魔法少女リリカルなのは L×F=   作:花水姫

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どうもみなさん。
結局長くなったので分割することにしました。

今回が約10000文字、次回も同じくらい。

原作アニメ一話分くらいの話の区切りを一話分として投稿しようとすると、どうしても長くなってしまうみたいです。

それでは、どうぞ

バレンタイン? いえ、知らない子ですね()


**
無印編の頭に設定と言う名の脳内妄想を垂れ流したモノを乗せました。興味がある人はどうぞ


第2話 初めての温泉、二度目の魔法少女〈上〉

「わっふーい! おんっせん! おんっせんっ!!」

 

 車の中ではしゃいでいる少女はアリシア・テスタロッサ。彼女は今人生で初めての温泉と言う、地球、特に日本の文化に触れるのでテンションが鰻登りすぎて竜となって有頂天で天元突破してしまい。はしゃぎにはしゃいでいる。

 

「ア、アリシア借り物なんだからあまり暴れちゃダメだよ」

 

 そんなアリシアの隣で窘めるのは妹のフェイト。しかし妹とは言ってもアリシアが車いすから脱却してからは元気なアリシアに振り回されたり、このようにテンションの上がったアリシアを嗜めると言うどちらが姉なのかわからない状況になる事が多くなってしまっている。

 

「良いじゃない。家族で初めての旅行なのだから少しくらい羽目を外したって」

 

 レンタルカーの助手席から声をかけるのはプレシア。

 

 今、テスタロッサ家は近場の海鳴温泉向かうため、レンタルカーに乗り山道を走っている。家族で旅行と言う状況ではしゃいでいるのがアリシア。乗っている車が借り物だから壊したらいけないとあわてているのがフェイト。そんな二人を見て微笑んでいるのがプレシア。リニスは運転中、アルフは爆睡中となっている。

 

「で、でも母さん。これ借り物なんでしょう?」

「大丈夫よ。壊しても走れるくらいならちょっとお金払えば良いだけなのだから。だからあなたはそんな心配しないでアリシアみたいにはしゃいで良いのよ?」

「そうだよフェイト! お姉ちゃんと一緒にはしゃごう!!」

「そ、そんなこと言われても……」

 

 はしゃげと他人に言われてもはしゃげるなんて事は無く、結局フェイトは目的地に着くまで借りた猫の様に大人しくしていた。

 

 一方のアリシアは車の窓から山の風景を乗り出す勢いで眺めたりとと完全にお子様だった。実際アリシアもフェイトも肉体年齢は10に満たない程度とまだ子供なのだが、フェイトが少し落ち着きすぎているだけである。

 

 

 

 

 そうして、約1,2時間程山を走った所に海鳴温泉と言うのはある。ここ、海鳴市から近く、山の中にあるので自然も豊富で静かと、近場の人間からはとても人気のスポットらしい。

 

 フェイト達が初めてここに来てからもう1週間たった。それはつまり、初めてジュエルシードに対面してから1週間と言うことであり、あの後も何個か確保していたりする。

 アルフが起動前のジュエルシードを発見し確保した物を調べたところ、ジュエルシードはあらかたの封印処理は施してあるらしく、それが弱まり、なにがしかの切っ掛けで封印が解けて発動してしまうらしい。と言うのがプレシアの調査結果である。

 

 ここ最近海鳴市では謎のガス爆発だったり水道管破裂だったりと、奇怪な事件が多く、それらもジュエルシードの所為だと予想される。

 

 なので、今もプレシアがジュエルシードについて調べているが、今日から数日はそれを忘れ世間一般も連休で旅行シーズンと言うこともあり、それにあやかり近場にでも旅行しようと言う話になったのであった。

 そこで調べた所近場では中々有名な温泉宿があると言うことで、そこに泊まりに来たのである。

 

 

「おぉー。なんかすごい家だ。これが日本の“和”って奴だね!」

「確かに不思議な作りですね。全面木造ですか……。火事の時とかどうするんでしょう」

 

