魔法少女リリカルなのは L×F=   作:花水姫

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無印編第4話<上>、クロノ介入直前から介入後の話となります。

それと、無印編第3話の後ろの方を書き直しました。正確にはフェイトとなのはが戦ってる辺り。
あまりにもなのはが強すぎて今後に影響が出そうだったので、弱体化(?)させました。


話しの流れが合わないので、前話を見直すことをお勧めします。

勝手ですが、どうかよろしくお願いします。



第4話 三者の思惑、二人の決意と決別〈上〉

 

 少し時間は巻戻り、なのはとフェイトがジュエルシードを発見する少し前。

 

 

 次元航行艦アースラ内ではようやくたどり着いた任務地に対して搭乗員一人一人が各々複雑な思いを抱えていた。

 

 最年少執務官と持て囃されるクロノ・ハラオウンもその一人。

 

 

「ここが、第97管理外世界、現地名称惑星『地球』か」

 

 彼はアースラのコクピット内でモニターに映る青い星をみて何とも言えぬ思いを抱いていた。

 

 

「どーしたの? クロノくん」

 

 そんな彼に声をかけるのは彼の補佐官にしてアースラ通信主任であるエイミィ・リミエッタ。クロノの士官学校時代からの幼馴染でもある。

 

「いや、この世界にロストロギアがあるんだな、と思うとね」

「うーん、まぁ通報通りならそうだけどね」

 

「まぁそんなことは良い。武装隊の状況は?」

「今は出撃前の小休止ってところだと思うよ。多分指示があれば直ぐ出撃できると思う」

「そうか」

 

 事務的な会話が終わり何とも言えない空気が流れる。それも仕方ないだろう。もともとアースラは次元世界の哨戒任務中であった。これは各世界を回り、突発的な事故などが無いかを軽く確認するだけの任務であり、本来ロストロギアに対する備えなどしていないのだ。それがなんの因果かロストロギアを回収しなくてはならないと言う事になってしまう。

 

 実働隊である武装隊や、アースラの切り札であるクロノはその事に対する感情もひとしおだろう。

 

 

 そうして、何とも言えない空気のまま各々が過ごしていると、唐突に艦全体にアラートが鳴り響く。

 

 

「どうした!」

「今確認中!」

 

 すかさずクロノが叫び、エイミィはすぐさま目の前のコントロールソートを操作し始める。

 

「何があったの?」

 

 別室で仕事をしていた艦長、リンディ・ハラオウンもアラートを聞きつけブリッジまでやってきた。

 

「いえ、それが」

 

 クロノが艦長に未だ原因はわからない。と報告をしようとした時、エイミィは大声で報告した。

 

「巨大な魔力の奔流を確認、このまま増大を続けたら次元振の恐れがあります!」

「なんだと!」

 

 次元振、それは魔力の暴走によって起こり得る、次元断層の前触れであり、規模が小さいもので小物や人一人を吸い込む程度、これによって迷い込んでしまう人のことを『次元漂流者』と呼び、管理局ではこの次元漂流者の案件が年に数十は起きているとされている。

 

 しかし、大規模になるとその程度の被害では済まされない。都市一つ、国一つは当たり前。歴史上もっとも大きな次元振による被害は、世界一つを滅ぼしたと言われている。

 

 少ない戦力で、そのような魔力を感知されるほどの事件に当たってしまった事がクロノには信じられなかった。

 

――帰ったら絶対にこの案件を処理した奴らを全員退職させてやる! 絶対だ。やると言ったらやってやる!!

