魔法少女リリカルなのは L×F=   作:花水姫

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 皆さんお久しぶりです。約半年になりそうなほどお待たせしてしまい申し訳ございません。先日更新を待たれる感想を戴き投稿する事にしました。

 本来であればGOD編の書き溜めが一段落したら投稿しようと思っていたのですが、更新を待たれる方がいると言う事なのでひとまず書き終わっているこの話を投稿する事にしました。
 あとなにやら誤字報告とか言う新機能が実装されたらしいので推敲はあまり真面目にしてません。やる気のあるお方バシバシ報告して私に新機能を実感させてください。

それではどうぞ




レヴィと闇の欠片

 

 第97管理外世界 惑星『地球』日本海鳴市、そこにある高層マンションの一室から今、一人の少女が消えた。

 

 忽然と、まるで魔法の様に、しかし魔法ではない方法で少女が一人消えた。その少女と共に寝ていた筈の二人の少女はそのことに気付くはずもなく、一人分を失った布団の空間に差し込む寒風に身を縮ませる。

 

 

 

 そして海鳴市上空、そのマンションから離れた空に、人影が突然姿を現す。

 

 

黒と水色を基調とした戦闘衣服である襲撃服(スラッシュスーツ)に身を包むのは青色の少女。

 

『だいぶ躯体構築にも慣れてきたようだな』

『やはりレヴィのその躯体構築速度はさすがの一言に付きますね』

 

 そしてその少女に向かって、少女にだけ聞こえる声で話しかける二人の少女の声。その姿の無い二人に向かってレヴィは虚空に呟く様に返答する。

 

「まー、そりゃねぇ。ここんとこずっと二人の躯体構築手伝いながら、毎日自分の躯体放棄と躯体構築してればそりゃ慣れるよね」

『今日のスコアは放棄に64秒、構築に167秒です。躯体放棄はそろそろ60秒の大台に乗りそうですね』

『うーむ、貴様は色々と馬鹿げているが、ことこの面においても馬鹿げておるな。分単位でかかるとはいえほぼレアスキルの短距離転移(ショートジャンプ)に匹敵するではないか』

「って言ってもさー結局構築に2分~3分かかるし、放棄してから構築までに、なんていうの? 意識の移動時間? みたなものも必要だしさー短距離転移程使いやすくは無いよねー」

『ですが、レヴィの戦闘力でどこに現れるかわからないと言うのは十分な脅威になりえます。ファーストアタックは勿論、レヴィが1分間身を落ち着かせられる状態になってしまえばその後は相手はレヴィを確実に見失い――――』

「あー、はいはい。お、見つけた」

 

 シュテルによるレヴィの戦略的価値の高説を聞き流しながら、使用していた感知魔法に獲物が引っかかった事を感知するとレヴィは消える。

 

 1分間かけて消え、時間をしばらく置き、また2分間かけて現れる。

 

 そして現れたレヴィは、大上段に振り上げたバルニフィカスを獲物であるソレに向かって振り下ろし、真っ二つに斬り裂いた。

 二つになったソレは断末魔を上げる事もなく闇に溶けて消える。

 

 

 そしてそれを目撃してしまったのか、目の前の白い魔法少女はその顔に恐怖と驚愕の表情を張りつかせてレヴィを見る。

 

「な、なんで……」

 

 獲物が一つ消えるのを確認しながら、レヴィも前に居るソレを見つめる。その瞳はとてもヒトを見る様な物では無い、とても冷たい瞳だった。

 

「なんでそんなことをするの? 私が悪い子だから、だからフェイトちゃんを??」

 

 ぼそぼそと呟く様に目の前の白い魔法少女はレヴィに向かって喋りかける。しかしその言葉はレヴィには届かず、レヴィの心を動かす事は無い。

 

「黙れよ」

 

 ただ一言呟くとレヴィは握っている愛機をザンバーフォームに変形させ振りぬく。

 

