俺のヒーローアカデミア ピースキーパー   作:色埴うえお

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2年ぶりの更新です。
書き方を忘れつつあり、文体が変わっているかもしれません。ご承知おき下さい。

梅雨の視点から始まります。


第五章 雄英体育祭
二夜明けて


 USJ襲撃事件から二日後の朝、雄英高校に続く道を梅雨は重い足取りでペタペタと歩いていた。

 一昨日まで賑やかに感じていた通学路がいやに寂しげに見えるのは、胸につかえているクラスメイトへの心配によるものだろう。

 

 

 臨時休校となった昨日の午前中、梅雨は自宅療養を命じられ家で過ごしていた。

 予習や復習の為に机に向かうが目は教科書の上を泳いでしまい、ならば体を動かそうと掃除に手を出してみても気もそぞろ。

 

 結局、胸に重くのしかかる不安に耐えられず昼過ぎから津上のいる病院へひとり足を運んだ。

 しかし規則により津上への面会は叶わず、失意のまま梅雨は一日を過ごした。

 

 

 教室に着いてからも目に映る風景は何処か影がさしているように見えた。

 そんな梅雨の様子を察してか、麗日や芦戸が控えめながらも明るく声を掛けて来てくれたので、少しだけ気持ちが軽くなった。

 

 

「みんな! 朝のHRの時間だ! 席に付くように!!!」

「ついてねーのお前だけだぞー」

 

 この短い間にお決まりとなったやり取りを可笑しく見ていると、ほどなくして腕に包帯を巻いた相澤が教室に入ってきた。

 復帰の早さに驚く生徒を軽く窘めた相澤はいつもより少しだけ表情を固くして切り出す。

 

「お前達が気にしてるであろう津上についてだが、しばらく学校を休むことになる。理由は知っての通り一昨日の怪我だ」

「彼の容態は!」

「外傷は塞がってて脳へのダメージも軽微、身体的には問題はない。いつ目を覚ましてもおかしくないが、いつ目を覚ますかは医者にも分からん」

 

 それからも津上や一昨日の襲撃事件に関する話が少しの間続いた。見舞いに際しての注意やマスコミへの対処法など、事細かに説明する相澤の様子に梅雨はそれだけ津上を含めクラス全体のことを思いやってるのだろうと感じた。

 クラスからの質問も落ち着いたところで、相澤は机を叩き「津上の事ばかり気にしてられないぞ」と切り出す。

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

「「「クッソ学校っぽいのキタァァァ!」」」

 

 相澤の一言でクラスが湧いた。雄英体育祭といえば誰もが知る一大イベント、特にヒーロー科ならばアピールチャンスとして決して欠かすことの出来ないイベントなのでこの盛り上がりも頷ける。ただ、梅雨としてはやはり津上の事が気掛かりで、いま一歩乗り気にはなれなかった。

 そう思っていたのは梅雨だけでは無かったようで、峰田がおずおずと手を上げながら意見した。

 

(ヴィラン)の襲撃が有ったばかりなんだから体育祭なんてやってる場合じゃ……それに、津上だって入院中だし」

 

 意見を終え手を下ろすまでクラスの誰も峰田の言葉を遮らなかった、その沈黙が皆の意見を示しているように梅雨は感じた。対する相澤もその点は承知の上だったようで、すらすらと言葉を並べていく。

 

「お前たちの言いたいことも分かるが……学校側としては開催することで危機管理体制が盤石だと示す狙いがある。生徒側としても体育祭は全国に名を売れる数少ないチャンス、今後のヒーローとしてのキャリアの為にも中止はまず有り得ない。それらを踏まえ今回は警備体制を5倍に強化することが決まった。

お前たちの津上への心配は最もだ。だが、(ヴィラン)から日常を守るのがヒーローの務め、その卵であるお前達が仲間の負傷に二の足を踏んでたらそれこそ(ヴィラン)の思うつぼだ」

 

 相澤の言葉は頭では理解できるが、梅雨のために大怪我を負った津上を置いて自分だけが体育祭に参加することへの後ろめたさは残ったままだ。体育祭への意欲を示しているクラスメイトたちも普段と比べて消極的な様子で梅雨と似た感情を抱いているように見えた。

 そんなクラスの様子を見て相澤はため息をひとつ吐いてから話を続けた。

 

「中には津上を置いて体育祭に参加する事に抵抗がある奴も居るだろう。そういう理由で体育祭を辞退するなら俺に言え、すぐに除籍してやる」

 

 相澤の口から飛び出した除籍という言葉に思わず耳を疑った。クラスがざわつく中、梅雨はその真意を探ろうと相澤を注意深く見つめ続ける。

 

「分かってるだろうが、ここにいるお前らより津上のほうが遥かに先にいる。敵意を見抜く目に咄嗟の判断力、それらだけ見れば既にプロ並みだ、オールマイトも認めるほどのな。後ろめたさなんか捨てて差を縮める努力をした方が遥かに合理的だ。

それに、津上が体育祭に出ないと決まったわけじゃない」

 

 そうだ、きっと津上ならすぐに快復して戻ってくる。その時に伝えたい事を伝えられるようにしっかり前へ進もうと梅雨は静かに決意した。

 そう思ったのは梅雨だけじゃなかったようで、そこかしこで頷いたり握りこぶしを作るクラスメイトが目に映った。

 

「以上、一限目の準備しとけ」

 

 そう言い残して相澤が教室を去ろうとドアに手を伸ばした正にその時、ドアがひとりでに勢いよく開き、その隙間から人影が飛び込んできた。

 

「寝坊して遅刻しましたぁぁぁぁぁぁ!」

「「「満身創痍スライディング土下座ァ!!!!!」」」

 

 影の正体は包帯まみれの津上、器用にも土下座の姿勢のままクラスへ滑り込んできた。

 あまりの勢いに梅雨を含めたクラスの全員がリアクションを取ったっきり硬直してしまったのは言うまでもない。

 

 まるで一昨日の出来事が嘘のように普段と変わらない可笑しな津上の様子に梅雨は堪えきれす、涙を浮かべて笑ってしまった。

 いつだって津上は周りを驚かせる。こう言う驚きなら梅雨はいつだって大歓迎だ。

 

 しかし言葉を交わす暇もなく津上は相澤に連行されて教室から出ていった。

 

 

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