「あーあ。いっちゃった」
破壊された世界の跡に広がる闇の中で、蒼い少女はぽつりとつぶやいた。
そのワインレッドの瞳からは涙が流れつつも、しっかりと目の前の映像を見つめている。
映像の中では少女の最愛の人が、この世に降り立ってから片時も離れた事の無かった少女が親友と共に世界を救おうと奮闘している。
その勇ましき姿を、凛々しき姿を、輝かしき姿を、蒼い少女、レヴィは涙を流しながら見つめていた。
フェイトが原作通りに闇の書に吸収された事で、レヴィは最後にフェイトと触れ合う機会を得た。レヴィが夢見たように、フェイトと共に過ごす日常。その中でフェイトは優しい微温湯のような世界に甘んじるのではなく、厳しく辛い世界へ戻る事を決意した。
だからレヴィは最後となる贈り物をした。
体が分解され闇の書に吸収されていたからこそできた荒業で、自分のリンカーコアをフェイトのリンカーコアと
だからこそ画面の中のフェイトは深い蒼に包まれた黄金の雷を振るい、闇の書の意志と戦っている。
今はまだ少々魔力量が増えた程度であろうが、10年もたてば完全にフェイトのリンカーコアと融合し本来の魔力量を大きく上回るようになっていると予想される。
フェイトと別れる事はとても悲しく。できるならばもっと一緒に居たかった。ずっと一緒に居たかった。フェイトと一緒に大人になって、フェイトと一緒に結婚して、フェイトと一緒に子供を作って、フェイトと一緒に死にたかった。
それでもレヴィはフェイトと分かれる事を決めた。フェイトは強くなった。ちゃんと自分の足で立って、ちゃんと自分の意志で道を決められる。とても強い人間に成長した。
だからレヴィは自分がフェイトの足かせになると判断した。フェイトと一緒に居られないと、フェイトの成長を邪魔してしまうと。だから自分を構成する唯一の器官であったリンカーコアをフェイトに託した。
一緒に居られなくても、託した魔力がフェイトを守ってくれると信じて。
そしてレヴィ本人を構成する唯一の器官であったリンカーコアすら失ったレヴィは、ただただ消えるのを待つだけとなった。今現在はマテリアル―Lから借り受けた躯体の中に意識が入っているため消えないで済んでいるが、この身体もいずれは返さなくてはならない。そうすれば、本当に消えるだけとなる。
しかしレヴィは今すぐ体を返して消えるわけにはいかなかった。まだ、レヴィにはやらなければならない事が残っているのだから。
闇の書の管制人格、リインフォースとナハトヴァールを完全に切り離し、リインフォースを正常な状態へ、リインフォースが居てもナハトヴァールが復活しない状態へと変える。その方法は、まさに神頼みだが、これほど頼りになる神頼みもまた他にない。
レヴィはその瞬間を見逃さぬように、画面を見つめていた。
そして画面の中に災厄の暴風が吹き荒れる。わずか10にもならぬ年の少女二人が使うコンビネーション技により、闇の書の意志は大ダメージを受けその機能を一瞬だけ失う。
その瞬間に、闇の書の主、八神はやては管理者権限を利用し自分と管制人格を切り離した。
そこまで確認して、映像は消える。映像を投影していた管制人格が居なくなったことにより消えてしまったのだ。
(神様、神様。ボクの最後のお願いを、どうかよろしくお願いします)
『……任せておくが良い』
たったそれだけ、それだけのやり取りだが、プレシアをきちんと治療してくれた神なのだから大丈夫だろうと、レヴィは信じる事にした。
「さぁ、それじゃぁこの身体もキミに返さないとね」
レヴィがそう呟くと、レヴィの前に水色の光が現れる。
力強く光るその光は、レヴィに向けて念話をしてくる。
『ホントに良いのかい?』
「良いんだ。ボクがやらなきゃいけない事は、もう全部やったから」
『でも……』
目の前の水色の光、マテリアル―Lはなにかとレヴィを気にしているようで、躯体制御をすぐさま奪おうとしない。
「キミがいるって事は、ボクは結局偽物なんだ。フェイトが小さい頃の夢、妄想。それで片づけられる程度の、そんな存在だから。それに、キミ達にも、やらなくちゃいけない事はあるんでしょう」