「え?」

 

 自分に起こった事が信じられないのだろう、白い魔法少女は落ちる視界、自分の目に映る自分の下半身を見ながら闇に溶けて消えた。

 

 その光景に対し、なんでもない出来事の様に無関心な様子のレヴィにまた声が掛けられる。

 

『ずいぶんと処理にも慣れてきたな』

 

 ディアーチェのその言葉通り、レヴィにとって今の戦闘――処理はただの作業であった。

 

「そりゃーさー。ここ1週間ずっとだもんねー。さすがに飽きるしなれるよね」

 

 レヴィの声色からも、先ほどの出来事への関心はうかがえず、ただただ面倒であると言う事だけが伺えた。

 

『そして今の様にファーストアタックでレヴィの確殺圏内に敵を含む事ができ、戦力を減らせるのは――――』

 

 そしてシュテルは未だ、レヴィの技能についての戦略的価値を説いていた。

 

『まぁ、シュテルは置いておき。今日も励め、あと数日で我らの躯体も完成する。それまでの辛抱だ』

「って言ってもさー、さすがにそろそろ一人じゃ辛くなってきたよー。昨日なんて別の世界には手が回らなくなって来てたしさー、さすがにそろそろ管理局も気づくんじゃない?」

『しかし、それが我らが参謀の出した策よ。我が承認し貴様が異を唱えなかったのだからそれに従うほかなかろう。それにどちらか片方だけ躯体構築を終わらせても、それはそれで面倒が多い』

 

 ディアーチェの言っている事はレヴィにもわかってはいた。どちらか片方だけの躯体が完成しても結局最後の一人の躯体構築が完了するまではどこかで身を隠す必要があり、それらの手配の面倒を考えた結果こうしてレヴィが一人で頑張るという結論に達したのだから。

 

 

 そんな雑談を繰り広げながらもレヴィは次々と獲物を見つけては処理していく。こうして片手間に処理を終わらせられる程に、レヴィにとってソレは無価値であり無力であった。

 

 

 そして処理を初め数時間した頃、レヴィの目の前には恐ろしい光景が広がっていた。

 

 

「うわー」

『こいつはまた』

『珍しい事もありますね』

 

 

 三者三様にレヴィの目の前の光景に対して感想を述べる。

 

 レヴィの目の前にはそれほどの光景が広がっていた。

 

 

『軽く見ても100は居るな』

『反応の数から察するに300近いでしょうか。これほどの闇の欠片が一堂に会するとは』

 

 そう、レヴィの目の前に移っている光景は300に迫る闇の欠片達が集まっている光景だった。

 

『欠片達もどうしていいのかわからず睨み合っているだけのようだな』

 

 ディアーチェの言葉通り、好戦的な欠片達でも動くに動けずにらみ合いが続いている。それもそのはずで集まった欠片の達はどれもがオリジナルに劣るとはいえ、守護騎士達が蒐集に値すると定めた魔導師達だけであり、その実力は高い。しかも同一人物が元ネタの欠片も多いらしく、自分と同じ存在に対して対処しかねているようだった。

 

 

「もう時間も遅いしさー、さすがにこの数の処理を秘密裏にってもう無理じゃない?」

 

 そんな光景を見てレヴィは自分の参謀と王に具申する。

 

『確かに、もう他の世界への手もまわりきっていませんしここらが引き上げ時、と言うことでしょうね』

『レヴィの手に余る状況になってしまっているな、後はスピード勝負になるか。よし、レヴィ、マテリアル―S、我が剣よ。我らはこれよりフェーズ2に入る。許すゆえ、満足いくまで暴れるといい』

「OK, BOSS」

 

 ディアーチェの許しを得てレヴィは獰猛な笑みを浮かべると辺り一帯を結界で切り離す。封時封鎖結界。戦闘の影響を結界外に反映させず、そして結界内のモノを逃がさないレヴィにとっての狩猟空間。

