魔法少女リリカルなのは L×F=   作:花水姫

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次回がエピローグと言ったな、あれは嘘だ。


連続投稿です。

冬休みに入ったうえ、クリスマスに特に予定の無いボッチな私は一日PCの前に。もちろん、執筆もはかどりました。

ワロタwwwwwww



……ワロタ(泣)


事情×決意=それは第8話

 アリシアは復活した後すぐに意識を失ってしまったが、呼吸や心拍数なども正常なので、寝ているだけと判断し、今は急遽部屋を用意し寝かせてある。

 そうしてアリシアの世話をリニスに任せ、ボクとフェイト、そしてプレシアは別の部屋に来ていた。

 

「じゃぁ、色々聞かせてもらえるかしら?」

 

 部屋に入り腰を掛け、一息ついた所でプレシアが喋り出す。

 

「私が、若返ったらしい事、アリシアの蘇生法。あなたの詳しい情報。できれば全てを話してもらいたいわね」

 

 そう言うプレシアの瞳は、先ほど対面したときと同じ力強さが含まれていた。しかし、その強さは全てを投げ捨てた狂気の強さでは無く、守る者を取り戻した母の強さだった。

 

「うん。……そうだね、何から話したものか」

 

 正直言って何を話せばいいのかは考えてもいないし、纏まってもいない。

 

「なんでも良いわ。死者蘇生に若返りだなんてファンタジーな事が起きたのだもの。よほど荒唐無稽な話じゃなければ信じられると思うわよ」

「……ん、そっか。それじゃぁプレシアは神様って信じる?」

「……所謂宗教が奉じている神、で良いのよね?」

 

 ボクが言った言葉にプレシアはわけのわからなそうな顔で質問をし返してきた。

 

「うん。その神様が実際に居る、って言ったらどう?」

「……信じられる話ではないわね」

「だよね。だけど、信じて貰わなくちゃ話が始まらないから、信じる信じないは置いといて、神様は実在するって事が前提で話を進めるよ」

 

 それから、ボクは話し始めた。先ほどの現象の事、ボクの事。それらの全て。

信じられないだろうけど、それ以外の良い言い訳を考えているわけでは無い。

 いや、考えていないことは無いのだが、プレシアに通用するかと言われたら微妙だと判断したので結局ストレートに話すことにしたのだ。

 ダメで元々ではあるが、もし信じて貰えればこれからボク自身が動きやすくなる。と言っても結局ボクはフェイトの体に束縛されている訳だが。

 

 そうして話し終わった後、プレシアは頭の痛そうな、何とも言えない顔をし、手で頭を押さえていた。

 

「とりあえず、これで全部だけど……」

 

 ボクがそう言った後、暫くしてからプレシアは大きなため息をついて喋り出した。

 

「私はね。研究者なの。科学者なのよ」

「うん」

「私はそれに誇りを持っていたし、この世の全てはいずれ科学で解明できると信じても居た。現に人造魂魄を用いて死んだ動物を使い魔として再生、造り直す事も出来て居るわ。

 そんな私はね、神様の存在は信じていないの。今は人間の魂魄についての研究は全く持って進んでいないけれど、それは論理的な問題でできない実験がたくさんあるからであって、いずれはできるようになると思っているわ。それと同じで、大昔に神が起こしていたと信じられていた現象は全て科学的に解明されているし、神が創造したと言われているモノも、憶測の域を出ていないかもしれないけど、科学的、論理的に証明され続けている。

 

 そんな私からしてみれば、あなたがやったことは、あなたが神様の起こした奇跡だと信じているだけである種のレアスキル、ロストロギア的な物だと言われた方がしっくりくるし、そう感じても居る。何度もできない、と言う話もそんな強い力があるのだから回数制限があるのだと言うことは容易に想像できるし、納得もできる。

