花妖怪の君と過ごした最高の日々   作:『向日葵』

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花妖怪の君に戦慄した日

......なんだこの状況?

 

 

一言で言ってしまうならば、そう、その言葉が一番しっくり来るような状況が、今僕の目の前で繰り広げられている。

......まあ待て。一旦落ち着こうか、僕よ。落ち着いて状況整理だ。

 

まず一つ目。夏休みも後残り一日だし、課題もういいやと開き直る事にして、幽香さんと一緒に出掛ける事にしたんだ――所謂現実逃避と言うやつである――。

 

二つ目。それで街を歩いていたら、いかにも不良って感じの強面の兄ちゃん達五人に絡まれました。目的はやはり、幽香さんだったね――ちなみにこの時僕は、不良たちに逃げろと心の中で叫んでいた――。

 

三。幽香さんは人目の無い所に連れていかれ、僕も行こうとしたんだが、幽香さんに『大丈夫よ』と言われたので、連れていく場所だけ聞いて待つ事に――実際の所、幽香の暴力から不良たちを逃がそうと思い、行こうとしたんだけどね――。

 

四。遅かったので心配になった――幽香さんではなく、不良たちがである――僕は、幽香さんが不良に連れていかれた場所に行ったんだ。するとそこには、何故か不良が全員、見事な土下座をしておりました。

 

五。......え?どゆこと?

 

って状態です。僕的には、顔を腫らして『お、覚えてろよ!』みたいな捨て台詞を言うだけで不良たちが逃げ、それで終わりだろうと思っていたのだが......流石にこれは予想外だった。

強面の不良たちが美人の前で土下座をしている。いやはや、なんともにシュールな光景だ......。二と四の間に、一体何が?考えるだけでも恐ろしい......。

 

見事な土下座をしている不良たちに、幽香さんは微笑みながら話しかける。

 

「フフ。ねぇ貴方達。貴方達の存在は、この世界にとって一体何かしら?」

 

『『『価値も何もないゴミで御座います!!』』』

 

「あら、分かってるじゃない。正解者にはご褒美、よっ」

 

ガスッ。幽香さんの蹴りが、不良たち――今更だが、三人組である――の頭にそれぞれ炸裂する。

 

『『『あ、ありがとうございますぅぅぅぅうっ!!』』』

 

 

「............」

 

 

ああホント、なんだこの状況?

僕は一体、何を見ているんだ?地獄絵図か?

 

幽香さんの過度なサディストっぷりに、思わず唖然としてしまう僕。

あれだろうか。普段僕の受けている幽香さんからの被害は、あれでまだ生優しかった方だったのだろうか。だとしたら僕は、彼女がとても怖く思えます。

 

幽香さんはこちらに気付いたようで、『あら蓮花......』と言いながら、未だに土下座をしている不良たちを指差すと、満面の笑みでこう言った。

 

「新しい家畜が出来たのだけれど、飼っていいかしら?」

「それを本気で言っていたとしたら、僕は君との友好関係を考え直さなきゃいけないよ......」

「大丈夫よ蓮花。七割は冗談だから」

 

ダメだこれは。半分以上は本気らしい。いやでも、よく考えればあの不良たちが悪いんだし、憐れむ必要なんか―――『そうと決まれば、首輪を買わないとね。一日一食で、二十三時間働いてもらうわよ?』―――名も知らぬ不良たちよ、憐れなり......。

 

「フフ。安心なさい蓮花、貴方も一緒に飼ってあげるわ。一人だけ仲間はずれなんて嫌だものね?」

「全然安心できないんだけど!?」

 

嫌じゃないです!むしろ全然OKです、仲間はずれ!

 

「仲間はずれが好きだなんて......。蓮花、貴方ってMなのね」

「ならなんと言えと!?」

 

仲間はずれが嫌いと言えば、一日一食の二十三時間労働。逆に仲間はずれが好きと言えば、特殊な性癖を持っている奴だと罵られる。........あれ?これって詰みじゃない?泣けてきた......。

 

「そんなMな蓮花には、この子たちと一緒の一日一食二十三時間労働をプレゼントするわ。喜びなさい」

「わー。嬉しいなぁー。......グスッ」

 

どっちを選んでも、運命は変わらなかったってことですか......。本気で泣けてきたよ。―――『あら?喜べないのかしら?』―――あったり前だよこんちくしょう!!

 

「大丈夫。そんな貴方も、立派なMに調きょ......ん、んんっ。調教してあげるから」

「せめて言い直してよ!!」

 

調教宣言されたって怖いだけだから!もうちょっとオブラートに包んでくれないかなぁ!?

 

「大丈夫。そんな貴方も、立派なMに無理矢理してあげるわ」

「結局意味は一緒だよね!?」

 

全然オブラートに包んでないからね!?むしろ更に怖くなっただけだから!!

くそっ。こうなったら、あの不良たちに僕の身代わりになってもらおう......。

 

『お、おい。今の内に逃げようぜ......』

 

『そ、そうだな。あんな化け物女、相手してられっかよ』

 

『全てはあの、蓮花って男が来てくれたおかげだ......』

 

『『『ありがとう!!このご恩は、いつか必ず返す!!さらばっ!!』』』

 

「ああっ!?こら待て逃げるなぁ!!」

 

遅かったか!恩を返すのなら、今すぐ身代わりになれ!貴様らがMになれ!!

 

そんな僕の思いは届かず、不良たちはそそくさと何処かへ逃げていってしまった。後に残ったのは、僕と、そしてドS状態に入っている幽香のみ。

 

......詰んだな、これ。

 

 

「あらあら。あの子たち、逃げちゃったのね。これからたっぷりと調教しようと思ってたのに......残念。じゃあ蓮花。貴方にはあの子たちの代わりに、年末不眠不休一週間三食の労働をしてもらうわ。覚悟し・て・ね♪」

 

「いぃぃぃやああああっ!!」

 

 

幽香さんのその提案に、僕の絶叫が響き渡ったのは言うまでもないだろう......。

 

 

 

 

―――夏休み終了まで、残りあと一日。

 

 

 

ホントにこんなので、これから先の生活上手くやっていけるのだろうか......?それだけが、今の僕にとってはとても不安です。

 

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