魔法少女リリカルなのは L×F=   作:花水姫

15 / 57
みなさんの感想、応援のおかげでこんなに筆が乗りました。

今回は約13000文字。説明や戦闘があるとどうしても文字数が必要です。

それとキャラ紹介にクロノとリンディを書き足しました。お暇があればどうぞ。

**2014 3/6 修正
後ろの方を書き換えました。あまりにもなのはさんが強くて今後に響く可能性があったためそのあたりに修正を加えました。


第3話 三度目の魔法少女、三人目の魔導師

 

 私立聖祥大学、それはここ海鳴市にある最も大きな学校である。私立故学費は高いが、小学校から大学までのエスカレーター式の学校であり、日本の教育全ての期間を聖祥で過ごすことが可能なため、カリキュラムは独特な物であり、そのレベルも高い。

 

 その性質上、とある有名企業の子息や、資産家の子供なども入学しており、金額に見合った素晴らしい教育をすると高い評価を受けている。

 

 その聖祥大の付属小学校。なかでも3年A組に高町なのはは通っていた。

 

「……高町さん、高町なのはさん」

 

 そして今名前を呼ばれているのも高町なのは。2度フェイトと戦い、打ちのめされ、そして新たなる思いをその内に宿した魔法少女である。

 

 だが、彼女は教師が何度も名前を呼んでも一向に反応を示さなかった。

 

 それもそのはず、悲しきかな彼女は――

 

「高町なのはさん! 起きなさい!」

 

 机に突っ伏しては居ないものの、その意識ははるか彼方、夢の世界へと飛び立っていたのだから。

 

「ふぁ、ふぁい!」

 

 先生の怒鳴り声でようやく意識が戻るなのは。

 

「高町さん、お疲れかもしれませんが、授業はちゃんと聞きなさい。良いですね?」

「え、えーっと、はい。すみません」

 

 先生の言葉に素直に謝るなのは。彼女とて寝たくて寝てしまったわけでは無い。気が付いたら意識が飛んでいただけなのだ。しかし義務教育と言え、いや義務教育だからこそ、その授業の内容は大切であり、話を聞かないなど許される事では無かった。

 

「素直で良いですけど、気を付けてください。夜もきちんと寝ないとダメですよ」

「はい」

 

 先生はそれだけ注意するとすぐさま授業を再開した。その授業をなのはも今度こそはきちんと聞いている。

 

 

 ように周りからは見えて居た。しかし、なのはの友人であるアリサとすずかにはどうしても、どこか上の空なように感じられて仕方が無かった。

 

 

 なのはのその変化はこの間の温泉旅行の時から顕著に表れていた。二日目の朝に唐突に自分たちに謝ったかと思うと『やりたいことができたの』と、力強い瞳で宣言してきたのだ。

 

 つい数週間ほど前には、自分が何をすればいいのか、自分の取柄はなんなのか悩んでいた彼女が、決意の籠った表情と力強い言葉で宣言したそれに、二人は多いに喜んだものだ。

 

 

 しかし、それは学校が始まってからは不安要素の一つとなってしまった。

 

 授業中たまに舟をこぎ、先生に叱られる。そうして起きているかと思えば、どこか授業に集中し切れていないような、上の空な印象を感じさえもする。

 そして放課後は相も変わらず、やりたい事の為に自分たちとは別行動。

 

 心配すると言う気持ちも強かったが、友人であった彼女が急に遠くへ行ってしまったかのような、どこか遠くへ行ってしまうかのような寂しさの方が強かった。

 

 

「なーのは」

 

 そんな心配と寂しさがごちゃ混ぜになった心境で二人はなのはに近づく。

 

「アリサちゃんに、すずかちゃん」

「これ、さっきの授業のノート。なのはちゃん取れてないところあるんじゃない?」

 

 すずかがなのはにノートを渡す。大人しそうに見えて人一倍周囲に気を配り観察している、すずかなりの気遣いだった。

 

「わぁっ。ありがとう、すずかちゃん」

 

 そのノートを受け取り、メモできなかった箇所を必死に書き映し出すなのは。それが一段落しそうな頃合いを測り、アリサが本題を切り出す。

 

「ねぇ、なのは。最近、疲れてる?」

「ふぇ? どうして?」

「だって、最近よく授業中に居眠りすること多くなったじゃない」

「そ、そうかな?」

 

 なのはは、アリサの言葉に心当たりがあるのか、すこし狼狽えながらもとぼける。

 

「そうだよ」

 

 有無を言わさずすずかの援護射撃。実際アリサもすずかもなのはの様子を心配している。

 

「やりたい事が出来たってのはわかるけどさ、もうちょっと手を抜けないの? 別に今すぐやる必要は無いんでしょ?」

 

 アリサから放たれた言葉は最もな意見だった。やりたい事が見つかったとはいえ自分たちは小学生。勉強が手に付かないほどそれに没頭する必要は無い。確かに没頭したい気持ちはわかる。アリサやすずかだって趣味位あるし、それだけを延々とやり続けたい。それだけしか考えられないと言う時期もあった。