 海鳴温泉に付き早々民宿の外見について言いたいことを言い始めるアリシアとリニス。アリシアはまるで日本に旅行した外人(間違ってはいない)のようなことを言い、リニスは家屋と言えば、中世ヨーロッパの城のような作りの時の庭園での記憶しかない為、全面木造の家に興味深々であった。

 

「ほら、二人とも中に入るわよ」

 

 民宿の外見だけではしゃげる二人にプレシアが声をかけ中に入る。すると民宿の女将さんが出迎えてくれた。

 

「どうもいらっしゃいました。旅館山の宿へようこそ」

 

 そう言って頭を下げる女将。

 

「わ! 和服だ! すごい!」

「あ、こ、こんにちは!」

 

 頭を下げる女将の来ている服装になぜか感銘を受けるアリシア。頭を下げられたので、あわてて自ら頭を下げるフェイト。

 そんな二人を女将は微笑ましそうに見つめていた。

 

「えぇ。初めまして。予約していたテスタロッサなのだけれど」

「はい。テスタロッサ様ですね。大人が3名、子供が2名でお間違えないでしょうか?」

「えぇ。大丈夫よ」

「それではこちらに」

 

 プレシアの言葉への対応に女将のプロ意識が垣間見える。綺麗に一礼すると、足音をたてずテスタロッサ家を誘導し始めた。

 

 

「それでは、こちらがテスタロッサさんのお泊りになるお部屋となります。どうぞご寛ぎください」

 

 女将の案内に従い通されたのはそこそこ広い部屋。もちろんここで大人3人子供2人が寝るのだから広くなければ困るのだが。

 

 部屋に通された後、女将が去ろうとした所をアリシアが止める。

 

「あの!」

「はい。なんでしょうか?」

「女将さんみたいな和服って着れますか?」

 

 アリシアは先ほどから女将の和服に興味津々だったようで、せっかくなのだからと、自分も来てみたかったらしい。そんなアリシアの言葉に女将はにこやかに笑うと手を当てて少しだけ笑った後に応えてくれた。

 

「申し訳ありませんが、私共のような着物は置いてないのです」

「そうですか……」

 

 女将の言葉にしょぼくれるアリシア。よほど和服が来たかったのだと見える。

 

「ですが、浴衣と言ってお風呂に浸かって貰った後着るような服ならありますよ」

 

 続く女将の言葉にはっと顔を上げる。

 

「部屋の隅の籠に浴衣が入っておりますので、温泉に浸かった後にでも着てください。持って帰られるのは困りますが、この宿に泊まっている間だったら常に来ていただいて大丈夫ですよ」

「ホントですか!?」

「はい」

「やったー!」

 

 アリシアは首を縦に振る女将を見、目を輝かせると小さく飛び跳ねる。

 そんなアリシアを愛おしそうに見つめる女将にプレシアは頭を下げた。

 

「すみません。家の娘が」

「いえいえ、可愛らしい娘さんですね」

「えぇ。自慢の娘ですから」

 

 そんなやり取りをした後お互いに少しだけ笑うと、女将は会釈をして去っていった。

 

「さぁ、フェイト。温泉入るよ!!」

「えぇ!? もう入るの? もう少しゆっくりしてからでも……」

「良いから! 行くよぉ!」

 

 よほど温泉に入りたかったのか、それともよほど浴衣が着たいのか、アリシアはフェイトを連れ去り、温泉に向かってしまった。

 

「まったく、あの子ったら落ち着きが無いのだから」

 

 嵐のごとく去って行ったアリシアを見送ったプレシアはため息をつくとまだ部屋に残っていたアルフとリニスの方を向いて喋りかける。

 

「あなた達はどうする? 私は少しゆっくりしようかと思ってるけど」

「じゃ、あたしゃフェイト達と一緒に温泉にでも行こうかね、子供だけじゃ不安だし」

「私ももう少し部屋で寛ぐことにします。慣れない運転で肩もこってしまいましたし」

 