 

 あまりの出来事に頭を抱えながらそんな物騒なことを思う。

 

 

「それはジュエルシードかしら?」

 

 しかし、そんな中でも艦長は冷静に状況を把握しようと、エイミィに聞いた。

 

「はい、そうだと思われますが」

「クロノ、直ぐに武装隊を率いて降下しなさい。このまま放っておく訳にはいきません」

「わかりました、艦長」

 

 リンディの命令により、ブリッジから出ようとしたクロノをエイミィが止める。

 

「待ってクロノくん!」

「どうした、エイミィ」

「魔力反応消失」

「なに?」

 

 エイミィが報告したことは先ほどの魔力の奔流が止まったと言う事だった。

 

「その代り、魔力を検知できた場所に広域結界が張られている模様です」

「映像出せる?」

「はい」

 

 リンディの言葉にすぐさま答え現地の映像を出すエイミィ。

 

 そこには、オレンジ色の魔力光で作られた広域結界の映像が見えた。

 

「広域結界、ですね」

「見る限り中々の強度だ。しかも術式は多分封時結界」

「相当高レベルの結界魔導師がいるようね。内部の映像は?」

「少し待ってください」

 

 エイミィの操作によりモニターの表示が変わる。そこに移されていたのは、二人の魔導師の戦いだった。

 

「これは」

「どちらかが、通報してきた匿名の魔導師、と言う事かしら?」

 

 クロノとリンディはその映像を見て今あの世界が、どんな状況なのかを考える、しかしエイミィだけは違った。

 

「この二人、すごく強いっ」

「どういう事だ? エイミィ」

 

「まず、高速戦闘のレベルが高い。白いバリアジャケットの方は攻撃してないけど、こことこことここ。それとここにも、多分これディレイ型の魔法だよ」

「罠を仕掛けている訳か」

「ひとまず、状況を見守って見ましょう。情報収集をかねて、ね。クロノ執務官及び武装局員のみなさんはいつでも出撃できるように体制を整えておいてください」

 

「わかりました」

 

 リンディの指示により、状況を見守る事になったアースラ乗組員。そして全艦放送されている映像は、本職の魔導師をして唸らせるものであった。

 

 

「あ! ディレイ魔法が発動した!」

「遅延魔法で射撃魔法だと? どういう扱い方だ無茶苦茶すぎる!」

「でも、そのお蔭で黒い子の動きが制限されたわ」

「わぁ! あそこに突っ込むの!?」

「だめだ、それは誘導されている」

「えぇ。砲撃の準備に入っているわね」

「あの白い子、砲撃魔導師ですね」

「エイミィ、一応で良いから魔力計測してもらえる?」

「わかってます! 最初からやってますよ!」

 

 

 三者三様でモニターに見入り盛り上がる。

 

「あぁ! 撃った!!」

「これは、決まりかしら」

「いえ、黒い方はスピードタイプのようです。今の状況なら」

「すごい、避けた!」

「さすがね、あの状態から無傷で離脱できるなんて」

「すかさずバインド。しかも」

「大規模魔法? しかも天候操作系儀式魔法!」

「なんて、大掛かりな、まさか雷を呼ぶつもりか?」

「彼女、電気変換資質持ちみたいね」

「防御魔法の多重展開、でもその程度じゃぁ」

「あの魔法は防ぎきれないだろう、な」

 

 突如、モニターが光り輝く。それは雷が落ちたせいだが、その余波でモニターに映す役割であるサーチャーがいくつか破壊されてしまった。

 

「なんて威力」

「自然の雷をも利用して威力を上げているのね」

 

「艦長! 二人の魔力計測結果、出たみたいです」

「そう、どんな感じかしら?」

「こ、これは……」

 

 エイミィがなにやら操作すると、途端に固まった。

 

「どうした? エイミィ」

 

 クロノがエイミィの名前を呼ぶと、エイミィは硬い動きで振り返りながら言った。

 

「この子たち、すごいよ! 凄いってもんじゃない! 凄すぎるよ!」

「はやく、報告してくれ」

 

「白い子の砲撃魔法、平均魔力発揮値約150万、最大威力を計測した時はその倍以上! 推定魔力容量と合わせての測定、魔力ランクは推定AAAです!」

 

 エイミィの言葉にブリッジ全体が騒然とする。

 

 魔力ランクAAAとは、管理局員の魔導師全体で15%いるかいないかのランクであり、十分以上に天才と称されるほどである。それがいまだ幼い少女、しかも管理外世界に居るのだ。驚かないわけがない。

