「へーそんなことがあったんだ。」
モロ、本名師岡卓也。
風間ファミリーの一員で「モロ」の愛称で呼ばれている漫画やアニメ、ゲームなどに詳しいオタク系男子である。
「ああ。ういえばモロは山田と仲良いんだっけ?俺は世間話するくらいなんだけどモロはどういう流れで山田と知り合ったんだ?」
そう聞くのは先日、今日から数えて5日ほど前の放課後に山田、まゆっち、武蔵による修羅場(ある意味)に巻き込まれた大和である。
なおその察知能力の結果、まゆっちは修羅場に放置されたのだが。
「うん。太郎とは割と仲いいほうだと思うよ?太郎もゲームとか漫画とか好きでね、僕とスグルと同レベルで会話できるしね。何より武蔵小杉さんをイジるとき以外はかなり常識人よりだからね、気が楽なんだよ。」
「マジで⁉…正直信じられないなあ。」
モロの返答を聞いて大和は二つの意味で信じられないという言葉をつぶやいた。
このモロとスグル、本名大串スグルはかなりマニアックなヲタクである。
そんな彼らと同等の濃いヲタクがこんな身近にいたということ、そして同年齢の女子高生へ一緒にハードエロゲをプレイしようなどとキチガイ染みた言動をする山田が意外と常識人であること、この二つに驚がくしたのだ。
「ん?大和は山田とは知り合いじゃなかったのか?意外だな。俺様もアイツとは結構前からダチだし、1年限定だけどアイツはかなり顔広いからな。人脈大好きな大和ならもう知り合いなのかと思っていたぜ。」
「いやさっきも言ったけど顔見知り程度なんだ。むしろ二人と友人だったり、実はあんなエキセントリックな一面があるとか全く知らなかったよ。」
「ふーん。意外だな。それにそう言うならキャップやワンコとも仲いいぞ。」
心底意外だ、という雰囲気でそういうのは島津岳人。
同じく風間ファミリーの一員で筋骨隆々の肉体にタンクトップという男くさい風貌の男である。なお彼の母親が経営する島津寮に大和やまゆっちなど風間ファミリーの多くが下宿していたりする。
「マジで!?むしろキャップと!?なんで!?」
大切な仲間が意外にも山田と縁が深いことにさらに驚き、地味に疎外感を感じてしまった大和は声を上げる。
大和は、キャップこと風間翔一は性格がよく美形男子で快活で人気者であるが、その極度に自由すぎる在り方から友人は多くとも逆に特別仲がいい友人など風間ファミリー以外はそうは居ないと割と失礼な分析をしていた。
「そういえば太郎もそんなことを言ってたね。なんか今でこそヲタク趣味全開で暮らしてるけど、昔一時期そんなものが一つもないジャングル奥地みたいな所で暮らしてたんだって。」
「そうそう。んでキャップも舌を巻くほどのサバイバル技術持ってたり謎の遺跡や変な生物と遭遇したことがあるらしくてキャップめっちゃ目をキラキラさせて話を聞いてたよな。」
「うん何でも人間サイズで猫耳の蟻と遭遇して酷い目にあったとか色々嘘っぽいエピソードとかあるらしいよ。」
「人間サイズで猫耳の蟻とか何だよ…。こう、クトゥルフ的なクリーチャーしか想像できないんだが…。」
大和のセリフにほかの面々も力強くうなづく。
今更だが此処は風間ファミリーの秘密基地がある廃ビルの一室である。
そして大和の言葉を聞いて脳裏に冒涜的かつ宇宙的なクリーチャーを想像している面々は
3年生
圧倒的な戦闘力と美貌を持つ美少女(但し中身はおっさん)である「武神」川神百代。
2年生
百代の妹にして先ほどの話にも名前が出てきた修行大好きっこの川神一子。
何処か冷たい物静かな雰囲気を持つ容姿端麗な大和の妻(自称)の椎名京。
転校初日に白馬で登校してきた日本を勘違いしているツンデレドイツ人美少女のクリスティアーネ・フリードリヒ。
である。
そこに加えて先ほどから会話に参加しているモロ、ガクト、大和、以前から山田と友人であるまゆっちとファミリーのほぼ全員が集合している。
(キャップは旅行中)
「なあ一子。その山田とは強いのか?どうにも話を聞いていると中々ユニークそうな奴だけど変人って印象なんだが。」
「うん!お姉さま!太郎はいいひとよ!だってよくスポーツドリンク差し入れしてくれるし、修行の応援してくれるもの!」
「おう!山田は毎日頑張って修行しているワンコのファンなんだとよ。変な意味でななくな!」
「なるほど。まあガクトも言うならそうなんだろうな。ファンまで出来るとは流石私の妹だ!褒めてやるぞ~!!」
「うにゅ~お姉さま~⁉」
一子の餅のようなほっぺたをこねくり回し愛でる百代。
そんな光景を微笑みながら見る京はボソッとつぶやく。
「私も珍しく山田とは話すかな?彼は私と大和の関係推進派だし凄く良いひとだよウン。」
「ファ⁉」
大和はファミリー以外の人間とは壁を作っている京がファミリー以外の人間と多少なりとも交渉があることに驚がく半分嬉しさ半分だった。
だが続く“推進派”という言葉に今日一番の驚がくを現す。
…しかし大和は今日一日で何度驚がくするのだろうか?
