ある部屋の扉の前で三司さんが
「理事長、三司です」
「入りたまえ」
中から返事が聞こえ、三司さんに続いて中へ入ると、厳しい目つきのいかつい男性がいた。この人が理事長か。
三司さんは俺達を連れてきたことを報告した後
「それでは、私はこれで失礼します」
と言って退室していこうとしたので3人でお礼を言った後、ニコリと笑って出て行った。
三司さんが出て行ったあとは軽く自己紹介したのちに、外では大変だったな。ここで思う存分学んで行ってくれみたいなことを言われた。
そんな話のあと、机上のそなえつけの電話の受話器を取り、どこかに連絡を取り始める。
「私だ。理事長室まで来て欲しい。伝えていた通り、新しく編入する学生が3名いる。いつも通りだ。登録を頼みたい。ああ、待ってる」
誰かとやり取りした後受話器を置き、
「すまないが、君たちには編入に関する最後の手続きをしてもらう」
「あれ?何かありましたっけ?」
「ああ。鷲逗研究都市の住民には
AIMS……
アストラル使いとその能力に関する情報をまとめたデータベースだ。理事長の説明ではアストラル研究の内容によっては協力してもらう事もあるとか色々言われたが、アストラル能力者を集めることに反対した人たちへの管理してますよアピールの一面もある。
とまぁ、そのような説明を受けたあと俺達は了承し、少し待っていると部屋にノック音が響き、
「入りたまえ」
「失礼します」
と、白衣をまとった女性が入ってきた。2~3個上かな?
「この子たちが編入生だ。後のことはよろしく頼む」
「分かりました。では、失礼します。それじゃあキミ達はアタシに着いてきてね」
「あ、はい。それでは失礼します」
「「失礼します」」
「ああ。良い学生生活を」
理事長室を出てすぐに
「ココの最上階にアタシの研究室があるから、研究棟まで行かずに登録できるよ」
「……あの、先生」
「ぐぁっ!?」
「な、なんですか?どうしたんですか?」
「暁……そりゃないわお前ー……」
「え?え?」
「暁君、暁君。この人……先生じゃなくて学生じゃないかな?」
「七海の言う通り、学生だぞ」
「え、そうなの?自分の研究室を持ってるから、てっきり先生なのかと……」
「先生にしては若すぎるし、白衣の下は学生服でしょ」
「え?」
「判断基準そこなんだ……まぁ仕方ないか……」
「お前って周りを全然見てないんだな……」
「ぐっ……」
「自分でも分かってるよ。年甲斐もなくこんな服着るのは恥ずかしい、ってことぐらい。若いキミから見れば、アタシが制服なんて無理があるよね……」
「ほら、なんかAVがとかデリヘルがとか言ってるぞ。どうすんだよ」
「すみません。失礼な間違いをしてしまって……まさか学生が自分の研究室を持ってるなんて思ってもなかったので」
「まぁ、そうだよね。普通は無いよね、一学生が校舎に自分の部屋を持つなんて。でも良く分かったねアタシが学生だって」
「あの……あやせ先輩とスカートのチェックやネクタイが同じだったので」
「そっか。理事長室まで案内したのは、三司さんだったのか。まぁ、自分で言うのもアレだけど……アタシはちょっと特別な学生でね」
「成績が優秀なんですか?」
「いやー、実は留年してるんだよ」
「……そういう意味で?」
「もしかして、2回ダブって、今年3回目とか?」
「お、正解。最高学年3回目だよ。他にいないでしょ、こんな学生」
「それは確かになかなか見かけませんね」
「つーか、予想してたのが全部当たっているとは……」
「ん?瑞樹、なんか言った?」
「いや、なにも……」
「おかげで周りと比べると、肌の張りが……水の弾き方が、如実に……ぅぅっ……辛いっ」
「……」
「2~3つ差なんて、そんなに変わるもんですかね?」
「変わる!変わるよ!2~3つ離れてるとすっごく変わるんだから!キミたちには分からないよ!」
「えっと……その……すみません……」
「ああ!そんな謝らないでよ。悪いのはこっちなんだから……留年こそしてるけど、別に成績が問題って訳じゃなくて、単位の問題だからね」
「先輩には単位を取りたくない事情があるってことですか?」
「ん?んーー……ナイショ♪」
暁の質問に怪しげな微笑みを浮かべて唇に指を添える先輩。まぁ、初めて会った人間に気安く打ち明けないのが普通なんだがな。
ん?暁が何か考え事?……まぁ、いいか。
「そんなわけで『時間を余らせても仕方ない。暇なら研究しろ』ってこの部屋をね。たまに研究棟にも顔を出したりするんだよ」
「へぇ~、そうだったんですね」
「そうだったのだよ。っとここがお姉さんの研究室。さあ、どうぞ」
ある部屋の前に着き、センサーに手をかざして、ロックを解除して、部屋の中へ招き入れてくれた。
「「「失礼します」」」
「コーヒーと緑茶があるけど、どっちがいい?」
「え?いいんですか?」
「うん、遠慮しなくていいよ。自分の分を入れるついでだからね。で、どっちにする?」
「それならコーヒーで」
「じゃあ、俺も」
「わ、私もコーヒーを……」
「オッケー。少々お待ちを」
そうして準備をする先輩。あ、インスタントじゃなくてドリップだ。そういえば……
「七海ってコーヒー飲めたっけ?」
「コーヒーくらい飲めるよ。苦手ではあるけど……多分」
「多分って……まぁ、飲めなかったら俺か暁に渡せ。飲んでやるから」
「う、うん……その時はよろしく……」
はぁ、別に意地なんか張らなくてもいいのに。背伸びしたいお年頃なのかな?
