ガールズ&パンツァー ~二星は1つに輝く~   作:Celtmyth

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ある者は語る アレクサンダー
ヘラクレス、 ヘクトル、リュサンドロス
このような偉人たちの名前を
だが世界の偉大な英雄といえど
英国擲弾兵に比する者なし


古代の英雄は砲弾を知らず
敵を粉砕する火薬の力も知らない
だが我らの勇敢なる兵士は知っている
恐れもすべて払いのける
英国擲弾兵に歌声を捧げよ


陣地を急襲せよと命が下れば
隊長は信管を手に
我らは手りゅう弾を手に進みゆく
斜堤から投擲する
敵の耳近くへ
歌え 英国擲弾兵


包囲が終わり 街を修復する
街の住人は叫ぶ フレー!お前たち
英国擲弾兵がやって来たぞ!
英国擲弾兵がやって来た
迷いも恐れも知らぬ奴らだ
さあ歌え 英国擲弾兵


盃を満たし 健康に乾杯しよう
軍帽軍服に身を包んだ者たちに
兵士・司令官らに幸せあれ
英国擲弾兵のために


作詞・不明



第07話――行進曲『英国擲弾兵(The British Grenadiers)

 

「ごめんなさい。外してしまいました」

「別にいいわよ。誘導が目的じゃないし。

 麻子、向こうが砲撃を始めたらジグザグに動かして」

「了解」

 

 侵攻する聖グロの戦車隊に向かって砲撃を撃ったAチームは素早く次の行動に移る。向こうからすれば砲撃の音と方角も加えてⅣ号の姿も見られたのでこっちに来る事は確実。作戦とは言え、のんびりとはしていられなかった。

 彼女(シロハとカナエ)が麻子に指示するとすぐに首の咽喉マイクを使う。

 

「今から聖グロをそちらに引き付けます。なので間違っても私たちを砲撃しないで下さいね河嶋先輩」

『するかっ!』

「心配だから言ってるんですよ。

会長、砲撃指示は貴方にお願いします。他の皆も会長の指示で砲撃を開始して下さい」

『りょうかーい』

『『『はーい』』』

『貴様らーっ!!』

 

 通信越しでやたら賑やかな声が聞こえる。これなら問題無いと思い、ここで通信を終え、次に外の状況を確認するためにキューボラから身を出すと耳を澄ませた。

 

「……もうすぐ砲撃される距離にまで縮まりそうよ」

「はは、まさかそんな……」

 

 その呟きに優花里も双眼鏡を取り出して顔を出す。そしてしばしの間。

 

「――ホントに来てますっ!!」

 

 

 ドォンッ!

 

 

 優花里の報告と同時にすぐ傍に着弾音が轟く。衝撃で戦車が揺れたがすぐにジグザクに走り始める。彼女(シロハとカナエ)の指示通り麻子が操縦を始めたようだ。

 そして改めて目視でチャーチルとマルチダ4両を確認し、同時に砲撃する瞬間を目撃する。当たらないがすぐ近くで着弾する衝撃は凄まじい。その中で彼女(シロハとカナエ)は笑っていた。

 

「ハハッ、いいねやっぱり。この試合の緊張感、いつでも興奮する」

「何喜んでるの! 危ないから早く頭引っ込めて」

「おっと。

 そうね、ごめんなさい沙織」

 

 久々の感覚にシロハが興奮していると沙織が下から注意されて大人しく中に戻る。

 

「ミンカ殿ミンカ殿。なんで接近に気付いたんですか?」

「ん? 戦車の音を拾ったから。

 慣れてくると聞き分けられるようになってね。

 特に製造国が違うとエンジン音もわかりやすいわ」

「……それ、スゴいですよ」

「知ってる」

 

 あっけらんと皆が驚く答えを口にしつつ、待ち伏せ位置までの距離を再確認する。戦車の中に戻る直前に地形から大体の位置は把握していたのでどれくらいで到着かわかる。

 

「……まもなく到着します。準備はいいですか」

『オッケーだよ』

『はい、指示通り会長の合図で撃ちます』

『会長以外の声には決して従わないさ』

『緊張していますが会長の声を間違い得ないようにします』

『だからお前らなー!』

 

 とりあえず間違って撃たれないとわかって十分な彼女(シロハとカナエ)

 

「華、貴女も砲撃する準備をお願い。ただし発射は相手の戦車に照準を合わせてからよ。

麻子も砲身の方向と敵戦車の位置を意識した場所で停止してね。向けるのは前」

「はい」

「わかった」

 

 すぐに自分たちAチームもまた一斉砲撃に参加するための指示をあらかじめ出す。

 そしてⅣ号は目的の場所に到着。伝えていたがまさか撃ってこない保証がなかったので気を引き締めていたがそれはなかった。ちゃんと制止してくれたようだ。その間に坂を登っていく。

 

『砲撃かいしー』

 

 

 ドドドォンっ!!