『そう、だけど……でも、さぁ』
躯体の権利をすぐさま返したいレヴィと返されることでレヴィが消えてしまう事に躊躇いを持つマテリアル―L。二人の押し問答はその後もしばらく続いた。
そんな煮え切らぬやり取りを続けていると、二人以外の声が唐突に響く。
『あぁー、もうっ!! うっとうしいわ!!』
その大声で譲らぬ問答をしてたレヴィとLはそのやり取りを止め、辺りを見回す。
すると、いつの間にかLの側に、紫色の光が漂っていた。
『さっきから聞いておればグチグチと! 女々しいわ!』
その紫色の光はレヴィの目の前まで来ると、まるで私怒ってますと言わんばかりに強く明滅を繰り返しながら叫ぶ。
『お、王様!?』
「まさか、マテリアル―Dかい?」
その姿(?)に驚くマテリアル―Lとレヴィ。そんな二人を無視して紫色の光、マテリアル―Dはまくしたてる。
『なーにが側に居てはいけないだ! そんなこと誰が決めた! あの小娘がそう言ったとでも言うのか!』
「そ、それは」
『良いか! 小娘の為だとなんだと言っておきながら結局の所、貴様自身があの小娘に依存していただけなのだ! あの小娘が自分から離れて行ってしまったから、貴様はそばで見ている事が辛くなっただけにすぎん!!』
マテリアル―Dの言う言葉に絶句するレヴィ。なぜその事がわかるのか、なぜ知っているのか。レヴィとフェイトの関係は、この目の前に居る存在が知りえる筈がないと言うのに。
レヴィがそう思いながら戸惑っていると、LのでもDの出もない違う声が響く。
『私たちはあなたの事であれば何でも知っていますよ。そう、なんでも』
その声はレヴィの後ろから発せられており、それに気づき振り向くとそこには赤い光が佇んでいた。その赤い光の言葉に続き、少しだけ落ち着いたマテリアル―Dが言葉を続ける。
『そうだ。我らは貴様の事であれば何でも知り得ている。貴様がどのようにしてあの小娘の中に居たのかも、どうしてあの小娘の為に動いていたのかも。その動機も何もかもすべて、な』
『私たちは本来であれば闇の書が蒐集したリンカーコアの中から躯体の元となるオリジナルを選ぶ、
『だけど、キミの存在が全て蒐集された事でキミの記憶を元にすればより早く躯体が完成する事に気付いたんだ。だから』
マテリアル達の言葉でレヴィも気づく。自分の記憶からマテリアル―Lはいち早く躯体が完成したのだと。それはつまり――
「――ボクの記憶を、全部見た、って事」
『うむ、そうだ。とくにマテリアル―Lは貴様の全てをコピーして構築されている。魔法も、記憶も、感情すらも、な』
感情すらも、それはつまりレヴィが何を考えどう行動したのか、その全てをマテリアル―Lは全て知っていると言うのだ。
『あなたの記憶の中のマテリアル―L、
『だけど、ボクはキミの記憶をコピーして、キミをオリジナルとして性格、言動、外見。全てを構築している』
『まるで卵が先か鶏が先かなどと言う問題みたいだが、この件に限って言えば、マテリアル―Lが貴様のオリジナルと言うわけでは無い』
マテリアル達から告げられる真実。レヴィの思い込みとは全く違った事実。
レヴィが居たからこそその全てをコピーしてマテリアル―Lは構築された。
「じゃぁ、マテリアル―L、キミがボクの前に姿を現したのも、ボクの頼みを聞いてくれたのも、全部――」
『うん。――全部、
マテリアル―Lから告げられた言葉に多大なる衝撃を受ける。
自分がレヴィだったからこそ、マテリアル―Lは生まれ、自分が望んだから助力してくれた。
「でも、それでも」
だが、そうだとしてもレヴィにはもう理由が無かった。
「ボクには、もう向うの世界へ戻る理由が、無いから……」
フェイトは強くなった。アリシアは復活し、プレシアは若返り持病も治っている。リニスはプレシアの使い魔のままで、リインフォースは消えない。
レヴィの想定していたフェイトの人生での『悲しい出来事』はもうほとんどないと言って良いだろう。あとはレヴィが何か特別な事をしなくてもフェイトは家族や友達に囲まれて幸せな道を進むだろう。だからもう、レヴィ本人に動機が、フェイトの側に居る理由が、無い。
