花妖怪の君と過ごした最高の日々   作:『向日葵』

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花妖怪の君と食事に出掛けた日

「蓮花。はい、アーン」

「............」

 

緑髪で真紅の瞳を持っている絶世の美人が、僕の目の前で僕に定番のはいアーンをしてきた。さあ、どうする!?

......うん。ごめんなさい。急過ぎました。僕自身、あまりにも唐突のことで頭がどうかしていたようだ。

 

「ゆ、幽香さん?」

「はい、アーン」

 

僕の疑問には何も答えない。人の話は聞きませんかそうですか。いやまあ、予想はしてたけどもさぁ!

 

「はい、アーン」

「ね、ねぇ幽香さん。どこでそんなのを覚えて......」

「はい、アーン」

「い、いやだから、どうして.......」

「はい、アーン」

「いや、あの......」

「アーン」

「............あ、あーん」

 

パクリ。......結局されてしまった。ううっ、恥ずかしい。顔が真っ赤になっているのが、自分でも分かるよ。ノーと言える人になりたいものだね。

食べた物を粗食するが、正直味が分かりません。恥ずかしさのあまり、味のことなど考えられないようだ......。

 

「フフ。食いつく様が雛鳥みたいで、可愛いわね」

「ぶふっ!?」

 

しかしそこで、思いもよらぬ幽香さんからの攻撃。突然のことで、つい吹いてしまったよ。あと幽香さん。男に可愛いとか言わないでよ。すごく恥ずかしいんだからね!?

あ、吹いたものを拭き取らないと。ちょっと店員さん。そんな睨まないでくださいよ。いまやってますから。

 

ようやく吹き出したものを全て拭い終えた僕は、改めて『ファミレス』の席に座りなおす。

 

そう。言わずもがな、ここは『ファミレス』だ。

 

切っ掛けは今日の朝。テレビを見ていた幽香さん――初めてテレビを見た幽香さん、最初箱の中で人が喋ってると思っていたらしい――、CMでファミレスを見た所、『美味しそうだから行ってみたいわ』とのことでファミレスへ。

 

注文表を見た時の幽香さんは印象的だったね。こう、何を選ぼうか悩んでいたから。その様子はまるで、子供のようだった。いつもは大人な雰囲気を醸し出しているのに、興味があるものにはまるで子供のような反応をする。『これなんか美味しそう......いやでも、こっちも捨てがたいわね......』ってブツブツ言いながら注文表と睨めっこ。

 

その様子が可愛かったと思ったのは、ここだけの話だよ。言っちゃうとなんか言われそうだからね。

 

ああそれと、注文を頼む時にこちらへ来た店員さんの表情は見ものだったね。幽香さんを見たら、少しの間固まっちゃったもん。やはり幽香さんは、美人の中でもずば抜けている。この前もそうだが、街を歩いていると、必ず男連中から視線が集まる。隣にいる僕としては、なんか鼻が高いね。えっへん。

 

......話が逸れちゃった。

 

まあ、幽香さんのアーン攻撃は終わったし、自分の昼飯に集中するとしよう。べ、別に残念とか思ってないんだからね?もっとして欲しいとか、そんな考えないんだからね!?

なんかツンデレっぽくなってしまった。男のツンデレとか、誰得だよ。自分で自分に引くのであった。

 

「はい、アーン」

「幽香さぁん!?」

 

僕の叫び声に反応した幽香さんは、可愛らしく『なーに?』と聞いてきた。っていや、なーにじゃないよ!なにまたやろうとしてるのさ!さっきので終わったはずでしょ!?

 

「顔を赤くしながら狼狽える貴方の姿が見たくて......」

「ホント君はタチが悪いよね!?」

「はい、アーン」

「お願いですから話を聞いてくださいませんかぁ!?」

 

そうお願いする僕なのだが、幽香さんは聞いてないふりをして、サラダをつまんだ箸をこちらに持ってくる。

くっ。う、嬉しいのは嬉しいんだけど......こう、嬉しさより恥ずかしさの方が勝ってて......今チキンって言った奴出てこいこら。しょうがないじゃん。恥ずかしいものは恥ずかしいんだから。

 

......だ、だがしかし、僕も男。

 

ここは込み上げてくる羞恥心を我慢して、彼女からの行為を受け取るとしよう。そう決意し、幽香さんからのアーンを渋々......ほ、本当に渋々受ける事にした。

口を開け、幽香さんから差し出された箸に向かっていく......が。

 

「やっぱりやめた」

「あっ......」

 

途中、幽香さんが箸を引いてしまったため、僕の口は宙を空ぶってしまう。

で、でも、いきなりどうして......?訳がわからず、幽香さんに視線を向ける。

 

「ああっ。そんな物欲しそうな目をしちゃって......ゾクゾクするわ」

「しないでよ!チクショウからかいやがって!」

 

恥ずかしさのあまり、少し涙目になってしまった。しかし当の本人である幽香さんは、僕のそんな姿を見て体を震わせる。......ちょっとエロいと思ってしまった僕は悪くないはずだ。うん。

 

しかし、流石の幽香さんもそこまで鬼ではなかったようだ。

 

僕の様子に一きしり笑ったあと、再びサラダをつまんだ箸をこちらに持ってきた。

『大丈夫よ。今度は意地悪しないから』と幽香さんが言ってきたので、今度こそ大丈夫だろう。そうして僕は、難なくサラダを食べることに成功した。

 

食べた瞬間に広がる、濃厚な辛さ。パリッとしたサラダの食感に、ぴりっとしたではなくビリィッとした辛さ。幽香さんがこちらにチラ見せしてきた、タバスコと書かれたビン。......って。

 

「辛アァァァァァァッ!?」

「あらごめんなさい。この赤いの、てっきり調味料か何かと勘違いしちゃって......テヘッ☆」

 

いや、テヘッじゃねぇぇぇぇ!!何可愛らしく言ってんの!?元が美人な幽香さんがそれをやっても、ドキッとしかしねぇよ!!いや、それで正常なのか......って、そうじゃなくて辛い!!とにかく辛い!!タバスコどんだけ入れたの!?

 

「ビン一本分」

「おぉぉぉぉぉぉいっ!?」

 

どうりでこんなに辛いわけだよちきしょう!!ってか、よくあの小ささのサラダにビン一本分のタバスコ入れられたね!?―――『苦労したわ』―――変なところで変な努力をしないでくれるかなぁ!!

 

 

 

この騒ぎは、店員さんが急いで持ってきてくれた水のおかげで収まった。ううっ、辛かった。......というか、あれはもう痛かったと表現した方がいい......。

 

 

 

 

 

 

結局その後、僕が注文した料理の味は全くわからなかった。原因は簡単。口の中が麻痺したからだ。ホント、幽香さんのドSっぷりにも困ったものだ。ああ、お金の無駄だったよ.....。

 

 

 

 

 

 

 

―――夏休み終了まで、残り二日。

 

 

 

 

 

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