 しかし、それで授業を蔑にして良いか、と言われればそうではないのだ。特になのは達が通っている学校は私立なうえ、今はまだ義務教育期間中。勉強する気が無い者が無駄に金を消費する必要もない。勉強ができないのならば、勉強する気が無いのならば別の、それこそ公立の学校に行けばよいのだ。

 

 極論かもしれないが、そう言う世界になのは達はいるのである。

 

「ダメだよ」

 

 しかし、なのはの返答は違った。なのはは頭が悪いわけでは無い。ちょっと国語は苦手だが、算数などの理系に関しては天才と呼ばれるアリサをしてすら唸らせる頭脳の持ち主である。そんななのはが、アリサの言葉の意味を分からないわけがない。わかっていて、アリサの言葉を否定したのだ。

 

「確かに、勉強は大事。ここが私立で、お金がかかるって事も分かってる。だけど、『コレ』は今じゃなきゃダメなの。今できなくちゃ意味が無いの」

 

 自分の胸元をギュッと握りしめながらなのはは力強く言う。その視線は、アリサ、すずかの二人に向けられ、向けられた二人が思わず視線をそらしたくなるほど、その視線は力強く、決意にあふれていた。

 

 

 ふと、アリサとすずかはお互いを見る。

 

――こうなっちゃったらもう。

 

――どうしようもできない、ね。

 

 視線だけのやり取りだがお互いの言いたい事はわかる。なんだかんだこの三人組で2年以上友達をしてきたのだ。なのはの性格は、一度決めたことを何としてでもやり通すその頑固な性格は、重々承知だった。

 

「まったく、しょうがないわね」

「そうだね。なのはちゃんは頑固だもんね」

「えー? そんなことないよー」

 

 小さく三人で笑う。なんだかんだ言っても三人は友人、親友なのだ。その親友が話せないと言うのなら無理には聞かないし、やり遂げると言うのなら影日向に応援しよう。

 

「だけど、無理しちゃダメよ?」

「そうだよ。体壊しちゃ元も子もないもんね」

 

 だけど、心配する位なら許してほしい。やはり、友人にはいつまでたっても元気であってほしいのだから。

 

 

 そうして小学3年生の三人は、お互いに胸の中に秘めた思いを隠したまま、それでもいつも通りの学校生活を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 なぜ、なのはがアリサ達に心配されるほどに疲れていたのか。その理由の一端を話す事にしよう。

 

 高町なのははフェイトに滅多打ちにされた。それは戦闘だけでなく、心も一度は折られかけた。しかし、それは相棒たるレイジングハートの叱咤もあり、見事復帰。いや、生まれ変わった心持ちですらあった。

 

 

 そんななのはは旅行から帰ったその日から、正確には旅行の間から己に課した試練をこなしていた。

 

 まずは夜、風呂に浸かる前の筋トレ。これは旅行後から始めた物だが、レイジングハート監修の元なのはの『切れてる運動神経』を少しでもまともにするための運動だった。

 

 なのはの運動神経が切れているのには実は訳がある。

 

 なのはの実家は道場を持っており、門下生は居ないが、兄姉はなのはの家に伝わる古武術を学んでいる。それは父から学んでおり、そして父の息子である兄の才能はまさしく、父から受け継ぎ、研鑽に研鑽を重ねた努力の賜物であった。

 

 なのはが生まれてからしばらくは父が事故により入院しており、なのははその武術を学んでいない。どころか、家の事情で家族から放置されかけていたと言える。

 つまり、なのはの運動神経が開花しなかった事は、この時期の環境が原因の一助でもあるのだが、それだけで全力疾走すると転ぶ少女が出来上がる訳がない。

 

 そんな小学生がいたら運動神経以前に、体や脳の異常を疑う方が先である。

 

 しかし、なのははいたって健康、特に異常は見受けられない。ならばなぜ、そんな事態が起きてしまうのか。

 実は、なのははものすごく運動神経が良いのだ。父譲りの兄、それに及ばずともそれと同等の才能を受け継いだなのは。しかし、それを開花させることは無く、それでも兄姉の訓練の様子は幼い時から見続けていた。

 

 故になのはは、なのはの脳と体は知っているのだ。自分が“アレ”に及ばずとも、準ずる動きができる事を。しかし、そのイメージに、その認識に体が、筋力が付いて行かないのだ。それらが原因で全力疾走すると転んでしまう少女は出来上がった。

 

 その事に気付いたレイジングハートは、まずなのはに筋トレとジョギングを命じた。イメージに追いつかず動けないのならば、イメージに追いつけるように鍛えてやればよい。幸いにもなのはは未だ9歳。まだまだどうにかなる年頃である。

 

 故になのはは、朝起きたら海鳴臨海公園までジョギング。夜風呂に入る前はストレッチと軽い筋トレと。ストイックに訓練を積んでいた。

 

 

 それ以外での事は主に魔法関連の事だ。寝る前にはレイジングハート主導の魔法の座学。魔法の成り立ちから理論まで。実際魔法、と呼んでいるが、それは『魔力素と呼ばれる素粒子を変換したエネルギー(これを魔力と呼ぶ)。そのエネルギーを利用した、力学』が魔法である。つまり、科学や物理学などの延長線上なのだ。

