魔法少女リリカルなのは L×F=   作:花水姫

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ViVid Strike!が放送されたので記念投稿


彼女たちの戦い――GOD編
GOD編第1話 「Start of [GOD]」


 

 日も傾き空がオレンジ色に染まりつつある時間、レヴィは海鳴臨海公園の展望台から色が変わりつつある空と海を眺めていた。

 

 爽やかなライトブルーのコートに身を包み両手をポケットの中に入れたまま海を眺めるレヴィ。彼女の心の中は期待と寂しさで満たされていた。遂に始まってしまう事件、その先に出会う敵への期待。そして、その後に訪れる別れへの寂しさ。それらをひとまとめにして、レヴィは白い息を吐く。

 

『そろそろだな』

『遂に我等が悲願の叶う時』

 

 ここ一月ほど常に共に居る少女二人の声が響く。レヴィにだけ聞こえる声。念話でもない、あらゆる概念を超越したテレパシー。

 仲間にして同一存在。友にして同士。一つのモノから生まれた家族――マテリアル――。

 

 その二人の声に返答するように、レヴィは小さく呟く。

 

「はじめよう」

 

 その一言を寒空の下に残し、レヴィは消える。

 

 

 誰も居ないその場所で、ガチリと歯車が噛みあい動き出す音が聞こえた。

 

 

 ――――『運命の歯車(The Gears Of Destiny)』は動き出す。

 

 

 

****

 

****

 

 

 フェイトは焦っていた。

 

 

 自分と瓜二つの少女と戦いながら、フェイトは焦っていた。

 

 実力では楽勝なはずの目の前の少女に勝ちあぐねる程に、フェイトは焦っていた。

 

 

「このっ」

 

 相棒であるバルディッシュをクレッセントフォームに変形させ切り込む。それに合わせるかのように、自分に瓜二つな少女も手に持ったデバイスを鎌型に変形させバルディッシュを受け止める。

 

 

「母さんのために……」

 

 目の前の少女が呟く。

 

「私は、あなたに構ってる暇は無いんだ!」

 

 フェイトが吼える。

 

 フェイトは焦っていた。目の前の陰鬱な雰囲気を纏った少女が自分であることに気付かぬほどに焦っていた。

 

「バルディッシュ!!」

 

 故にフェイトは気づかぬまま剣を振るう。居なくなったレヴィを探す為に、我武者羅に空を駆ける。

 

「レヴィっ!!」

 

 大切な家族を求め、空を駆ける。その姿は焦燥に塗れていた。

 

 

****

 

****

 

 

 一方ある少女たちも海鳴の空を駆けていた。

 

 最後の夜天の王、八神はやて。

 闇の書事件の後、ギル・グレアム、リンディ・ハラオウン、聖王教会を保護観察者、後ろ盾とし管理局で数年の無償奉仕を罰として言い渡された、なのはやフェイトと同じ年の少女。

 

 そしてその少女と共に空を駆けるのは主を見守るリインフォース。

 

 現在の二人は任務にあたる際は基本セットで動いていた。

 

 

 そんな二人は地球に不可思議な転移反応があり、その調査をして貰いたいというクロノの指令を受けこうして空を舞っていた。

 

 

 そして、指示されたポイントに付くと桃色の女性が何かを探すように手元を見ながら飛行していた。

 魔法使いが居ないはずの地球、魔法文化がない故の管理外世界。そんな世界で空に浮く女性。明らかに第一容疑者発見の瞬間であった。

 

「ちょっとそこのお姉さ~ん。お話聞かせてもらいたいんやけど~」

 

 ゆるやかなカールのかかった長い桃色の髪に、同じく桃色を基調としたバリアジャケットらしき服を纏った少女と女の中間程の年頃の女性ははやてが声を掛けると明らかに表情を崩し振り返る。

 しかし、はやての顔を見た瞬間に女性の表情がまた変わる。

 

「あら~? これは早々ビンゴ引いちゃったかしら~? ちょっと色が違う気がしないでもないけど。あなた王様~?」

「王様? 何のことや?? それよりこっちに来て話聞かせて貰いたいんやけど、お姉さんには今無断渡航者の容疑が掛かってるんやけど、任意同行。お願いできひんかな?」

「あ~。まさかそっくりサンって奴だったり? キリエ困っちゃうわ~。ごめんなさいね、人違いだったみたい。それじゃぁ」

 

