「ねぇねぇごえごえ」
「ごえごえ言うな。なんだよ理子」
とあるアパートの一室。
そこには俺ともう一人少女がソファーに座り寛いでいた。
ここは俺の秘密拠点の一つで、俺は仕事前のブレイクタイムとしてコーヒーを淹れて一息ついていたところだ。
金髪ロリロリ巨乳少女こと峰理子がなんとも甘ったるい声で俺に声を掛けてきた。
俺は知っている。
この声で話しかけてくる理子は大抵ろくでもないことを言ってくることに。
「ぶぅぶぅ。なんて素っ気ない返事。理子ちゃん泣いちゃうぞー。えーん、えーん」
うぜぇ……。
「はいはい、なんでごぜぇましょうかお姫様。不肖この石川五右衛門に教えてくださいまへ」
「んにゃ。ただ呼んだだけだよ」
しばくぞお前。
「やーん、そんな怖い目で見ちゃやーだよー」
「仕事前に疲れさせんな。……さて、そろそろ行くか」
仕事、盗み。
俺の職業、泥棒。
だけど、そこらの庶民から貯金通帳やなけなしの金を盗むとかそんなちんけなコソ泥ではない。
やるからには派手に、華麗に、スマートに、煌びやかに、そして何よりかっこよく、だ。
堅気の人たちの暮らしを壊すような盗みはしないし、無益な殺生なんてのもご法度だ。
まぁ、俺を追ってくる警察官や武偵どもを返り討ちすることはあるけどな。
これらは全部俺にとっての盗みの美学とでもいっても過言ではない。
そうやって汗水流して苦労して盗んだものを俺のコレクションとして飾るのだ。
盗むのなら鼻糞ホジリながらでも簡単に盗める場所よりもセキュリティガン詰みの難易度ルナティックのほうがワクワクするってもんである。
そうだ。盗みに求めるのはお宝の価値も大事だが、それ以上にスリルを求めてしまう。
だから、今日も今日とてその刺激を求めに盗みにいくってわけだ。
「ごえごえって真面目な顔してほんとドMだよね。このむっつりドMさん」
「ぶっ殺すぞお前。それとごえごえ言うな」
この何かとキャラ設定というか属性てんこ盛り豊富少女の金髪ロリっ子こと峰理子は同業者であり、俺のパートナーである。
昔は一人で盗みに行くことが常だった俺なのだが、理子とは昔から盗むものが被ってしまったことがあり、盗みの現場でばったり出くわすことが何度もあった。
そうなった時は、泥棒界隈で常識な盗んだもん勝ちということで、怪盗バトルみたいなテンションで獲物を先に取ったり取られたり、時には奪ったり奪われたりを繰り返しているうちに、理子はいつしか俺のライバル的な存在になっていた。
いや、こっちが勝手に思っているだけなんだけれども。
まぁ、勝率は俺の方が断然上だし、スマートさもかっこよさもぶっちぎりで俺が勝っているんだから、ライバルと言っても俺と比べればトータル的に見ても月とすっぽんレベルなんだけれどもな!
なんだかんだ、相性がいいというか、ウマが合うというか……。
実質、組んでみれば、アイコンタクトだけでの意思の疎通はお手の物。俺の言動の意味をあいつは勝手に理解してくれるし、あいつの言動も俺はなんとなくわかるレベルには、俺たちの息は合っていた。
それからというもの、あいつと組めば俺一人では絶対に困難な場所でも悠々と盗みを働けるので、一緒に行動することが多くなったのだ。
まぁ、性格に難があるのが玉に瑕なのだが。
さーて、そんなことよりもお仕事だ、お仕事。
今回の獲物はブラックダイヤ。
この世に珍しい、黒く、それはもう漆黒に輝くダイヤモンドだ。
それが明日、宝山カンパニーが開く世界の宝石展という展示会の大目玉品として展示されるわけだ。
だから、本作戦はブラックダイヤが置いてある宝石展に華麗に侵入し、スマートに盗んでかっこよく退散することだ。
狙うなら今日の夜しかない。
予告上はもう送ってあるので、ブラックダイヤを守るセキュリティは十全で屈強なガードマンや警察官たちがそこら中に配備されているだろう。
だが、しかし、だからこそやりがいがある。
ふっふっふ、明日の新聞はこの石川五右衛門の名が大きく載っているだろうさ!
