つぶら★マギア【アニメ編完結】   作:ダラ毛虫

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これは、普通の少女達の、神でも悪魔でも化物でもない、普通の話





第16話

 ワルプルギスの夜の力は、こちらの想定も、想像も、上回っていた。

 

 全身を突撃槍で突き爆破した。

 佐倉と共に、数え切れないほど槍を振るった。

 巴と暁美の銃撃が、幾度も幾度も放たれた。

 タンクローリーどころか潜水艦なんて代物まで持ち出して、徹底的に、執拗に攻撃した。

 使い魔を凪ぎ払い、傷を受けても美樹の治癒を信じて突き進んだ。

 好機には魔力を惜しまず、全力で攻め立てた。

 

 

 あれほどあったグリーフシードは、既に1つも残っていない。

 

 

 

「あと一押し、足りないわね」

「だよな……くそっ」

「そんな……」

「こんなことって……」

「まだよ……ここで、ここで倒さないと……これで倒せないなら……私は……私は、もう……」

 

 兵糧であるグリーフシードは枯渇。

 士気は誰もが絶望間際。

 

 

 なるほど。

 こいつは強敵だ。

 

 

 嗚呼、本当にーー……。

 

 

 

 ーーなんて素晴らしい。

 

 

 

 

「は、ははは」

 笑う。

「はははははは、はは、ははは」

 下手くそに、笑う。

「はははははははははははははははははは」

 生まれて初めて、姉の願いにより目覚めて初めて、笑っていることを自覚する。

「アハハハハハハハハハ!」

 壊れそうに、壊れたように、笑う、笑う、笑う、笑う。

「やっと、会えた」

 笑う笑う笑う笑う笑う。

「ああ、そうか、私は」

 初めて、自分が笑っていることを、自覚できた。

「お前を殺すために、魔法少女に成ったんだ」

 

 心からの感情を込めて、笑った。

「本当にありがとう。佐倉、暁美、巴、美樹」

 これまでの全てに感謝する。

「鹿目」

 ここに至るまでの生涯に感謝する。

「私はようやく、私の『敵』に出会えた」

 笑いながら、憎みながら、楽しみながら、怒りながら、喜びながら、哀しみながら。

「私は、ようやく私を救える」

 感謝を。

 

「待たせたわね、ワルプルギスの夜」

 感謝と憎悪と愛と殺意を込めて。

「一緒に、逝きましょう」

 

 私の舞台の、幕を引く。

 

 

 魔女になど、私は成らない。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー魔力暴走が白い閃光と化し、世界を染めたーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞼を開くと、私の部屋だった。

 

 事故で植物状態になるまでの『円カナメ』が生まれ育ったはずで。

 私が目を覚ましてから半年を人間として過ごし。

 魔法少女として近隣の魔女を狩り尽くし別の街へ移るまで過ごした。

 私の部屋。

 

 

 直感に従い、部屋を出て、階段を駆け降りる。

 瞬く間に、1階のリビングに到着。

 

 ここは、姉との場所だ。

 

 両親は、早朝から深夜まで共働きで、休日はプライベートの充実。

 

 

 家には、私と姉しか居ない。

 私には、姉しか居なかった。

 ここで、姉と時を過ごした。

 だから、きっとここに居る。

 

 

「おかえりなさい、カナメ」

「……ただいま、姉さん」

 

 話したいことは、山ほどある。

 復讐のために魔法少女などに成ったことを叱ってもらおうと、ずっと思っていた。

 私を救い、守ってくれたことへの感謝も、伝えたいと思っていた。

 

 だけど、私の口から出てきたのは、違う言葉。

 

「姉さん、私、好きな人達が、できたわ」

 大好きな、命懸けで守りたいと思えた、みんな。

「うん。見てたよ。素敵な()達だよね」

「ええ。最高の、友達よ」

 

 

 

 姉に対して、友達の話をする。

 

 

 まるで、普通の少女のようだと、我ながら笑ってしまう。

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 1人の魔法少女と共に、ワルプルギスの夜は消滅した。

 ソウルジェムが砕けるほどの魔力。

 魂を燃やし尽くした彼女は、魔女にすら成らず、消え去った。

 

 遺された、誰も何も言わず天を仰ぐ少女たち。

 

 

 どこから現れたのか、最初からそこに居たのか、白い影が、瓦礫に座る。

 