「な、なんだよ推進派って!?俺初耳だぞ!?」
「ああそりゃ大和本人には隠してるからね。実は京×大和推進派と否定派の暗闘が以前から学園では繰り広げられてるんだ。第三次大戦時には
『椎名京が直江大和のことを本当に好きだということはよく分かるから応援したい。つーかさっさと諦めてくっつけよアイツ。アイツが他の女の子に手を出しても彼女は絶対諦めないだろ?つまり男子に対して女子が一人減るってことだ。…あとは言わなくても分かるだろう、お前ら?』という名演説をして現在は推進派が優勢なんだ。」
「何言ってんのアイツ⁉モロ!!本当に初耳なんだけど⁉第三次って何⁉一次と二次があったのか⁉」
「自分もどちらかと言えば推進派だな。まあそんなことはどうでも良い。実はここに先日の東西交流戦をマルさんに編集してもらったDVDがある。本当は2年の試合を見返して自分の反省をしようと思っていたのだが…せっかくだ、1年の試合も見て件の山田という男の動きを見てみないか?」
「「「良いねえ!!」」」「無視かっ!?」
キャップがどこかから入手してきたテレビの画面に若干ノイズがあるものの先日西の天神学園と東西交流戦を行った工場地帯が映し出される。
ちょうど1年生の試合が始まるようである。
画面の中では1年生の本陣には武蔵小杉を大将に周囲を山田も含めた優秀だと有名な人員で固めている。
多くはS組のようだが大和が知る限り他のクラスでも優秀と噂の生徒が多く試合に参加しているようだ。
見る限りこういった催しにあまり参加したがらない連中も多く参加している。
これが山田のコネの力ならば、なるほど彼と関係を深めればライフワークの人脈づくりは一気に進むだろう。
「結構有力な生徒が集まっているのだな。私でも噂くらいは知っているが余りこういうイベントに積極的ではないものまで参加しているのはその山田何某の力なのか?」
「いえクリスさんそれだけではありません。大将の武蔵さんのカリスマのおかげもあります。武蔵さんは入学早々有力な生徒と正々堂々と決闘して周りに力を認めさせていきました。まあ武蔵さんは正直強引な部分もありますが、そこを山田さんがフォローを行うことで1年生に対して絶大なカリスマ性を持つに至ったのです。」
「なるほど。将のカリスマか…。具体的にはどうしたんだ、まゆっち?」
「はい。武蔵さんは決闘するまでは強引な部分もありますが、まず決闘自体は正々堂々お互いに有利不利が無い内容で行ったこと、そして山田さんから武蔵さんが決闘に勝つために様々な分野を日夜努力を重ねていることを周囲に広められたことから決闘相手だけではなくそれ以外の多くの生徒にも認められています。」
「ほほう。」
「あとは日常的に武蔵さんが山田さんにイジられて…その…畏怖だけではなく親しみを持たれているからですかね。」
「ゆるキャラ的な、な!」
「カリ…スマ…?」
二人と友人であるまゆっちの解説にクリスは納得の意を示す。
だが続く松風の一言を聞いて首をかしげてしまった。
「お!試合が始まったみたいよ!お姉さま!!」
微妙な空気の中、試合が始まったことを告げるワンコの声を聴いてみんな画面に意識を集中させる。
画面の中でまゆっち他各将に率いられた部隊が天神学園陣営に切り込んでいく。
撃破される部隊もいくつかあるがまゆっちをはじめ大部分の部隊が相手を撃破し本陣を包囲していく。
「さすがまゆっちだぜ!圧倒的じゃないか我が軍は!!」
「は、恥ずかしいです。」
「もっと褒めたたえてもええんやで?ガクトBOY?」
画面の中のまゆっちの快進撃をたたえるガクトに顔を赤くするまゆっち。
そして1年生の本陣でも動きがあったようだ。
