アナタが悪いのです   作:そばアレルギー

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第1話

 ―大戦の英雄

 ―全忍の希望

 ―当代最強の忍

 その者を称える名はいくつもある。

 

 かつて里から忌み嫌われ、落ちこぼれを蔑まされていた頃があったのだと、里の昔話を語る老人の言葉を幼い子供たちは信じないだろう。

 それほどまでに今では里の皆に信頼され、愛されている。

 

 そんな英雄―うずまきナルトが下忍から上忍に昇格し、四人一組(フォーマンセル)で下忍の部下を持つという噂が忍達の間で話題になった。

 六代目火影の方針により、上忍達はS、A級任務よりも次世代の育成に人員を配置されることが多くなり、ずっと高難易度の任務にあたっていたナルトもついにその役割が振り当てられたのだ。

 

 当然、この情報は表立って公表されておらずに伏せられていたが、普段は任務で里にいないはずのナルトがここ最近見かけるようになったことで木の葉の忍たちは勘付いていた。

 

 

「聞いたか?ナルト様が下忍の部下を持つんだってよ」

 

 アカデミーの教師である若い中忍が噂を聞きつけ、仲間内に確かめるよう話す。

 

「あぁ、知ってる。しかも今季のアカデミー卒業生は戦前と比べても見劣りしないほど優秀だ」

「当然、英雄の部下になるんだ。それぐらいじゃないとな!」

「なんか期待しちまうな!いずれ"伝説の三忍"の再来・・・なんてことになるんじゃねぇか!?」

 

 同じくアカデミーの教師である中忍、あるいは一線級を退き、教師たちの相談役となった元上忍の者たちも噂を確信し、その話題をここ最近ずっと話していた。

 

「しかし、どの子がナルト様の班に入るんだろうな」

「そうだな、順当に考えればアカデミーの成績を基準にバランスの取れた班になるよう俺たちが班分けを行っていたが、やはりというべきか、今年は例年通りというわけではないらしいな」

 

 例年通りであればアカデミーの卒業見込みのある生徒たちを教師たちが班分けを行い、火影室にそれを提出、その後上忍の人選を火影様が直々に行い、アカデミーに通達して四人一組(フォーマンセル)の完成となるが、今年は事前に火影室からアカデミーの生徒たちの成績だけを求めてきた。

 

「たしか日向一族の分家の娘アカデミーにいたよな、その子はどうなんだ?」

「・・・あぁ、お前別のアカデミーから来たばかりだから知らなかったか、その娘は"落ちこぼれ"だよ」

 

 

 日向一族、木の葉の里において古くから、それこそ木の葉の里ができる前から存在する一族であり、白眼と呼ばれる瞳術を使うエリート一族。

 個人差はあれ、宗家、分家区別なくアカデミーに入る前から忍になることが決まっている一族であり、幼少期から訓練を積んでいるため、一般の忍、それもアカデミー生と比べて落ちこぼれと呼ばれることはないはずの存在。

 特に、里の英雄たるナルトが日向一族宗家の長女、旧姓日向ヒナタ改め、うずまきヒナタと婚姻を結んだことにより日向の存在は木の葉隠れという大きな集落の中で最も影響力のある一族だ。

 

「お前、日向一族に向かって落ちこぼれって・・・誰かに聞かれたら不味いだろ」

「まぁ、聞けよ。あいつはな、大昔、忍界大戦で木の葉から離れて他里で身を隠していた日向の分家の末裔なんだそうだ。先の大戦で他里との関係が良好になったのをきっかけに木の葉に一家で戻ってきたそうだ。だから宗家からはもちろん、木の葉に元々いた分家の者たちからも半ば見下されている。大戦にも参戦してないこともあって見放されているといってもいい」

 

 そういったのは木の葉でも古株の元上忍で、日向一族にも顔見知りが何人もいる者だった。

 

「へえ、大きな一族ともなると、そんなこともあるんだな。だが、その娘が落ちこぼれといわれる理由は何だ?いずれ白眼を開眼するんだ、どう考えても有望なんじゃないのか?」

「待て待て、話はまだ終わりじゃない。それに白眼の開眼にはそのための鍛錬を幼少期から長年行う必要があるそうだ。つまり、血筋だけじゃ開眼しない。そして、その鍛錬は木の葉にいる日向一族にしか受け継がれていない。つまり、あの娘が開眼することはないんだ」

「それが"落ちこぼれ"といわれる所以か?確かに白眼を持たない日向一族は普通の忍と変わりないが・・・アカデミーでの成績は悪くなかったよな?あまり印象にないが・・・」

 

 その場にいた者全てが、その日向の娘を思い出そうとして気づき始める。

 誰もがはっきりと覚えていない。どんな容姿をしており、どの科目が得意でどんな癖があるのか、そういった個人を特定するような個性を、誰もが覚えていない。

 そしてこのやり取りをもう何度も行っている気がして、その度に忘れているような感覚。

 

「あぁ、それだよ。俺もあの娘の印象がない。というよりも顔すら記憶にはっきり残ってない、何か靄がかかったような、不気味な感覚だ」

 

 そう、日向一族というだけで目を引くはずの者をアカデミーで教育者として長い間顔を合わせているはずの己が、はっきりと覚えていない。

 古株の上忍が忌み嫌うように落ちこぼれと評したのは、実力不足であるという意味ではない。

 その娘は手裏剣術、体術、基本的な忍術を全て標準以上の水準で会得してあるという記録が残っているのに、それでも誰もが気に留めていない。

 まるで現役時代、手練れの幻術使いと対峙したときのように、相手の存在がうまく認識できないのだ。だが、年端のいかぬ小娘にそんな感覚を覚えてしまっていることが無自覚にストレスとなり、必要以上に攻撃的な感情になってしまっていた。

 

 

 

「すっかり話が逸れてしまったな。明日はいよいよ班分けの発表の日だ。六代目と数人の上忍が来られる。そろそろ準備に取り掛からないとな」

「あ、あぁ!そうだったな!ナルト様も来られるのかな?実は俺、実際に拝見したことがないんだ!楽しみだぜ」

 

 そして、誰もがはっきり覚えていないという異常事態を誰もが気に留めず、モヤモヤしながらも明日の準備に追われるよう散り散りに仕事に取り掛かった。

 恐らく、明日、先ほど話題となった里の英雄、その部下が誰になるのか、その答えがわかる。

 もしかしたら歴史的な日になるかもしれないな、と軽い会話を繰り広げ、

 

 

 ―再びその娘、【日向美影】を忘れていった。

 

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