 プレシアの問いにアルフとリニスがそれぞれ応え、各々自分の方針に従った行動を取り出す。アルフは浴衣を手にアリシア達を追い、リニスとプレシアはお茶を入れ部屋で寛ぎだした。

 

 

 

 

 

 

「温泉だー!」

「温泉だー!」

 

 さっそく温泉に入る為にやってきたアリシア達だが、アリシアもアルフも早々に服を脱ぎ浴場に突撃、扉をあけ放つとそのまま叫びだした。

 

「二人とも静かにしてよ……」

 

 そんな姉と自身の使い魔が恥ずかしいのかフェイトは後ろから顔を伏せながらついてきている。

 

「良いじゃん良いじゃん! いま誰も居ないみたいだし、貸切だよ!!」

「それでも、ダメだってばぁ」

 

 天真爛漫と言うよりは自由奔放な姉を説得するのに苦心するフェイト。苦心するだけで説得が叶っている訳ではないのがまた涙を誘う。そんな涙ぐましい努力も実を結ばず姉は妹を置いて温泉へと突撃しようとする。

 

『アリシア、ちゃんと身体洗ってからじゃなきゃダメだよ』

 

 そんなレヴィの忠告を聞くと今まさに足をつけようとしていたアリシアは止まり振り向くとフェイトの下へ戻る。

 

「そーなの?」

『うん。体を綺麗にしてから入るのが温泉のマナーなんだよ』

 

 何故レヴィの話は素直に聞くのかと目の前に居る姉に対し疑問を投げかけたいと激しく思うフェイトだったが、レヴィの話を聞いたアリシアは何度か深くうなづくと唐突に話を切り出してきた。

 

「そっかー。じゃぁフェイト、お姉ちゃんと洗いっこしよう!」

「え? い、いいよ。自分で洗えるよ」

「良いから! ほら!!」

 

 恥ずかしさから断るが結局姉の強引さには勝てずに押し負け、お互いがお互いを洗うことになってしまう。それでも、それが嫌なのではなく恥ずかしいだけなのは、この姉妹の仲の良さを物語っているだろう。そうして姦しくお互いの背中を流し合った姉妹は、仲良く温泉に入る事になるのだった。

 

「あたしゃ完全に空気かい?」

 

 一人はずれで自身の体を洗うアルフを残して。

 

 

 

 

「はふ~」

「気持ちいいね……」

「あぁ。極楽だねぇ」

 

 仲よく並びながら温泉の気持ちよさを味わうアリシア、フェイト、アルフの3人。それに加えて、レヴィも現在はフェイトの意向により、感覚を共有するまで浸食度を上げて貰い、一応温泉の感覚を味わっている。

 

『いやぁ、ホントに気持ちいいね~』

「うん。そうだね……」

 

 初めての温泉のあまりの気持ちよさに頭が回らないのか、フェイトはレヴィの言葉に対しついつい口に出して答えてしまった。現在この広い浴場にこの3人しか居ない貸切状態だから良いものの、他に人が居たら完全に怪しい子である。

 しかしそんな事には終ぞ気づかずにとろけた顔をして呆ける3人。広い浴場を身内だけで、しかも3人で専有していると言う後ろめたさと共に、ちょっとした優越感があり、さらには気持ちのいいお湯に広々とした解放感。

 それらが相乗効果をもたらし3人、特にフェイトの頭を蕩かしていた。

 

 

 そんな極楽の時間は唐突に終わりを迎えてしまう。

 

「わぁ~。広ーい」

「そうだね~」

「お姉ちゃん洗ってあげるよ」

「あらそう? じゃぁお願いしようかしら」

「それじゃぁアンタは私が洗ってあげるわ!」

 

 浴場に入ってきたのは、2人の高校生らしき女性と3人の少女。

 女性は紫がかった髪に抜群なプロポーションをした女性と、もう一人は、茶色い髪の女性。3人の少女の内2人は女性2人の兄弟なのか、どことなく顔立ちや雰囲気が似ている。もう一人は金髪碧眼の見るからに日本人の容貌ではなく、なぜかフェレットらしき小動物をつかみ、洗おうとしている。

 その5人組みが来たので意識がそっちに割かれ、ふと見やるとフェイトは驚愕し、慌てて顔を伏せる。その様子に訝しみ、アリシアが話しかけてきた。

 

「どうしたの、フェイト? 大丈夫?」

「だ、だいじょうぶだから……」

 

 そんなアリシアにだけ聞こえるようになるべく小さい声で話すフェイト。しかし浴場の構造の所為かそれはやけに響く、ように聞こえてしまう。

 

――ど、どうしよう! どうしよう!