ふっふふふ、はははっははは――――
「だぁーはっはっはっはっ!」
「ごえごえって本当にどっかしらアホっぽいよね」
作戦は終了した。
結果?んなもん、華麗に潜入してスマートに盗み、かっこよく退散したさ。
だがしかし、盗んできたブラックダイヤなんだが、なんか思っていたよりもあれだったので、理子と写真を撮ってインスタに上げてから元の場所に返しておいた。
いや、だって、黒光りすぎてカサカサ動き出す例のあれにしか見えなかったし。
今回はご縁がなかったってことで俺のお宝コレクション入りは拒否させてもらう。
理子も理子でいらないって言っていたので多分同じ理由だろう。
まぁ、でも、今日も今日とて華麗に盗みを働けたので俺は満足、大満足だ。
「ねぇごえごえ」
「ごえごえ言うな。で、なんだ」
ホクホク顔で満足な俺に水を差すように理子は声を掛けてきた。
なんだよ、人がせっかく幸せに浸っていたというのに。
「ごえごえって昔から狙った獲物は逃がさないって言ってるよね」
「当たり前だろ。盗み成功率100%、世紀の大泥棒とは俺のことよ」
「へー、世紀の大泥棒か。すごいすごい」
なんだ、バカにしてんのかこいつは。
言葉の端々に棘があるというかなんというか。
一つ文句を言ってやろうと思い、口を開く俺よりも先に理子は続けた。
「じゃあ、さ。いつしか私のことも盗んでくれないかな」
「は?」
何かに懇願するような、それでいて全てを諦めてしまっているような、そんな表情で泣きそうなぐらい悲しい瞳をこちらに向けて理子は俺にそう言った。
理子を盗む。
いったいぜんたい……―――
「ぷ…ははははッ!」
どういうことだと聞く前に、理子は普段のお気楽天真爛漫少女に戻り、腹を抱えて大笑いをした。
……は?
どゆこと?
「ははっはあはは、引っ掛った引っ掛った!嘘だよ嘘、冗談だよ!なに真剣な顔しちゃってるのこのむっつりドMさんは!」
理子は耐えられないと言った感んじで笑いを噴き出し、俺の肩をバンバンっと叩いてきた。
おい。おい、なんだよ、お前。
らしくねぇじゃねぇか、何無理してんだ?
「それに何が盗み成功率100%だよ。この理子たんに何度先に越されたかわっかんないじゃーん!」
いつもの理子に見せかけていつもの理子ではない。
先述に述べたが俺と理子は言動一つで互いのことがなんとなくわかるぐらいには相性がいい。
つまりは、今の理子の笑顔は、どこか無理をしているというか、なんというか。
あぁ、もう。なんとなくしかわからない自分が恨みがましい。
だがしかし、なんとなく、なんとなくだが、理子は俺を頼りに何かをさせたがっているっていうのはわかった。
巻き込みたくはないけど、助けてほしいという懇願がなんとなく感じたのだ。
俺は理子の過去を知らない。
理子だって俺の過去を知らないように、俺たちは互いが互いにプライベートの事を何一つ話さないからだ。
だけど、それはもう終わりなのかもしれないな。
俺と理子はパートナーだ。
相棒だ。
相棒が困っているのなら助けるのが筋ってもんだろう。
だから、俺は何かを抱え込んでいるはずなのに相棒の俺にそれを一切教えないバカ理子にいつもの通りの自身満々ドヤ顔100%でこう言うのであった。
「ばーか、何が心配かは知らねぇが任せろ。無敵の大泥棒様に盗めないものはないんだよ。手に余すような大金も、計り知れない価値のあるお宝も、ましてや絶世の美女だって俺にとっちゃお手の物よ」
だから、さ。だから―――
「いつか峰理子を華麗に、スマートに、かっこよく盗み出してやる」
心底驚いた、目を真ん丸にさせてやがるお姫様に向かって投げかける。
それは、約束というよりも誓いのように。
俺の言葉を聞いた理子は数秒フリーズしたが、その顔を何か複雑な表情へと変え、そして、いつもの笑顔へと戻った。
「へ、へー。そんな日が来るのを理子たん楽しみに待っといてやるよ……約束だよ、ごえごえ」
「おう……それとごえごえ言うな」
この誓いが果たされるのはそう遠くない未来だったりするが、それはまた別のお話。
【緋弾のアリア×大泥棒系オリ主】
オリ主
武偵でもなんでもないただの泥棒。
能力値は泥棒関係に全振りされているが、戦闘能力に関しては皆無。刀なんて物騒な物は使わない。
先祖が石川五右衛門だと思われがちだが全くの無関係。
そう遠くない未来で犬っころから母親の形見とともに理子を盗むことに成功するが、理子は桃色姫の如く何度も犬っころに攫われるため、その度に盗みを繰り返している。キンジさん早く倒しちゃってください。
峰理子
オリ主の相棒的な存在。
悲しい過去を持っているが、オリ主に遠回しに助けを求めたところ、簡単に解決してもらったヒロイン。
その後桃色姫と化すが、どんな状況でも自分を救い出すオリ主を完全に信頼しているため、それほど苦ではない模様。
作者
そろそろネタ切れを起こしてきた負傷中のホタテ。
誰かリクエストちょうだい。