FAIRY TAIL ─Salamander of the another One─   作:そーめん

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第三話 運命なんて

 ────???────

 

 

「《妖精の尻尾》…」

 

「あのギルドは我々にとって脅威だ。ゼレフ卿を倒し…アクノロギアまでも撃退した。」

 

 暗がりの中、男は自分の前にひざまずく何十人もの魔導師に言葉を放った。

 

「《七つの大罪》、【放漫の罪】、ルシフェル…前へ」

 

「はっ」

 

「《妖精の尻尾》の突起戦力、ナツ・ドラグニルの抹殺、ご苦労であった。この功績を讃え…」

 

「《七つの大罪》に《新生バラム同盟》の一角を受け渡そう。」

 

 途端、辺りがざわめく。反対する声、賞賛する声、その二つが交わった。

 ルシフェルと呼ばれた男は、そのざわめきに耳を貸すことはなく、言った。

 

「ありがたき幸せ。」

 

 ルシフェルは群衆の中に戻り、再びひざまずく。

 

 それを見届けた男は、言った。

 

「我々は、ゼレフ卿の意志を継ぐ者である!!アクノロギアによって失われた尊き命を取り戻し、世界を再生するものなり!!」

 

「《ラスト・イクリプス計画》…開始だ。」

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソラとグレイが戦ってから少し時間が経ち、私たち《妖精の尻尾》メンバーはギルドの酒場に腰をかけている。殆どのメンバーが揃っているが、いないメンバーもいる。ギルダーツ、ラクサスだ。

 そして、ギルドメンバーの目線は同じ場所へ。

 

 ギルドマスター《マカロフ・ドレアー》。

 ソラは同じ席に座っている私に声をかけてきた。

 

「あれがマスター?」

 

「あんた…《妖精の尻尾》に憧れてるって言う割には何も知らないわね。あの人がマスターのマカロフ・ドレアーよ。」

 

「へぇ…じゃぁあのじいちゃんに声かければ入れるのか?」

 

「今はそういう雰囲気じゃないでしょ!?」

 

 まったく…こいつは…。

 

「お前ら、静かにしろ。マスターがお話になる。」

 

 同じ席に座るエルザが言った。

 私とソラは再びマスターに視線を戻し、マスターが口を開くのを待った。そして…

 

「みな、集まったようじゃな。話を始めさせてもらおう。」

 

「ワシはこの三日間《イルミナティ》と名乗る組織の影を掴むために、評議院を訪れておった。そして、一つの決定が下った。」

 

 全員が唾を飲む。緊張感が高まり、息が荒くなっていることに気づくのに時間はかからなかった。

 マスターの声は落ち着いていたが、その声の深奥に眠る感情の数は計り知れないものがあるだろう。

 そして、マスターは口を開いた。

 

 

「ワシら《妖精の尻尾》の全勢力を用いて、《イルミナティ》を殲滅させる。これは…《戦争》じゃ!!!!」

 

 

 一瞬の静寂。そして、

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 

 ギルドメンバー全員が椅子から立ち上がり、拳を上へ高く挙げた。

 

 みんな、この判決を待ち望んでいたのだ。《イルミナティ》の殲滅作戦。

 そして、ルーシィも無意識に椅子から立ち上がっていた。次いで、ハッピー、グレイ、エルザ、ウェンディ、ガジル、シャルル、リリー…。

 

「それでじいさん!!具体的な作戦はどうするんだ!?」

 

 グレイの言葉に一同は頷き、マスターに視線を戻す。マスターの顔は真剣で、言った。

 

 

 

「考えとらん!!!」

 

 

 

 「だぁ!!!」と一同その場に倒れ込む。

 い、いい加減ねぇ…。

 

 けど、《イルミナティ》は最近になって現れた組織。断片的な情報も明らかになって無いから、居場所をつかむためには。

 

「全員でクエストを受けまくる。」

 

 不意にソラが口を開いた。

 

 全員の視線はソラの方を向いた。

 

「お、おいおい。そんなみんなよ。」

 

「ソラ、どういうこと?」

 

 あたしが聞くと、ソラは威勢のいい顔で答える。

 

「そのイルなんとかってのの情報は、まだ分かってねぇんだろ?だったら色んなクエストをギルドメンバー全員で受けて、イシュガルの隅から隅まで回るんだ。クエストを着々とクリアすれば、《妖精の尻尾》の知名度は今以上にうなぎ登りだ、イルなんとかの情報も入ってくるんじゃねぇのか?」

 

「なるほど、確かに闇雲になってイシュガルを回るより、《イルミナティ》に関するクエストが再び《妖精の尻尾》に入って来るのを待つということか。知名度が上がれば、それに比例してS級、SS級、十年、百年クエストの依頼も入ってくるだろうな。うむ、いい考えだ、ソラ。」

 

 エルザはソラに意見に賛同すると、マスターに視線をずらし、聞いた。

 

「いかがでしょうか、マスター。ソラの作戦を採用するというのは」

 

 マスターはソラを見つめる。ソラもマスターを見る。互いに視線をぶつけ合わせる時間が数秒続いた。

 

「ソラ…と言ったな。こちらへ来い」

 

 ソラは立ち上がり、マスターの方に向かって歩いていく。メンバーは意識的にか無意識にか、ソラにマスターまでの道のりを譲った。

 ソラはカウンター席の前に立ち、マスターをながめる。

 

 マスターは薄く笑うと、いった。

 

「これも…()()か。ナツによく似ておる。」

 

 ソラは視線を横にずらした。

 

「もうそれは沢山聞いたよ。何番煎じだっての…。」

 

「そうじゃろうなぁ。ソラよ…お前は、ワシらと共に希望の明日(あす)を歩くことが出来るか?絶望の明日を受け入れることは出来るか?」

 

 ソラは一度黙る。

 

「そんなの知らねぇよ。明日(あした)が来るかなんて、誰にもわからねぇからな。ただ…明日を作ることなら出来る。だから俺は《妖精の尻尾》の明日を作ってやる。その道を、明日を、俺はじーちゃん達(妖精の尻尾)と歩くためにここに来た。俺は絶望なんて作る気はねぇ。」

 

「それが例え、《運命》だとしてもか?」

 

「そうだとしても」

 

 ゴォ!!

 

 ソラの右手が炎で覆われた。その炎は先程グレイと戦った時よりも遥かに強く、そして、とても優しい炎だった。

 ソラが次に発する言葉に、ナツの声が被さった。

 

 

「『《運命》なんて…俺が全部燃やしてやるよ。』」

 

 

 その言葉にマスターは、笑った。

 

「その《覚悟》…しかと心に植え付けた!お前は今日から、」

 

 ソラの肩に、紋章が浮かび上がる。

 それは、尻尾のある妖精…。

 

「《妖精の尻尾》のソラ・ドラコチェインじゃ!!」

 

「おっす!!!」

 

 眩い光がソラを包み込み、弾けた。ソラの肩には赤い《妖精の尻尾》の紋章が浮かび上がっていた。

 

「ソラの作戦を使う!!お前ら、仕事じゃぁァァァ!!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ソラは自分の肩の紋章を確認し、不敵な笑みを浮かべると、後ろを振り向く。

 そこに立っていたのは、六人の仲間達。

 

 ルーシィ、ハッピー、グレイ、エルザ、ウェンディ、シャルル。

 

 全員は顔を見合わせ、頷いた。

 

 

 

 

 この運命が絶望なのか、希望なのか、それは誰にもわからないことだ。

 

 運命が残酷だと知るのは…あとすこし先のこととなる。

 

 

 

 


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