 

 これはなのはの得意分野が功を奏した。

 

 

 なのはの得意分野は、算数などの理系。実はこれは算数の域を超え、数学や物理、化学の領域まで及んでいる。故になのははレイジングハートの教える小学生には早すぎる知識を、スポンジが水を吸収するかのように自分の物にしていった。

 

 

 そして、朝のジョギングの後、海鳴公園についてからは、学んだ魔法学の実践。今は時間が限られているため、浅く広くではなく、深く狭く突き詰める事となっている。

 つまり、なのはの得意な砲撃、射撃魔法の練度を重点的に高める事にしたのだ。その結果、なのはは空間把握能力も大変優れていることが発覚。

 当然と言えば当然かもしれない。自分の力だけで飛ぶことが不可能な人間。その少女が、魔法の力とはいえ、直ぐに自由自在に空を舞う事が可能となっているのだから。

 

 故に、射撃魔法はフェイトのような速射型では無く、誘導制御型となるように構築。朝の訓練は主にこの誘導制御の訓練と言っても過言では無い。

 

 

 そして、レイジングハートはそれだけの訓練で終わる事を良しとしなかった。

 

 マルチタスクを利用した授業中のイメージトレーニング。アリサ達が感じた、集中し切れていない、上の空と言うのは、これをやっているからだ。

 

 その内容は、レイジングハートが記録し再現したフェイトとの戦いが主であった。

 

 フェイトのフォトンランサーを視認、避ける、防ぐの選択。フェイトの高速移動の感知、漠然としたものでも、前後右左上下。どこから来るのか把握できるように、そうなるまで何度もイメージのフェイトに切り裂かれ続けた。

 

 そして、“本気を出した”フェイトとの砲撃魔法の打ち合い。あの時一瞬だけの、『赤と青のオッドアイ』となったフェイトの圧力。それは魔力の爆発的な上昇が理由だなのだと、レイジングハートは推理した。そして威力の上昇した金色と青色の“二発の砲撃魔法”、それからはじき出される、あの状態のフェイト―以後全力フェイトと呼称―の魔力量を算出。

 その魔力量から導き出せる最大威力の砲撃魔法に負けない威力の砲撃魔法。

 

 それを放てるようになるために、なのははイメージ上の全力フェイトに何度も打ち貫かれた。

 

 

 全力フェイトの魔力の概算は通常時の約2倍。果てしない数値である。ただでさえ、フェイトの魔力ランクは推定AAA。その2倍の魔力容量、魔力発揮値となると、オーバーSではきかない。理論値最高のSSSに迫る勢いとなるだろう。

 

 それを聞いたなのはは、驚きや絶望よりも先に、納得の感情があった。

 

 そこまでの実力者。それが手加減をして自分と相対していたのだ。それは自分の実力に不満を覚えるだろう、と。

 

 フェイトとなのはは魔力量では大体同じ程度と予想されていた。そしてお互いの実力差は経験と訓練の差なのだと、しかし違った。一般人から見れば十分以上の魔力を持ったなのは。それの2倍。そんなもの、もはやチートの勢いだ。

 

 魔力は半分。経験は、魔導師になってからこれまで約1月ちょっと。こんな木端どころか、砂利の一粒のような魔導師ではフェイトが不安になっても仕方ないだろう。

 

 

 しかし、なのははそのフェイトに勝たなくてはならない。実力で、経験で劣っているのなら戦術で、戦略で勝らなければならない。アリサが認め、レイジングハートが教えてくれたこの頭の回転。それと“見る”ことの才能。それでフェイトを上回らなければならない。

 

 

 

 故になのはは見続けた。イメージ上ではあるが全力フェイトの全力の高速移動。レイジングハートの予想だが、それは音速を超えるだろうと言われた。

 超音速。音を超える程早いのだ。それはつまり、全力で一直線になのはにぶつかるだけで、直撃すればバラバラ、直撃しなくても衝撃でズタズタになってしまうであろう速度。

 

 力学上、そんな速度で移動したら小回りが利かないどころの話ではないのでそんなバカげた速度は出さないだろうが、それでもフェイトがその気になれば、なのはを瞬殺できてしまうと言う事であった。

 

 

 その速度をなのはは見続けた。その速度での攻撃を回避できるように、認識できなければ、体が追い付く筈は無い。だからまず、認識できるようになるのだ。

 

 

 そして、誘導射撃でその速度を殺す。そうしなければ勝ち目は1%もない。故に鍛えた。自身の体も、頭脳も、射撃魔法も。その全てを貪欲なまでに鍛えた。

 とても小学3年生にこなせないような、ハードな一日を送り続けた。

 

 それでいて、ジュエルシード探しにも手は抜かない。一度決めたことなのだ。やり遂げると決めたのだから。

 

 

 ジュエルシード探しの方は順調とはいかなかったが、だが特訓の方は順調であると言えるだろう。

 

 

 