 桃色の女性、キリエは一方的に言うと会話を切り上げ、高速でその場から離脱する。

 

「あ! ちょ、まちぃな! 追うよ、リインフォース!」

「はい。我が主(マイスター)

 

 それをはやてとリインフォースも追いかける。

 

 1対2の奇妙な追いかけっこが始まった。

 

 

****

 

****

 

 

 レヴィは立っていた。いや、正確には仁王立ちしているかのように空に浮いていた。

 

 目をつぶり、腕を組みまるで己を誇示するかのような仁王立ち、所謂ガイナ立ちと呼ばれる立ち方である。

 

 

『セクター7進行率80%、81%、86%――――』

 

 レヴィの頭の中で無機質な声が聞こえる。念話でもない、レヴィにしか聞こえない声。システムの声が響く。

 

 夜の帳が落ちる空の中で、レヴィはその無機質な声を聞き続けていた。

 

 

「あら、こんな所に。今度は色もあってそうだしこれビンゴって奴じゃない?」

 

 そんなレヴィの耳に少女と女の中間のような女性の声が届く。

 

「あなた、王様の側近? お友達? よね~。王様、どこにいるか知らない?」

 

 その声を聞きレヴィは目を開く。その目の前には桃色の女性がいた。

 

 

「やっぱり、まぁ、そうなるよね」

 

 参謀の予想は外れ自分の予想は当たった。こちらとしては邪魔者が入らないようにかなり計画を早めた筈だが、相手には関係ない。なぜなら彼女はエグザミアが目覚める時間軸にワープするのだから、それが早かろうが遅かろうが関係ないのだ。

 

――シュテるんはちょっと焦ってるのかな?

 

 マテリアルズの参謀としての冷静さを失うほどに、シュテルは焦っているのかもしれない。

 そうレヴィが考えていると、レヴィのつぶやきが聞こえたのか目の前の桃色の女性―キリエ―が話かけてくる。

 

「あら? もしかして私の事知ってたりしちゃったり?」

 

 レヴィのそんな呟きが聞こえたのかキリエは首をかしげながらレヴィに問いかける。

 

「うーん。まぁ、ちょっとね」

「あらあら、じゃぁお姉さんの目的も?」

 

 そうして二人が世間話(?)を始めようとした所で、横やりが入る。

 

「追いついた! 堪忍しいや!」

「あら~、随分はやいわね~」

 

 その横やりは当然キリエを追いかけていたはやてとリインフォース。二人の予想以上のスピードにキリエは純粋に驚いていた。

 

「逃がさへんで! お姉さんには違法次元渡航の疑いがかけられて……って、レヴィちゃん?」

 

 キリエに向かい嘱託魔導士らしく口上を述べるはやては、その途中で側にいるレヴィに気付いて口上を止める。

 

「なんでレヴィちゃんがここに? もう、いい年なんやし家出しちゃあかんで? フェイトちゃんから通信あったけど、多分今も探してるはずやで?」

「うん。そっかでもごめんねはやて。フェイトにはもう会えないんだ」

「は? いったいなにを」

 

 はやてがレヴィに聞き返そうとしたその声を遮るように、大声があたり一帯に響き渡る。

 

「ふっははははははははははははははははぁっ!!!!」

 

 かなりの大音量で響き渡るその笑い声にはやては目を剥き、リインフォースは無言のまま警戒を強める。

 そんな二人から視線を外しある一点を見つめるレヴィ。その空間には歪みが発生していた。

 

「な、なんやこのけったいな笑い声は!」

「お気を付けください主、あの歪みに多大な魔力が集中しています」

 

 はやてが驚き、そんなはやてを守るようにリインフォースが前にでる。

 

 そうして4人が見守る中、歪みがだんだんと人の形をなす。

 体躯は少女。約9歳ほどの、はやてと似通った背格好の人型。

 

 その歪みから形作られた人型に色がつく。黒と紫を基調とした豪奢な服に、紫色の十字が先端についたその体躯と同じほどの長さをもつ杖を持ち、もう片方の手には紫色の本を携える。

 

 

 その少女は、堂々と胸を張り、両目を見開く。

 

「我! 顕 現 せ り !」

 