 もし管理局に入れば将来は安泰。10年ほど前線で経験を積めばあとは死ぬまで指揮官などで左団扇を振っていればいい生活すらできないことは無いとされる。

 

「と、言う事は黒い方の子は少なくとも同等以上の実力者、と言う事ね」

「黒い子の方も同じく魔力ランクは推定AAA、発揮値が白い子より低いですけど十分以上の数値ですよ!」

 

 リンディのつぶやきに返されたエイミィのその一言に、またもや騒がしくなるブリッジ。

 一人だけでもすごいと言うのに、それが二人も。冷静になって考えてみれば、同等の戦いをしているのだから実力が同じくらいだと見るのは当然であり、魔導師の実力と魔力ランクは≒で繋がれる。それは、魔力ランクが実力と思っても良いのだ。

 

 つまり魔導士ランクAAAクラスが2人。しかもそれが管理外世界でロストロギアを巡って戦っている。これは誰がどう見ても異常事態でしかなかった。

 

 

 

 

 

 そうしてアースラのブリッジがざわついている瞬間、またもやアラートがけたたましく鳴り響く。

 

「ジュエルシード再動!」

 

 エイミィの報告にブリッジ内に緊張が走る。

 

「クロノ執務官!」

「わかっています!」

 

 リンディの叫び声にクロノはバリアジャケットを翻し、即座にブリッジに備え付けられている転移装置へと入り込む。

 

「エイミィ!」

「了解! 転移座標は結界内、ジュエルシード直上50m!」

「転移開始してくれ!」

「転移、開始!」

 

 エイミィが叫びながら操作をすると、クロノが光に包まれ転移される。

 

 

 

 こうして、クロノはジュエルシードの直情に現れ、ブレイズカノンでジュエルシードを鎮圧。回収すると同時に、名乗る事にしたのだ。

 

 

「熱くなっていたところすまない。時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。任意同行。お願いできるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 クロノの言葉に唖然とするなのはとユーノ。ユーノにしてみればどうして今頃と言う思いでいっぱいだが、しかし安心する思いもあった。

 

 管理局が来ればより早くこの事件は終息する。それはつまりなのはがもう戦わなくてよいと言う事であった。このように傷つき辛そうななのはを見なくてよいと言う事なのだ。

 

 

 一方のフェイトは急激に頭が冷えていくのが感じられた。なのはとの戦いで思っていたより熱が入ってしまっていたらしい。

 任意同行に応じる応じないはともかく、戦闘の意志が無いことだけは示さなくてはいけないだろう。

 

「バルディッシュ、モードリリース」

〈イェッサー〉

 

 バルシッシュを待機状態へ戻す。バリアジャケットは展開したままなので完全な待機というわけでは無いが、デバイスの戦闘形態を解除したので、戦闘の意志は無いと思ってくれるだろう。

 

「(アルフ、管理局が来たみたい。母さんに連絡お願い)」

『了解。くれぐれも変なことはしないでね? フェイト』

「(わかってるよ)」

 

 遠くに居たアルフを母への使いへと送りだし、クロノと名乗った執務官の側へ降りる。

 

「協力感謝する。そっちの白い魔導師もできれば武装解除してくれると助かるんだが」

「え、っと、わかりました」

 

 クロノに言われレイジングハートを解除するなのは。

 

「きゃっ!」

 

 しかし、フェイトから受けたダメージは残っており、支えにしていた杖を失くした事で自分の体を支えきれず前へ倒れ込む。

 

「おっと」

 

 しかし、クロノがすかさずなのはを受け止める事で、なんとかなのはが地球と固いキスをしなくて済んだ。

 

「あ、あの」

「すまない、戦闘のダメージが残っていたんだな」

「えと、ありがとう、ございます」

「座れるか?」

「はい」

 

 クロノの助けもあり、地面に座り込むなのは。同年代の男子と接することが少なかったのか、それとも戦闘の余韻が残っているのか、どこかその顔は紅潮しているようにも見えた。