 そんな無理が祟ったせいか、アリサとすずかに心配されてしまったが、止めるわけにはいかない。フェイトを超えるためには、フェイトに認めてもらうためには止まる訳にはいかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、なのはがアリサ達に心配された同日、夜19時。普通の子供は自分の家で過ごしている時間。

 

 

 海鳴市中心部、ビルが立ち並ぶその場所にフェイトは居た。

 

「この辺、の筈なんだけど……」

 

 フェイトは今街中を歩いていた。近場まではアルフも一緒だったのだが、どうしても最後の一手、場所の詳しい特定ができなかった。

 故に二手に分かれて探索をしよう、という事になったのだ。

 

 

 しかし、一向に見つからない。かれこれ数十分は歩いているのだが、見つからない。

 

 母からは20時になっても見つからなかったら諦めて帰ってきなさいと言われている。その20時まであと1時間もない。

 

――これは、今日は諦めて帰るかなぁ。

 

 

 などと考えていたその時だった。突如何度も経験した、悲しいことに慣れてしまった悪寒と共に強烈な魔力反応を検知した。

 

「(アルフ!)」

「(わかってる! 今全力で広域結界張ってる!!)」

 

 街中でのジュエルシードの起動。今は目覚めかけと言った状態だったが、それでも側に居た人にどのような障害が起きてしまったかはわからない。

 このような事態を防ぐために、わざわざ小学校への編入を延期してジュエルシードを探していたのだと言うのに。

 

――あの子に偉そうなこと言っておいて、間に合わなかったっ!

 

 人が多すぎた、ビルが立ち並ぶ複雑な場所だった。言い訳を探せばいくらでも出せるだろう。しかし、それでよいはずがないのだ。

 彼女に、高町なのはに大きな口を叩いたのだから、やるからには全力でやらなくてはならない。

 

「バルディッシュ!」

 

 バルディッシュをセットアップし、即座に飛び上がる。ジュエルシードを確認。それは大通りの真ん中。スクランブル交差点の中央に浮遊していた。

 

「バルディッシュ!」

〈sealing〉

 

 バルディッシュをグレイブフォームに変え、すぐさま封印魔法を発動する。

 

「レイジングハート! お願い!」

〈sealing〉

 

 少し離れた場所から同じような掛け声が聞こえる。

 

――あの子は!

 

――フェイトちゃんも、やっぱり来てたんだね!!

 

 お互いが心の中で驚きを留める。そんな物を表現するより先にやらなければならない事があるからだ。

 

「ジュエルシード!」

「シリアル14!」

「「封・印!」」

 

 フェイトとなのは。ジュエルシードを挟むようにお互いの封印魔法が飛び、ジュエルシードを封印する。

 

「……」

「……」

 

 ジュエルシードを間に挟み、お互い無言で顔が見える距離まで近づく。

 

「フェイト、ちゃん」

 

 先に口を開いたのはなのはだった。

 

 その瞳には今までのような迷いや、臆病な雰囲気は感じられず、それどころか歴戦の戦士のような風格すらにじみ出ていた。

 

 なのはの顔を見るだけでフェイトの頭が熱くなる。自分でも認識できない熱が、理解を超えた疼きがなのはを見ると目覚める。

 

「どうして、ここに居る?」

 

 冷静に努め放った言葉はやはり今まで同様、感情を抑えた冷たい言葉となってなのはに届く。

 今までなら怯んでしまった言葉。しかし今回はそのような様子を見せず、まっすぐに堂々とその言葉を受け止める。

 

「フェイトちゃんに、お礼を言いたくて」

 

 

 

 

――は?

 

(意味が分からない。なぜ急にお礼の話になったの? もしや日本の学校でよくあるとされる『お礼参り』の事?)

 

 あまりに唐突な話題の為フェイトの思考が空回りを始めるが、どうにかマルチタスクの残りの思考を総動員して、冷静さを保つ。

 

「フェイトちゃん。ありがとうございます」

「あなたにお礼を言われる筋合いは」

「フェイトちゃんにはなくても、私にはあるから。フェイトちゃんは、私に気付かせてくれたから。私の弱さとか、全部」

「そう」

 

 ならば、ならばなぜ

 

――ならばなぜ、ここに居る……。

 

 

 自身の弱さに気づいたのならば大人しくしていればよいのだ。全てに気付いたと言うのなら自分がいかに危ない事に首を突っ込んでいたのかわかったはずだ。ならばなぜこの場所に居るのだ。

 わざわざお礼など言いに来ずに、大人しく家で家族と笑って過ごしていればよかったのだ。

 

 

 今度は思考が加速する。頭が熱を持つ。どうにもいけすかなかった。目の前に居る魔導師が、高町なのはと言う存在が。

 

「だけど、ううん。だからこそ、私は示さなくちゃならない」

 

 フェイトの事を無視しなのはは一人で語りだす。

 

「私が弱かった事を教えてくれたフェイトちゃんに。私は、弱くないんだよ。って」

 

 何を言っているのだろう、この少女は。弱かったのならば弱いはずだ。それが弱くないなどと言う事がある物か。

 

