アナタが悪いのです   作:そばアレルギー

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第3話

「静粛に。紹介は一通り終わったようだし、早速、班分けの発表を行う」

 

 カカシの言葉により、先ほどまでの喧騒は幻のように消え去り、場が静まり返る。

 その声色は、最初の挨拶のような軽薄なそれではなく、里の顔役として威厳のあるものだった。

 

「その前に、お前たちには説明しなくてはいけないことがある。勘のいい者は気が付いていると思うが、あえて言おう。四人一組(フォーマンセル)は上忍が1人、下忍が3人で構成される」

 

 忍の基本単位、小隊は四人一組(フォーマンセル)であり、アカデミー卒業後、下忍になった者たちは疑似的に小隊、つまり班を組み初めて任務にあたる。

 これは初代火影が忍者アカデミーを創立して以来変わったことのない習わしだ。

 カカシのいう"説明"の内容がそんな基本的なことをいっているのではなく、もっと根本的なことであると数名のアカデミー生は気づき始めた。

 

「担当の上忍は3人、つまり、今年下忍になれるのは最高で9人までだ」

 

「「「―・・・っ!」」」

 

 卒業生はもちろん、その場にいたアカデミーの教師陣や生徒の親たちも驚きの声を漏らした。

 

「当然、担当の上忍が認めなければ下忍になれる数はもっと少なくなる。無論、試験から落とされたものはアカデミーからやり直しだ」

 

 下忍選抜で不合格になり、アカデミーに送り返されるということは前例がないわけではない。

 カカシ自身、上忍時代には試験担当として幾度も卒業生たちに不合格を言い渡し、アカデミーに送り返したことがある。

 だが、今回は合格したとしても落とされる可能性があるということだ。上限があり、例年なら合格して下忍になれるだけの生徒も確実になれるわけではないということ。

 

「疑問や不満に思う者もいるだろう。だが、これは決定事項だ。異論は認めない」

 

 断固とした口調で里の長がそう云った。つまり、もうこれは覆らない現実である。

 アカデミーの卒業試験を突破して下忍になれると根拠もなく楽観的に思っていた生徒たちにとってあまりに辛い現実であり、緊張感が顔に浮かび上がる。

 

「おまえたちが直接の原因ではない。だがこのままでは納得がいかないだろう。だから、強いて理由を挙げるとすれば―・・・"忍者ごっこ"はもう終わりだと自覚してもらうためだ」

 

 "忍者ごっこ"その言葉に含まれる意図は、昨今の下忍たちの現状を鑑みてのことだった。

 ―木の葉の下忍の質が下がってきている。

 そう他里から云われ、『それはただの挑発だ。事実ではない』というほど、木の葉上層部も耄碌としているわけではない。ましてや他里との関係は過去にないほど極めて良好であり、これは挑発ではなく助言であるということくらいは理解できている。

 

 忍の人手不足を解消すべくアカデミーで促成教育を採用してから下忍の数は急増し、当初の目標は達成したかに思えた。

 だが、しばらくして問題が浮上してきた。

 下忍の任務達成率の激減―それもDランク任務すら満足に達成することに難儀していると担当の上忍たちから挙がる報告書の数々。現場で必要な応用力が戦前に比べて足りない。

 もちろん、これは忍の数を増加させるためにアカデミーの教育水準を下げたため、想定内のことであった。実際に任務にあたることで経験を積み、担当上忍からの適正な指導とそのための時間を積み重ねれば幾らでも挽回できる―当初は木の葉上層部はそんな風に考えていた。

 現実は、"下忍の引退"という聞きなれない言葉で表現された。

 

 

 ―あまりにも時代背景を違っていたのだ。

 忍になるのが当然の時代。

 他里、他国から里を守るため自主的に鍛錬に励むのが当然の時代。

 生死と問われる任務が下忍にもあたえられ、死が身近にあった時代。

 

 すべての価値観が、違っていた。

 戦後の復興のため、必要となる生産業、技術の進歩により拡大し続ける製造業、いくらでも人材の受け皿はある。

 明確な敵対勢力はすでになく、何に備えて鍛錬に励むべきか分からなくなっている。

 平時にも関わらず、危険な任務は相も変わらず数多にあり、怪我や死というリスク。

 

 現代において、"忍"とは生き方の総称ではなく、"職業 忍者"なのだ。

 そして忍者とは人々から尊敬を集める存在にはなりえても、実際にそれになろうと思うにはあまりに過酷であった。やめていく若い下忍たちを責められる道理はなく、木の葉だけでなく忍界自体が大きな転換期に迎えているのだと気づかされた。

 

 

「忍者になるだけがお前たちの将来ではない。もし、試験に落ちてアカデミーに戻るのが嫌ならば諦めて他の道を探してくれ」

 

 カカシの一見冷たい態度は、ある意味、そんな現代の価値観を受け入れ、成るようにしかならないのだと諦観したような、そんな気持ちの表れでもある。

(昔のナルトだったら、『絶対火影になるってばよ』と騒ぐんだろうが、なんと大人しいことか。もうそんなバカはいない、か)

 何かに期待していたように、カカシは一拍おいて卒業生たちを見渡してみた。

 ほとんどが固い表情を浮かべており、声を発する気配はない。

 例年通り、何も変わらない反応。

 ―時間の無駄だったか、そう思っていた頃、意外な人物が手を挙げ言葉を発した。

 

「話、長いです。そんなこといいから早く班の発表してください」

 

 美しい音色でとんでもなく空気の読めていない言葉を発したのは、日向美影であった。

 

「あ、もし立候補制なら私、うずまきナルトの班がいいです。それ以外なら、ナルトの班に振り分けられた子を辞めさせてでも入ります。構いませんよね?」

 

 今まで存在感がなかった娘から急にこの発言。

 否が応でも周囲から視線が集まる。

 

「(あいつ、あんなに喋るやつだったっけ?)」

「(っていうかあんな奴いたか?・・・顔はいいのに、空気の読めない変人ってもったいねー)」

「(あの白い目、日向一族の子だっけ?そういえばアカデミーにいたような気がする・・・)」

 

 カカシは日向美影と目を合わせ、そして問う。

 

「・・・仮に、うずまきナルトの班に入って君は何がしたいの?」

 

 日向美影は目を細め、14の子供がするとは思えないほど妖艶な笑みを顔に浮かべて云った。

 

「それをここで話しても意味がないことです。どうせ"忘れて"しまうのですから・・・」

 

 

 

 

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