 

 外には出さないように努めながらも、フェイトの内心はパニックに陥っていた。

 

――どうしてあの子がこんな所に居るの!?

 

 それは、3人の少女の内の一人、栗毛の少女を見たせいだった。バリアジャケットは装着していないし、髪型もツインテールでは無いがしかし劇的な出会いを、居るはずがない存在との出会いは忘れる事は出来ない。

 いないと思っていた魔法技術の無い管理外世界での高い魔力を保有している現地魔導師。最初は次元犯罪者かとも思ったが、結局は自分が実力行使にてのしてしまってそのまま別れた存在。

 

――白いバリアジャケットの魔導師!

 

「(ど、どうしよう、レヴィ!)」

 

 混乱の境地に入り、自身の中に居る存在に助けを求めてしまう。

 

『落ち着いてフェイト。とりあえず向こうはまだ気づいてないみたいだしフェイトの名前だって知られてないんだから』

「(う、うん……。でも、どうしよう。私だって気づかれちゃうかなぁ)」

『とりあえずボクと入れ替わろう。そうすればフェイトに一番似てるのはアリシアになるし、アリシアは彼女と会った事ないんだから、どうにか切り抜けられるはずだよ』

「(そ、そうだよね。じゃぁ、後はお願い)」

『任せて』

 

 他から見たらただうつむいて黙っているだけのやり取りが終わりフェイトの瞳が青く染まる。

 

「フェイト、ほんとにどうしたの?」

「大丈夫だよ」

 

 心配するアリシアを安心させるためにそちらに顔を向けるレヴィ。その顔、瞳を見るとアリシアは即座に二人が入れ替わった事に気がいた。

 

「レヴィ? なにかあるの?」

「うん、とりあえず普通にしてていいけど、フェイトの話題はなるべく出さないように、お願い」

『アルフも、お願い!』

「なんかわからないけど了解」

「ん。わかった」

 

 短い作戦会議が終わるとアリシアとアルフ、それに交代したレヴィの3人は先ほどと同じように寛ぎ始める。魔導師として、魔導師でなくてもマルチタスクの訓練をしている3人にとって、平静を装いながら会話する事は朝飯前だった。

 

 そんな短い作戦会議が終わった時、後から入ってきた5人組みも体を洗い終わったのか浴槽に入浴してくる。

 

「先客がいるから皆あまりはしゃがないようにね」

「はーい」

 

 紫髪の女性の注意に素直に従う少女たち。しかし、返事をしたのはその内の2人だけで、最後の一人、栗髪の少女―高町なのは―だけは先客を訝しげに見つめていた。

 

「なのは? どうしたの?」

 

 そんな妹の様子が気になったのか、姉―高町美由希―はなのはの顔を覗き込んだ。

 

「え? いや、なんでもないよお姉ちゃん」

「そう? なら良いけど、他のお客さんもいるからあまりはしゃがないでね?」

「う、うん。わかった」

 

 そんなやりとりの後一行が湯船に近づくと、紫髪の女性が入る前にアリシア達に訪ねてきた。

 

「あの~、私達ペットのフェレットが居るんですけど……、お湯につけても大丈夫でしょうか?」

「あ? あ~、気にしないでおくれ、私たちは気にしないからさ。ね?」

 

 その問いにアルフが答える。知らない人から見たら一番年上だからである。

 

「うん」

「う、うん」

 

 そんなアルフに同意を求められレヴィとアリシアも同意の意を示す。

 

「ありがとうございます」

 

