気づいたら学校の屋上だった。
いやいや、意味が分からんし。
寒空に吹かれて、盛大にくしゃみをしたことで夢の中から覚めたのに、起きたら見たこともない学校の屋上にいるとか、どんなミラクル起こしてもねーよ、んなこと。
ハイエースされたり、宇宙人に攫われるやつされたり、恋愛サーキュレーションしたり、ラジバンダリ。
ありとあらゆるパターンを考えてみたが、俺が知らない学校の屋上で寝ていた理由が見当たらなかった。
辺りを見渡す。
時間帯は夜。
天候晴れ。
夜空が満天でお星さまが輝いてやがるぜ。
屋上から見渡す限りは山を開いて作った学校なのだろうか。
自然が豊かで田舎育ちの俺的にはグッド。
ベリーグッドである。
夜行性の鳥と田舎特有の虫の鳴く声から種類を推測するに、時季的には夏から秋に変わる頃合いだろうか。
次に俺の状況だ。
名前、飛騨善斗。
年齢15歳。
職業バイト戦士。
父親は物心つく前にブラック企業のデスマーチに耐えられず首つり自殺。
母親はホスト三昧で金に金をつぎ込んで借金を作るだけ作り、いつの間にかどっかの男と蒸発。
そのため、現在はもとの田舎を飛び出し都会にて出稼ぎ中。
愛すべき妹を毎日食わすために日々四六時中バイトバイト、バイト三昧。
両手をパンッと叩いては広げて、バイト三昧!
最後の記憶はなんかとんでもない薬の被験者のバイトをしていたものだったか。
よし、記憶の方に異常はないな。
何故かどっかの学校の制服を着ているところ以外は異常なしだ。
持ち物チェック。スマフォ、財布、免許証、トカレフ?
……は、はいはい、異常なし異常なし。
これっぽっちも異常はない。
「いやはや、状況把握をしたところで、これといった進展がないじゃないか」
これからどうしようかと思いながらトカレフをすっと懐にしまった。
……なんで俺こんなもんもってんだよ。
さっさんか?
とあるバイト先の店長である元ヤクザ親分のさっさんが俺のポケットにトカレフ忍ばしたのか?
わかった。
この状況もさっさんWith愉快な極道達が俺にドッキリ仕掛けてるだけだろ。
前にも悪ふざけで俺に拳銃持たせてよくわからん事務所に特攻させられたことなんてあったし。
いつものドッキリ大成功(ハートの立札持った狂気の笑顔振りまいてる組長さん!
はやく出てきてください!
だがしかし、いくら待とうとも組長はおろかさっさんすら出てこなかった。
ということは、あの頭ハッピーな強面連中は関係ないってことか。
詰んだ、この状況も、なんで俺がトカレフ持ってるのも、どう考えてもわからん。
もう何も思いつかないわ。
はー、もういいわ。
俺は考えるのを止めて寝ます。
どうせこんなん夢だ、夢。
どう考えてもこうはならんやろ。
薬が変な化学変化を起こして俺に迷惑極まりない夢を見しているに違いない。
次起きたときは夢が覚めて四方真っ白のあの部屋で「知らない天井だ」って起きることを期待しよう、そうしよう。
てなわけで、おやすみなさい。
「……て。……きて」
声が聞こえる。
この脳内に癒しを送る花澤ボイス的なふんわりボイスが聞こえてきた。
俺、アラームしたっけ?
