加えて、予約投稿をミスりました。お気に入り登録して頂いている方、大変失礼しました。
原作改変の兆しが有るのでタグをこっそり追加してます。
トーナメント1回戦第5試合、芦戸VS凡戸の戦いはヌルヌルドロドロ、泥沼の争いだった。
戦況自体は終始芦戸の優勢であり、泥沼なのは絵面の方だ。と言うのも、試合開始から互いが接着剤や酸を放出し、それが足の踏み場もないほどにフィールドを埋め尽くしているからだ。心なしか理科室みたいな匂いまでしている。
「個性の相性的に芦戸さんがかなり有利か」
酸で接着剤を溶かせる芦戸に凡戸の個性はさほど通用していない。それにに加え、身体能力においても芦戸は凡戸に勝っていて、格闘戦になれば体格の差を物ともせずほとんど一方的に痛打を決めている状態だ。
このままの状況が続けばいずれ芦戸が勝利するだろうと、多くが予想していた。
「津上くん、観戦中のところすまないが少し良いだろうか? 会ってほしい人が居るんだ」
凡戸の逆転の一手を祈っていた津上に声を掛けたのは、さっきまで試合を行っていたはずの飯田だった。
後ろ髪を引かれながらそれに応じて、飯田の後に続いた。
「それで、会ってほしい人って?」
「以前話した俺の兄さ」
「お兄さんって、あのターボヒーロー・インゲニウム!?」
インゲニウム、飯田の兄・飯田
津上もインゲニウムが飯田の兄だと知ってからは彼の熱心なファンだ。
思いもしない幸運に心弾ませながら階段を降りると長身の人影が通路脇からぬっと現れた。
「そう、俺がそのインゲニウムだ。こんにちは、津上くん」
「は、はじめまして! 飯田くん……天哉くんには何時もお世話になっております!」
「む! いつも世話になっているのは俺の方だろう!」
「ははっ、2人は波長合いそうだな」
現れた素顔のインゲニウム────飯田
握手をしている天晴の目は津上の全身、特に左手に向けられていた。
「聞いたよ、恐ろしい
「名誉なんて……ただ向かっていって、ただ怪我をしただけです」
「謙虚だなぁ、津上くんは」
親が子に向けるような視線で天晴に見つめられて気恥ずかしくなった津上は思わず目を逸らす。相澤やオールマイトとまた違う親しげな振る舞いがインゲニウムの人気の秘訣なのだろうと津上は感じた。
「その、何か俺に用だったんですか?」
恥ずかしさを紛らわすように津上は抱いていた疑問を口にした。偶然出会ったならまだしもわざわざ連れ出されたのだ、そこには何か理由が有るのだろう。
「なに、天哉が口にする“尊敬する級友”ってのを直接見てみたくてね」
「兄さん、まさかそんな事で津上くんの観戦を中断させたのか!?」
「まぁその、悪い。その通りだ」
「その程度トーナメントが終わってからでも良かったじゃないか!」
天哉の剣幕や天晴の謝る姿を見て津上は却って申し訳なくなってきた。
「俺は全然気にしてないよ! むしろ憧れのインゲニウムに会えてお礼を言いたいくらいさ!」
「なら良かった。そうだ。お詫びっていうのも何だけど、サインとかいる? ツーショット写真でもいいよ」
「そんなこと────「電話持ってないんでサインで良いですか!?」
天哉の言葉を遮るように食い気味に言うと、津上はすぐさまキープしていた新品のノートとペンを差し出した。
突如手元に現れたノートに天晴は少し驚いた様子を見せたが、すぐにそれを受け取って、素早く“津上保くんへ”と添えられたサインを描く。
洗練されたインゲニウムのサインは津上の目には輝いて見えた。
「額に入れて飾ります! あっ日焼けしないように大事に仕舞っといた方がいいか……」
「そんなに喜んで貰えるとこっちも嬉しいよ。時間取らせて悪かったね」
「いえ、俺の方こそ、お時間いただきありがとうございました!」
深々と礼をして津上は観客席へと戻っていく、大きな歓声が響いているのはきっと勝者が決まったからだろう。
残った飯田兄弟はと言うと────
「いい子だな、津上くんは」
「ああ、クラスの中でも一目置かれてる人なんだ。でも、本当にあれだけの理由で彼を呼び出したのか、兄さん?」
「ん、まあな」
天晴の言い草は天哉には少し悪びれて見えたが、それが時間を取らせたからだと思って深くは追求しなかった。
「頑張れよ天哉、仕事の合間に見てるからな」
「見てくれるのは嬉しいが、仕事はちゃんとやらないと!」
「ははっ、お前はそういうやつだよ」
ヘルメットを被り警備の仕事へと戻っていくインゲニウムを天哉は手を振り見送った。
◇
津上が戻った時には既に第5試合は終わっていた。勝者は芦戸、強力な飛び回し蹴りが凡戸の頭部にクリーンヒットし、勝敗が決したらしい。