 どうにも狂わされる。目の前の魔導師は、高町なのはと言う存在はフェイトを狂わす。

 

「だから、必死に特訓した。フェイトちゃんに認めてもらえるように。フェイトちゃんに勝てるように。私は、『高町なのはは弱くない』んだって! 知ってもらえるように!!」

 

 そう叫びながらなのはは足元に魔法陣を展開する。

 

「っ! 戦う気?」

 

 その姿を見て、相手がやる気十分だと感じたフェイトはバルディッシュを胸元に構え直し、即座に動けるように体制を整える。

 

「はい。私と戦ってください、フェイトちゃん。私と戦って、そして認めさせてみせるから! 私の努力と、気持ちを! 私の思いを! 全力全開で、この魔法に込めて!!」

 

 なのはの叫びに呼応するかのようになのはから感じられる魔力が上昇する。

 

――来る!

 

 と思ったその時には

 

「ショートバスターッ!!」

 

 すでに砲撃は放たれていた。

 

〈Blitz Action〉

 

 とっさに短距離高速移動魔法を発動して横にずれる。それとほぼ同時に、なのはの砲撃魔法は、先ほどまでフェイトがいた場所を的確に打ち抜いていた。

 

 

――威力を落してタメを失くした砲撃魔法。

 

 確かに強くなっている。いや、器用になっていると言ったらいいのだろうか。前回戦った時は、魔力の調整すらデバイスに頼っていたと言うのに、もうこのような応用ができるようになっている。

 

――天才、か。

 

 天才。その一言がふさわしいような成長ぶりだった。しかし足りない。フェイトには届かない。

 

 ブリッツアクションでの離脱の勢いのまま、なのはの死角に入りバルディッシュを振るう。

 

〈Scythe Slash〉

 

 今までは高速移動後の一閃。それですべて決着がついていた。しかし、今回はそうはいかない。

 

 そんな予感がフェイトの中で渦巻き、そしてそれはその通りとなった。

 

 

〈Flash Move〉

 

 レイジングハートのその言葉と共に、なのはの姿が消える。

 

 予想するに、ブリッツアクションと同系列の短距離高速移動魔法。

 

 

――私対策は、ばっちりと言うわけ、か。

 

 たとえ一瞬でもこちらに迫れる速度を出すために新しい魔法すら使ってきた。

 

 いくら、こちらの移動法と言う手本があるとはいえ、見たのは2度、その内の一回は土煙に紛れての移動だったため、まともに見れたのは一度きりの筈。

 

 それで、ここまでそっくりな魔法を作れる。それは才能か、はたまたデバイスの努力のおかげか。

 

 しかし、これで相手も同様。短距離の移動ならば素早さは同じになったと言える。

 

 

そこから導き出されるのは、移動魔法の応酬だった。

 

 フェイトが死角を取ったら、なのははそこから離脱、距離を取り、それをフェイトが詰める。

 そのような、移動の応酬が繰り返されていた。

 

 

 

 その最中フェイトはなのはの特性の一つに思い至った。

 

――そうか、あの子すごく“眼”が良いんだ。

 

 いくら魔法の補助があると言っても、今まで足を止めて砲撃魔法を撃ってきただけの少女が、フェイトと同じ高速戦闘をこなせるはずがない。どれだけ訓練しようが、やはり限界はある。そのうちの一つが“眼”だ。

 速さを認識できなければその速さで動くことはできない。そしてその速さを認識するためには、その速さになれる事、特に眼と脳がなれることが重要だ。

 故に慣れているフェイトは高速戦闘の最中、物を正確にとらえる動体視力と高速の世界で通常通り思考ができる高速思考の両方が鍛えられている。自然と鍛えられた、と言ったほうが正しいだろう。

 

 しかし、なのはは違う。確かに初めて会った時はハーケンセイバーの軌道を目で追えていた。その時はそこそこ眼が良いのだろうと思ったが、それでもフェイトの起動にはついて来れていなかった。

 

 しかし、たった一週間足らずの特訓でフェイトに迫る高速戦闘ができている。それはつまり、想像もつかない程の訓練を積んだと言うのもあるだろうが、やはり天性の眼の良さがあるのだろう。

 

 

 それでも、フェイトには届かない。確かにフェイトの動きを視認し、いや、視認せずとも反応するときもあるが、それでもなのははフェイトの攻撃範囲外、サイズスラッシュの射程外に出る事しかしていない。それはつまり、高速で動けても、その最中での近接戦闘の訓練は積んでいない。と言う事だ。

 

 

――ならば、こちらが負ける道理は無い!

 

 相手がいくらしがみつこうと、こちらは近づき武器を振るうだけ、相手はそこから逃れるのが精いっぱい。ならば、このまま押すだけで高速戦闘に慣れていない相手はいずれ力尽きる。

 

 

 

 

 

――そう、思っていた。

 

 

「レイジングハート!!」

〈Divine Shooter〉

 

 その言葉が発せられた瞬間、フェイトの目の前にピンク色のスフィアが現れた。

 

「なっ!!」

 

 遅延発動か、はたまた隠蔽魔法か、そのどちらにしても相手を侮った結果。相手の罠に引っかかってしまった。

 

――逃げ続けたのは、この状況を作り出すため!?