 その姿はまるで色違いのはやてであった。はやてと違うのは帽子をしていないこと、目つきが鋭く勝気な性格であろうことがうかがえること、あとは偉そうな口調であろう。

 

 

「ふははははははっ! ここが現世(うつしよ)か! これが躯体(からだ)か! やはり実物は良い! ふははははははははっ!!」

「おはよう。王様」

 

 レヴィは高笑いし続けるその少女に近づくきながら親し気に声をかける。

 

「おう、レヴィか、大儀であった!」

 

 そしてレヴィに王様と呼ばれた少女もレヴィを偉そうな口調のままねぎらう。

 

 そんなとてもキャラの濃い自分のそっくりさんの登場にはやてが硬直しているなか、レヴィ以外にも『王様』に近づく者が一人。

 

 

「あの~、あなたが王様?」

 

 『王様』を目的として動いてるキリエである。

 

 そんなキリエはいつものフワフワお姉さん口調を極力減らし、まじめな雰囲気で話しかける。

 

「ふん、キリエか。あやつの予想は外れたな」

「え? 私、名前教えたかしら?」

 

 名乗ったはずのない名前を知られていることにキリエは驚く。そんなキリエを見て『王様』はフンと鼻を鳴らしながら言い放つ。

 

「我はなんでも知っている。我は闇統べる王(ロード・ディアーチェ)! その名の通り、この世すべての闇を統べる王の中の王! キリエよ、貴様の目的も知っておる。我によく仕えるのならば褒美にかなえてやらんこともない」

 

 『王様』、ディアーチェは厚顔不遜な態度でキリエに一方的に告げる。

 

「あ、ありがたき幸せ?」

 

 いわれたキリエも話についていけず、疑問視をつけながらディアーチェにお礼を告げる。

 

 

「さて、やはりというべきか、想定外というべきか。小鴉に親鴉が我が謁見に混ざっているようだな」

 

 レヴィを侍らせたディアーチェは礼を述べたキリエから視線を外すと、まるで招待していないとでも言うようにはやて達をその鋭い眼でみつめる。

 

「もしかして小鴉ってうちのことか? なんやそれ、いきなり表れて失礼な子やな」

「そうすると親は私のことかい?」

 

 その視線に自分のことだと感づいたのかはやては少々不満げに声を上げ、リインフォースは困惑しつつも少し嬉しそうな様子で「主の親、ふふっそれも悪くないかも」などとつぶやいている。

 

「ふん、羽も生え揃わぬ者など小鴉で十分よ」

 

 ディアーチェはそういうとまるで見せつけるかのように、背中から生えている―もちろん魔法で生えている―羽を大きく広げる。その偉そう、というよりいわゆるドヤ顔ととれる顔にはやては少々イラつきながら、大人の対応をとる。

 

「む、なんや感じ悪い子やな。初対面でいきなり人の悪口言うのは関心せぇへんで?」

「ふん、小鴉がなにやらピーチクパーチクわめいているな」

「あんまお姉さんを怒らせん方がええで? お姉さんこれでも結構強いんやで?」

「何を言う、生まれたばかりの小鴉に王たる我が負けるわけがなかろう」

 

 売り言葉に買い言葉、はやてとディアーチェの口論が激しさを増すのを、リインフォースはどう対応すればわからずうろたえ、キリエはついていけずに傍観者へと落ち着き、レヴィは無関心を貫いていた。

 

 そうして止める者がいないまま口論が激しくなり、片方があわや実力行使に訴えかけそうになった瞬間にその空気をぶった切る声が響く。

 

「キリエ! やっと追いつきましたよ!!」

「げ、アミタ……」

「はい! お姉ちゃん、参上!」

 

 キリエにアミタと呼ばれた赤と青色の女性は、明らかに空気の読めてないまま、キリエに詰め寄る。

 

「さぁキリエ! お姉ちゃんと一緒に帰りますよ!」

「ちょっと、私の打ち込んだウィルスどうしたのよ……」

「気合で治しました! 私、お姉ちゃんですから!!」

「んな、無茶苦茶な」

 

 キリエのつぶやきにその場にいたもの全員の思いが一致する。

 

「ふ、ふん、まぁ呼ばれぬ客が増えたがよい、すべて薙ぎ倒してくれよう」

 

 とりえず空気を戻すためにディア―チェは本を開き杖を構える。その様子に戦闘態勢に入ったことを察知し、リインフォースとはやてもいつでも戦闘行動に入れるように構える。

 