 

 結界によって新たな存在が現れた事に気付いたのか闇の欠片達が一斉にレヴィの方へ視線を向ける。

 

 しかし、既に時遅くレヴィは戦闘態勢に入っていた。

 

ディアーチェから派手に暴れて良いと許可を貰った事でここ1週間のフラストレーションを晴らすかのように、新技を披露する。

 

「奥義――『神速』―――――三段重ね!!」

 

 その言葉をキーワードに、レヴィの知覚が加速する。

 

 

 レヴィが恭也や士郎に相対し覚えた神速の摂理。それを応用した技。

 

 

 本来神速は人間にかかっている無意識のリミッターを解除し身体能力を極限まで引き出すと共に、その状態でも正常に判断できるほどまで知覚能力、思考速度を加速させる技術。人間が人間のまま人間の限界をひねり出す為の技である。

 しかし、それはレヴィにとっては何の意味の無い技術であった。生来より人間より恵まれた身体能力を持っているマテリアルと言う躯体は、機械が自分の性能を十全に発揮できるように最初からリミッターなどと言った物は存在していなかったからである。十全の力を発揮しないのはそれが必要ないからであり、必要とあらばいつでも意識的に十全のスペックを発揮できる。それがマテリアルという魔導生命に許された特権であった。

 故にマテリアルであるレヴィには神速という技術は摂理は理解できても使用する事などできない筈であった。

 だがそこで終わるレヴィでは無い。利用できないのならば利用できるようにすれば良い。パンが無いならケーキを食べればいいのだ。そんな思考に則りレヴィの言う『神速』は完成した

 

 本来の神速が“人間の限界を引き出す”『技術』ならば、『神速』は“限界を超える”『魔法』。簡単に言えば、強化魔法の凄い版である。

 

 スペックを超える程の身体強化、身体硬化、知覚の高速化、並列思考の増加。それらを一度に発動するレヴィのバカみたいな魔力量とアホみたいな出力が可能にした究極の力技。

 そして『神速』は本家神速が三段重ねまでの神速重ねという奥義ができるように、3回まで重ね掛けができた。

 

 故に――奥義『神速』三段重ね――。

 

 

 力技の極致を使用した力のマテリアル。速さとパワーを兼ね備えたレヴィは、これをもって結晶時間への入門を遂げる。

 

 

 発動するだけで時が遅く感じる『神速』の思考加速を3回重ねたその状態はまさに、時間の停止。正確に言うならば止まったように感じる程限りなく遅くなった時間にレヴィは存在していた。

 

 

「『残滅轟雷電刃衝(ザンメツゴウライデンジンショウ)』」

 

 その世界に入った瞬間に、レヴィは魔法を発動していた。残滅轟雷電刃衝。いわゆるフェイトのフォトンランサー・ファランクスシフトのレヴィ版であるが、本来は1点に集中するように射出されるように展開するスフィアだが、今回は欠片達の大部分が射線に入るよう、扇状に広がるように展開していた。故にどちらかと言えばリインフォースの使ったジェノサイドシフトの方が近いだろう。

 

 そうして発動された魔法はレヴィにとっては遅く、欠片達にとっては不意をつかれた形で電刃衝をまき散らす。

 雷速に近い速度の筈の電刃衝ですらゆっくりと移動しているようにしか見えないほど、レヴィの知覚している時間はかけ離れた者だった。

 

 ゆっくりじわじわと動く電刃衝を後目に、レヴィは電刃衝が当たらなそうな場所に居る欠片に近づきバルニフィカスを振るう。

 

 一振りで十近い欠片が両断される。二振りでさらに十、さらに十、十、十。

 

 

 レヴィが両腕に握りしめた特大剣とかした愛機を振るたびに欠片達が斬り裂かれてていく。

 

 そうしてレヴィだけで半数程の欠片を処理した頃、ようやく電刃衝の第1派が戦闘の欠片に到達する。

 