 

 

 違う、明らかに違う今までの彼女とは違う。魔力量に物を言わせて力づくであった彼女とはまるで別人だった。

 

「レイジングハートと考えた、知恵と戦術! その一! 相手が速いなら、その速さを奪い取れ!」

〈Divine Cage〉

「シューーーーーーーーット!!」

 

 なのはの掛け声と共にフェイトの周囲のスフィアが一斉に迫ってくる。

 

――遅延魔法には驚かされたけど、スフィアの数自体は少ない。この数で(ケージ)だなんて。

 

 笑わせる。

 罠を仕掛けていたのは賞賛に値する。この短期間でこのような魔法を使えるようになったことも。しかし新しい技を使おうと意識しすぎているのか、地力が圧倒的に足りていない。

 

 確かに目前に現れた弾には驚きもしたし、回避も間に合わない。だが

 

「防御魔法、最大展開」

〈Defenser〉

 

 多くても10に満たない数の射撃魔法。近場での発動故、回避は困難。だがそれだけだ。

 

 バルディッシュによって防御魔法が前面に展開される。フェイトは防御魔法が得意では無い。故に最低限の防御だが、直撃さえしなければそれで良い。網目の大きい杜撰な網を、さらに広げるだけ、それだけで離脱はたやすい。

 

 そうしてディフェンサーを前面に展開したまま、全面へ飛ぶ。

 

 スフィアがディフェンサーにぶつかるとディフェンサーを“削る”。

 

――この射撃魔法、貫通属性も付与されている?

 

 防御の薄いフェイトが足を止めて防ごうと考えたら防ぎきれず大きなダメージを受けていた可能性がある。しかし、今回選択したのは離脱。それは間違いでは無かった。

 

 この時点では。

 

「知恵と戦術、その二! 相手の行動がわからないなら、わかるように誘導せよ!」

 

 包囲網を潜り抜けた先で見えたのは、魔法陣を展開し、どっしりと腰を据え、チャージが完了しているなのはの姿だった。

 

〈Divine Buster〉

 

 未だ、放たれてないそれはデバイスの前に魔力を凝縮している。その様はまるで小規模な収束魔法の様でもあった。

 

「っ!!」

 

 フェイトもこれには驚愕する。タメられた魔力を感じ取るだけで喰らったら一撃で落とされるほどの威力だと感じる。

 

「ディバインバスター、フル、パワアアアアァァァァァアアァァッ!!!!」

 

 なのはのその大きな咆哮と共に、ディバインバスターが放たれる。

 

 フェイトとあえて高速戦闘を繰り広げる事で、フェイトの位置を誘導。そこに射撃魔法を罠として仕掛ける。

 その射撃魔法で作られた囲いを抜け出そうが、耐えようが、容赦なく叩き込まれる最大タメの砲撃魔法。

 

 素晴らしい戦術であり、それをこなす実力が、才能がなのはにはある。

 

 それでも、フェイトには届かない。

 

 

 いや、並みの魔導師であったら、所謂“普通”のミッド式魔導師であったらこの連携になすすべもなくやられていただろう。

 しかし相手はフェイト。ミッド式魔導師にしては珍しい、高速近接戦闘を得意とする魔導師なのだ。

 

 なのはの選択は間違いでは無かった。しかし、今この時点では間違いだった。フェイトを研究し切れていなかったともいえる。

なのはにとっての最善は、ディバインケージを発動した瞬間、フルパワーなどでは無く、今まで通りのディバインバスターを即座に放っていればよかった。それだけでフェイトはディバインバスターに呑まれていただろう。倒せなくても甚大なダメージを与えられたはずだ。

 しかし、フルパワーを選択したがゆえにタメの時間は長くなり、フェイトに時間を与えてしまった。フェイトに『移動できる隙間』を与えてしまったのだ。

 

 

〈Blitz Action〉

 

 その隙間さえあれば、フェイトには十分で、そしてフェイトの最高速度は音に迫る。

 

 

 

フェイトが消えた場所をディバインバスターは何物にもさえぎられることなく通過し、なのはが魔力の放出を止めると同時にその光を弱めていき、消える。

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ」

 

 

 

 叫びすぎたのか、魔力を使いすぎたのか息を荒くしながら今までフェイトがいた場所を見詰めるなのは。

 

 レイジングハートも排気口のようなパーツから余剰魔力を勢いよく吐き出す。それはまるで、詰まっていた息を思いっきり吐き出しているように見えた。

 

 

――フェイトちゃんが、いない。

 

 

 ディバインバスターの光が収まり、その場所を見てもフェイトは見当たらない。もしや落してしまったかと思い、下を見ても居ない。

 

 

 しかし、なのはの死角を取っているような感覚は無い。レイジングハートに鍛えられた空間把握能力は集中さえしていれば相手が自分の後ろに居るかいないか位ならわかるほど鍛え上げられていた。

 

 

 しかしその気配はない。前後左右、下に居ないのであれば、残るは――

 

――上!

