ぼっちを自称していた過去の自分には想像のできない日常を過ごした俺も無事高校を卒業した。色々と問題もあった毎日も過ぎてしまえば思い出として昇華され、胸に抱えたまま今日も新しい日を迎える。大学生になっても俺は相変わらず俺のままで恩師には少し申し訳なくもなるが、あの人がソロなのも変わっていないのでおあいことしよう。
何故俺が高校時代を思い出しているかというと教育実習で母校である総武高校にきているからだ。というのも時間の流れは早いもので小町が大学受験を控え文系科目だけならと、教えていたところ。
『お兄ちゃんさぁ、教え方上手いんだし先生になれば?』
『嫌だ、面倒くさい』
『もう、そんなんじゃ嫁の貰い手どころか就職も怪しいよ』
『安心しろ、俺は小町を置いてどこにも行かないから、むしろ家から出ないまである。
おっ、これは八幡的にポイント高いな』
『お兄ちゃん、それは社会的にポイント低いよ。とにかく、お先真っ暗なお兄ちゃんのためにも教員免許は取っていおいて損はないと思うんだけどなぁ』
『専業主夫という輝かしい未来が真っ暗な訳ないだろうが、それに教師とかブラック過ぎるでしょ』
『もう、そんな事言わずに。もし教育実習で総武高校に来れば、またお兄ちゃんと学校通えるって思ったんだけどなぁー』
『…………』
という訳で俺は今実習生として母校にいる。
これは決して俺がシスコンだからではない、ホントだよ。ハチマン、ウソツカナイ。
だが、実際始まって見ると忙しく、家でも小町に会えず。学校でも小町は三年生なので受験勉強が中心となるため廊下ですれ違うくらいでしか会えない。小町のためならと行動した俺だったが逆効果だったわけだ。これは小町からの試練と捉えれば乗り越えられるのがお兄ちゃんってもんだ、でもやっぱり小町厄介払いしようとしてない?気のせいだよね、うん、お兄ちゃん信じてるよ。
「比企谷先生、これ準備室に運んでくれる?終わったら今日は帰っていいからさ」
「はい、分かりました」
「特別棟の一番奥だから、よろしくね」
「っ、お先に失礼します」
特別棟か、実習中なこともあってか不思議と向かうことのなかった場所だ。いや、それは嘘だ、意識的に避けていたのだ。あの日々を忘れる事も捨てる事も出来ずに過ごしてきたのだから。道具をしまうと、俺は迷いもなく特別棟の空き教室、奉仕部と呼ばれていた場所に向かっていた。扉を引くと重く、鍵が掛かっているようだった。
「開いている訳ねぇよな、あいつがいないんだし。って、何言ってんだよ俺は」
だって最後に扉を閉めたのは自分自身なんだから。
だいたい実習生にやらせる仕事量じゃないんだよぁ、先生方は俺よりも大変そうだけど。こりゃあ、平塚先生が愚痴るのも納得だよ、あの人この前電話で話した時なんて、婚活の失敗話を酔いながら語られ最後には。
『私、もう猫で十分かな』
本当、誰か貰ってやれよ。じゃないと、あの人辛いことがある度に猫増えていくぞ。
このままだと先生と同じ道に進んでしまう、そんな恩師の教えを胸にストレス解消のためにも労働の疲れを千葉に癒してもらおうと、駅前のサイゼに向かった。帰宅するサラリーマン、学生などで駅前は人で溢れていたにも関わらず働くなんてらしくないことをしたせいだろうか、雑踏の中で人とぶつかってしまった。普段ならこんなことになんてならないのにやっぱり働くべきじゃなかったな、なんて考えていると。
「比企谷くん?」
「雪ノ下..」
人混みの中でも一目で見つけてしまったのは
あの卒業式以来の彼女の姿だった。