 

 

 まだ移動中に杏の声が通信越しに聞こえ、その直後に砲撃の雨が鳴り始めた。それに彼女(シロハとカナエ)はまたキューボラから顔を出して状況を目で確認する。

 こちらの戦車が砲撃を続ける中で聖グロの戦車は慌てた様子はない。そもそも狙って撃っている感じではなかった。恐らく照準器に戦車を捉えていてもその精度が甘いのだろう。そして聖グロは長い練習の成果もあるが大洗の砲撃が当たらないとわかっているから慌てていないのだ。

 なので彼女(シロハとカナエ)はこの後の流れはすぐに察し、すぐに戦車の中に戻る。

 

 

 ドォンッ! ドオンドォオン!!

 

 

 その直後で聖グロも砲撃を開始した。しかも冷静にこちらの戦車に当てに来ている。

 

「(やっぱりダメじゃん)

 (でも河嶋先輩、聞いてくれなかったしなぁ)

 (時間の無駄だったし、作戦としては定石だったしね。それじゃあ次に行くわよ)

 (うん、でもまずは)

一年、澤梓ッ!」

 

 戦車の中で声を挙げればそれなりに響くので同じ車内にいたメンバーも反応するが真っ先に、そしてしっかり反応したのは通信越しに呼んだその名前の人物。

 

『はっ、はい!』

「あなた達は市街地に移動! 砲撃の中だから絶対に車外に出るんじゃないわよ!」

『了解っ!!』

 

 有無を言わさない指示を伝えるシロハ。乱暴な言い方だったがM3リー、Dチームは素直に後進して市街地方面へと向かい始めた。

 

「よし、と。残りは改めて後退の指示を出すまで砲撃を」

『ちょっと待てぇ! だったらなんでDチームを後退させた!?』

「はい、パニックになっているでしょうから。

 あえて伝えていませんでしたが彼女たちは初日の試合で自滅したので砲撃の恐怖を知りません。今の状態でまともな判断は出来なかったでしょう。

 でも自滅したのでまずは操縦技術を学ばせたほうがいいと判断したので今の今まで黙っていました」

『そんな重要な事はまず言えぇ!!』

「善処します」

 

 通信を終えて再び状況を確認する。お互いの砲撃は未だ続いていたがやはり冷静さは向こうが上。こちらを正確に狙って砲撃していた。彼女(シロハとカナエ)のいるⅣ号だけは命中しているが、上手く隊列で急所を守っているので撃破には至ってない。しかし自分達が一番練度が高いと見抜かれてきたのか、こちらへの砲撃が増えてきていた。加えて戦車も徐々に昇ってこようとしていた。

 

「(ここで撃破は難しいそうだね)

(なら次よ。作戦がないなら後退するのが一番よ)

 (さっき河嶋先輩にアレコレ言われたのに?)

 (しょうがないでしょ)流石は聖グロリアーナです。対処が速く、すでにこちらを撃破する為に動いてます」

『どゆことー?』

「向こうはこちらを牽制しつつ近づいてきています。流石にあの位置からでは撃破は出来ませんから近づく必要があります。そして向こうは装甲が硬いので十分に可能です」

『ふぅん。それで?』

「ここにいては撃破されるので私たちも市街地へ行きましょう。

次の地の利で迎え撃ちましょう」

 

 

 

 

 

 高い位置から砲撃していた大洗の戦車達が後退して見えなくなると同時に聖グロは砲撃を止めた。

 

「苦難の時に動揺しないこと。これが真に賞賛すべき卓越した人物の証拠である」

「作曲家ベートーヴェンの言葉ですね。しかし何故その言葉を?」

「私たちの動きを見て撤退したのよ。あのまま続けていてはいずれ撃破される位置を取られるってね」

 

 優雅に大洗の行動を評価するダージリン。しかしそれもあくまで強者の余裕からだった。それにすぐに追わないのはあえて大洗に時間を与えた慈悲であった。とは言え、悪い意味ではない。

 

「堅実で強かね。思っていた以上に成長するかもね」

「だから評価すべき人物とする言い回しを選んだのですね」

「あら、他校といえど後進が大きく成長するのは嬉しいじゃない。特に縁を結んだ相手なら、ね」

 

 ここで紅茶に口を付けると大洗の戦車を消え去った方向を見据えた。

 

「戦車、前進」

 

 その指示は彼女に相応しく、優雅で淑女らしい命令であった。

 

 

 

 

 

 撤退は無事に実行でき、まっすぐ市街地の方へ向かう。聖グロの戦車はすぐに追い掛けて来ない状況から彼女(シロハとカナエ)はこれが情けだと理解し、なら十分に使おうと考えた。