 

「戦闘のダメージ……? 見てたんですか?」

 

 なのはを座らせたクロノにフェイトが言う。

 

 クロノがなのはに言った『戦闘のダメージが残っていたんだな』と言う言葉、それはつまり、なのはが戦闘によってまともに動けない状態になってしまった事を知っていると言う事だ。

 

「あぁ、不愉快にさせてしまったら申し訳ないんだが、君たちの戦闘は見させてもらった」

 

 フェイトの問いを素直に肯定するクロノ。その潔さに少々フェイトは驚いていた。

 

 フェイトは実はあまり管理局に良い印象を抱いていない。それはプレシアが管理局に対して警戒しているせいであるのだが、その管理局員、初めて会う管理局員が人のよさそうな同年代の少年で会った事に驚いていた。

 

「君たちがどのような理由で戦闘をしているのかわからなかったし、君たちの戦力調査と言う理由もある、しかし途中でジュエルシードの発動を感知し、慌てて降りてきた、と言うわけだ」

 

 自分たちを見ていた理由、なぜ急に表れたのかその理由すら正直に話すクロノにフェイトは少しだけ気を許してしまいそうになる。

 

「それで、任意同行の話だが」

「あの、任意同行って、なんですか?」

 

 クロノの言葉を遮るなのは。なのはは申し訳なく思っているのか、その姿はおずおず手を上げていた。

 

「あ、あぁ。そうだね、事情の説明を聞きたいんだ。ここではなんだから僕達の拠点に来て貰いたいんだが……」

 

 そう言いながらフェイトとなのはを交互に見るクロノ。そんなクロノにフェイトはきっぱりと告げた。

 

「もう、時間も時間ですし、疲れも残っているので明日で良いですか?」

 

 フェイトのその言葉に、クロノははっと気づいたのか申し訳なさそうに、なのはを見る。自分で立てないほどのダメージを負ってしまったなのはの事を考えてない。とでも思っているのだろうか。

 

「そ、そうだね。艦長、どうします?」

 

 クロノのコールに合わせるかのように、空間投影されていた画面が身分証の表示から女性の顔に変わる。

 

『そうねぇ、明日ちゃんと来てくれるって約束してもらえるのなら、こちらも構わないのだけど……』

 

 画面に映る翠髪の女性は困ったと言うジェスチャーなのか、片手を頬に当て首を傾ける。

 

「母も連れてきていいのなら必ず向かいます」

 

 フェイトのその言葉になのはが驚いたようにフェイトを見る。対してリンディは満足そうに微笑んだ。

 

『わかりました。それではそちらのあなたはそのように、それで白い方の子はどうかしら?』

 

 リンディの言葉に、しどろもどろに目を泳がせるなのは。

 

「あ、あの。親、連れてこなくちゃ、ダメですか?」

 

 その言葉から読み取れるのは、親に自分のやっている事を伝えていないのだろう。それも当然。なのはは地球生まれの地球育ちであり、もちろん家族も魔法の事なんて知らない。いきなりそんな事を真剣に言いだしても家族が心配するだけだろう。

 

『別に無理に連れてくる必要はないですよ。あなたからだけでも話が聞ければ、私たちは十分ですから』

 

 なるべく安心させるようにリンディは柔らかい笑顔でなのはに笑いかける。実際、なのははその笑顔と言葉で安心したのか、ほっ、と息をついた。

 

「それじゃぁ私も大丈夫です」

『わかりました。それでは待ち合わせの場所を決めましょう。どこかわかりやすくてなるべく広い場所は無いかしら? あとできれば人通りが多くない場所であれば最高なのだけれど』

「それじゃぁ、海鳴臨海公園っていう場所があって、そこなら」

『そう、わかりました。黒い方の子も、それで大丈夫かしら?』

「はい」

『ありがとう、それじゃそこに。そうねぇ、お昼食べてから、13時頃にしましょうか』

「はい。大丈夫です」

「わかりました」

 

