つぶら★マギア【アニメ編完結】   作:ダラ毛虫

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今回の爆破被害者枠、杏子ちゃん視点




第5話

 間合いは、武器を多節棍に変形すれば一応は届く程度の距離。

 だけど、ルーキーのヒヨッ子ならともかく、この相手にそれは悪手だ。

 他人の縄張りを荒らし、恨みを買い、罠に嵌められ囲まれたこともあるらしい。

 基本的には逃げ腰なくせに、やるとなったら真っ向勝負。

 そうして全てを返り討ちにしてきた、武闘派の魔法少女。最強云々が誇張だとしても、警戒するに越したことは無い。

 

 相手は、左半身を前に盾を構えた、これといって特徴が無い姿勢。

 どう来るか。こちらから仕掛けるか。と思考しーー

 

 

      円カナメの背後に、白い閃光。

 

 

 ーー突撃槍の間合いまで踏み込まれた。

 

「な!? ぁあっ!!」

 

 一瞬の判断。

 脳で考える余裕は無い。反射的な回避行動。

 右膝を脱力、左爪先で引っ掻くように地面を蹴る。

 ほとんど倒れ込む状態で右に傾く胴体を掠めた槍に、左肘から先を持っていかれた。

 千切られた片腕が視界の隅に映る。

 

 だが、まだだ。

 

 さっきの閃光は、おそらくロケットみたいなもの。

 それを槍の側面から噴き出せば、刺突を避けたアタシを推進力で横凪ぎにできるだろう。

 体勢は、こちらの方が崩されている。

 一度距離を取って、仕切り直す必要がある。

 突進力は負けるけど、ステップで左右に振り回せば、勝ち目はある。

 相手の盾にアタシの槍を叩き付け、相手を崩すと同時にその反動で後ろに下がる。

 実際は、言語にならない感覚的な判断だったけど、刹那で次の行動を決めた。

 

 その、圧縮された時間の中。

 

 

ーーー回答としては満点だが、しかし足りないーーー

 

 

 聞こえるはずが無い、喋る間も無いはずの、思考を聞いた。

 

 2度目の閃光は、盾と突撃槍の、アタシ側を向く面から。

 すぐ脇と正面、2ヶ所からの爆発が、アタシの身体を弾き飛ばす。

 肉が裂け焼かれる。魔力の爆風に飲み込まれる。

 

「っご、が、はぁ……!」

 自分の作った檻に自分が叩き付けられて、自分で壊すはめになった。

 衝撃が、骨の髄まで響いてくる。

「この……! ムカ、つく……ッ!!」

 苛立ちと力を込めるものの、身体はまるで言うことを聞かない。

 魔力による爆発は、身体の外側はもちろん、内側もメチャクチャにしてくれた。

 這いつくばるアタシを余所に、円カナメは自分の胸当ての中央を手でスライドさせ、装甲の下の、白銀のソウルジェムを露にする。

 位置はアタシの物と同じだけど、より厳重に守られている、と言うことか。

 何から何までムカつく奴。

 先ほど倒した魔女から得たらしいグリーフシードで、ほんの僅かな穢れを吸い取る。

 

 そして、何を思ったか、1回しか使っていないそれを、アタシの方に投げた。

 

「……治療費よ」

 

 プツリ、と、何かがキレる。

 まだ繋がっている右腕を動かし、グリーフシードを掴む。

 過剰なほどの魔力を身体に注ぎ込み、無理矢理に傷を修復。

 肉体の修復でガリガリ消耗する魔力は、バカが寄越したグリーフシードで回復。

 グリーフシードを使いきる頃には、そこらの魔女なら楽に倒せるくらいには、復活した。

 

 力が戻った両足で立ち上がり、相手を睨み付ける。

 

「……次だ」

 どうしようもなく、ムカつく相手。

 けど、万全の状態でしてやられた相手に、今すぐに挑むのは無謀だ。

 だから、次だ。

「次にやる時までに、アンタをぶっ潰す手を用意してやるよ」

 この借りは、必ず返す。

「…………そう。仕方無い、か」

 無表情な、何を考えているのか分からない顔で呟き、円カナメは去っていった。

 

 

 

 

「オイ、キュゥべえ」

「何かな?」

 使い終えたグリーフシードを暗がりに放ると、どこからともなく出てきて、ぱくりと受け取る。

「アンタ、アイツの居場所、知ってんでしょ?」

 具体的な名前を出さなかったせいか、少し考え込むような素振りをしてから、こっちを見上げた。

 

「ああ、円カナメのことだね。もちろん知っているよ。

 それにしても、驚いたよ。

 彼女が、敵対した相手に好意を示すなんて、初めてのことだ」

「好意ぃ!? なに言ってんのさ、ウザったい。

 大体、さっきのやり取りの、どこにそんなもんがあったっての?」

 思わぬ台詞に、不快感が膨れ上がる。

 そもそも、あの人形じみた奴に、好き嫌いがあるかも怪しい。

 

「協力関係に無い相手へ、彼女がグリーフシードを提供するなんて、今までに無かった。

 ましてや、敵対した相手の傷を配慮するなんて、予測していなかった。

 今回の君に対する行動は、極めて異例のことだよ。

 こういうのを、好意と呼ぶんじゃないのかな?」

 

 きっと、今のアタシは、過去最高に嫌そうな表情をしている。

 アレが好意? アタシをブチキレさせたアレが?

 

「……そんなことどうでもいいよ。

 それより、アイツの居場所、早く教えなよ」

「ああ、そうだったね。彼女は今、巴マミの家を拠点にしているよ」

「マミさ……マミの奴の家、か」

 本当に、どこまでもムカつく奴だった。

 

 今更、あの人の家に、しかもアイツを理由に行くことになるなんて。

 

 

「ほんっと……ムカつく……」

 

 




後書き代わりの背後霊

「歩み寄ろうとしてみたけど怒らせちゃってしょんぼりするカナメも可愛い!
 けど、あれはムリだよ、あれじゃあんこちゃん激おこだよ、バカにされたとしか思われないよ。
 ガンバって聖女デレを引き出すんだ! カナメちゃん!」
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