 現に、昔は神の啓示だと信じられていた予言も、今ではレアスキルの一種に認定されているし、それを持っている人もいる。

 まぁ、レアスキル自体が、解明できていない特殊能力をまとめた分類である。と言うのは否定しないし、否定できないけど。レアスキルと言ってもくくりが大きく、他者より少し優れている特異技能もレアスキルになるわ。私達の天然の電気変換資質もレアスキルの一種だし。さらに言えば、収束特性と言う。他人より少し魔力を集めるのが得意っていうのもレアスキルの一種に認定されているわ。

 

 まぁ色々言ったけど、あなたの言っている事を頭ごなしに否定している訳では無いわ。ただ、あなたの言っている事も突き詰めればレアスキルや魔法の延長線上と言う可能性がある。と言う事だけを頭に入れて居て頂戴」

 

 そうまくしたてたプレシアは、言いたい事を言ったのか、背もたれにもたれかかり一息ついた。

 

「うん。それはわかった。でも……」

 

――でもそれじゃぁ、結局信じている事にはならないのでは無いか?

 

 プレシアそう言われたボクの中にはそんな思いが渦巻いていた。

 

「だから、あなたの言った事は私は否定しないわ。あなたがそう信じているのであれば、今はそれが真実なのだろうし、そうではないと言う否定材料が私に無い以上それは否定できない。だけど私はもっと違う何かなのだと考えている。そう思ってくれるだけで良いわ。

 さ、この話はこれで終わりにしましょう。私は色々とやらなきゃいけない事があるし、あなたも気疲れしたのではなくて? 色々と緊張していたでしょう?」

 

 それだけ言うとプレシアは立ち上がり、部屋から出て行こうとする。

 

「あ、それと今日話したことは私とリニス以外の誰にも言わない事」

「う、うん」

(それと、まだ何か話していない事、フェイトに話辛いことがあるのなら、深夜フェイトが寝た後に私の部屋に来なさい)

(……了解)

 

 最後に、それだけを言い、後半はボクにだけ念話をした後、プレシアはこの部屋から出て行ってしまった。

 

『……大丈夫? レヴィ』

 

 プレシアが出て行った後も、1人ずっと黙っている僕を心配したのかフェイトが声をかけてくる。

 

「うん。大丈夫だよ。ありがとフェイト」

『ううん。私は、レヴィの言った事、信じてるから』

「……」

『だって、レヴィは神様がくれたプレゼントって事だもんね』

 

 そう言ったフェイトの姿は見えないけど、きっと多分とても優しい笑顔で笑っているのだろう。そう感じたボクからは自然と、感謝の言葉が出ていた。

 

「……うん。ありがと」

『どういたしまして?』

「フフッ、なんで疑問形なのさ」

『だって、レヴィが急にありがとうなって言うから!』

「はいはい、じゃ、部屋に帰ろうか」

『うん』

 

 フェイトとの会話で少しだけ、気が楽になる。出会って約1年、ボク達はお互いがお互いを支える、掛け替えのない存在になっていたのだと、この時漸くボクは気づく事が出来た。

 それに気づけたこと事に感謝をしながら、ボク達も部屋から出た。

 

 

「まったく、やはり子供、と言うことかしら」

 

 レヴィとの話し合いから、やる事があると出て行った私は、1人廊下を歩きながらため息をついていた。

 レヴィにいった事は本当に自分が感じている事であるし、レヴィの主張を完全に信じているわけでは無い。

 

 それに、レヴィは話し合い、交渉の場に向かない。

先ほども、初めて会った時もそうだ。彼女 ―便宜上これから三人称ではそう呼ぶことにする― は自身の感情を伝える事しかできない。感情をぶつければ大人はどうにかしてくれる、自分の事情を分かってもらえると思っている子供と同じ。彼女の話を信じるならば、少なくともそれなりの年月は生きているのだろうし、思い出が無くても、知識があるのなら、それなりの会話、交渉もできるはずだ。

 しかし実際はどうだ、てんで交渉にならない、論破しようと思えばできる穴だらけの論理。ただ自身の事情を感情に任せて吐いているだけ。ただの子供だ。

 