 リンディ主導で話はまとまり、明日13:00に海鳴臨海公園で待ち合わせる事が決まった。

 

『それではまた明日。クロノ執務官も帰投してください』

「艦長」

 

 リンディの命令にクロノが口をはさむ。

 

「白い方の子を家まで送ってあげて良いでしょうか?」

『許可します。ちゃんとエスコートしてあげるのよ?』

「からかわないでください」

 

 その短いやり取りを終えると通信を切ったのかクロノは画面をしまう。

 

「と、言うわけで君を家まで送ろう。家を教えてくれ」

「え、えと。一人で大丈夫、ですよ?」

「何を言っている、まともに立てないような状況で一人で帰れるわけがないだろう」

「え、っとでも」

 

 クロノがなのはに手を差し伸べるが、なのはは遠慮しているのかその手を取ろうとしない。

 

「あの」

 

 自分を置いて始まったどこか嫌気がさす空気に顔を顰めながら、フェイトは声をかける。

 

「あ、あぁ。どうした?」

「もう帰っていいですか? 私の使い魔が張ってる結界も、解きますけど」

「そ、そうか。いや、ここは人目に付く可能性があるから、すこし目立たないところに移動してからにしよう」

「わかりました。ついてきてください」

「あぁ」

 

 すぐさま歩き出すフェイトに応えると、クロノはなのはを抱きかかえ付いて行く。

 

「にゃあ!? あ、あのぉ」

「大人しくしててくれ、落してしまうぞ」

「ふぁ、ふぁい」

 

 後ろで繰り広げられる甘い空気に当てられたのか、気分が悪くなるフェイト。それは表情にも表れており、裏路地で待機していたアルフ(狼形態)が驚いた声で話しかける程であった。

 

『ふぇ、フェイト……。顔凄いよ?』

「放っておいて」

『わ、わかった』

「アルフ、帰るよ」

『あ、あぁ』

 

 フェイトの言葉にアルフは頷き転移魔法を発動する。

 

「転移魔法まで使えるのか」

 

 クロノはその有能な使い魔に、そこまで有能な使い魔を使役しているフェイトに感心していた。……なのはを抱えたまま。

 

 

 フェイトがどこかへ行ってしまった事で結界も解除され、先ほどまでなのは達がいた大通りに人の雑踏が戻ってくる。

 

 

「あ、あの!」

 

 そうなっても未だ抱えられているなのはは、すこし大きな声でクロノに話しかけた。

 

「あ、あぁ、悪い。僕達も転移魔法で帰る事にしよう。住所を教えてくれ」

「え、っと」

 

 なのはが自分の家の住所を教えると、クロノはエイミィに指示を出す。

 

「しばらく待ってくれ、僕の補佐官が座標を割り出している」

「えっと、ほさかん? ざひょう……?」

「君は、もしかして魔法の事をあまり知らないのか?」

「え、っと、はい。魔法に出会ってまだ一か月位、です」

「一月であんな戦闘を……」

 

 何気なく言ったなのはの言葉にクロノは驚く。魔力文化の無い管理外世界で魔力ランクAAAと言う恵まれた、もはや突然変異と言って良い程の才能に加え、一月であそこまでの戦闘ができる程のセンス。それはまさに魔法戦技をするために生まれてきたと言っても過言では無い程の才能とセンスである。

 

「えっと、その」

「どうした? 何か聞きたい事があるのか?」

 

 どもりながら喋るなのはが、なにか言いにくい事があるのかと思い、自分から話を持ちかける。

 

「その、下ろしてくれると、助かります」

 

 その言葉にクロノはようやく、未だ自分がなのはを抱えていたことに気付いたのか、ばつの悪そうな表情を浮かべると、なのはを下ろした。

 

「すまなかった」

「い、いえ。その、心配してくれた、んですよね?」

「いや、まぁそう、なのだが」

 

 恥ずかしそうに頬を掻くクロノに、なのはは面白くなってしまったのか小さく笑いだす。

 

「な、なぜ笑う」

「だって、クロノくん。面白くて……」

「クロノ、くん?」

 

