ガールズ&パンツァー ~二星は1つに輝く~   作:Celtmyth

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人生を楽しめ ランプがまだ燃えているうちに 
ばらの花を摘め それらが 色褪せる前に

ひとはとかく 心配事や苦労ばかりして 茨の苦難を探し 見出す
そして 道端に咲くスミレには 気づかずにいる

あらゆる生きものが 恐ろしさに顔を隠し 雷鳴が我らの上で 轟こうとも
嵐が去った夕べには 微笑むのだ 太陽が ああ かくも美しく

誠意と忠実を愛する者には 貧しい同胞に 喜んで恵む者には
満足が みずからの小屋を 堅固に築き上げるのだ

行く道が ひどくせばまり 災難が我らを苦しめ 追い立てようとしても
誠実な者には 友情が やさしく 手を差しのべてくれるのだ



作詞:ヨハン・マルティン・ウステリ




第04話――ドイツ歌曲『人生を楽しみたまえ(Freut euch des Lebens)

「華さん。すぐに出発できるように構えておいて」

「わかりました」

 

 試合開始となったがⅣ号は静止。本音は動かしておきたいがシロハとカナエ(自分たち)以外は初心者。そこまでは望まないし、そこは自分たちが車長として引っ張って行くしかない。

 

「カナりんカナりん」

「ん、なに?」

「倒すなら生徒会チームにしない? 教官、女の人だったもん」

「イケメンなのは――

 間違ってないと思うけど」

「いや、イケメンって言えばイケてるメンズに決まってるじゃん。と言うか言葉詰まらなかった?」

 

 言葉が詰まったのはシロハが先んじて口を開き、それをカナエが繕ったからである。事情を説明していない相手に(シロハ)が余計なことを言おうとした、と(カナエ)が言えるわけもない。

 

「それはともかく、生徒会を探すなら動かなきゃいけないね。それじゃあ華――」

 

 発進の指示を告げようとしたその瞬間、ドオォンッ、と言う音と衝撃がⅣ号を揺らした。

 

「な、何!?」

「こ、これは砲撃を受けました!!」

 

 近い2人の慌て用を余所にカナエはすぐにキューボラから頭を出して周囲を確認する。そして見付けたのは砲身から白煙を吐く八九式の姿だった。

 

「操縦手、前進! 移動しながら状況を確認する!

 でも焦らないで! 車内にいれば怪我はないからね!」

「は、はいっ!」

 

 思わず2人で指示が出てしまったが砲撃を受けた影響でその違和感に気付く物はなかった。そして操縦手の華だったが事前に心構えが出来ていた為、多少の困惑はあった物のスムーズな発進ができた。

 発進したⅣ号から上半身を出したままの彼女(シロハとカナエ)は遠ざかる八九式を意識しながらも他の戦車に遭遇しないか周囲を警戒する。そして案の定、二手に分かれる道の左側にⅢ突が現れた。

 

「前方左手にⅢ号突撃砲! 右の道に進んで!」

「はい!」

 

 すぐさま行く先を指示する。特に入念は指導をしたので華は拙いながらも狂いも少ない操縦で指示通りに戦車を進ませる。そして遭遇した2両を確認すると互いに打ち合うことなくこちらを追い掛けている。

 

「狙われてる。

 最初、経験者だって知られたせいかしらね」

 

 遠ざかる2両を見ながら口にするがその顔に焦りはなく、静かに正面を見る。後ろから砲撃が飛んでくるが走行する戦車を当てる技術はプロでも難しい。当たった時は運が悪かったと諦める。

 とりあえず彼女(シロハとカナエ)は視野の広さから後方の2両以外にまだ出てきていない2両と障害物の警戒を続ける。

 

「ねぇねぇ! どうするの!!」

「ああ、落ち着いて。走行中なら簡単には当たらないから。

腕のいい砲手とラッキーショット以外は」

「それって運が悪かったら当たるって事でしょ!」

「・・・・・・目隠しのジェットコースターと思ってて。

当たっても凄く揺れるだけだから、とりあえずそれで耐えて」

 

 あと初心者の沙織を宥めている。

 

「とりあえず逃げ切らないと・・・・・・。

 前っ!!」

 

 シロハが正面を見て叫んだ。彼女(シロハとカナエ)は同じ視界を持つが意識を向けていなければ認識しない。カナエはシロハが意識する場所に自分のも持って行くとそこには生徒が1人寝そべっていた。