 しかし、その子供の事情を汲んでやるのが大人と言う者だし。そんな子供を他の大人の悪意から守ってやるのが親と言う者だ。

 私はレヴィの事を他人としてみようとは思わない。フェイトを娘として見ると、フェイトの母親になると決めたからには、フェイトと一心同体の、いや、二心同体の彼女もまた娘として見、尊重すべきだろうと思っている。

 だから、守るのだ。彼女が、彼女たち三人姉妹が大人になるまで私が母親として守ってやらなければならないのだ。

 

 今までの数十年。その全ての償いとして、これから彼女たちが満足に独り立ちできるまで、私がなんとかしなければならない。

 

 その為ならばどんなことでもできる。私の娘が幸せになるなら、神も信じるし狂言にも付き合おう。

 

 そう考えていると私は自分の研究室のさらに奥にある通信装置の前についていた。

 

 

 通信装置を操作する。連絡を取るのは、この通信装置に登録されている、数少ない。いや、たった一人の“元”協力者。

 

 先程はレヴィの誘導に釣られてしまったが、母が娘の為に罪を犯す事が一概に悪いことだと私は思わない。確かに娘は自分の所為で親が犯罪を犯したのだと思うだろうし、それを悲しむだろう。自己嫌悪に陥るかもしれない。そう考えるなら、娘の為と言っても犯罪を犯すことは、娘の為にならないと言うのは、現在の冷静な私ならば容易に判断できる。

 しかし、人間は自分勝手な存在なのだ。結局先ほどの話も、『娘の幸せな姿が見たい』と言う母の自分勝手な欲望を満たすための行動なのだ。人間はどこまで言っても自分勝手、全ての人間は突き詰めれば自分大好き、ナルシスト野郎。そう言ったのはどこのどいつだったか。

 いや、忘れたわけでは無いし、これから連絡を取るのもソイツだ。

 

『やぁ、久しぶりだねプレシア女史。随分活気が良いね、若返ったようにも見える。一体全体どうしたのかね? 君との取引はもうすでに履行済み、終了していたと記憶していたのだが』

 

 通信装置の空中投影画面に映るのは、20代の男。その髪の毛は紫色で、瞳の色は金色。その喋り方は飄々としていてどこか人を馬鹿にしたような喋り方だ。

 

「久しぶりね、糞野郎」

『これはこれは、随分と酷い二人称もあったものだ。私悲しいなぁ』

 

 私の暴言に肩を上げながら答える男。どこが悲しんでいるのか説明してもらいたい

 

「別にあなたが悲しもうが私には関係ないわ」

『それは酷い。で? 今回の連絡はなぜしてきたのかな?』

「新しい取引よ」

『おや、プロジェクトFでは物足りなかったのかな? では次は人型機械の研究データでもお渡ししようか?』

「別にそう言うのじゃないのよ。あなた、確かそっちのお偉いさんと繋がりがあったわよね」

『そうだが、それが?』

「私の、私達の戸籍やらなんやらをちょっと改変してもらいたいのよ」

『ほう。随分と直接的だねぇ。公文書偽造かい? それは犯罪だよ?』

「あなたが今更何を言うの」

『全く持ってその通りだ』

 

 全く、いちいちチャチを入れてこちらの話を折る男だ。そんなんだからキチガイの紫もやしなんて言われるのだ。

 

『悪口が口に出ているし、私は紫もやしと呼ばれたことは無いのだが……』

「失礼、わざとよ」

『わざとじゃないかぁ!』

「うるさいわね紫もやし」

『……はぁ』

 

 こちらの暴言にため息を出す紫もやし。ため息をしたいのはこっちだ。

 

『はいはい、それで? 公文書偽造の対価に君は何を差し出してくれるのかな?』

「プロジェクトFの完成データ、それに付随する人造魔導師の作り方と効率的なインプラントをするための脳科学の研究データ。あとは、新しい魔導エネルギー機関、人造リンカーコアの論文、辺りでどうかしら」