 

 そう思い、上を見上げるなのは、その視線の先には、バリアジャケットすら傷ついてない。フェイトの姿があった。

 

 足元には金色の魔法陣、デバイスであるバルディッシュは天高く上げられその頭上にも魔法陣が。

 さらに、晴れ渡っていた空はいつの間にか雲に覆われ、今にも大雨が降りそうである。

 

 

〈マスター! 離脱を!〉

「わかってる!」

 

 その姿を見て、なのはもレイジングハートも離脱を選択する。なのははバリアジャケット、防御魔法共にフェイトとは違い強固なものとなっている。潤沢な魔力を贅沢に使った、砲撃魔導師らしい防御力。しかし、それを考慮してもフェイトが準備している魔法は『避けなくてはならない』と直感が訴えていた。見たことない魔法だが、それでも感じる魔力の奔流からは危険を感じた。

 

 

 だが、なのはは思い至らなかった。自分が考えられる戦術は、相手も思いつくのだと。

 

 

「え?」

 

 離脱しようとしたなのはが絡め取られる。それは、金色の輪であり、なおかつ電流を放っているのか、微小の痺れすら感じる。

 

〈マスター、バインドです。どうにか術式に割り込んでください〉

「そんな事、言っても!」

 

 知らない魔法、知らない術式。存在はレイジングハートから教わった。ユーノに手伝ってもらい、バインドブレイクの方法も学んだ。しかしこれはユーノの使う魔導式では無かった。

 

 当然と言えば当然である。バインドの魔導式が全て同じであったら、そんな物なんの役にも立たない。

 

 しかもフェイトのバインドはライトニングバインド。電気を纏ったバインドであり、それは縛られながらスタンガンを当て続けられるのと同じことだ。

 

 なのはもバリアジャケットが無ければバインドに絡め取られた時点で気を失っていたであろう。

 

 

〈Protection〉

 

 レイジングハートは脱出不可と見るなり防御を選択。プロテクションを多重展開した。しかし、その選択は結果から見れば何の意味もなさなかった。

 

 

「アルエル、クルファル、トーリアス。怒れる雷神、その怒りを迸らせ給え。バンリル、ザキアル、シュロウゼル」

〈Thunder Rage〉

 

 バルディッシュがあれば無詠唱でも使えるはずのサンダーレイジ。しかしフェイトはそれをあえて詠唱することで威力を上げていた。

 

 フェイトは驚愕していた。なのはの成長ぶりに。この一週間で自分に冷や汗をかかせる程に“上手く”なった彼女の努力に、そこまでできる程の才能に。

 

 

――凄い子だ。

 

 素直にそう思う。たった一週間でこれほど強くなれるものなのだろうか。

 

 

――この成長速度、やっぱり彼女は天才だ。

 

 もしかしたら自分より才能が有るのではないだろうか。いや、あるのだろう。そして貪欲だ。強くなることに対して貪欲だ。相手の技でも自分にとって使えると思ったのなら真似てくる。それだけでなく、ちゃんと自分用にアレンジしてくる。

 

 しかし足りない、時間が足りない。フェイトはこれでも生まれてからのほぼ毎日、全てを魔法の特訓に費やしてきたと言って良い。特に最初の1年は勉強も魔法に必要な知識を蓄えるだけ、それ以外の勉強すらしなかったほどだ。

 

 そのフェイトが、そんなフェイトのプライドが許さなかった。

 

――本当の大規模魔法、見せてあげる!

 

 

 大規模魔法の使い方を思い知らせてやろう。

 

 

 

 

「サンダアアアァアァアアッァァアッ、レイジッ!!!!」

 

 放たれる(いなずま)。迸る(いかずち)

 

 フェイトの放ったサンダーレイジはなのはの周囲数mと共に、なのはを穿つ。

 

 

 唯でさえ威力の高いサンダーレイジ。ダメ押しで詠唱までし、威力を極限まで高めた一撃。いかに、防御力のあるなのはと言えど、耐えきれる筈は無く。

 

 

 

 

 

 (かみなり)特有の轟音と閃光と共に、なのはは落ちた。

 

 

 

 

「なのはぁ!」

 

 遠くで見守っていたユーノがとっさに魔法でクッションを張り、なのはを受け止める。そのお蔭で落下による衝撃こそ無かったが、なのはは動ける状態では無かった。

 

 電気変換資質特有の追加効果、麻痺。

 

 初めて会い、追撃で喰らったフォトンランサーなどとは比べ物にならない衝撃と痺れがなのはを襲っていた。

 

「やっ、ぱ、り」

 

 そんな状態でも、こんじょうで口を開くなのは。その言葉はなんとかフェイトに届き、驚かせた。

 

――まだ、喋れるの?