続く第6試合、常闇VS八百万は常闇がその個性で八百万を一方的に攻め立て、創造したものを使わせる間を与えぬ完封勝利を収めた。
そして第7試合。津上が特に見たかった蛙吹VS切島だ。切島には控室に行く前に激励を送れたが、梅雨は気付けば既に姿を消していたので、声を掛けられなかった。
僅かな悔やみを抱えつつ、2人の入場を固唾を呑んで待つ。
『さーて、続いて第7試合、選手の入場だ!』
『カエルのように跳び、カエルのように刺す! ヒーロー科A組・蛙吹梅雨!!』
この距離からでも梅雨から溢れる迫力は今まで感じたことのないもので、揺るぎないその視線には強い決意が秘められているようだった。
『対するは……硬ぁぁぁぁぁぁい! 説明不要! 同じくA組・切島鋭児郎!!』
硬化させた手を打ち鳴らし、こちらも気合い十分。
津上の予想では機動力に勝る梅雨が僅かに有利だ。ただ、切島の防御力は決して侮れるものではなく、それを利用した力押しやカウンターが決まれば勝負は分からない。
さっきの常闇たちの試合のようにすぐに決着が着くことは無いだろうと津上は予想している。
◆
『READY……START!!!!』
戦闘開始の合図が響くと共に梅雨はカエル飛びで切島との距離を詰める。硬化の個性を持つ切島を戦闘不能にするような攻撃を持っていない以上、狙うのは場外勝ちであり、わざわざ切島をフィールドの中央へ移動させて場外を遠ざけてあげる必要もない。
対する切島は梅雨にとっては有り難いことに、手を硬化させ迎え撃つ姿勢をとった。
「ワリぃが手加減できねえぞ、蛙吹」
「してもらわなくて結構よ」
拳を打ち鳴らしている切島は梅雨の目には隙だらけに見えた。口では手加減をしないと言っていても女子である梅雨に攻撃をすることに少なくない抵抗が有るのだろう。
僅かな落胆が梅雨の心を染めた。梅雨が見せつけたいのは油断している相手に圧勝するところじゃないからだ。
「切島ちゃん、悪く思わないでね」
「へ?」
梅雨は四つん這いのまま力を溜めて、切島に向かって下半身のバネを一気に解放した。
空気の壁を押し退けながら切島への最短距離を飛んでいく梅雨は、跳躍の勢いを利用し空中で前転する。
「速っ!?」
咄嗟に切島は全身を硬化させ防御を固めたが、そんな事はお構いなしに梅雨は全ての勢いを乗せた飛び蹴りを切島に叩き込む。
交通事故でも起こったかのような鈍い音が会場を揺らし、両脚に強い衝撃が伝わる。全ての運動エネルギーを余すことなく切島に伝えた梅雨は、反動を受け流すように元いた方へと跳躍した。
『痛烈! カエルの脚力全部使ったドロップキックが切島にぶっ刺さった!』
四肢を使ってしっかりと着地をした梅雨は、防御の構えを崩していない切島の姿を確認し、警戒を解いた。
「そんなもんじゃ俺は倒れね……「切島くん場外! 蛙吹さんの勝利!!」ええっ!?」
梅雨の全力の飛び蹴りは、狙い通り切島を場外へと押し出したのだ。
「くっそー、油断したァ!!」
「ごめんなさいね、切島ちゃんに勝つ方法は場外しか思いつかなくて」
「いや、油断してた俺が完全に悪い! 蛙吹、オレの分まで頑張ってくれよな!!」
「ええ」
切島と軽く言葉を交わしてから、観客の声援に応えるように手を振った。
ちらりとA組の席に目を向ければほとんどのクラスメイトは驚いた表情を浮かべていた。
予想通りなクラスメイトのその表情は梅雨にとってあまり嬉しいものではなかった。
◆
「すごいな、梅雨ちゃん……!」
まさかの瞬殺劇に驚いた津上は独り言を零した。
「蛙吹って、あんなに強ええのかよ……」
驚きを通り越して恐怖に震えているのは峰田だ。これに関しては自業自得だろう。
他のクラスメイトも軒並み驚いているようで、そうじゃないのは尾白くらいのものだった。
「尾白くんは驚かないんだね」
「ん? ああ、今日までちょくちょく組手をしてて、蛙吹の強さを知ってるからさ」
「組手を……全然知らなかった」
知っていたら参加、とまではいかなくとも見学くらいはしていただろう。
「津上リハビリで忙しそうにしてたから声掛けづらくてさ、体育祭以降もやるつもりだしそん時は一緒にやろう」
「うん!」
「ただ、組手以外にも俺の通ってた道場のトレーニングもやるから身体能力上がる個性じゃない津上には結構キツイかも」
「だったら尚更参加したいよ!」
さっきの戦いで自身の接近戦の弱さを感じた津上、訓練を受けてない(であろう)心操が凌げる程度の技術ではヒーローとしては力不足だ。
自身の個性を活かす為にも格闘能力は是非とも伸ばしておきたい分野であり、それを学ぶ相手が尾白なら師として一切の不安はない。そう思うのは、襲撃事件で多数の