 一言礼を言うと少女たちも続けて礼を言い入浴する。

 

 その最中ですら、こちらを伺っていた高町なのははしばらくすると、こっちに近寄ってきた。正確には高町なのは率いる少女軍団が、だが。

 

「あの~」

 

 筆頭である高町なのはは意を決したように一つ頷くとレヴィたちに向かって話し始めた。

 

「私、高町なのはって言います。あの、名前、聞いても良いかな?」

 

 急に接触を図ってきたなのはに驚くあまり返事を返せずお互いを見つめ合うレヴィとアリシア。その様子が、言葉が通じないのかと思ったのか、なのはは後ろに居る友人たちに振り返り助けを求めていた。

 

「ど、どうしよう。言葉通じないのかな?」

「私が代わりに話しましょうか?」

「うん、お願い」

「Hey, My name is Arisa. You guys can speak Japanese?(ハァイ、私の名前はアリサ。あなた達日本語喋れる?)」

 

 なのはのSOSに金髪の方の少女が応え颯爽と前に出ると唐突に流暢な英語で話しかけてきた。

 

 言ってしまうとアリシアたちに英語はわからないし、日本語も分からない。英語はどことなくミッド語に似ているとはいえ似ているだけであり、聞き取れるかと言われたらNOと答えるだろう。しかし彼女たちが言葉を理解し話せているのは偏に翻訳魔法のおかげである。

 呼んで字のごとく『翻訳魔法』。言葉の通じない現地人と円滑にコミュニケーションをとるために開発された魔法であり、その効果は単なる翻訳だけには収まらない。

 翻訳機能で言えば、相手の言葉から意味を捉え、その意味を通訳する。なので、英語のような単純な言語に対しては効果をいかんなく発揮するが、日本語の様に言外の意味を捉える事が重要な言語に対しては精度が落ちる。

 そして、翻訳以外の機能は幻覚魔法である。これは、現地住民に違和感を与えないよう、潜入調査の際ばれにくくするためにかかっているモノであり、こちらが発した言葉に合わせて口の動きにだけ幻覚をかけ、あたかもネイティブな言葉を発しているように見せかける効果である。

 

 これらの効果をすべて合わせ、翻訳魔法とミッドでは呼ぶのだが、この翻訳魔法は魔法の使えないアリシアにもかかっている。そんなアリシアたちが日本語がわからないと言うわけはもちろん無い。

 

「あぁ、ごめん。日本語話せるよ」

 

 なので、その旨を一同を代表してレヴィが言葉にする。その言葉を聞いてなのはは安心した表情となり、アリサと名乗った金髪の少女はにこやかに笑みを浮かべ喋り始めた。

 

「そう! なら早く反応してくれてもよかったじゃない」

「ごめんね。急に話しかけてくるからびっくりしちゃって」

「そう。それはこっちが悪かったわね」

「ううん、良いんだ。それと一応話せるけど、得意ってわけじゃないから、よろしくね」

「そうなのね! わかったわ。それから改めて、私の名前はアリサ。アリサ・バニングスよ!」

 

 アリサは快活な性格らしくレヴィの言葉を聞くとニッと笑って堂々と自己紹介をし直した。

 そんなアリサに後れを取らないように後ろにいた二人も自己紹介する。

 

「わ、私は高町なのはです! なのはが名前だよ!」

「私は月村すずか。すずかが名前です」

 

 栗色の髪をしたのが高町なのは、紫髪の方が月村すずかと名乗った。

 

「ボクはレヴィ」

「私はアリシア! アリシア・テスタロッサだよ! よろしくね、アリサになのは、すずか!」

 

 なのは達3人の自己紹介に合わせ、レヴィとアリシアも自己紹介をする。

 

「ほら、なのは。聞きたい事があるんでしょう?」

「う、うん」

 

 自己紹介が終わるとアリサがなのはを肘で小突いて言う。やはり先陣を切ってきただけあってレヴィたちに何か聞きたい事があるらしい。

 

『聞きたい事って……』

 