 

「そこぉ! 危ない!!」

 

 思わず叫ぶと寝ていた生徒は気付いて起き上がり、Ⅳ号が近づくと軽やかに跳んで乗り移った。

 

「ぶぎゅ」

 

 走る戦車だったので着地は失敗した。そんな生徒と彼女(シロハとカナエ)は目を合わせる。

 

「あ、今朝の」

「また会ったな」

 

 さっきの大声を出したと思えない程に冷泉をだと気付いた彼女(シロハとカナエ)の反応は静かだった。

 

「とりあえず中に入って。後ろから砲弾が飛んできてるから危ないの」

「わかった」

「優花里さん。そこのハッチから外の子を入れてあげて」

「は、はい」

 

 トントン拍子に伝えて安全を確保する。優花里も状況を把握できている訳ではないが言われたとおりハッチを開けて冷泉を中に入れた。

 

「あれ、麻子じゃん」

「沙織。お前もいたのか」

「あれ、知り合い?」

「うん、幼なじみだよ。と言うか授業中だよ麻子」

「知ってる。しかしここ、酸素が薄いな・・・・・・」

 

 辛そうに身体を優花里に預ける冷泉麻子。低血圧だからと沙織は呟いていたので

昔からこうだったのだろう。

 少しハプニングが起こったが再び外を見る。すると行く先に吊り橋。そこ以外の道がなかった。

 

「停まって。この先に橋がある」

 

 告げると華は橋の前で停車した。そのタイミングで彼女(シロハとカナエ)は降車して戦車の前に来る。

 

「誘導するから慎重に操縦して」

 

 ハッキリと、しかして落ち着かせるように彼女(シロハとカナエ)は戦車と4人を導く。

 

 

 

 

 

 Ⅳ号戦車ことAチームの窮地は監視塔から試合を観ている蝶野たちにも伝わっていた。

 

「行動力と判断力はあるわね」

 

 そして蝶野は吊り橋の上でⅣ号を誘導するカナエをそう評した。

 

「彼女が気になりますか?」

「そりゃあね。何せ去年の大会でMVP選手とは別に目立った子だから。でも想像していたほどの実力者の印象がないのが本音ね」

「? 去年の大会からの有名人ですよね」

「そう。逆に言えばその時まで無名の選手だった訳だけどね」

 

 蝶野の言うとおり、カナエは去年の決勝戦の日まではそう目立った選手ではなかった。強豪黒森峰で一年ならがレギュラーの地位を得るにはそれ相応の実力が求められるが意外にもその分、選手の注目度にはバラツキがある。事実、去年の黒森峰における注目選手は西住姉妹であり、それ以外の選手は良くも悪くもその他大勢の括りであった。

 

「でも私はどんな子か気になってね。大会が終わって時間を見ては調べていたの。ただその頃には彼女は転校していた。今日までの足跡も見付けられる事なく」

「その今日はここにいる事実を知ったからですか?」

「もちろんよ。だから嬉しいの。彼女がどんな戦い方をするのか」

 

 その言葉に応えるかのように、Ⅳ号の動きに変化が起こった。

 

 

 

 

 

 正直な気持ちは、今朝助けた子が有能だった。

 

「麻子運転できたの!?」

「今覚えた」

「今ぁ!?」

「さすが学年主席」

 

 砲弾が命中した衝撃で操縦手だった華が失神したがそれを麻子が代わりに操縦桿を握っていた。

 

「……操縦、お願いするわ。

二人とも、今なら反撃が出来るわ。すぐに砲撃の準備を」

「え? う、うんっ」

「了解しました」

 

 そして状況が好転したと判断した彼女(シロハとカナエ)は車長として指示を出す。砲弾はまだ事前に装填した分がある為、今は優花里に砲手に対する指示をする。

 

「照準器の見方は説明したとおり。狙い所は、わかるわね?」

「戦車の事はよく知ってます」

「なら確実に弱いところを。入ったなら引き金を」

「はい」

 

 静かに、余計な緊張を与えないかのように彼女(シロハとカナエ)の声は透き通っていた。優花里も不思議と、この場面ではありえないほどの安心感があった。

 そしてⅣ号戦車が砲声をあげた。

 

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

…………

 

 

 

……

 

 

 