 

 とっさに張ったのであろう防御魔法に当たり、削り、貫く電刃衝。それらに貫かれ消えていく欠片たちをレヴィは遅くなった時間のせいで色彩に欠け、音もない無音の世界でただただ見つめていた。

 

 そしてレヴィにとって長い長い時間、しかし通常の時間に生きる者にとっては短い時間が過ぎ、追加の電刃衝は放たれなくなっていた。そこまでの時間を体感し、やっと『残滅轟雷電刃衝(ザンメツゴウライデンジンショウ)』の射出時間である4秒が過ぎたのだ。それを理解したレヴィは、未だ消えぬ欠片達の無残な断片の中で、かろうじて耐えきった運の良い一握りの獲物を探す。そして見つけるとすぐさま近寄り、自分の手で処理していく。遅くなった時間の中で射撃攻撃をするくらいならば自分で移動した方が速いと気づいたからである。

 

 そしてレヴィの感知するところに稼働可能な闇の欠片が居なくなったのを確かめるとレヴィは『神速』を解除した。

 

 

 その瞬間、世界に色と音が戻り、まるで圧縮したかのように電刃衝がスパークする音と欠片達の断末魔が耳に響く。

 

 たった5秒足らずで300程いた欠片達は全員消えていた。闇に溶け、消えていた。

 

 

『レヴィ、お主……』

 

 ディアーチェの驚愕したような声が届くが、レヴィは気にしなかった。いや、気にできなかったと言って良いかもしれない。

 

 

 今レヴィは数多の感情に支配されていた。圧倒的な力を揮った高揚感。あまりにも圧倒的な自己の力への恐怖。ある時自分に忠告してきたリインフォースの声がリフレインする。

レヴィは高揚感に震える自分と恐怖に震える自分。そしてリインフォースの忠告を冷静に思い出す自分がごちゃ混ぜになった感覚に襲われていた。

 

 

――カット、カット、カット。

 

 

 『神速』の影響で増えすぎた並列思考を意識的にカットして処理を軽くしていく。そうしていくうちにレヴィは、自分がとても疲れている事に気付いた。

 

 まるで全力疾走を数時間つづけたかのような極度の疲労に、レヴィの目の間が一瞬真っ白になる。

 

『おい! 大丈夫か!? しっかりせい! レヴィ!!』

 

 ディアーチェのその言葉でかろうじて意識をつなぎとめたレヴィは、端から聞いても直ぐにわかるほど疲労困憊といった声をひねり出す。

 

「あ゛ー。ちょっと疲れた、かも」

『何をしたのか我々には理解が及びつきませんでしたが、その説明は後日求めるとしましょう。レヴィもこの様子ですし、今日は終わりにした方が良いのでわ』

『あぁ、時間も時間だし戻った方が良いだろう。レヴィ、大丈夫か』

「うんー。がんばるー」

 

 シュテルの提案とディアーチェの指示を話半分で聞きながらレヴィは躯体を放棄する。

 

 

 そしてその数十分後、テスタロッサ家の一室に人が一人増える。

 

 

「うぼぁー」

 

 

 まるでゾンビのような声を出しながらレヴィはフェイトとアリシアが寝ているベッドに潜りこむ。

 するとまるでレヴィが布団に入った事を感知したのか、抱き枕にしがみつくようにフェイトがレヴィを抱きしめる。

 

その温かさを感じながら、レヴィはそのまま意識を落した。

 






 と言うわけで「主人公最強」タグ回収のためのお話しみたいなもんです。御神流を完成で覚えたレヴィちゃんはめっちゃつよいと思います(小並感)

 この話を持って空白期編を終わり、次話からGOD編に入る。と言いたいのですが、4月から私はモラトリアムを終了し新社会人となってしまうので相変わらず更新は不定期です。ご了承ください。

 それでは、またお目見えする事がございましたらどうかよろしくお願いいたします。

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