「3対3、ちょうどよいバランスではないか。まぁ、鎖に繋がれた親鴉対我が自慢の特攻隊長では、少々こちらが有利すぎるか?」

 

 ディアーチェはお互いの戦力を一瞬で分析する。

 

 キリエVSアミタ、ディアーチェVSはやて、レヴィVSリインフォース。キリエとアミタはほぼ互角。ディアーチェとはやてではディアーチェが有利。レヴィと今の状態のリインフォースではレヴィが圧倒的に有利。そう、ディアーチェの頭の中では戦力図が展開していた。

 

「その情報は少々間違っていますね」

 

 そんなディアーチェを責めるかのように、新たな声が聞こえる。

 

「また!? この一瞬で登場キャラ増えすぎやろ!」

 

 ついついはやてが電波を受け取って突っ込むが、それをディアーチェは華麗にスルーしある一点を見つめる。

 

 そこには、ディアーチェが現れたときと同じ空間の歪みが発生していた。

 

 しかし違うのは、その歪みはだんだんと燃え始め、その炎が人型をとること。

 

 赤紫の色で包まれたまたもや小さな体躯を形作る歪み。そしてその炎が完全な人型を取ると、そこにははやてにとって見覚えのある容姿の人物がそこに立っていた。

 

「システム、オールグリーン」

 

 目をゆっくりと開きながらその人物は言う。

 

「うちの次はこんどはなのはちゃんか」

 

 そして新たに表れた少女を見てはやてが苦々しくつぶやく。そう、その少女はなのはによく似ている少女だった。これまた着ている服の色は違うが、形状はなのはのバリアジャケットと全く同じ、でありデバイスの形状も同一。違うのは瞳の色が朝やかな青色であることと、髪の長さがなのはに比べるとだいぶ短い。

 

「不思議な感覚ですね。まるであちらに主とフェイトちゃん、それになのはちゃんまでが居るような気分です」

「せやね、全員色違いだけど、だいぶ趣味悪いんとちゃう、王様?」

 

 リインフォースのつぶやきにはやてが反応し、ディアーチェに問いかける。

 それはそうだろう、自分だけではなく自分と仲の良い魔法少女3人組が―色違いとはいえ―相手に固まってしまっているのだから。

 

「ふん、文句を言われても我にはどうしようもない。なるべくしてなった。それだけの事」

「そんなことより、これで4対3です。こちらが圧倒的に有利ですね」

 なのはによく似た少女、シュテルはなのはとは違い、落ち着いた冷徹な声で言う。その言葉は流石にはやても反論できず顔をゆがめる。

 ただでさえ若干(・・)不利だったのがこれで相手に戦力の天秤が大きく傾いたことになるからだ。

 

「あ、それだったら僕はいいよ。弱い者いじめしても詰まんないし。準備もあるしね」

 

 レヴィはそういうとバルニフィカスを待機状態にすると後ろに下がる。

 

「ふむ、そうか、まぁそれだったらちょうど良いか。やれるな? シュテル」

「えぇ。この躯体の慣らしにはちょうど良い相手でしょう」

 

 レヴィが抜けるのをいともあっさりと認めるディアーチェ。しかし、それでも戦力がイーブンになった程度。どころか良い運動だとでも言いたげにはやて達を見る。

 

「さて、待たせたな小鴉。軽く捻ってやるからせいぜい足掻け。キリエ、貴様の働きを期待しているぞ」

「いや~、王様に頼まれちゃしょうがないわね~」

 

 ディアーチェの言葉にはやてとキリエが戦闘態勢をとる。

 

「やるっきゃ無い、か。お姉さん! 急で悪いですけど助力お願いできます?」

「はい! 妹の不始末は姉の責任です! キリエは任せてください!」

「リインフォースもリミッター外せへんけど、やれるな?」

「はい。大丈夫です」

 

 はやてはぽっと出だがアミタに助力を頼み、リインフォースに戦えるかを確認する。

 リインフォースは当然といった様子でリミッターのかかった状態のまま拳を握りしめる。

 

 

 

****

 

 

 