『……随分と大判ぶるまいだねぇ。それほど、その公文書偽造は君にとって大事なのかい?』

「……えぇ。私は新たに覚悟し直したの。なんでもする、とね」

 

 私の言葉、その言葉言った表情を男はしばらく見つめた後男は大声で笑いだした。

 

『ハァーーーーーーッハッハッハッハハハッハッハハハッハッハハハッハッ!! ゲホッゲホッ』

 

 あまりにも、大声で長々と笑ったためかむせる男。

 

『博士、お水です』

『あぁ、ありがとう』

 

 通信先から、そんなやり取りも聞こえる。

 

「それで? いきなり笑い出して失礼なもやしね」

『おいおい、紫が抜けてるよ』

「いちいち細かいわね、紫キチガイ糞もやし」

『今度は増えてるよ……』

 

 やはりいちいちうるさい男だ。

 

「良いから、早く進みなさい。」

『わかった。君のその欲望に敬意を払いその取引に応じよう。しかし、その条件だとこちらが貰いすぎだ。取引と言うのは公平でなくてはならない』

「あら、取引と言うのは相手の足元を見て、揚げ足を取るものでは無くて?」

『政治家や商人ならそうなのだろうが、私は研究者であり科学者だ。政治家や商人では無い。それに先ほど君に敬意を表すると言ったのだ。そんな私が相手の揚げ足などとれるわけがないだろう?』

 

 人間としてはどこかおかしくても科学者としての誇りは人一倍あるし、自身が欲望の権化だと自称しているこの男は、他者の欲望をも肯定する。故に、彼はその点にだけは真摯だった。

 

――『わたしは欲望の権化にして肯定者。全ての欲望を受け止め、肯定し、認定し、慈しみ、尊敬しよう。その欲望のまま動ける人間性を。理性を振り払える程の欲望を。私とは違い、一般教育を受け、人並みの論理感のある者の理性を、論理を超えて突き動かす欲望を、私は愛そう』――

 

 そう言ったのは、目の前の男だ。十年ほど前だったか、私に初めて会った時に言った言葉だった。彼は、その言葉を証明するかのように、欲望に対しては真摯で紳士的だった。

 

「そう、ならそれでいいわ」

『あぁ。だからサービスで何かしよう。何でもいい。君の欲望を満たすためなら何でもしよう。言ってくれたまえ』

「ならば、自由に世界を移動できるような、権利を」

『了解した。君の研究成果や論文であれば、それを引き出すのは簡単だろう。それにしても』

「なにかしら?」

『昔あった君とはまた違う顔をしている。狂気に染まった顔ではない。未来への希望を切に望む顔だ』

「それがなにか?」

『いや、気にしないでくれたまえ』

「それじゃぁ、取引が終わった所で詳しい説明に入るわ」

『あぁ』

 

 その後はどのように戸籍を変えるのか、世界渡航許可書はどの範囲まで有効なのが欲しいか等々、話し合い詰めた。

 

『以上でいいかな? プレシア女史』

「えぇ。それで構わないわ、糞キチガイ紫もやし」

『……結局最後までそれなのだね、しかもさっきと違うし』

「どうでも良いわ」

『……そうだね。どうでもいいことだ。それではまた後日、あなたの新たな母としての欲望もまた、私は肯定しよう』

 

 最後にそう言って通信は終わる。

 

「最後まで一言多い奴」

 

 私もそう言い残すと、通信装置の電源を落とし、奴に渡すための資料を纏めるためにその場を離れた。

 




そんなわけで、チートオリ主も万能じゃねーんだぜって言うお話。
プレシアさんの方がよっぽどチート。

今回、プレシアさんは母親は犯罪がウンタラ的な感じである種肯定的でしたが、犯罪は犯罪です。悪いことは悪い。

良い子も悪い子も覚えておくように。

それではまた次回

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