「兄ちゃん一体何者なんだ?」
「言っただろ。ただの料理人だって」
「ほう。お主料理人だったのか。」
ロム爺、フェルト、サンジは蔵のカウンター席に座りロム爺に出されたミルクを飲みながら話していた。
「おいロム爺。このミルク水入れて薄めてんじゃねーのか!不味いぞ」
「我が儘言わずに飲めフェルトちゃん。そんなんだから背が伸びないんだぞ」
「おい兄ちゃん。あたしの名前の後に『ちゃん』を付けるのやめろ。鳥肌が立ってしょうがないぜ」
サンジのちゃん付けを露骨に嫌がるフェルトにサンジは少ししょんぼりする。
そしてフェルトから取り返したライターでタバコに火をつけ煙を吐き出す。
「なあ兄ちゃん。兄ちゃんが吸ってるその白い棒なんだ?それにあたしが盗んだその火が出る魔道具も見た事ないぞ?」
フェルトはサンジが吸ってるタバコに興味を持ったのか聞いてくる。ロム爺も同じくサンジのタバコを見る。
「これはタバコっていうんだ。こっちのせかい・・・この国にはないのか?」
「「たばこ?」」
その言葉を聞いて二人は首を傾げる。この世界にはタバコは無いのかと思い始めるサンジが額に冷たい汗を掻き始める。
しかしその時ロム爺が何かを思いだした顔をしだして言い出した。
「もしかしてお主が口に咥えているその白い棒。カララギで嗜好品として売られているダバコか?」
「ダバコ?」
「ワシにそれを見せてくれんかの?」
巨大な手をサンジに向けて渡せというジェスチャーをする。そしてサンジも何も言わずに箱の中から一本取り出して巨大な手の平に乗せる。そしてロム爺はその一本のタバコを見る。片目を閉じて開けているもう片っ方の目に至近距離にまで近づかせて観察する。
「やはりこれはダバコじゃな。」
サンジはこの世界に来て初めて心の底から喜んだ。いや安心した。
ロム爺はこの世界の住人。それがサンジの持っていたタバコを知っているという事は、この世界にも前の世界と同じくタバコが存在するということだ。
名前が微妙に違うが前の時間でリンゴの件で学習済み。名前が違う事には何も突っ込まなかった。
「なんだよダバコって。」
フェルトはロム爺に聞く。そしてフェルトの問いにロム爺は答えた。
「フェルト。ダバコというのはさっきも言ったようにカララギで嗜好品として売られ扱われているものじゃ。これは簡単な構造で粉々になるまですり潰した木材を紙で包み火をつけて煙を体に取り込む事で快感を得るものじゃ」
サンジはロム爺の説明で確信した。この世界にもタバコが存在するということを。
「取り込む?」
「そうじゃ。こやつが今しておったじゃろう。このダバコの先に火をつけて中の木が燃える。その煙を体に取り込む事で快感を得るんじゃ。」
「ちなみにガキは吸っちゃダメだぜ」
タバコが存在する事を知って安心したサンジは自然と笑みが零れる。
「つまりその火が出る魔道具を必死になって取り戻そうとしてたのはそのダバコを吸う為だったのか?」
「まあそうだな・・・・まどうぐ?」
サンジは今更気づいた新たな『まどうぐ』という単語を口に出した。
「なあ。君がさっきから言ってる『まどうぐ』ってなんだ?」
ロム爺とフェルトは顔を見合わせ、
「魔道具は魔道具だよ。知らないのか?」
「魔道具・・・・・?」
名前からしてサンジは何となく予想した。
「(魔道具の魔って・・・・もしかして魔法の魔か?こっちの世界にはもしかして魔法とかが存在するのか?魔力とかそういう感じの・・・?)」
サンジは結構ファンタジー系が好きなのかいい歳しながらワクワクしている。
「そういえばフェルトちゃん・・・・は嫌なんだよな。じゃあフェルト。一つ聞きたい事があるんだが」
「ん?なんだ?」
「徽章のことだ」
サンジが徽章という言葉を口にした瞬間フェルトの顔色が変わった。
「なんで兄ちゃんがその事を知ってんだよ」
フェルトは椅子から立ち上がりサンジから距離を取る。
「まあいろいろあってな。その徽章はある銀髪の女の子から盗ったものだろ?乱暴はしないから持ち主に返してくれないか?」
徽章を誰から盗ったのかも知っているサンジにフェルトはさらに警戒を強める。しかしフェルトも負けずに言い返す。
「わりーがそれは出来ない相談だな。あたしもこれが欲しくて盗ったわけじゃなんだ。」
「え?そうなのか?」
予想していた事と違う返事が返ってきてサンジは少し驚く。しかし、
「この徽章を欲しいって奴がいてな。盗ってきてくれれば金貨20枚と交換してくれるって言うんだぜ!!」
「やっぱり金目当てか」
やはりというかなんというか。サンジの予想は当たった。
この貧民街に住む人間が生きていくには盗みなどをしなければやっていけないのだろう
この国の貧富の差にサンジは憂慮を感じる。
「なんだよ兄ちゃん!!盗みが悪いっていうのかよ!!」
「別にそうは言ってないだろ」
一応サンジは海賊。盗みに関しては云々言える立場ではない。
その時サンジは急に立ち上がる。
ーー来たな。
「どうしたんじゃ?いきなり立ちおって」
「いやなんでもない。それよりフェルト。その徽章を欲しがってるやつには断りを入れておけ。」
「なんでだよ兄ちゃん!!てかあたしに命令すんな!!」
サンジはフェルトの言葉を無視して短くなったタバコを床に落として踏み潰した。
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