 戦況は3対3の形をした1対1と2対2の戦いであった。それはそうであり、今初めて会ったキリエとマテリアルアズ、アミタと夜天の主とその融合騎がコンビネーションを発揮できるわけもなく、お互いがキリエVSアミタのワンマン戦闘と、マテリアルズ-1VS夜天コンビという形になっていた。

 

 

 その様子を周囲に空間投影ディスプレイを浮かばせて、なにやら投影キーボードを叩きながらレヴィは眺めていた。

 

――戦況はどっこいどっこいか。

 

 レヴィは作業を行いながらその様子を眺めそのように評価を下した。

 

 レヴィの分析では基本スペックでこちらのマテリアルズチームが勝っている。キリエと同性能のアミタはキリエに打ち込まれたウィルスが原因でフルスペックが発揮できていない。本来なら動けないはずの体を、お姉ちゃんパワー(根性)で動かしているのだから当然といえば当然である。なのでキリエVSアミタは圧倒的にキリエが優勢であった。

 しかしその優勢を均衡まで底上げしているのがはやてであった。

 本来広範囲型であるはやてであるが、コンビネーションの取れない仲間がいるためその強みが殺されている。しかしそれはディアーチェも同じであり、そうなるとその2人は大味の魔法ではなく小回りの利く魔法を用いる必要があった。そうすると有利なのはディアーチェではなくはやてである。

 身体の使い方、生身の戦闘に慣れているはやての方が、生身の戦闘に慣れていないディアーチェより若干の余裕を持てていた。そしてその余裕をもってはやてはアミタの援護も行っているのだった。

 

――はやては1月だけ魔法の特訓をしただけなのにかなり戦えるようになってる。

 

 流石は夜天の書に選ばれるだけの才能はある、という事だろうか。『魔法少女リリカルなのは』の中核を担っているのは伊達ではない。

 

 ただその戦況も前衛の均衡が崩れれば一気に崩れ去る筈であった。それを崩すのが今回レヴィの代わりに前衛を任されているシュテルの役目でもあった。

 しかしそのシュテルも攻めあぐねていた。リミッターがかかっているとはいえ夜天の魔導書の管制人格。夜天の融合騎にして、闇の書時代に直接的な振るった彼女―リインフォースは伊達ではない。

 

 守護騎士が過去の記憶を薄れさせる中、夜天の書の魔法収集ストレージという特性を活かすために膨大な記憶容量を持たされた彼女はその持前の経験を生かしてシュテルを抑え込んでいた。

 

 

 スペック上は有利であるはずのマテリアルズは、たった1騎のユニゾンデバイスの「戦闘経験」によって有利であるはずの戦況を同格までに持ち込まれていた。

 

「くっ! つよいっ……」

 

 シュテルがうめくように呟いた言葉を、近接戦闘を行っていたが故にリインフォースが拾う。

 

「伊達に長生きはしていないさ。それに貴様もつよい。それこそ高町なのはよりも中距離と近距離に長けている分オールラウンダー向きだ」

「……っ!」

 

 なのはの名を出されシュテルの攻撃が苛烈になる。

 

「だが!」

 

 その攻撃はリインフォースに軽くあしらわれてしまう。

 

「熱意、才能、身体能力、思考速度、反応速度。どれをとっても十分どころか十二分にある。しかしどこか焦っているな。一見冷静に見える外見だが、その実心の内は焦燥に焦がれているな。それが隙となっているぞ!」

 

 そしてあしらわれるだけではなく、手痛いカウンターも食らってしまう。

 

「っぁ!」

 

 そんなシュテルを見てディアーチェが援護をする。

 

「下がれシュテル! アロンダイト!!」

 

 ディアーチェの言葉に従い下がったシュテルの隙間を縫い、リインフォースに向けて砲撃魔法が放たれる。

 

「リイン! させへんで! クラウソラス!」

 

 それを防ぐかのようにはやても砲撃魔法を放つ。

 

 そしてリインに向かう砲撃魔法を堰き止めると、そうしてできた隙をリインが狙う。

 

「駆けよ! ブラッディダガー!」

 

 その言葉と共に大量に表れるのは深紅の短剣の群れ。それがシュテルとディアーチェに向かって走る。

 

「ちぃっ! やりにくいったら無いな! 仕方ないとはいえこうも同系統の魔法を使われると!! 行け! ブラッティダガー!!」

 

 負けじとディアーチェも迎撃のために大量の魔力で生み出された短剣を射出する。

 

