影にルーシィは激突し、その場に尻餅をつく。

 人影はルーシィに気づくと、口を開いた。

 

「おっと、悪いな。前見て歩かなきゃあぶねぇぜ?大丈夫か?」

 

 差し出された大きな手から、この人影が男性であることを察した。依頼人かな?そう思いながらも、ルーシィは差し出された手を握り体を起こす。

 

「あ、ありがとう…ごめんね…っ!!」

 

 

 ルーシィはその少年の顔を見た途端に…心臓が止まりそうになった。

 

 

 髪色は黒でそれこそ違うものの、キリッとした目尻、目にかかった前髪、大きなリュックサックに備え付けられているテント、そして…

 

 

 竜の鱗の様なマフラー…

 

 

 そしてその少年の存在に、ギルドメンバー全員が振り向く。

 みんな、「ありえない」と言う様な表情を浮かべたまま…少年を視線に捉える。

 そして、ルーシィは無意識に口を開いた。

 

 

「……ナツ……」

 

 

 少年はポカーンという顔をしたあと、思いついたかのように喋り始めた。

 

「夏?あぁ…そろそろだな…それより、手離してくれるか?」

 

「ご、ごめん…!!」

 

 握りっぱなしの手をルーシィは離すと、少年はルーシィの横を通り過ぎ、ギルドの中に入っていく。

 周りの視線に気付いていないのか、少年は笑みを顔に浮かべたまま受付のミラの方へ向かって歩いていった。もちろんミラも少年を虚ろな表情で見つめたまま、少年が自分に話しかけるのを待った。

 

「あの…」

 

「えぇ!?あ、はい…依頼ですか?」

 

「あぁ…えーっと…」

 

 少年は息を大きく吸い込み、口を開いた。

 

「俺、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入りに来たんですけど」

 

 この少年の言葉に、ギルドメンバーがピクリと動く。ナツに似た少年が…ギルドに…。

 

「マスターいます?それともおねーさんがマスター?」

 

 ミラさんは一度驚愕の表情に移ったが、いつもの気前の良い笑顔に戻ると少年の質問に答える。

 

「あぁ、ごめんなさいね。マスターは評議員の方に会いに行っててもう三日程帰ってこないの…。ギルドメンバー認証は今は出来ないのよ」

 

「えぇ!?そ、そんなァ…折角早めに着こうと思って来たのに…。ハッ!!そうだ、飯は出せます!?俺お腹ペコペコで…三日何も食ってないんすよ…」

 

「え、えぇそれならいいけど…何にします?」

 

「えーっと…じゃぁ…」

 

 少年はミラさんから差し出されたメニューを見ながら答える。

 

「じゃぁこのファイアパスタで!」

 

「…!!!」

 

 ファイアパスタ…ほぼナツ専用と言っても過言では無いメニュー。ミラさんは再び驚愕の表情をして少年を数秒見つめた。

 

「あ…こ、これは普通の人は食べられなくて…。その、違うのにしたら?」

 

「いやこれで」

 

 少年はニヤッと笑ったあと、後ろを振り向き空いている席がないか探す。そして…

 

「この席いい?お嬢さん」

 

「え?あっはい!」

 

 ウェンディの真正面に腰掛けた少年は重そうなリュックサックを地面に置き、パスタが出るのを待つ。

 未だに驚きが消えない一同は、少年を見つめ、固まったままだ。

 

 すると…

 

「おい」

 

「ん?」

 

「グレイさん…」

 

 グレイが少年の横に突然移動していたのだ。グレイは少年を視線に捉えたまま口を開く。

 

「いま、ギルドメンバーの募集はしてねぇ、悪いが帰ってくれ」

 

「お前がマスター?」

 

「ちがう」

 

「じゃぁ却下。何が悲しくて所属魔導士の言うことなんて聞かなきゃならねぇんだよ。」

 

「…っ!!」

 

「それによ…なんだこの辛気臭い雰囲気は?」

 

「お前に何がわかる…」

 

「なにも。ただ…これがアクノロギア討伐に最も貢献したギルドとはねぇ…とんだ根暗集団じゃねぇか」

 