「時間遡行者、暁美ほむら」

 孵卵器に名前を呼ばれた少女が、冷めきった視線を投げる。

 彼女が繰り返した1ヶ月。それが、鹿目まどかの魔力係数を育て上げた。

 そう語られても、彼女に動揺はない。

 既にそれは、達成された目標だ。

 鹿目まどかが魔法少女に成ることは、もうないだろう。

「だけど、鹿目まどかの安否の他に、君にはもう1つ目的があった」

 

 しかし、その平静は揺るがされる。

 

「1ヶ月前まで、連携に優れたベテランの魔法少女が2人いれば対処できたワルプルギスの夜が、どうしてここまで強大になったのか。

 その原因も君だったんだね」

 

 呼吸が、止まる。

 

「ワルプルギスの夜を倒すために君が同じ時間を繰り返す毎に、最強の魔女にも、平行世界の因果線が絡まっていった」

 

 心臓が、軋む。

 

「…………嘘よ……」

「嘘じゃないさ。事実、かつてのワルプルギスの夜なら、たとえば、マミと杏子が組めば勝ち目はあった」

 だって、それでは、まるで。

「円カナメが自分を犠牲にするほどの相手じゃ、なかったよ」

 暁美ほむらが、円カナメを殺したようなものでーー……。

 

「いい加減にしなよ」

 

 苛立った声が、凍てついた空気を切り裂いた。

 

「アイツは、自分を犠牲に、なんて殊勝なタマじゃない。

 こんな見え透いた嫌がらせでぐらつくなっての」

「あ……」

「嫌がらせのつもりはないよ。僕はただ事実をーー」

 言葉を続けようとした孵卵器が両断される。

「酷いじゃなーー」

 両断される。

「少しは話をーー」

 両断される。

「落ち着ーー」

 両断される。

 

 

「ふん。諦めたか。根性なしめ」

「……むしろ、かなりしつこかったと思うわよ」

 周囲には無数の残骸。

 感情を持たない、合理の機械のパーツの山。

 

「アンタが情けない顔してるからだよ」

 それを気にも留めず、佐倉杏子は言う。

「あんな満足そうに笑って逝った奴を、犠牲、だなんて、馬鹿にしてる」

 ふん、と鼻を鳴らして、笑って言った。

 

「ほら! マミもさやかも! 辛気臭いツラしてんじゃないっての!」

 

 

 

 

「杏子ちゃん、すごいね……」

「……まどか……いつから……?」

 

 避難所に居るはずの、魔法少女に成らずに済んだ、普通の少女。

 

「実は、戦ってる途中から……。

 カナメさんには、バレちゃったみたいだけど」

 

 普通に生きて、幸福(フツウ)に過ごすことを許された少女は、泣きそうな瞳で笑う。

 

「……カナメさん……最後に、わたしの方も見て、笑ってた」

 

 彼女の最期(『ありがとう』)は、確かに少女にも、届いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時が過ぎれば、歳月が巡れば、また誰か居なくなるかもしれない。

 

 魔法少女は過酷だ。

 魔女との戦いは、一瞬で命を奪う。

 安全な戦いなんてどこにもない。

 

 

 それでも、誰も居なくなってしまうまでは、彼女たちは時々集まって、テーブルに『6個』ケーキを並べて、お茶会をする。

 

 

 

 今日も世界のどこかで、魔法少女が生まれ、魔女と戦い、魔女を殺し、魔女に殺され、魔女に成る。

 

 

 

 

 

 

 円環の理は存在しない。

 

 神に成れる少女は、今日もフツウの、少女のまま。

 

 

 

 

 

 




これにて完結!
誰が何と言おうがハッピーエンドです! 幸せとは個人の主観!

感想欄で「死んで姉と出会って一緒に成仏するのが一番のハッピーエンド」って言われた時は、「やっべぇバレた!?」とリアルに声に出ました
でも生存エンドは趣味じゃなかったのでそのまま進行しました


結果はご覧の通り! 世界は何も変わらない!


魔法少女は戦って戦って負けて死ぬ
希望が絶望に堕ちれば魔女に成る

それでも必死に、生きている

そんなありふれた、何も変わらない当たり前が、この物語の結末です





ちなみに、叛逆編は脳内に漂ってはいます
カナメが魔法少女になったけど見滝原に来る前に円環の理った世界線の話になりそうです

形になったら投げにくるかもしれません
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