今回、視点がコロコロ変わります
★★★★★暁美ほむら★★★★★
彼女とのファーストコンタクトは、まさに「最低」だった。
もちろん、「最高」はまどか。
「誰……あなた……」
「私は円カナメ。初めまして、暁美ほむら」
まるでインキュベーターのような、感情の読めない瞳。
そして何より、私が「知らない」存在。
過去にもイレギュラーは居た。
まどかが魔女になり世界を滅ぼす未来を変えるため、まどかを殺した白と黒の魔法少女達。
思い出すだけでも胸の奥が黒く淀む、失敗の記憶。
コイツもアイツらと同類か、と、敵意が溢れる。
「まるで手負いの獣ね。拘束されているおかげで、余計にそう見える」
瞳同様、感情の籠らない無機質な声。
巴マミのリボンに捕らえられた私を、嘲るでも憐れむでもなく、見たままに表しただけの言葉。
挑発でも、感想ですらない台詞。
彼女は、これまで出会った誰よりも、自己が希薄だ。
「さて、聞きたいことはいくつかあるけれど……。
私に対する敵意が、貴女を拘束した巴マミに対してよりも強い理由も含めて……。
それよりも、まずは、方向性を決めましょう」
雪のように白く、氷よりも透明な、己を持たない少女。
「暁美ほむら、貴女は、何を望むの?」
円カナメとの出会いは、まさしく「最低」に、運命的だった。
★★★★★巴マミ★★★★★
円カナメ、という名前だけは、キュゥべえから聞いたことがあった。
今の魔法少女の中で、戦いに限れば最強の魔法少女だ、と。
そんな彼女と実際に会って、戦っている姿を見て、話をして、分かったことが1つ。
円さんは、想像していた「最強の魔法少女」よりも、はるかに危ういということ。
自身を顧みない戦闘。生命の灯を戦闘に注ぎ尽くしたような、無感動な表情。
彼女はきっと、誰より強いのに、今にも消えてしまいそうに儚い。
この世界に居場所を定めず、たゆたっているかのような無関心。
見滝原に来た理由らしい、暁美さんについても、簡単な概要しか聞かなかった。
後は本人に聞く、と。
僅かにも揺らぐことのない、無機質な瞳のまま告げた。
その在り方に、我ながらお節介極まりないことに、放っておけない、と決心した。
なんだか、目を離した隙に崩れてしまいそうなくらい、脆く見えたから。
★★★★★鹿目まどか★★★★★
カナメさんーーこう呼ぶと、なんだか自分の名字を呼んでいるみたいで変な気がするけどーーとにかく、カナメさんの質問に、ほむらちゃんは険しい顔をした。
歯を喰い縛り、まなじりを吊り上げて、端で見ているだけで怯んでしまう表情。
「もう1度、質問を繰り返しましょうか?」
だけど、カナメさんは涼しい顔だ。というより、魔女と戦っている時以外、表情が動かない。
「……いいえ。結構よ」
怖い顔で、ほむらちゃんがカナメさんの申し出を拒否し、睨み付ける。すごく怖い。
こんな視線を正面から受け止めるカナメさんは、どんな精神力なんだろう?
まったく気にする様子がない辺り、完全に受け流しているのかも。
「…………私の望みは……」
ほむらちゃんが、言葉を切り、わたしを見つめる。
さっきまでの睨み付ける視線と違い、何かを不安がるように、瞳が揺れる。
「まどかを魔法少女にさせないこと……。そして、ワルプルギスの夜を倒すことよ」
再びカナメさんへ戻った目は、険しくはなかったけど、さっきよりもずっと、鋭かった。
★★★★★インキュベーター★★★★★
円カナメは、非常に興味深い魔法少女だ。
魔女を倒す奇跡を願った魔法少女は、過去にも居た。
肉親や知人を魔女に食べられ、復讐を願った例は、枚挙に暇がない。
対象を1体に絞らず、魔女という存在そのものを滅ぼすことを願った者も、数多い。
戦闘能力は、確かに現存する魔法少女では1番だが、過去に類を見ないほどではない。
彼女の特異性は、その能力には無い。
僕達インキュベーターを理解した上で、認めたこと。
エントロピーとエネルギーの説明を聞いて、納得したこと。
これこそが唯一、他の魔法少女、いや、人類と、彼女が異なる点だ。
人間はいつも、聞かなかったことによる認識の相違を、騙していたと憎悪する。
訳が分からない。
たとえ説明しても、聞いた途端に、嫌悪するのに。
そして、判断ミスを後悔する時、何故か他者を憎悪するのに。
なら、円滑なコミュニケーションの一環として、不必要な説明をしないのは、当然じゃないか。
かつて、彼女にもその話をしたことがある。
それに対して彼女は、本当に貴方は合理的だ、とだけ言い、黙った。
別の時に彼女は、貴方を認めてはいるが、受け入れた訳ではない、とも言った。
認めることと受け入れることの差異もまた、僕達には理解できない、感覚的な物だ。
それは、彼女もやはり、感情エネルギーを持つからなのだろう。
感情を持ち合わせながら、インキュベーターを認める存在。
だからこそ、僕達は円カナメの言動を、分析する。
「………ふむ。落ち着ける場所で、詳しい内容を聞くべきね」
「それなら、私の家に行きましょう。せっかくだから、お茶とケーキも用意するわよ?」
「分かったわ。貴女も、構わない? 暁美ほむら」
「……ええ、そうね。話を聞いてくれるのなら」
「1度リボンを解くけれど、おかしなマネをしたら」
「分かっているわ。大人しく、話だけする。それで良いでしょう?」
円カナメ、巴マミ、暁美ほむらが、今後の行き先を決め、鹿目まどかと美樹さやかが付いていく。
僕も、その後ろに従った。
円カナメと暁美ほむら。
僕達インキュベーターにとっても異質な2人は、これから先、どんな行動をするのだろう。
繋ぎ回として小刻みに視点を動かしてみたら、何故かQBが一番長いという不具合