『あなたの考えている事、わかりますよ』
『伊達にキミの感情や記憶をコピーしていないよ』
『全く、記憶を除いた時から愚か者だと思っていたが、ここまでとはな』
うつむくレヴィにマテリアル達が言う。
『理由が無いと言うのなら理由をやろう!』
『動機が無いと言うならば動機を授けましょう』
『
そう言うとレヴィの目の前に映像を映した画面が現れる。
それはクロノを筆頭になのはやフェイト、復活した守護騎士達までもが居り、全員で切り離されたナハトヴァールをどうするのかの相談をしている所であった。
結局物理攻撃型と魔法攻撃型の2人ペアになり、障壁を破壊し、その後全力攻撃を叩き込み、コアを露出させ、衛星軌道上のアースラの主砲、アルカンシェルでそのコアを吹き飛ばすと言うものだった。
そこまではレヴィの知る通り原作通り。しかし、作戦が開始される直前、フェイトがはやてに、はやてとユニゾンしているリインフォースに話しかける。
『えっと、はやてにリインフォースさん、あの聞きたい事があるんだけど』
『なんや? どうしたん? フェイトちゃん』
『なにか、懸念事項でもあるのかい?』
『えっと、闇の書、じゃなくて夜天の書に、レヴィが居たりは……』
フェイトのその言葉にはやては一体なんの事かわからず首をかしげるが、はやての中から響くリインフォースの声は悲痛さを帯びていた。
『すまない、夜天の書にはあの子は、レヴィは居ない。すでに吸収され尽くして消えたか、もし消えてないとしても切り離されたナハトヴァールと共に居るだろう』
『そっか、ありがとう』
『……すまない』
リインフォースの言葉を聞きフェイトはその姿を現そうとしているナハトヴァールを睨む。そのルビー色の鮮やかな紅い瞳からは、大粒の涙がこぼれていた。
「フェイト……」
『フェイトちゃん』
レヴィの呟きと映像の中のなのはがフェイトを心配する声が重なる。
『大丈夫。別れは、済ませてきたから。さぁ、行こう』
気丈にそう言いながらてで涙をぬぐうフェイト。その姿を呆然と見つめていたレヴィにマテリアル―Dが声を掛ける。
『小娘のあの姿を見ても、貴様はまだ自分が小娘の側に居てはならぬと、そう言い張るのか?』
「ボクは、僕、は……」
こぶしを握り締めるレヴィ。その手は強く強く握りしめられ、震えてすらいた。
「僕は、フェイトと、フェイトと一緒に居たいよ! だって、その為に、それを夢見て……僕は…………」
『ならば良いではありませんか』
力が抜け弱く呟くレヴィの前にマテリアル―Sが移動しながら言う。
『あなたがそう思ったのならばそう行動すればいいのです。誰に憚る必要がありましょうか。自分がしたいと思った事をすればいいのです』
マテリアル―Sの言葉にレヴィの心は揺さぶられる。自分の気持ちを、感情を肯定してくれるその言葉に、しかし――
「でも、僕にはもう……、外に出る方法も、外に出た後の身体も、なにも、無いから……」
もう、レヴィにリンカーコアは無い。レヴィに外の世界に出て活動できる憑代は無い。レヴィには、何もない。
『だから、その為にボクがいるんだよ』
打つ手なしと諦めるレヴィにマテリアル―Lは言う。それに続き、マテリアル―DとSも喋る。
『何のために、我らの躯体構築を後回しにしてマテリアル―Lを完成させたと思っているのだ!』
『あなたの事は全部わかっています。そう、言ったはずですよ』
マテリアル達に体は無いが、それでも目の前の三つの光はそれぞれが笑っているような気がした。
「いいの? 僕なんかの為に」
『キミの為であり、ボクの為でもある』
「僕は、君になにも返せない」
『返す必要は無いさ。だってボク達は一つなんだから。キミをコピーしたボクは、キミと同化することでコピーした記憶も、感情も全てをキミに返す。そのついでにその身体と、リンカーコアも、ね』
そう言うマテリアル―Lにどう返せばいいかわからず挙動不審になるレヴィ。しかし、時間は無い。
『さぁ、早く済ませてしまいましょう。作戦が開始しました。このままではナハトヴァールと心中することになってしまいます』
