今回はさやか視点にて、魔女を殺す機械ガールが魔女を殺す話です
病院で見つけたグリーフシードが砕け、魔女の結界に閉じ込められてから、ほんの数分。
キュゥべえは、いつの間にかどこかへ行ってしまった。
1人でマミさんの到着を待つあたしの前に現れたのは、真っ白な少女。
ふわふわした白銀の髪はサイドテールに結われて、その顔や、白を基調としたカーディガンから覗く両手は、透き通るように白い。
薄茶色の瞳に宿る無感情も、全体の色素が薄い印象を増している。
容姿も無機質さも、人形じみた、という表現がピッタリな乱入者はしかし、こちらに見向きもしない。
突然の登場に驚くあたしを放って、何かブツブツ呟き、挙げ句に第一声が「まあ、良いか」だ。
何だこいつ、と思ったあたしは悪くない。
つい立ち上がって近寄ろうとしたら、前置きも無しに魔法少女に変身して、勝手に戦い始めた。
その姿は、端的に言って、ゴツい。
西洋甲冑風の胸当て、手甲、腕当て、すね当て、鉄靴。
全長1メートル近い菱形の盾を左手に。
右手には、彼女の身長を優に越えるほど長く、太い、円錐形のランス。
鎧の下に着た、フリル多目の衣装が、辛うじて魔法少女要素。
さっきまでは無感情で、今は殺意に濁った目により、それも台無しだけど。可愛いげなんて捨て去っている。
マミさんと転校生くらいしか魔法少女を知らなくても、一目で異質と分かる。
魔法少女だから魔女と戦う、ではなく、魔女と戦うために魔法少女を名乗っている、ような感じ。
そんなことを考えている間に、白い魔法少女はランスを魔女に向けた。
槍の穂先が2つに裂けて、その間に純白の閃光が集まり、光の球が形成される。
瞬間、5回の閃き。
光球から魔女に放たれる、5発の弾丸。
額、口元、胴体、右腕、左腕。
着弾と同時に、轟く爆音。
「……な、情け容赦ない……」
魔女が居た辺りには、粉塵が立ち込めている。
あんなのもう、木っ端微塵だろう。
しかし、魔法少女の眼差しは、全く緩まずそこを見据えていて、声をかけられない。
邪魔をしたら殺されそうな雰囲気が、全身から吹き出している。
何なんだと訝しむ間もなく、粉塵が歪み、飛び出す影。
黒く長い身体が伸びて、鋭い牙が並ぶ顎が、魔法少女を喰い千切ろうとしーー
槍の横凪ぎで、思いっ切り下顎を左方向へ殴り飛ばされた。
体勢を立て直す隙も与えられず、側頭部を貫かれる魔女。
殴った直後に駆け寄り、ダッシュの勢いのまま槍を突き出したらしい。
動きが早すぎて見えなかったけど。
しかも、突き刺した槍が白く光って、そして炸裂する光。
刺した頭の内側からの爆発。
情け容赦ない、なんて言葉も失い、あんぐり口を開くあたし。
まだ暴れる魔女も、とんでもなく怖いけど、それより、魔女の頭に跨がる魔法少女が怖い。
側頭部の爆発で怯んだ隙に、ロデオのように飛び乗り、頭に突き立てた槍を手綱代わりに、暴れ狂う魔女にしがみついている。
勿論、さっきから何度も、白い閃光と爆音は繰り返される。
あ、追加で左手の盾も刺した。そっちも光ってる。本当に酷い。
魔女が暴れて、壁に身体ごと叩き付けられても、食らい付く。
ぐりぐりぐりぐり、槍と盾を刺し進めながら、何度も何度も爆破する。
華やかさ? 優雅さ? 知るか殺す。
そんな台詞が聞こえてきそうな、泥臭さと執念の戦い方。
「………なんて奴よ……」
「……本当に、何て娘なのかしら……」
「へ? ま、マミさん!?」
「遅くなってごめんなさいね、美樹さん」
「だ、大丈夫だった? さやかちゃん」
待ちに待った、本当に待望の、マミさんとまどか。
正直、これ以上この殺伐空間に独りで放置されたら、どうしようかと。
「マミさんも、アレが誰か知らないんですか?」
「ええ……余所の魔法少女と関わる機会は、滅多にないもの……。あ、終わったわね」
マミさんの言葉通り、最期に天を仰いだ魔女は、ダメ押しの爆破を受けて、地に伏した。
その身体が、完全に崩れ去ったのを見届けてようやく、魔法少女は服装を戻す。
結構、壁に叩き付けられていたはずだけど、息も乱れていない。化け物だ。
「初めまして、巴 マミよ」
「……
病院の廊下に戻った空間で、グリーフシードを拾い上げる魔法少女と、マミさんが挨拶を交わす。
「まずは、お礼を言わせてちょうだい。美樹さんを守ってくれて、ありがとう」
「成り行きだけど、気持ちは受け取っておくわ」
にこやかなマミさんと、元の無表情人形になった白い奴ことツブラ。
転校生の時と比べて、マミさんの対応が柔らかいのは、出会い方の違いだろうか。
「それで、どうして円さんは見滝原に」
「やあ! 来てくれたんだね! カナメ!」
「……出たわね……」
マミさんの質問を遮って、後ろからキュゥべえが姿を見せる。
「あ! キュゥべえ! あんたどこに行ってたのよ!」
このキュゥべえ、あたしと一緒に居たはずが、ツブラが現れる直前に、どこかへ消えてしまった。
おかげで、あたしは1人でツブラの魔女爆殺を眺めるはめになったのである。
「そのことについては、すまなかったね、サヤカ。
それより、カナメ、ここに来たってことは、協力してくれるんだね!」
「せめて質問の形式を取るべきね、今のは。
まあ、どうせ来てしまったからには、ついでに請け負うけれど」
「協力って、何なのキュゥべえ?」
ぐいぐい行くキュゥべえ、呆れた様子のツブラ、不思議そうなマミさんと、三者三様に話を続ける。
会話なのかな? あれ。
「見滝原に居るという、謎の力を持つ魔法少女について。
どうやら、貴女のことではなさそうだけど」
その言葉で、あたしも事情を察した。
つまりツブラは、対転校生にキュゥべえが呼んだ援軍らしい。
実力は、さっきので証明済み。魔法少女として、あの殺戮っぷりはどうなんだ、とは思うけど。
「あれ? そう言えば、転校生は? いつもなら、そろそろ出てくる頃だと思うんだけど」
「「あ」」
あたしの質問に、マミさんとまどかが、揃って口を開けた。
ほむほむ緊縛なう
次回は過去編なので、次々回まで緊縛延長