つぶら★マギア【アニメ編完結】   作:ダラ毛虫

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始まりは血飛沫から


主人公のコンセプトは、反転まど神様
鹿目まどか→まどかかなめ→つぶらかなめ





第0話

 ーー無事で良かった、カナメーー

 

 音は無かった。

 彼女(アネ)は、一声を出す間も無く死んだから。

 一息の時間すら無く、化物と相討ちになったから。

 なのに、言葉が伝わった。

 半年しか無い、私の記憶の。

 その始まりに聴いた、私の原初の音と。

 同じ言葉(オモイ)を、聞いた気がした。

 

「やあ、初めまして」

 死体(アネ)の傍らに、白い小動物が現れた。

 奇妙な生き物だ。

 少なくとも、私の知識にも記憶にも無い。

「幾つか、聞きたいことがあるわ」

「僕に答えられることなら、答えてあげるよ」

 会話が成り立つ。

 ますます珍妙だが、姉と化物の殺し合いを眺めた直後では、印象が薄れる。

「あの化物は?」

「アレは魔女だよ」

「姉の、あの姿は?」

「魔法少女さ」

「魔法少女とは?」

「願いを叶える代わりに、魔女と戦う少女のことだよ」

「姉は、いつから魔法少女に?」

「半年前だね」

「私が脳死と診断された翌日に、意識を取り戻した頃、か」

「そうさ。彼女は、『妹を目覚めさせる』ことを願ったんだ」

「そう」

「他に質問はないかな?」

「……貴方は、姉が死ぬことを、知っていた?」

「魔女との戦いで倒れる魔法少女は、珍しくない」

「何の為に魔法少女を生み出すの?」

「魔女を倒してもらうためさ」

「願いを叶える理由は?」

「魔女と戦う対価だよ」

「…………魔女が生まれる原因は?」

「絶望した魔法少女が魔女になるからさ」

「もう一度聞くわ。何故、魔法少女を、生み出すの」

「第二次性徴期の少女の、希望と絶望の相転移は、エントロピーを覆す、宇宙のエネルギー枯渇を解消するエネルギー源なんだ」

「つまり、世界を存続させる為、姉を殺した……。

 いや、違う。姉が死んだのは、奇跡を願ったから。

 貴方は、貴方の道理に従い、姉と契約し、姉は契約を履行したに過ぎない。

 姉は、私の目覚めを願い死んだ。なら、私が殺したのと変わらない」

 小動物の瞳が、赤く、輝く。

「驚いたね。こんなケースは初めてだ。

 君は、僕を憎悪しないんだね」

「無意味ね。

 貴方に感情は無いのだから」

「その通りだよ。

 だから僕たちは、エネルギー源として君たち人類を選んだんだ」

「……私にも、感情はあるの?」

「君も含めて、感情はあるさ。

 中でも君は珍しいケースだ。

 君は君自身を強く憎悪しながら、絶望はしていない。

 その感情は、大きなエネルギーになる」

「つまりは、魔法少女足りうる。

 契約が成り立つからこそ、貴方はここに現れた」

「その通りさ」

 小動物を見詰めていた視線を、姉の亡骸へ向ける。

 何も言わない。

 当たり前だ。

 姉はもう、語らない、笑わない、死体だ。

「君はどんな祈りで、ソウルジェムを輝かせるんだい?」

 もしも姉が生きていれば、という仮定に、意味は無い。

 姉が、私を救い、私を守り、私の目の前で死んだ結果が、今の私だ。

 息を吸って、吐く。

 これが緊張か。

 初めて知った。

「……私が、姉を生き返らせる為に、魔法少女に成れば、きっと姉は絶望し、魔女に成る」

「そうなのかな? 僕には分からないや」

 誤魔化しは、無下に切り捨てられた。

 我ながら、どうかしている。

 コレを相手に同情を求めるくらいなら、木石に語りかける方がマシだろうに。

「姉は、魔女と戦って死んだ。

 だから、私は姉を継ぐ。

 私が殺す。

 今現在、この世に存在する魔女も。

 先の未来、絶望し生まれた魔女も。

 見つけ出し、私が殺す」

 求めるべきは、力だ。

 この胸中に渦巻く感情の、捌け口だ。

 理解できず消し去れないコレを、吐き出す手段だ。

「魔女を探し、殺す。

 その為の力を、私は願う」

 もしも、死後の世界というものがあるならば。

「契約は成立だ。君の祈りは、エントロピーを凌駕した!」

 たとえソコが地獄でも、いつか天国の姉まで会いに行き、私の愚かさを叱ってもらおう。

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★

 