マテリアル―Sの言う通り、映像ではすでにナハトヴァールが完全に活動しており、なのは達が障壁を破壊しようと攻撃を打ち込み始めているところだった。
『さぁ、ボクを受け入れて』
マテリアル―Lはそう言うとレヴィの胸の中へと入り込む。
「まっ!」
レヴィは待ったをかける事も叶わず、マテリアル―Lとの同化が始まる。
脳内に情報が駆け巡る。
マテリアルとしての自分の使命。レヴィとしての思い出。
マテリアルの躯体情報。レヴィの魔法。
マテリアルの感情。レヴィの感情。
そうして同化は進み、リンカーコアが躯体に完全に定着する。
マテリアル―Lは、レヴィとなった。
『気分はどうですか、マテリアル―L』
「なんともない。ボクは、僕がレヴィだと言う意識もあるし、マテリアル―Lと呼ばれても、何の違和感もない」
『当然です、あなた達は体が別なだけの同一人物。それが一つにまとまっただけなのですから』
『貴様はこれで我が臣下となった。レヴィよ、今から貴様が
フハハハと笑うマテリアル―Dに何とも微笑ましさや、優しさ。そして尊敬すら感じるレヴィは、その複雑な感情を苦笑する事であらわした。
「マテリアル―D」
『王と、我の事はそう呼べ』
「うん。王様、ありがとう」
そう言って、レヴィは朗らかに笑う。
『さぁ、完全復活したマテリアル―Lの、『力』のマテリアルの初仕事です』
『その力と共に外界の者共に示せ! 我らは今日より、活動を開始する!』
マテリアル―Sとマテリアル―Dの声に後押しされ、レヴィは自分の武器をその手に握る。
「バルニフィカスッ!!」
その名を叫ぶと共にセットアップは完了し、フェイトとほとんど同じ色違いのバリアジャケットを、いや戦闘衣服である
大剣形態であるバルニフィカス・ブレイバーを頭上に掲げる。
フェイトがそうして世界を切り裂いたのと同じように、闇を背に蒼雷をまき散らす。
大きな声で宣言する。世界に向かって。自分はここに居ていいのだと。まだ、この世界に居ていいのだと。
他の誰でもない、自分がそうしたいのだと。
「砕け散れ!」
叫ぶ。世界に向かって、過去の自分に向かって。
砕け散れ、と。
「雷刃滅殺! 極光!! 斬!!!!」
闇を切り裂く蒼雷が、振り下ろされた。
**
**
**
「石化の槍!」
『ミストルティン!!』
ナハトヴァールが展開する多重障壁を全て破壊し、はやてとクロノの魔法で動きを止める。そうしてできた時間でなのは、フェイト、はやてが集束魔法を用いてナハトヴァールを吹き飛ばす。
そのための石化魔法だった。
しかし――
「なんやて!?」
「これは――――障壁が、復活している!?」
はやてとクロノが、自分の魔法が障壁で防がれた事に驚きを隠せずに慌てる。
リインフォースやアースラからの情報でナハトヴァールの障壁は物魔混合の6層であったはず。バリアブレイクを得意とするアルフにザフィーラが1枚ずつ。なのはとヴィータで2枚。そしてフェイトとシグナムで2枚。計6枚、きっちり破壊した筈だった。
『まさか、隠していたのか? 最後の障壁を!』
はやての中から響くリインフォースの言葉と共に、攻勢に出るナハトヴァール。
「どうするのクロノくん! はやく、早くしないと!」
その攻撃があまりにも激しく、あまりにも見境なく行われるため、全員回避や防御で手一杯となってしまった。
「誰か、誰かあの障壁を破れないのか!」
クロノの叫びにリインフォースの落ち着いた言葉が帰ってくる。
『無理だ。執務官殿と主の魔法をはじいたと言う事はあれは対魔力障壁。物理攻撃を得意とする鉄槌の騎士も、フェイトちゃんもこの攻撃の中であれを破壊するほどの攻撃を繰り出せるとは、とても……』
リインフォースの諦観した言葉にこの場に居る全員が、いやアースラで聞いていた局員までもが絶望する。
その絶望の中でフェイトだけは諦めなかった。どうにか隙を見て、魔力をチャージしようとするも、攻撃が激しく思うように行かない。
――どうにか、どうにかしないと!
焦りだけが募る。
自分は託されたのだから。レヴィに、大切な隣人に、もう1人の自分に。
――レヴィ、レヴィ、レヴィ、レヴィ、レヴィ、レヴィッ!