 それから試合は早々に決した。Ⅳ号が始めⅢ突に撃破を果たしたことで続けて八十九式を撃破。実はこの時、吊り橋の反対側に38(t)とM3がいたのだが大チャンスだった38(t)の砲撃は明後日の方向に飛んで返り討ち。それをみて逃走しようとしたM3は泥の上にいたため無理に走行した結果、履帯を吹き飛ばして行動不能となった。試合は彼女(シロハとカナエ)たちAチームの勝利となった。

 

 

「Good Job!Very Nice!! 初めてにしては見事な試合だったわ!」

 

 試合終了から皆戦車倉庫の前に戻り、蝶野からの賞賛を受けていた。が、そんな彼女たち全員はその話に集中している訳ではない。原因は彼女の側で控えている、外国の軍服の青年である。

 

「ねぇすっごいカッコイイ人がいるんだけど!!」

「そうですね。でも蝶野教官の制服とは違いますね」

「アレはドイツ軍の軍服ですね。ここからじゃ階級章は確認できませんが」

「早く終わってくれ……」

 

 そんな声が彼女(シロハとカナエ)の耳にも届く。しかし彼女(シロハとカナエ)はしっかりと蝶野の賞賛に耳を傾けていた。一字一句、逃さない程に。

 

「と、ここまでは私からね。皆も気になっているこの人を紹介するわ。彼はドイツ陸軍の軍人で、ドイツの戦車道強化委員の代理で来日していた所に同行して来たの。それじゃあどうぞ」

「はい」

 

 入れ替わるように蝶野と青年は移動し、そして彼は改めて名乗る。

 

「はじめまして。私はドイツ陸軍所属、ヘルベルト・クニスペル少尉です。男性ではありますがどうか偏見なく受け入れて頂けると幸いです」

 

 軍人というお堅いイメージが付く肩書きを持ちながら彼の言葉と纏う雰囲気は紳士的だった。そんな姿に黄色い声が出そうな興奮を隠しきれない者が何人か。

 

「今回は戦車道を始めると聞いて是非に見学をさせて頂きました。そんな初心者ばかりの試合でしたがなかなか見応えがありました。これから先は皆さんの成長次第です。どうか腕を磨き、これが大洗と言える戦車道を目指して下さい」

「うん。はいみんな、一斉に礼」

『『『ありがとうございます!』』』

 

 簡潔に好評を伝えると蝶野がまとめ、皆はすぐに返事をした。

 

「(ふぅ。これで私たちの戦車道再開は―――)」

 

 そして彼女(シロハとカナエ)はそろそろ話の終わりが見えてきたと気が抜けた瞬間、目眩と脱力感が襲った。

 

「(あ、ヤバッ。

  油断しちゃった)」

 

 久方ぶりの戦車道で集中力を使って精神的に疲弊した状態。そして彼女(シロハとカナエ)は精神面が特殊なため、その弊害がここで出た。体勢を整えようとしたがすぐには力を込められず、重力に引っ張られる。このまま倒れて――。

 

 

 

 

 ――る事なく、温かさを感じる両腕に受け止められた。

 

「んっ……」

Geht es dir gut? Meine prinzessin

 

 意識がハッキリとした所でドイツ語の言葉を掛けられた。それでどういう状態か把握し、すぐに離れた。

 

「すみません。思った以上に疲れてしまっていたようです」

「そうですか。勝利したチームでしたので見ていたのがよかったですね」

「ありがとうございます」

 

 ヘルベルトに礼を伝え、列と姿勢を正す。そばにいる沙織(イケメンに)と優花里(軍服に)が凄く興奮している事は無視する。

 

「久しぶりと聞きましたので無理はしないで下さいね」

「……教官に聞いたんですね。わかりました。もう少し体調には気を配ります」

「ええ。大事にして下さい」

 

 体を気遣い、ヘルベルトは彼女(シロハとカナエ)から離れる。興奮していた二人が名残惜しそうだったが仕方がない。

 

「すみません。思わず飛び出してしまって」

「いいじゃない、今の軍人らしくて。それじゃあ皆、これから何かあれば私が相談に乗ってあげるわ。今日はここまで。お疲れ様でした!」

『『『お疲れ様でした!』』』

 

 最後は少しトラブルのような事もあったが戦車道三日目、初の戦車戦は終わった。

 

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

 

……………

 

 

 

 

………

 

 

 

 場所は変わって大洗にある大浴場。

 

「もうズルいズルいズルい、と言うより羨ましい! カナりんってばあんなイケメンに助けられて本当に羨ましい!!