 その話を聞いていたフェイトが不安になり、つい呟いてしまう。

 

「(うん。十中八九フェイトの事だろうね)」

『だ、だよね。レヴィよろしくね!』

「(う、うん。)」

 

 不安がっているフェイトを安心させるため念話で応答するレヴィだが、フェイトはよほどなのはに自身の話題を出されたくないのか、レヴィに後を頼むと意識を落してしまった。よほどなのはと関わりたくないらしい。

 

 そうして意を決した様子のなのはが切り出した言葉は――

 

「あ、あの。二人のどっちかって、私と会った事、無い?」

 

――レヴィたちが予想した通りの話題だった。

 

――ビンゴ……。

 

 ついついレヴィは頭の中でそう思ってしまった。自身が考えていたことが的中したせいなのだが、あまり嬉しいと思わない。

 

――だけど、考えによってはなのはもフェイトもお互いを強く意識してるって事だよね。

 

 逃げるフェイトを追うなのは。この形は図らずともレヴィの知る未来に似ている形になっている。

 

――なーんか雰囲気がラノベやギャルゲーちっくだけど……。

 

 特に現代ファンタジー作品なんてこんな感じだろう。非日常的な出会いをした主人公とヒロイン。その場ではお互い自己紹介をしないのだが、数日後、日常の中で運命的な再開をし、それを機に主人公はヒロインの事が急激に気になってしまう。

 その時のファーストコンタクトが軟派もどきの「どこかで会った事ない?」という言葉。

 

――あー、こんな作品あったら流行りそう。

 

 なんて、とりとめのない事を考えながらも、表ではきちんと対応している。

 

「えーっと、無いと思うけど?」

 

 自身の演技力を総動員してとぼけるレヴィ。それが通じていたかどうかは本人の知る由では無い。

 

「アリシアは?」

「ううん、知らない。はじめてだと思うけど……」

 

 一応アリシアにも確認を取るがアリシアはもちろん会った事が無いのでそう答える。

 

「それじゃぁ、姉妹は? レヴィちゃんくらいの、女の子。いたりしないかな?」

 

 よほど、聞くべきことを考えていたのか質問を一つ捌いても即座に次の質問が飛んでくる。

 

 2つ目の質問にどう答えるべきかアリシアがレヴィの方を見るがレヴィはそんなのお構いなしに即答する。

 

「いないよ」

 

 その返答にアリシアすらも驚くがそれでもレヴィは力強い言葉で続ける。

 

「少なくとも“ボクには”いないよ。姉妹はね」

 

 そのやけに力の籠ったセリフにアリシアは何か言いたそうに口を開いたが、結局何も言わずに口を閉じた。

 そして質問した側であるなのはもその言葉を信じたのか、一度頷くとすこしはにかみながら謝った。

 

「そ、っか。ありがとう。ごめんね、変なこと聞いちゃって」

「ううん、大丈夫。それに似た顔の人は世界に3人いるって言うんだし、不思議じゃないよ」

「そうなの?」

「そうさ」

 

 その後はとりとめのないことを少女たちは話していた。旅行先で出会った年の近い者同士なのだからかその話は多岐にわたり盛り上がった。

 いつ、こちらに来たのか、や日本語上手だね。などのとりとめのない話から、最近この海鳴市は変な事件が多く物騒だから気をつけろ、など。

 

 その話をされた時のなのはは何かを悔やんでいるような雰囲気を一瞬だけ見せたが、それも直ぐに取り繕ったのか消え、アリサとすずかには気取られなかった。

 唯一理由も含め知っているレヴィは気づいていたが、今その事を指摘する意味も、しなければならない理由もないため気づかないふりをすることに決めた。

 

 

 

 そうして長話をしてしまい、アルフが上がるのに合わせレヴィたちも浴場を出る事にする。

 

 アリサ達からこれから卓球で遊ばないか? などと誘われたが、家族と用事があるからとお茶を濁すにとどめた。

 

 

 

 

 