「…っ!!!」

 

 落ち着いていた様子をしていたグレイだったが、少年の服を勢いよく掴み少年を睨みつけた。

 

「ちょっとグレイ!」

 

 ルーシィはグレイの体を抑える。今にも飛びかかりそうな勢いで少年を見ていたからだ。

 

「お?なんだ、やるか?」

 

 少年とグレイは互いを睨み合うが、それを破ったのはグレイからだった。視線をずらし口を開いた。

 

「やんねぇよ…そんな気分じゃねぇ…」

 

「あっそ…なんかあんま歓迎されて無いみてぇだし、()()()帰るわ。三日後にまた来る。」

 

 そう言った少年は後ろを振り向き、出口に向かって歩き始めた。再び沈黙が訪れ、ギルドメンバー全員が少年の背中を見ていた。

 

「まってよ」

 

 ルーシィは無意識に少年を呼び止めた。少年は顔の半分をこちらに向ける。

 

「名前…聞いてなかったわね。」

 

 少年は顔を出口に戻し、背中だけこちらに見せながら、かったるそうな声で答えた。

 

 

「ソラ・ドラコチェイン…覚えとけよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 再びギルドに沈黙が訪れる。誰一人として喋るものはおらず、耳が痛くなるほどの静寂だった。

 理由は先程訪れた少年、《ソラ》。

 そして、誰もが思っていた事をウェンディは不意に口に出した。

 

「似ていましたね…ナツさんに…」

 

 黙って頷いたあと、シャルルが答える。

 

「そうね、性格は違ったみたいだけど…顔つきというか、雰囲気というか…。」

 

「似てねぇよ」

 

 グレイが呟く。

 

「アイツとナツは…全然違ぇ…。」

 

 三度、静寂が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜、家に帰る為に川沿いの道を歩いていたルーシィは横でプルプル震えながら歩くこいぬ座の精霊《プルー》に話しかけた。

 

「似てたよね…ソラって人と、ナツ…」

 

「プルー」

 

「プルーはどう思う?」

 

「プルー」

 

「似てた?」

 

「プルー」

 

「似てなかった?」

 

「プルー」

 

 駄目だ…話し相手にならない!!答えが全部同じ!!

 

「なんか今日は一段と疲れちゃった…今日は早めに寝よう…」

 

 アパートの鍵を開けたルーシィは靴を乱雑に脱ぎ捨てると、廊下からリビングに向かって駆け足で向かった。

 

「あ〜、やっぱり落ち着くわ。あたしの…」

 

 ルーシィは勢いよくリビングまでのドアを開き…

 

 

「よう!」

 

「部屋ァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

「なんであんたがいんのよ!!ルーシィキック!!」

 

「ぐほぉ!!」

 

 開けたリビングのソファの上に、骨付き肉を頬張るソラの姿があったのだ。

 

「いやぁそこの窓が空いてたからさぁ!」

 

「それあんた普通に不法侵入だからね」

 

「ルーシィ見て〜ここの壁爪研ぎに向いてるよ〜!」ガリガリガリガリ

 

「猫!!爪研ぐな!!…てかなんであんたら一緒にいるの?」

 

 ルーシィが首をかしげながら聞くと、ソラが答える。

 

「俺が侵入した時にもう居たぜ。なんか悲しい顔してたから一緒に飯食ってたんだよ。飯食えば悪い事は忘れられるからな。な?猫」

 

「あいさー!」

 

「《侵入》って言っちゃってるし…てか勝手に私の部屋で晩餐会を…」

 

「…」

 

「…」

 

 ソラとハッピーが互いを見つめあっている。

 

 

「猫が喋ってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」

 

「えぇぇぇぇぇ!?どこ?どこ?それ売れるよ!!」

 

「あんたよ!!!そして今更!?」

 

 ソラは頭を抱えながら再び訳の分からないことを口にする。

 

「あれ?猫ってなんだっけ?「ワン」って鳴く奴だったっけ?」「それ犬」

 

「違うよソラ!最近の猫は喋るのが普通なんだよ!」「それが違う」

 

 

 あーー!!!もーー何なのこいつ…まるで…!!