「そんな事を言ってはダメですよ沙織さん。カナエさん自身は倒れる所だったんですから」

「もちろんそれは心配してるよ。でも羨ましいものは羨ましいんだもんっ」

 

 広すぎる空間に発せられる羨望は場所もあいまってよく響く。興奮気味の沙織を華が宥めているが、残念な事に彼女(シロハとカナエ)は直前に生徒会と簡単な方針を話し合うと後で大浴場に来ることになっていた。

 

「……うーん」

「おや優花里さん。何かお悩みですか?」

「いや、戦車道を経験しているカナエ殿が倒れそうになった事なんですが。恐らくカナエ殿にとって1年ぶりの再開なので仕方がないと思うのですが、あの倒れ方は体力がなくなったと言うより――」

 

 カラカラ。

 

 優花里がカナエに対する疑惑を答えようとすると戸口が動く音が浴場に広がった。その音で誰もがカナエが来たと思った。

 

「あっ、やっときたねカナりん。ちょっと言いたい、こ、と……」

 

 真っ先に沙織がヘルベルトの件の事を言おうとしたが彼女(シロハとカナエ)の姿を見てそれは途絶えた。そして華と優花里も同じく絶句し、しかし麻子だけはまったりしていて気付いていない。

 

「ん、どうしたの?」

「あの、カナエさん。その髪……」

「髪? ああ、そっか。ウィッグに慣れてたからすっかり忘れてたわ」

 

 3人の反応から疑問を抱いたが華の指摘で原因を理解した。

 彼女たちの前に現れた彼女(シロハとカナエ)はツインテールの長い髪ではなく、ストレートの短い髪で現れた。

 しかしそれとはお構いなしにさっさと体を洗い、皆がいる風呂にやってくる。

 

「ふぅ……」

「ってちょっと何事もなかったようにしてるの!? カナりんどうしたのその髪!?」

「元々この長さよ。今までのはウィッグ。ついでに眼鏡も伊達」

「ちょっと待って下さい。確かカナエ殿って去年は長髪でしたよね? その時は?」

「あれは地毛。転校する前にバッサリ切ったのよ。ナイフで」

「ええっ!?」

「お二人とも。まずは落ち着いてお聞きしましょう」

 

 突然の事に騒ぐ二人を華が宥めて落ち着かせる。麻子もこの騒ぎでその姿にようやく気付き、そして聞き耳を立てる。

 

「それでカナエさん。どうしてわざわざウィッグを?」

「簡単に言えば決意表明。私、前の学園艦で戦車道をやってたんだけど色々思うことがあってね。自分の意志を貫きますって切って転校したの」

「……それは去年の黒森峰関連の記事に関わっているのでありますか?」

「うーん。私の行動がきっかけにはなったかもしれないけど、それは考えすぎ。話を戻すけどその後にウィッグと伊達眼鏡を使ってのは雲隠れの為。色々と目立ちすぎたからね」

「なんだかドラマみたいですね」

 

 まぁ確かに。と彼女(シロハとカナエ)以外が思ったことは間違いないだろう。

 

「でも私は戦車道に戻るつもりだった。大洗で戦車道が復活したことはまさに渡りに船だったでしょうね」

「じゃあカナりん、もし復活してなかったら?」

「安心して、大洗は好きよ。ただスポーツ留学や短期転校として戦車道をやってる学園艦に行くつもりだったけどね。」

 

 そこまで言うと彼女(シロハとカナエ)は風呂の中で立ち上がり、移動すると皆が見える辺りで続けた。

 

「私は好きに選んでるだけ。戦車道も、大洗に来たこともね」

 

 驚く事実を知った彼女たちだったが、その姿に後悔も迷いもないと思わず見とれた。

 ただここで付け加えるなら、

 

「カナエさん。前を隠しませんか?」

「? 別に気にしないけど」

「いや気にしようよ!!」

 

 堂々としているのもどうかと思う。

 

 




次回予告


「なんでいるのよ。
 姉さん言い方。でも確かに私もそう思うけど」
「もちろん、貴女に会うためですよ」


「練習試合が決まった。相手は聖グロリアーナ女学院だ」


「練習試合もあるけど、終わったら私には会う子がいるから」


「では行きましょう。私、戦車道は好意的ではありませんが姉様たちは大好きですから」

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