 

「コンディションを確認します。Aチーム、は私たちなのでBチームから順に応答をお願いします」

『Bチーム、バレー部一同はまだ戦意あります!』

『Cチーム、我々もまだ戦えます』

『えっと、Dチームです……。先輩、先ほどはありがとうございます……』

『Eチーム問題なし~。精々河嶋が駄々捏ねてるぐらいだよ~』

『会長っ!』

「了解」

 

 無事にチーム事の車長から返事が聞けた。そして彼女達の状態も把握した。

 

「Dチーム、この後の試合は出来る?」

『えっと、それは……』

 

 彼女(シロハとカナエ)が先んじて撤退させた事は正しかったが、梓には罪悪感を抱いている様子だった。しかし彼女(シロハとカナエ)が伝える言葉は決まっていた。

 

「梓ちゃん、無理なら棄権していいわよ」

『え?』

『おいぃっ!!』

「会長、河嶋先輩を抑えて下さい」

『おーけい』

 

 余計な声が聞こえたのでその場にいて行動できる人物に抑制をお願いした。するとパッタリ声がしなくなったので彼女(シロハとカナエ)も話を続けた。

 

「先に撤退させた理由は直後の通信でもう知ってるわね? 

これは言わずにいた私の責任だから気に病む必要はないわよ」

『でも……』

「気にしなくていいのよ。

 それに先んじて基礎的な練習をさせないと心配だったしね。撤退するときもなんとか戦車を操縦できたでしょ?」

『はい。慌ててましたけどちゃんと操縦してくれました。練習の成果だと思います』

「でも、あなた達Dチームの恐怖は拭えてないでしょ?」

『…………はい』

 

 少し間が空いたが肯定してくれた。それに彼女(シロハとカナエ)は一年前に別れた友達の事を思い出した。あえて今まで連絡は取らず、近況も聞いていない。しかし忘れた事はない。

 

「私が戦車道をやってるのは好きだから。

深く言うなら心赴くままに、てね」

『先輩?』

「だから私は仲間もそうあって欲しいの。

 もちろん試合とか負けたくないから足掻きもするし作戦の実行の為に説得もするわ。でもね、仲間が無理しているのは嫌なの。

 まぁ何が言いたのかってね、私が好きな戦車道を私が嫌いにさせるような事は絶対したくないの」

 

 彼女(シロハとカナエ)にとって戦車道とはそう言うものだった。勝つためにと言うには弱く、続けると言うには曖昧。しかし今ここに立っている彼女(シロハとカナエ)は、信念を曲げる事はなかった。

 今さらだが彼女(シロハとカナエ)の通信はDチームだけではなく他にも聞こえている。空気を読んで口は挟んでいないが全ての言葉を聞いていた。

 その上で梓は、Dチームの皆は決断した。

 

『私たちは棄権します。まだ怖いって気持ちが残ったままなので、次またパニックするかもしれません』

「そう」

『ただっ、遠くから先輩達の事を見ていていいですか?』

「そこは私が許可しなくても自由にして。

 ただし、ちゃんと危険がない場所で観戦するように」

『……はいっ』

 

 最後の返事がハッキリと聞こえた事で彼女(シロハとカナエ)は問題なしと安心する。その気分のまま戦車から上体を出した。後ろを見ればまだ聖グロの影は見えない。ここからどう巻き返すか頭を回す。

 

「お~い、橋場ちゃ~ん」

 

 するとすぐ近くから杏の声が聞こえた。振り返れば彼女もまた38(t)から顔を出していた。

 

「どうしたんですか会長?

 わざわざ通信を使わないとは、棄権させたことは不満ですか?」

「いやいや、隊長は橋場ちゃんだし唯一の経験者が言うんだから正しいんでしょ。実際に一理あるって私も思ったし。でもわざわざ戦車を減らす判断をするなんて度胸があるなって思っただけだよ」

「それ、当たってますね。

私にあるのはね、度胸だけよ。なんてね」

「言うねぇ。でも勝ち目はまだあるんでしょ」

「もちろん。

 寧ろここからは皆の力を借りたいところです。

 今度こそ地の利を生かした戦いをしましょう」

 

 まだ見えない敵の車両よりも前方の市街地、大洗町の建物が見え始めた。転校してきた彼女(シロハとカナエ)にとってはまだ馴染みが薄い街だが、ここにいる仲間たちとってのホームグラウンド。そこが勝ち目の綱であると理解していた。

 

 




次回予告


「一つ二つのアドバイスはするけど、さすがにホームグランドで遅れは取らないでしょ?」


「本当に戦車道の姉様は輝いていますわ。妬けてしまいますね」


「あとは私の声だけを聞いて動いて」


「貴女が隊長さんかしら?」


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