見ると山田が画面で見ていても気づくと見失うような気配の薄さで一人敵本陣へ斥候を行っていた。
その動きは機敏で影などに潜むとそこにいると知っていても全くわからない。
まるで暗殺者か忍者のようである。
「どうやら斥候して相手の位置を本陣に伝えているようだね。まるでNA〇UTOみたいだ。」
だがそんな活躍も大将である武蔵小杉の一声で止まる。
『突撃!!突撃~!!』
敵本陣の位置を山田から伝えられた武蔵小杉が自ら部隊を率いて進軍しだしたのだ。
『ファ!?』
優勢な状況で大将が先頭に立って敵陣に乗りこむ。
まったくもって意味不明である。
「…なんで?」
軍師役の多い大和も分からない。
「…おそらくテンションが上がったから?でしょうか?」
「えぇ…」
『えぇ…。』
画面の中の山田と大和のリアクションがリンクした。
『お嬢は何考えてんだ⁉…いやテンションに任せて何も考えていないな、ありゃ。』
言うや否や武蔵小杉の方へ駆け出す山田。
その速度は明らかに常人の出せる速度ではない。
「⁉早い!これ程とは!?」
「しかもどうやって居るのか分からないけど正確に敵の位置を把握してるみたい。」
画面の中ではシューティングゲームのように的確に敵部隊を避ける山田。
だがそれは平面的に俯瞰している側だから言えることで、実際にはパイプやダクトなどが入り乱れて山田から敵部隊を物理的に視認できない場面もあった。
だが山田はどうやってか敵部隊を察知し戦闘を回避しながら武蔵小杉のもとへ駆けていく。
「……」
そうしてしばらく進んでいくうちに
『キャー⁉ピンチ?プッレ~ミアムにピンチだわ⁉』
武蔵小杉の緊張感のない悲鳴がこだまする。
それを聞いた山田はついには回避することをやめて武蔵小杉まで最短距離をさらに速度を出して駆ける、いやパイプなどを足場にパルクールじみた動きで宙を舞うその動きはすでに跳んでいると言って良いだろう。
そしてあと少しで武蔵小杉と合流できる位置まで来たとき、遂に敵生徒と会敵してしまったのだ。
『!ほう中々の速度!良いだろう‼この次期十勇士である天神学園1年三よ…』
だが腕の立ちそうな敵生徒は山田とすれ違う瞬間、糸が切れたように倒れこむ。
「倒れた⁉何があったの?」
画面越しに見ていたワンコには敵生徒が勝手に倒れたようにしか見えなかった。
そしてそれはほかの面々も同様であった。
「手刀だ。」
「…はい。」
「「「⁉」」」
いや二人、百代とまゆっちだけは山田の動きをとらえることが出来たようだ。
これは山田の動きを捉えられた二人を褒めるべきか、それとも画面越しにもかかわらず常人には見切れぬ速度を出す山田が凄いのか。
「恐ろしく速い手刀 私やまゆっちじゃなきゃ見逃しちゃうね」
どこかの殺人嗜好者のようなセリフをはく百代。
種明かしするなら山田は単純に常人では視認不可能な速度で手刀を繰り出しただけである。
驚くべきはその速度と走りながらそこそこ強そうな相手に正確に手刀を当てれる山田の技量だろう。
「…凄い。」
誰とも言えぬ感嘆の声が室内に響く。
しばらく山田の駆ける姿を眺めていると、対象である武蔵小杉が打ち取られて試合終了の合図が出される。
画面の中の山田は速度を緩めて立ち止まりボソッとつぶやいた。
『まったくお嬢は…お仕置きしなきゃ(白目)』
その声を聴いたガクトとモロは何を思い出したのかだらしない笑みを浮かべ、まゆっちは頬を赤く染めた。
武蔵小杉のお仕置き
体操着ではなく普通の制服姿に猫耳猫しっぽで語尾にニャンと付けて1日生活する。
またニャンというとき両手で猫ポーズをする。
それを羞恥で真っ赤&涙目の武蔵小杉さんが恥ずかしながらも律儀にやってくれる。
→結果として1年男子女子生徒+αに対して武蔵小杉のカリスマ(笑)が増す。