花妖怪の君と出会った日
「私の名は『風見 幽香』。この世界とは隔離された所、『幻想郷』からやってきた花妖怪よ」
「すいません。ウチ、そう言うのは間に合ってますんで」
そう言って僕こと『神谷(かみや) 蓮花(れんか)』は、自宅の扉を素早く閉めた。そのまま流れる様な作業で扉の鍵を閉め、後ろを振り向き扉に背もたれをする。
あぁ、きっと今の人は、中二病って病気を患った可哀想な人なんだ。なんか『隔離された世界』とか言ってるし、自分の事『妖怪』とか言ってるし......かなりの美人だったのに、勿体無い。
いや、本当に美人だった。
一瞬だったけど、一目見たら絶対に忘れないだろうと思えるほどのものだ。
波立つような緑の髪に真紅の瞳。まるで幻想的な、綺麗に整った輪郭。白い長袖のワイシャツと、その上に赤と白の模様の入った袖の無い服を着ていて、下には同じような模様の長いスカート。胸元に黄色の紐、リボンを結わえている。あと、日傘を持っていた。
まあとどのつまり、美人なのである。
でも、それだと色々とおかしい......。
「僕に、あんな美人の知り合いは居なかったぞ......?」
ましてや、会った事もない。今日あの瞬間が初対面だったのだ。
まぁ、僕の知り合い......って言うか『幼なじみ』にも、緑髪の子は居るけど、あれはどっちかって言うと美人ではなく美少女の部類に入る。
......いや、今はそんなことどうだっていい。
とりあえず今は、さっきからインターホンを連打しまくっている外の美人さんをどうにかしなくてはならない。
と言うか、そんなに連打しないで。ここはマンションなんだから、隣の人に注意されちゃう。
しかし、ここで不審者をみすみす上がらせる訳にもいかない。こうなったらだんまり作戦だ。向こうが諦めてくれるまで、無言を貫くとしよう。
ピンポーンピンポーンピンポーン!
............。
ピンポーンピンポーン!
............。
ピンポーン!
.............................?音が聞こえなくなった?だけど、どうやら外にはまだ居るようだ。
そんな感じで警戒をしていると、扉のドアノブが不意に動いた。どうやら、外からドアノブを握っているらしい。しかし、鍵が掛っているから開かないだろう、と油断していると......。
『......ハァ。どうしても開ける気が無いのね?だったらもういいわ、実力行使で入るから』
―――え?と僕が思う暇もなく、鍵を掛けていた扉のドアノブが勢い良く回された。
ベキッ!と言うなんとも軽快な音と共に、ドアノブが強制的に回され、扉が開かれる。そこから入ってきた人物は勿論、扉の前に居た美人さんな訳で......。
「お邪魔します」
「............は?」
意味が、分からない。
扉には確かに鍵が掛っていたハズだ。無論、この扉の合鍵も作ってはいない。つまり、今さっきの状況で扉を開けるには、僕が持っている鍵が必要なのだ。
しかし、彼女は実際に家の中に入ってきている。
鍵は、掛かっていた。だけど、ドアノブは回され、彼女は入ってきた。
......つまり彼女は、鍵が掛かっているドアノブを、力技で無理矢理回した......と言うことになる。
え?何それ怖い。
「ふぅん。ここが外の世界の部屋なのね......なんか、向こうとは色々と造りが違うわねぇ」
そんな僕の混乱もどこ吹く風、と言う感じにヅカヅカと部屋に入り込んでいく美人さん。
僕の部屋、と言っても、ここはマンションである。当然、一軒家みたいに部屋が広いわけでもなく、また、狭すぎるわけでもない。
部屋は合計は、浴室、トイレ、リビング、キッチン、そして空いている部屋の五つ程だ。
因みに言うと、リビングと空いている部屋には僕の趣味が施されている。
―――花だ。
僕は、花が好きだ。少なくとも、花屋をやっている人よりは花に対する愛情があると自負している。空いている部屋程とはいかないが、リビングにも花が沢山置いてある。
そんな中で、彼女はリビングへと行き着き、そこに置かれてある花達を見て、愛しそうに微笑んだ。
その微笑みに、僕は見蕩れてしまった。混乱している事も忘れて、ただただその微笑みに見蕩れてしまったのだ。
そんな僕に、彼女はこちらを振り向いてこう言った。
「良い所ね。花は大事に育てられてるし、環境も良い。この子達も、貴方がとても良い人だと言っているし......うん、決めたわ。
―――私、ここに住むことにしたわ。これからよろしくね、花を愛している人間さん?」
「............は?」
こうして僕と、自称花妖怪である幽香との生活が始まったのだった......。
タイトルを書いてくれた方は、かる夏さんという方です。Twitterにもいますので、どうぞ宜しくしてくれたら嬉しいです。