別れは終えていたはずだった。それでも、思うのはレヴィとの思い出ばかり。
フェイト・テスタロッサの思い出の中には、常にレヴィが居た。
それも当然である。フェイトがフェイトとなったその瞬間からレヴィはフェイトと共に居たのだから。
涙があふれる。
悲しさが爆発する。
「レヴィーー!!」
無意識に叫んでいた。
――まったくもう、仕方ないなぁ――
どこからともなく、レヴィのそんな声が聞こえた気がした。
その瞬間、世界が蒼に染まる。
水色の極太の魔力がナハトヴァールを貫き天へと昇っていた。
その魔力を中心に、蒼雷が辺りを迸る。
蒼雷は世界を飲み込み、ナハトヴァールを、ナハトヴァールの触手をうち滅ぼして行った。
蒼雷が迸る轟音の中でフェイトには、フェイトにだけは声が聞こえていた。
「雷神滅殺! 極光!! 斬!!!!」
微かに聞こえたその声と共に、天へと昇っていた魔力はゆっくりと、傾き、ナハトヴァールを最後の障壁ごと両断する。
誰もがその光景に唖然とし、動きを止める中クロノの声が響く。
「はやて! 魔法を!」
そう言いながら、自分も魔法の詠唱に入るクロノ。
両断された影響かそれとも蒼雷に焼き滅ぼされた所為か、ナハトヴァールは少々回復にとまでっているらしかった。
その時間でなんとか、はやてとクロノが魔法を完成させる。
「『ミストルティン!』」
「エターナル・コフィン!」
石化魔法と対象を凍りつかせる絶対零度の魔法が命中する。
それを見届けるとクロノは上空を見上げる。
なのはとはやてはすでに所定の位置についていたが、フェイトが居ない。
「レヴィ! レヴィ!!」
フェイトは両断されたナハトヴァールから一条の蒼雷が飛び出るのを目撃していた。そしてその後を追い、上空で出会ったのだ。
自分と同じようなバリアジャケットを纏った、闇の書の夢でであったそのままのレヴィと。
「フェイト、まずは、全部終わらせよう」
そう言うレヴィは強気な笑みを浮かべフェイトを見つめる。
「うん!!」
そうして、レヴィとフェイトも魔法の準備に入る。
すでに集束を完成させていたなのは達と目くばせをして、4人で一斉に、今放てる最強の魔法を使う。
「全力! 全開!!」
なのはは目の前に巨大な圧縮された魔力の塊を見据え。
「響け! 終焉の笛!!」
はやては、自身の頭上に巨大な魔法陣を展開する。
「雷光、一閃!!」
フェイトは、雷を呼びバルディッシュ・ザンバーに魔力と雷を纏わせる。
「天覇烈震極光剣!!」
レヴィは、魔力を一斉に開放し、自身を強化する。それに反応し、バルニフィカス・ブレイバーの刀身は大きくなり、輝きだす。
「スターライトッ」
「ラグナロクゥ」
「プラズマザンバー」
『ブレイッカァァァアアァァァアッァァァァアアッァアァァアァァッ!!!!』
なのは、はやて、フェイトの3人のブレイカーに乗じて、レヴィも魔法を放つ。
「神雷三段斬りっ!!」
目にもとまらぬ速さで3度振るわれるバルニフィカス。その刃から大きな剣圧が放たれる。
3つの砲撃魔法と3本の剣閃はナハトヴァールの身体を押しつぶし、吹き飛ばし、切り刻む。
「今だ!!」
クロノの叫びと共に、シャマルがナハトヴァールのコアを確保し、ユーノとアルフで衛星軌道上へと転送する。
そしてしばらくの時間の後、空がキラリと光る。
その光の後に告げられるエイミィの言葉に、戦場は湧く。
ついに、どうしようも無いと思われていた闇の書を、闇の書の呪いを打ち破ってしまった。
この場に、新たなエース達が誕生した瞬間だった。
感動で抱き合ったりお互いをたたえ合う中で、フェイトとレヴィは見つめ合っていた。
「あはは、戻ってきちゃった」
どこか恥ずかしそうに頬を掻くレヴィを見て、フェイトは本当に帰ってきたのだと確信し、それと共に目の前が歪む。
「レヴィっ」
大きな涙を流しながらレヴィの胸に飛び込むフェイト。レヴィの胸のなかでフェイトは泣きながら言う。
「おかえりっ、おかえりなさいっ」
そんなフェイトを受け止め、背中を撫でながらレヴィはポツリと呟く。
「ただいま」
――――――Magical Girl Lyrical Nanoha A’s end with this.
これにてL×F= A's編、終了となります。
就活の闇に呑まれつつも、なんとか書き上げました。
私は、原作と変わらない部分は書かない派なのでA's編はこのように短い話となりました。もともとそう言う予定ではあったので予定通りなのですが。
A's編を書いてて思ったのはなんかフェイトちゃんが終始ゆりっゆりしてました。ガールズラブタグあるので大丈夫だと思います。
次が何時になるかは全くの不明ですが、この小説の続きはまだあります。
その時目に付いたらどうかよろしくお願いします。