一章最終話になります!
ラインハルトは剣を両手で握り構え、サンジは右足を上げて炎を纏わせる。
双方一瞬の気も抜かずに相手を見据えて動かない。
その時間は永遠に思えて一瞬であった。
「いくぞ」
「ああ」
最初に仕掛けたのはサンジだった。
「
サンジは高速でラインハルトに接近する。
そしてラインハルトはサンジの一挙一動を見逃さずに観察している。
まるで自身と同等の力を持つ者と戦う時のように。
「
「(速い!!)」
ラインハルトは驚きながらもサンジの蹴りを上体を逸らして紙一重で躱す。
「へえ」
サンジは自身の蹴りを躱したラインハルトを見て笑みを浮かべる。
「次はこっちの番だ」
ラインハルトもすぐに体勢を立て直し持っていた剣をサンジに当てにいく。
「おおっと!!」
ラインハルトの超高速の剣戟がサンジを襲う。
しかし・・・。
「(ボクが攻撃を当てられない・・!?)」
サンジはラインハルトの剣を全て躱し続ける。所々髪や服に掠りはするが決定的な物は1つも貰わずに躱し続ける。
「(やっぱりこいつ!!あの迷子マリモよりも強え!)」
サンジは直接ラインハルトと戦った事により仲間の剣士ゾロと比べてラインハルトの方が強いと確信した。
「
ドオォォォォン!!!
ラインハルトの剣の柄の先を蹴り上げるサンジ。まず初めにサンジは
ラインハルトは剣聖だ。ゾロと同じで
その剣さえ外してしまえばサンジは自身に大きなアドバンテージが来ると思い実行した。
だが、
「惜しいねサンジ」
「ちっ!!」
サンジの強力な蹴り上げをラインハルトは左手一本で防ぐ。
それにより自身の武器の無力化を防いだ。
ドゴンッ!!
「ぐおっ!!」
サンジの右の脇腹にラインハルトの右後ろ回し蹴りが炸裂した。
サンジは最初と同じように盗品蔵の外にまで吹き飛ばされる勢いで飛んでいくが今度は地面に両足を付けて耐える。
「おおおお!!!」
サンジは自身に喝を入れたのか大声を上げながらラインハルトに襲い掛かる。
ラインハルトも再び剣を構えて応戦の態勢になる。
「消えた!」
目の前にいたサンジが消えたのだ。
そして次の瞬間にラインハルトはこの世に生を受けてから一番の衝撃と対面することになる、
「
「(後ろか!!!)」
気付いた時にはもうすでに遅し。
「
「ぐああっ!!!!!!」
サンジの炎を纏った強力な蹴りがラインハルトの背後から烈火の如く襲い掛かる。
「うおおおおおおおお!!!」
サンジはラインハルトの悲鳴を聞いた後も力を一寸も緩めずにラインハルトの体に自身の蹴りを連続で打ち込む。その所為で盗品蔵の床まで壊されて辺りに土埃が舞っていく。
そして視覚の機能が使えなくなるくらいにまで土埃が舞った時。
それは起こった。
「!!!」
ズシャッ!!!
「があっ・・・!」
サンジの蹴りの動きが止まり一気に土埃が止んでいく。
そして反射的にサンジは自身の胸を抑えて膝をつく。
「はあ・・・・はあ・・・」
膝をつくサンジの後ろに息を切らしていたのは自身の腰に携えてあった剣を持ったラインハルトであった。
「全く・・・なんて人なんだ君は・・・・はあ・・はあ・・・」
ラインハルトの服は至る所が破れていて肌けている部分には痣などが確認できる。
顔にも複数の痣や傷がありとても痛々しそうである。
それに対しサンジは胸に剣で斬られたような巨大な傷があり、その傷からはポタポタと鮮血が流れ出ている。
サンジの傷は深いのか胸を抑えながら立ち上がれないでいる。必死に立とうともがいてはいるが。
そんなサンジを見たラインハルトは考える。
「(初めてだ。剣聖として生きてからここまでダメージを負わされたのは。)」
「なんだてめえ・・・まさか一撃入れたくらいで勝ったつもりでいるのか」
サンジは傷を抑えながら立ち上がる。
「そんな事ないよ。まだ勝負はついていない。わかっているさ。さあ決着をつけよう」
ラインハルトは自身の腰に携えてあった聖剣を構える。
二人は同時に動いた。
「「はああ!!!」」
「ボクはもう行くよ。約束通り君を倒したからこの子はボクが連れていく。」
ラインハルトはフェルトをお姫様抱っこの形で抱え上げてうつ伏せで倒れているサンジに言った。
「ありがとうサンジ。」
黒足と剣聖の勝負は剣聖の勝利に終わった。
ラインハルトは考えていた。
もちろんサンジの事についてだ。
「加護が発動しなかった・・・」
加護というのは世界の恩恵と言われる物で世界で数えるほどの人間しか所有できない世界からの祝福だ。
加護にもいろいろ種類がある。
生活に役立つ加護。
戦闘に役立つ加護。
交渉に役立つ加護。など。
加護を持つ者は1つ以上の加護を持つ事ができない。
しかしラインハルトは世界から愛され過ぎている存在だ。
様々な分野の加護を全て合わせても100は軽く超える。
その中には戦闘に関する加護も多く含まれている。
「(一体どういうことなんだ・・・今まで加護が発動しない時なんてなかったのに)」
ズキッ。
「いっつ・・」
ラインハルトは体中にできた痣や傷で痛みを感じた。
「これが痛み・・・・・」
サンジが現れるまでラインハルトの体に傷を負わせたものはただの一人もいなかった。
つまりラインハルトは今日まで痛みを知らないで生きて来たのだ。
「痛みというのは嫌なものだな」
ラインハルトは初めての痛みを噛みしめながらフェルトを抱えて足早に貧民街から立ち去るのであった。
「負けたのかおれは・・・・・」
うつ伏せから仰向けに体勢を変えたサンジが呟いた。
「女一人も守れずにこの様か。情けねえ」
腕を自身のデコに置き呟く。
「サンジ・・・?」
鈴の音のような声がサンジを呼ぶ。
「エミリアちゃんか」
すぐにサンジはその声の主の正体を見抜きその名前を呼ぶ
「ちょっとサンジ怪我してるじゃない!!どうしたのこれ!!!」
サンジの胸の傷を見て驚いたエミリアがすぐさま治療に取り掛かる。
「安心してくれ。これくらいじゃ俺は死なねえよ」
「ちょっと静かにしてて!!」
エミリアに怒られたサンジはどこか嬉しそうにしていた。いつにも増して女性に弱いサンジだ。
「あ、」
ここでサンジはある事に気づいた。
「どうしたのサンジ?」
突然声を上げたサンジにエミリアは疑問に思い聞く。
「そう言えば向こうで最後に見た物も月だったな」
破れた盗品蔵の屋根から覗く月は前の世界で最後に見た月と同じ形をしていた。