 

 まるで…

 

 そう言えばさっきまであんなに落ち込んでたハッピーが…自然に笑ってる…。この人と一緒にいただけで?

 

 

『ようルーシィ!』

 

『ちょっとここあたしの部屋なんですけど!!』

 

『見てールーシィの貰ったトロフィー綺麗にしといたよ〜』

 

『既にボロボロ!?爪立てんな!』

 

『これからもずっと一緒だろ?』

 

 

 不意に百年クエストに旅立つ前の会話を思い出す。『ずっと一緒』そう言ったのに…。どうして?

 

「う、うぅ…」

 

 突然涙が溢れ、ルーシィはその場にペタンと座り込んだ。

 

「ちょっ、えぇ!?おいどうした金髪!」

 

「ルーシィなんか変なもの食べたの!?」

 

「ごめん…ごめんね…。」

 

 ソラは頭をガシガシかいたあと、座り込むルーシィの目の前に座った。そして…

 

「お前の泣いてる理由は、ギルドの変な雰囲気も関係あんのか?」

 

「うん…」

 

「話してみろよ。」

 

「え?」

 

「これから俺もお前の仲間になるんだ。変な雰囲気の理由がわかんないんじゃぁ気持ちわりぃだろ?だから…」

 

 ソラはルーシィの頭にポンと手を置き、ニヤッと笑いながら言った。

 

「もう泣くな」

 

 その言葉を聞いた途端に体中が熱くなった。『泣くな』と言われたのに涙が更に溢れてくる。嗚咽が漏れ、何度も、何度もうなずいた。

 

「うん…うん…」

 

「お前もだ猫!」

 

 ルーシィの言葉を聞き、自分も泣きそうになっているハッピーの顔をソラは両手でギュッと潰した。

 

「お、オイラ猫じゃないよ…オイラハッピーだよ!」

 

「あぁそういや名前聞いてなかったな。ハッピーか…お前は?金髪」

 

「え?」

 

 溢れ出る涙を袖で拭っていたルーシィはソラの顔を見る。そして…答える。

 

「あたしは…ルーシィ。ルーシィ・ハートフィリア!」

 

 そしてルーシィはナツの事を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────評議員────

 

 

「一体何者なのだ!!《七つの大罪》というのは!?」

 

「新たなる闇ギルドなのか?」

 

「ビンゴブックにも載っていなかったのだぞ!」

 

「討伐隊を出すか?」

 

「フェアリーテイルの未来ある若き魔導士が殺されたのだぞ…そこらの魔導士では歯が立たたん。」

 

「むしろ百年クエストで死者が一人というのは賞賛すべきことではないのか?」

 

 《彼》は黙って耳を評議員に貸していた。その隣で、血のような赤い長い髪をした少女が震えた手を抑えている。

 彼女も仲間を守れなかった。誓ったはずだった。誰ひとりとして仲間を殺させないことを…家族を…殺させないことを。

 

「ならばもう一度六魔の時と同じ様に、フィオーレのギルドから精鋭部隊を」

 

「却下じゃ!!!!」

 

 《彼》は口を開いた。車椅子に乗っていて足は動かせないが、《彼》は隣の少女に合図を送ると、少女は車椅子を押して評議員の真ん中に鎮座した。

 

「家のガキが一人殺されたんじゃ…黙って見てる親はおらん…。相手が闇ギルドじゃろうが、宗教団体じゃろうが関係ねぇ!!」

 

 

「ワシら《妖精の尻尾》が、《イルミナティ》を、《七つの大罪》をぶっ潰す」

 

 

「いいだろう…では、妖精の尻尾マスター、マカロフ・ドレアー…そして、その護衛人エルザ・スカーレット。ギルドへ戻り魔導士達に伝えるのだ。」

 

「行くぞ、エルザ」

 

「はい!マスター!」

 

 

 運命は…既に動き始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








次回《ギルド加入試験 ソラVSグレイ》


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