尾白と約束を交わして、視線は再びフィールドへと向けられる。1回戦最終試合にして最も波乱を予感させる組み合わせ、麗日VS爆豪の試合が始まろうとしていた。
◇
第8試合は多くの予想通りに爆豪が一方的に麗日に爆破を浴びせていく展開になった。
容赦なく爆破攻撃を繰り返す爆豪や、それに怯むこと無く果敢に攻める麗日の姿は、見ている津上には到底真似できなさそうで、2人がどんな想いで挑んでいるのか想像もつかなかった。
爆風や煙幕に紛れて宙に浮かんでいく瓦礫はきっと麗日の策だろう。客席から俯瞰している津上でも気付くのが遅れたのに、対戦している爆豪は序盤からこれを警戒していたように見えたのだから恐ろしい。
「反射神経がずば抜けてる、見てから反応するまでが恐ろしく速いな」
「うん」
素の身体能力が高く、策を看破する観察眼を備え、恐ろしいまでの反応速度に、戦闘向きの優れた個性、津上から見た爆豪勝己という人物はヒーローに求められる資質を全て備えているように見えた。仮に対峙したとしても勝てるイメージは湧かない。
爆豪の
「爆発の規模がどんどん大きくなっているように見えるわね、体温か発汗量とかかしら」
「梅雨ちゃん!? いつの間に!?」
気付けばいつの間にか隣の席には梅雨が座っていた。
「いま来たところよ、画面越しだと見切れる事が多いの」
「なるほど」
津上と話している間も、梅雨の大きな目は絶えず試合へと向けられていた。
それもそうだろう、試合結果がどうなるにせよ、今立っている2人のどちらかが梅雨の次なる対戦相手だ。観察にも一際力が入るというもの。
「そうだ、梅雨ちゃん、2回戦進出おめでとう」
「ありがとう。津上ちゃんも2回戦ね、お互い頑張りましょう」
「う、うん」
津上の返答は自分で感じるほど弱々しいものだった。
梅雨の2回戦の相手が麗日か爆豪なら、津上の相手は飯田だ。津上の
『一部からブーイング! 気持ちは分からんでもない!』
来る飯田戦について考え込んでいた津上は会場の様子がおかしい事にようやく気が付いた。
隙を与えぬようひたすらに攻撃を繰り返す麗日を爆破で迎撃し続ける爆豪の姿が一部の
『今遊んでるつったのプロか? 何年目だ? シラフで言ってんならもう見る意味ねえから帰れ。帰って転職サイトでも眺めてろ』
相澤の強い口調には、爆豪への暴言に対する怒りも含まれているように聞こえた。
『ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろう。互いに本気で勝とうとしてるからこそ、油断も手加減も出来ねえんだろうが』
爆煙が晴れて観客はようやく、麗日が浮かし続けていた瓦礫に気が付いた。相当な量だ、流石の爆豪といえど手を焼くに違いない。
相手が対応せざるを得ない攻撃を多方面から浴びせるのは、津上たちが騎馬戦でも行った戦術だ。それを1人で完遂しようとしている麗日に津上は尊敬の眼差しを向けた。
『流・星・群!!!!』
個性を解除された瓦礫が重力に引かれフィールドへと降り注いでいく。
だがしかし、そんな戦術も爆豪の力の前には届かなかった。
BOOOOMB!!
凄まじい爆撃が迫りくる瓦礫のことごとくを破壊し尽くし、その余波は地上から迫っていた麗日すら跳ね除けた。
これまで見た中でも最大級の爆破、その爆風は客席にいた津上の体をも揺らし、その強さに心が震えた。
『麗日さん、行動不能。 よって爆豪くん、2回戦進出!』
麗日は個性の使用超過により、フラフラと倒れ込んだ。限界を超えて這いながらも爆豪に向かっていた麗日の姿は痛々しくも強く見えた。
爆豪との対戦が決まった梅雨をちらりと見る。
あの強大な力を目の当たりにしても梅雨の瞳に灯る闘志は一切揺らいでいなかった。
劇場版第3弾「ワールドヒーローズミッション」見てきました。ファンムービーを超え一本の映画として純粋に面白かったです。〇〇の〇〇を知ってもう一度観に行きたい気持ちがふつふつと。ゲスト声優である吉沢亮さんはゲストとは思えないほどの素晴らしい演技で、一作目のメリッサやデヴィット、二作目のナインやスライスも自然な演技でしたがそれに匹敵、或いは超えるクオリティです。主題歌のエンパシーもタイトルから歌詞からヒロアカに合いすぎてて最高でした(中略)――――映画オリジナルキャラのクレア・ボヤンスさんが可愛いので本編への登場どうぞ。兎にも角にもネタバレを踏む前に是非劇場に足を運んでみてください。(オタク特有の早口)
絞りに絞っても書きたいシーンが多すぎる問題。
天晴を「あっぱれ」で変換しているのはナイショにしてください。