「穿て、ディザスターヒート!」

 

 魔法をつかってできたリンフォースの一瞬の隙を狙い穿つシュテルの砲撃魔法。

 

「甘いぞ! ショートバスター! 続けてサンダースマッシャー!」

 

 しかし、それもまたリインフォースに防がれ、上回られる。夜天の書に刻まれたすべての魔法。その普通ではありえない大量の手札はリインフォースという頭脳によって巧みに操られることによって真価を発揮する。

 はやてに夢を見せ、ナハトヴァールの活動を抑制し、レヴィのために外の光景を映像に投影し続けながら会話し、その状態でなのはとフェイトの二人組と戦う。

 普通の人間にはできないことを、考え動き、己で魔法を使うデバイスという特性を十二分に活用できるリインフォースだからこその芸当。

 

 その圧倒的な手札の前に戦況は一進一退を繰り広げ、膠着していた。

 

 

 

 しかしそれも終わりを告げる。

 

 

 青い雷と共に。

 

 

「きゃぁっ!」

「アミタさん!?」

「主! 防御魔法、間に合え!!」

 

 

 雲も無いのに降り注ぐ落雷に撃たれ、撃墜まではならないもののほぼ体力を持って行かれるアミタ。そのアミタに気を取られた事によりはやては自分で防御魔法を使うタイミングを逃し、なんとか射線を遮ったリインフォースが自分に防御魔法を使用しながらはやてをかばう。

 

 

「さて、申し訳ないけど準備終わっちゃったからさ、王様もシュテるんもそこまでだよ」

 

 

 介入したのは準備のために傍観していたレヴィ。しかし準備が終わればその限りではない。なにせ準備の時間稼ぎのための戦闘だったのだから。

 

 

「さぁ、そろそろボク達の目的が目覚める。始まるよ、最高で最低な戦いがさ」

 

 レヴィがそういうとディアーチェとシュテルは戦闘態勢を解きレヴィに近づく。

 

「小鴉! この戦いは預けておくぞ! 我らが目的を成就した時、今一度貴様との決着をつける!!」

 

 ディアーチェははやてに向かいそう言うと背を向ける。

 

「まちいな! なにするかわからんけど危険な事は見過ごせへんで!」

 

 ディアーチェの背中にかけられるはやての声を無視してディアーチェは飛び出す。

 

「夜天の書の管制人格、リインフォース。あなたとはいずれ決着をつけます。私が私である事を証明したその次は、あなたです」

 

 リンフォースを睨みながらそう言い放つとシュテルもディアーチェのあとを追い飛んでいく。

 

「あ! ちょっとまってよ王様ぁ!! ってことでアミタ! もう私の邪魔しないでよね!」

 

 飛び出した二人を追ってキリエもアミタに言い残すと飛び出す。

 

 

 

 残されたのははやて達とレヴィ。

 

「レヴィちゃん、一体何しようっていうの? フェイトちゃんも心配しとるし、私と一緒に一回帰ろ? な?」

「ごめんね、はやて。それはできないや」

 

 はやての言葉を、首を横に振りながらレヴィは拒絶する。

 

「フェイトにも改めて伝えてくれるかな。『君はもう強いから。大丈夫だよ』って。じゃぁね」

 

 そう、一方的に言い残し飛び立とうとするレヴィをリインフォースが止める。

 

「レヴィ、君は、大丈夫だよね?」

「……大丈夫だよ。これはボク達の仲間の、家族(・・)のためだから」

 

 それだけ言うとレヴィも3人の後を追い飛び立つ。

 

 

 はやて達は、高速で離れていくレヴィをただ見送るしかできなかった。

 

 

 




というわけでViVid Strike!の放送を記念としてGOD編の始まりです。

気付けばもうこの小説も初投稿から3年が経過しました。これも今までお気に入りや感想などをしてくれている読者の皆様方のおかげです。

大変ありがとうございます。



以下ViVid Strike!についての雑記
・ハルにゃんブラするほどおっぱいおっきいのね()
・新人いびりをする前作主人公とその仲間たち
・小倉唯ちゃんが良い感じに脳みそとろける


それでは、また次回。と言いたいところですが、書き溜めも無いのにViVid Strike!を見たノリで投稿したので、次回更新は不明です。

また見かけたらよろしくやってください。それでは

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