 

「ああ、そう言えば」

 日差しを浴びる雪原のような、目に痛いほどに純白の魔法少女が、改めて問う。

 甲冑を元にした様なデザインの衣装と、突撃槍、菱形の盾。

 白く燃え盛る、殺戮騎士の魔法少女。

「まだ、名前を聞いていなかった」

 赤い瞳を尚も煌々と、孵卵器は語る。

「そうだったね。僕はキュゥべえ! よろしくね!」

「宜しく。出来るだけ、長い付き合いになるよう努めるわ」

 その日、(ツブラ) (カナメ)は、魔法少女に成り果てた。

 

 

★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 使い魔の群れを盾で凪ぎ払い、魔女の胴体に槍を突き立てる。

「爆ぜろ」

 突き刺した槍が魔女の体内で魔力を炸裂。戦闘終了。

「さて、次は」

 残党の使い魔を挽き潰しながら、盾の裏面に周辺の地図を表示する。

 キュゥべえこと白い小動物に願った内、『魔女を探す』方の力だ。

 最大半径10kmに居る魔女や使い魔、そして魔法少女なら、位置情報と大体の魔力量を探知できる。範囲を狭めれば強弱も含めて、より詳細に。

 時々、隠密に長けた、反応が極めて微弱な者も居るため、油断は禁物だが、非常に便利だ。

「この一帯は、狩り尽くしたか」

 レーダーに示された光点は、どれも魔法少女と使い魔の物ばかり。

 しばらく待てば、肥えた使い魔が魔女になるかもしれないが、それは他の魔法少女に譲ろう。

 こちらが狩り過ぎると、彼女達がグリーフシードを得られなくなる。

 魔力切れで魔女になられても手間だ。

 いずれ魔女になるから絶望する前に殺してやる、などと言うほど、壊れたつもりもない。

 余ったグリーフシードを恵むほど、酔狂でもないが。

 ともかく、狩り尽くしたなら、狩り場を移さなければならない。

 さて次は何処に行こうか、と考えながら歩いていたら、いつぞやの白い小動物が現れた。

「やあ!」

「何か用?」

 駅に向かう足を止めないまま問うと、ちょこちょこと足元を付いてきつつ、白いのが喋る。

「この街の魔女は倒しきったみたいだね」

「どうせ、すぐに増えるわ。貴方が魔法少女を増やす限り」

「それもそうだね」

 悪びれもせず応える白いの。コレに罪悪感など求めるより、犬猫に愛を囁く方が有意義だろう。

「ところで、次に行く場所の当てはあるのかい?」

「無いわ」

「それは良かった!」

「嫌よ」

 貸しを作ったところで、恩義を感じるはずがない相手の頼みなど、知ったことではない。

 奇跡の対価は日々の魔女狩りで支払っている。

「僕にも分からない力を持つ魔法少女が、見滝原にーー」

 知らん。

 

 

 

 

 

 

 

「アレの頼みなんて、聞くつもりはなかったんだけど……」

「あ、あんた誰よ!?」

 魔女の結界に取り込まれた、そこそこの素養を持つ少女が1人。

 周囲に魔法少女は無し。

「見滝原とは、確か、ここのことだったわね……」

 電車で移動中、携帯電話に模したレーダーを、何気無く開いたのが運の尽きか。

 それとも、民間人の被害を好まない、削りかすのような人間性が問題なのか。

「ちょっと! 聞いてんの!?」

「まあ、良いか」

「何ですって!?」

 後ろできゃいきゃい騒いでいる水色少女は放置。

 視線は、キャンディのような頭の、マントを着た小型の魔女。

「動きが無い……典型的な、トラップかカウンター……」

 あの手の、見た目が小さい魔女は、そこらの大型よりも厄介だ。

 外見から能力か判別しづらく、侮ると痛い目を見る。

「距離を取って戦うのは、久し振りね」

 魔法少女に姿を換装。砲撃モード起動。

「うぇっ!?! ま、魔法少女!?」

「余計な怪我をしたくないのなら、下がっていて」

 魔力連続射出。全弾命中。そして起爆。

 魔女の口から何か出てきた。噛み付いてきた下顎を槍で殴り飛ばす。

「……予想より、大きい」

 些か、手間取りそうだ。

 

 殺される気は、全く無いが。

 

 




妖怪グリーフシード置いてけ、魔女絶対殺すガール、どうかご覧あれ

なお、地の文と会話文の口調が違うのは、仕様です
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