 そうして、温泉から上がりアリシアは念願の和服―浴衣だが―を帯と言う不可解な物体に悪戦苦闘しながらもなんとか着、テスタロッサ家でとっている部屋に向かっていた。

 

「(フェイト、フェイト)」

 

 その道中にレヴィは意識を落したフェイトを起こす。

 

『ん? ふぁ……。レヴィ?』

「(そうだよ。もう温泉からは上がったから、起きて)」

『……ぅん。あの子とはどうだった?』

 

 意識を覚醒させたフェイトは状況を理解すると即座に先ほどの事について聞いてきた。

 

「(なのは? フェイトの事は煙に巻いたよ)」

『なのはって言うんだ。そっか。ありがと』

「(どういたしまして。他にも色々話したけど良い子だったよ? フェイトも逃げずに話してみればよかったのに)」

『や、やだよぉ』

 

 レヴィの言葉に不満気な声が返ってくる。

 

「(どうして)」

『だって、初めて会った時、敵だと思ったとは言えあんなことしちゃったし……。絶対恨んでるよ……』

「(そんなこと無さそうだったけどなぁ)」

 

 言葉尻が弱くなり、不安がるフェイトにレヴィは自身が感じた印象を素直に話すが、フェイトは一向にそれを認めようとせず、強く拒んでいた。

 

『そんなことあるよ! きっと私を見つけたら復讐されちゃうんだ!』

「(なんで、そう思うのさ)」

『…………特に理由は無いけど……』

 

 ぶすっとした声で答えるフェイト、その声についつい苦笑いがこぼれそうになる。

 

「(とにかく、話した印象は悪い子じゃなさそうだったし、もし今度会うことがあればちゃんと話してみれば?)」

『…………』

「(無視ですかい)」

 

 子供のような―実際未だ10にもなってない子供だが―態度をとるフェイトに呆れながらも、アリシア、アルフと共に部屋へと向かっていた。

 

 

 

 

 

 

「あら、三人ともお帰りなさい。温泉はどうだった?」

 

 アリシア達が部屋へ帰ってくると、それに気づいたプレシアが訪ねる。その問いにアリシアはプレシアの元へ飛び込むと、プレシアの顔を見上げ朗らかな笑顔を浮かべながら言った。

 

「気持ちよかった!」

「そう、それは良かったわね」

 

 そんな愛らしい娘の言葉にプレシアは、にこやかに答えながらアリシアの髪を撫で始めた。

 

「それで? 二人はどうだった?」

「おぉ、気持ちよかったよ」

「……うん。気持ちよかったよ」

 

 プレシアに話題を振られたアルフとフェイトもそう答えるのだが、フェイトの方はどこか言うのを躊躇った。

 

――最後のアレの所為でよくわからなかったよ……。

 

 そんな思いがフェイトの胸中を駆け廻っていたのだが、母に心配をかけるわけにはいかないうえ、なのは達が来るまでは確かに気持ちよく温泉に没頭できていたことも事実なので、無難な答えを返す事になってしまった。

 

「そう。それじゃぁ夕飯までしばらくあるから、暫く自由にしていいわよ。だけど部屋から出るなら18:00までには帰ってきてね?」

「はーい!」

 

 アリシアはプレシアの言葉に元気に返事をした後、少し離れた場所で座っているフェイトの元へ向かいフェイトにどうするか聞く。

 

「フェイト、どうする?」

「ん~、暫くはゆっくりしてたいかな」

「そっか! じゃぁ、私も!」

 

 フェイトが部屋でゆったりすると言うので、アリシアも持ってきた暇つぶし用に本を開きフェイトの隣に座る。

 

 

 フェイトにアリシア、プレシア、リニス、そしてアルフと、部屋には5人いるが特に会話もなく、しかしそれが苦にならない穏やかな空気が部屋の中に充満していた。

 

 

―――――To be continued




と言うわけで、〈上〉、つまりAパート、ここでCMを挟みます。的な部分で終わりました。

〈下〉はほとんどできているので、速くて明日、遅くて明後日には投稿できると思います。


それではまた次回

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