とりあえず、先輩がコーヒーを入れている間に部屋の中を軽く確認するが、特に変わったものや、見るからに特殊そうなものはなさそうだ。PCがあるけどあれでAIMSにアクセスできるのかな?
「じゃっじゃーん。ほい、お待ちどう」
「ありがとうございます」
差し出されたコーヒーを受け取る。まぁ、すぐにわかることだ。
「ミルクと砂糖はご自由にどうぞ」
「良い香りですね」
「本当だな……うん、おいしい」
「う、うん。この苦味がたまらない、感じですね……」
「涙目なのに無理しなくていいぞ。すみません、緑茶お願いしてもいいですか?」
「うん。すぐに淹れ直すよ。ちょっと待っててね」
「……すみません」
「いいよいいよ。お湯も残ってるからね。すぐ淹れるからねー」
そう言って緑茶を淹れに行く先輩。
「飲まないのならもらうぞ。いいか?」
「うん……きゃっ!ちょっと、何するの!?」
落ち込んでる七海を頭をちょっと乱暴にわしゃわしゃと撫でる。
「今度から遠慮せずに言うこと。いい?」
「う、うん……分かった。それと……ありがとお兄ちゃん」
「……ジー……」
「な、なんですか?」
「仲がいいなー、と思ってさ」
「はっはっは、シスコン舐めないで下さい」
「うわー……ねぇ、彼っていつもこんなこと言ってるの?」
「はい。まぁ、気にしないでください」
「それより先輩。この部屋の鍵って、生体認証が取り入れられてるんですか?」
「うん。でも、認証してるのは指紋や掌紋でもなくて、アストラルなんだけどね」
「えっ!?アストラルで?」
「アストラルはその使用者によって大きく異なって、全く同じ変化はないと言われてるんだよ。つまり、アストラルで個人の特定が可能であり、そのシステムを組み込んだセキュリティの実験品がアレってこと」
「どもそれって、アストラル使いしか使えないシステムになりますよね?」
「ところがっどっこい、そうじゃないんだよ。能力を発動できなくても、アストラル自体には誰しもが干渉してるもので……まぁ、この辺は授業でその内やると思うよ。とにかくアストラル使い以外にも反応するように設計されているのさ。じゃないとニッチな商品すぎる」
「こんなシステムが、この学院には沢山あるんですか?」
「まさか。ここ以外だと水や電気を管理してる機械室ぐらいじゃないかな。まだ実験段階だしね。は、緑茶お待ちどうさま」
「あ、ありがとうございます」
「あのー、先輩。そろそろ本題の方に……」
「ああ、そうだったね」
「具体的には何を登録するんですか?」
「名前、生年月日、アストラル能力。ああつでに学院で行った体力測定と健康診断の内容も一緒に登録してるんだよ。今日の所は、名前、生年月日、アストラル能力、身長体重ぐらいかな」
「そういえば、先輩のお名前は?」
「あー、そういえばアタシの自己紹介がまだだったね。アタシの名前は式部茉優だよ。ヨロシクね」
なんで「ありがと瑞樹君」じゃないかって?そりゃ……
お兄ちゃんって言わせたいからに決まってるだろ!
七海ちゃんにお兄ちゃんって言われたい……