 年下であろう女の子にいきなり君づけで呼ばれ頬を引きつらせるクロノ、しかしなのはの考えも当然、なのはとクロノは残念ながら同じ位の背丈であり、実はフェイトの方がクロノより身長が有ったりする。少しだけだが。

 

 そんなクロノが年上に見えるわけもなく、さらにクロノはミッドチルダ人ではあるが、黒髪黒目で少し童顔と、日本人そっくりの顔立ちをしていたことも相まってなおさら実年齢より若く見えてしまう。

 

『クロノく~ん。ラブコメしてるとこ悪いんだけどさ~ぁ?』

「な、エイミィ! なにをいきなり!」

 

 唐突に通信枠を表示させ通信してきたエイミィの言った言葉にクロノはしどろもどろになってしまう。

 

『座標割出終わったよ? いや、ホント、良い空気を引き裂くようで心苦しいんだけどね? でもこっちも仕事だからさぁ? あ~、執務官さんはお気楽でいいですねぇ。仕事しながらそんな可愛い子を軟派できるんだからさぁ』

 

 不機嫌なのか言葉に棘どころか猛毒と大量の刃を隠しもせずに見せびらかすエイミィにクロノはタジタジになっていた。

 

「わ、わかった! そう見えたのなら謝る! だから早く座標教えてくれ!」

『もうS2Uにデータ送ったから、早く送ってきな!』

 

 そう言い放つと一方的に通信を切るエイミィにクロノはわけのわからない思いでいっぱいだった。

 

「一体なんだと言うんだ……。と、とりあえず君の家の側まで送るから、なるべく離れないでくれ」

「は、はい」

「それじゃぁ行くぞ」

 

 

 クロノが自身のデバイスであるS2Uを起動し、そこに新しく登録された座標に転移する。

 

 

 

 

 

 

 転移の光が収まると、そこはなのはの家の側の路地だった。

 

「ここで、だいじょうぶか?」

「あ、はい。大丈夫だと思います」

 

 そう言うとなのはは立ち上がる。その様子を見たクロノは心配そうな様子でなのはに訪ねた。

 

「体の方は」

「未だ少しだけしびれが残ってますけど、大丈夫、だよ」

 

 クロノの言いたい事を理解しているのかなのははグッとこぶしを握って自分が元気であることをアピールする。

 

「そうか。それなら良いんだ。気を付けて帰ってくれ」

「うん」

「それじゃぁ、また明日、よろしく頼む」

「ふぇ?」

 

 別れ際に言われたクロノの言葉が理解できなかったのか、なのはは首を傾げた。

 

「明日だ明日。僕らの拠点に来て話を聞くと言っただろう」

「あ、そうだったね。うん、13時に海鳴臨海公園だよね。大丈夫だよ。覚えてる。うん」

 

 怪しいなのはの言動にクロノはいぶかしげな目線を送る。

 

「にゃははは」

 

 なのははクロノのそんな視線がいたたまれないのか、ごまかすように笑いながら自分の頬を掻く。

 

「まぁ良い、忘れずに来てくれよ」

「うん。大丈夫だよ」

「それじゃぁ、また明日」

「うん。また」

 

 最後にそれだけ話すと、クロノは再び転移魔法でどこかへと去って行ってしまう。

 

 そんなクロノをなのはは見送ると、少しおぼつかない足取りで、自分の家へ向かった。

 




クロノさあああぁぁぁっあぁぁっぁぁああぁんっ!!?


なのはさんに弱体化パッチ当てたらなんかクロノとラブコメを始めてた、頭がどうにかなりそうd(ry


と言うわけで4話上でした。
最近体力が落ちたのか筆が乗らず、切も良いので途中で切る事にしました。
次回はアースラに行って事情説明などの、会話主体の回になるでしょう。多分


なのはがクロノにフラグ? (ヾノ・∀・`)ナイナイ
無い、よね?




次回の更新が何時頃になるかはわかりませんが、どうかよろしくお願いします。

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