「おき……。起きて」
いや、アラームじゃない。
誰かが俺の肩を揺すっている。
肩に触れた手の小ささおよび体温の高さ。
そして、安らぎボイスの声質から女の子と判断。
声からして美少女。
間違いない。
そうと知るや否や、俺、覚醒。
目をバッと開くと目の前には銀髪の美少女がこちらをじっと見ながら俺の肩を揺すっている姿がそこにはあった。
「グぅッドぉ!知らない天井よりもクーデレっぽい女の子の方が断然テンション上がるわ!しかし、残念!膝枕から起こしてくれたら芸術点上げてたのに!」
「私はクーデレではないわ。それより貴方、もう授業が始まっているわ。こんなところで寝てないで早く自分のクラスに戻りなさい」
授業?はっはっは、ご冗談わよしこちゃん。
俺の義務教育は中学生で終わってんだよ。
いや、中学事体も、バイトで忙しかったからそんなに行ってなかったけども。
「へいへい、くぁいらしいお嬢さんよぉ。授業?クラス?はっ、意味が全くわからねぇ。よかったら学がねぇ俺にもわかるようにいろいろ説明してくんねぇーか。まずはここはどこで、お前は誰なんだ?」
「可愛らしいなんて照れるわ」
「ねぇ、俺の話聞いて」
無表情ながら頬をポッと赤らめ両手を抑える美少女。
全くもって俺の質問に答えてくれない。
俺のジト目に気づき、ようやく照れから戻ってきた無表情系美少女はポツリポツリと説明を始めた。
「ここは死後の世界。あなたは死んでここに来たの」
「おいおいマジかよ。あの糞医者、理論的には間違っていないから死にはしないでしょははははははってやけに白い歯見せて笑ってたじゃねぇか糞が」
まぁ、でも俺が死んだおかげで莫大な金が入るんだから俺の可愛い妹の将来は安定だな。やったぜ。
「あなたは現世で理不尽な人生を体験してきたのでしょう。そういう子たちが死んだあと、楽しい学園生活を送るために用意されたのがここ、天上学園」
あん?理不尽な人生、だ。
「ここで満足のいく生活を送ることで未練をなくせば『成仏』するの」
「おいおい美少女ちゃん、未練も何も、俺は別に前の人生が理不尽だったなんてこれっぽっちも思っちゃいねーぜ。生きてりゃ嫌なことだってたくさんあるんだ。楽しいことも嫌なことも全部ひっくるめて人生だろうが」
「美少女なんて照れるわ」
「だから話聞いて」
何この子。
どんだけ褒められる耐性ないの。
それはそれで可愛らしいからいいんだけど。
はー、と一つため息。
「とにかく、俺は未練なんてこれっぽっちもねぇってわけだ。心残りは多少あるが、前は前で満足の行く良き人生だったぜ」
「それはおかしいわ。そんな人はこんなところには来ないもの。あなたがここに来ている時点で心のどこかで何かしらの未練があるってことだわ」
「未練……未練ねぇ」
少し考えてみたがやはり思いつかない。
「ところで、なんであんなたはそんなにここの事が詳しいんだ。もしかして、天使かなんかかあんた」
「天使じゃないわ。私はこの天上学園の生徒会長の立華かなで。私も死んでここきたの。ここに詳しいのはただあなたよりここにいる期間が長いからよ」
「へー。ってことはなんだ。あんたはまだ未練ってやつが残っているのか?」
「残っているわ」
「ふーん。まぁ、人の過去の詮索なんてどこの世界でもご法度だから聞かないでやるよ」
「それは助かるわ」
しかしどうしたものかね。
ここではこいつの言う限りではどの未練っていうを断ち切らなければ、成仏することができないんだろが、そもそもその未練自体がわらない俺にとってはどうすることもできないし。
つーか、今の俺って地縛霊的な存在なのか?
……考えてもしようがないか。
「じゃあよう天使ちゃん」
「天使じゃないわ」
「別にいいじゃねぇか。天使に引けを取らないぐらい可愛いんだからよ。それで天使ちゃんよ。俺には未練ってものがまったくもって見当もつかねぇんだ。しかし、俺はこんなところに一生いる気もねぇ。だから、手伝ってくれ。俺の未練を見つけられるように。俺が心底満足して人生を終えられるように」
未練を断ち切って心の奥底からの本当の意味で人生に満足しなければ『成仏』することができないんだ。
だったら俺はそれ見つけなければならない。
こんなところにずっといてはならない。
たぶんだが、ここは世界の理が外れている気がする。
そりゃそうだろ。
人は普通なら、生まれ、生を全うし、死んで魂となり、また生を受けるのだ。
そういったシステムがこの世界では出来上がっているって元イタコのあーちゃんが言っていた。
なら、ここはそのシステムから外れた場所なのだろう。
そんな場所に長い事いてはならない。
魂がが劣化するのか、もう『転生』することができなくなるのか、どうなるかわからないが、なにかしらのペナルティがあるだろう。
だから、俺は早く未練を断ち切るのだ。
断ち切ってさっさと『成仏』する。
だが、俺の問いに天使ちゃんはなかなか答えなかった。
顔を俯き、何を考えているのかわからないが、反応しない。
「な、なぁ。ダメか?いや、ただで手伝ってもらおうとは思わない。お前の未練も俺が手伝えることがあったら協力する」
だからさ―――と続けようと思ったとき、俺はようやく気付いた。
「天使に引けを取らないぐらいに可愛いだなんて照れるわ」
「ダメだこいつ。話聞いてねぇや」
……手伝ってもらう相手を間違えたかもしれない。
【Angel Beats!×オリ主(有能バイト戦士)】
オリ主
壮絶な人生を歩んでいると思いきやそれなりに楽しく生きてきた。
バイトを12個掛け持ちしており、それら全て熟せてしまうほどの能力を持っている。有能。
心の奥底にとある未練があってなかなか『成仏』できない可哀想な人。
この後、かなでに「あなたの未練は麻婆豆腐をお腹いっぱい食べられなかったこと」とかなんとか言われ、一緒に学食の麻婆豆腐を食べ、無事舌が死んだらしい。
立華かなで
みんな大好き天使ちゃん。
天使ちゃんマジ天使。