 

 意識を失ってもおかしくない一撃だったはずだ。多重発動した防御魔法のおかげか、それとも持ち前の精神力か。電気による痺れがあるにも関わらず、なのはは地面に倒れたままフェイトに向かってしゃべる。

 

 

「フェイト、ちゃんは……強い、ね!」

 

 そんなことを、ぎこちない笑顔を浮かべ言ってくるなのは。

 

 

 

 そんななのはに、フェイトは空恐ろしさを感じていた。

 

よく見れば指先は痙攣しているのか、不規則に跳ねている。それは、いまだ電気がなのはの体を駆け廻っていることに他ならない。普通そんな状態でまともに動ける筈がない。

 

――どういう、体をしているんだあの子はっ!

 

 もはや精神力だとかタフだとか、そんなチャチな物じゃ断じてない。もっと恐ろしい物をフェイトは感じ取った。

 

「本気も出さずに、汗一つかかないで、ホントに、すごいよ!」

 

 そんなことを笑いながら言ってのけるなのは。

 何がスゴイだ。何が汗一つかかないだ。冷や汗はかいたし、戦闘移動自体は十分全力の範囲内だ。全力中の全力であるサンダーレイジを詠唱でバイプッシュしてまではなったのだ。

 

――私知ってるよ! あの子みたいなのを、バトルジャンキーって言うんだよね! レヴィが言ってた!

 

 そんな言葉がフェイトの頭の中に響くが、意識的に無視する。

 

「もう、フェイトちゃん用に考えて、練習した戦略、は使い切っちゃった、けど」

 

 すでになのはは回復し始めているのか必死に体を起こそうとしている。

 

――けど。なんだと言うのか、もういい加減いいだろう。

 

 なのはの言葉に対してそんな考えが浮かぶほど、今のフェイトは疲れていた。

 

「もっと、全力でぶ、つかるから! 残りの魔力と体力、全部で!!」

 

 そう宣言すると、デバイスを杖にしてでも立ち上がるなのは。

 

 それを見て、フェイトもバルディッシュを構え直す。

 

 一触即発。どちらが先に動くか、緊張した空気が漂い始めたその瞬間。

 

 

 

 

その緊張を打ち破るものがあった。

 

 

 

 

 ドンッと腹の底に響くような振動を起し、それと同時に魔力を放ち始めるそれ、ジュエルシード。

 

「え!?」

「ジュエルシード!?」

 

 

 なのはもフェイトも驚き戸惑う。封印はしたはずだった。

しかし、その封印は完全なものでは無かった。なのはとフェイトの、二人の違う封印術式が合わさった結果、互いが互いの邪魔をし、キチンと効果を発揮できていなかったのだ。

 そしてその後に始まる戦いで放たれた、なのはとフェイトの全力の魔法。その魔力は未完成な封印しかされていなかったジュエルシードを呼び起こすのに十分だった。

 

たしかに、なのはのショートバスターが切っ掛けで唐突に戦闘が始まり、ジュエルシードの事は二人の頭の中からすっかり外れていた。しかし、なのはと共に現場に来たユーノが、ジュエルシード発動を感知し、その場に向かっているはずのアルフがいたはずだ。

 

 ユーノは今現在なのはの側により回復魔法を使おうとしているのか、なのはに向かって魔法を使っている。それは悲しくも魔力が回復し切っていないユーノでは焼け石に水な状態ではあったが、その微々たる回復が、なのはを立ち上がらせることができた要因でもあった。

では、残りのアルフは何をしているのかと言うと、実は遠目からなのはとフェイトを見守っていた。二人の戦闘があまりにも高度で。かつ、なのはのあまりの成長ぶりに驚愕していた。

 

 そうした故あって、二人は間に合わない。アルフは居場所が遠く、ユーノはなのはへの回復で手一杯であった。

 

 

――っ! 早く何とかしないと!!

 

 なのはとフェイト、二人のキモチが合わさる。どうにかしなくてはこのままでは危ない。そう思い、二人ともジュエルシードに近づこうとする。

 なのはは動きがおぼつかないその身体を、必死に動かそうともがくほど。

 

 しかし―――

 

 

『そこを動くな!!』

 

 

 どこかから、男子とも女子とも取れない中性的な声が響く。そして

 

『ブレイズ、カノン!!』

 

 その声と共に、ジュエルシードに濃い青色の光が当たる。

 

 砲撃魔法ブレイズカノン

 

 

「ふう、ジュエルシード、封印完了」

 

 その魔法を放ったと思わしき、黒色をベースに肩には攻撃的なトゲ携えたバリアジャケットを纏う魔導師は、ゆっくりとジュエルシードの元に降り立ちジュエルシードを確保すると、自分の手から何か身分証のようなものを拡大投影し掲げた。

 

「熱くなっていたところすまない。時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。任意同行。お願いできるかな?」

 

 

 今、地球に管理局の最年少執務官が降り立った。

 




なのはさんこえええええええっ

って言う回でした。プロットではこの辺までフェイトちゃんの圧勝予定だったんですが、どうしてこうなったんでしょうか。


主人公侮りがたし。

そしてついに管理局がやってきました。
原作より少し早いご到着です。


それではまた次回


**2014 3/6 修正

なのはさんに弱体化(?)パッチを当てました。それほど弱くなってる気がしないけど、弱くなってます。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。