花妖怪の君と過ごした最高の日々   作:『向日葵』

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幼なじみの君と再開した日

『え〜。次に、校長先生のお話に移ります。皆さん、その姿勢のまま、静かに聞いてください』

 

『『『......』』』

 

不穏な空気。殺気の漂う体育館。だがしかし、それも仕方ないことだろうと僕は思う。かくいう僕も、現時点でイライラしているのだから。

 

理由は二つ。

 

まず一つは、この姿勢だ。正座。そう、正座である。両膝を曲げて太ももの下にやる、あの由緒正しき姿勢である。大体、正座というものを考えた人はバカなのだと僕は思う。何が礼儀正しい座り方だよ。痺れるだけの無駄な座り方じゃないか。考えてもみてよ。偉い人の前で正座をしながら接待してて、そいつに『えらく行儀の良い。礼儀正しい人なのだな』とか言われた後に痺れた足のせいでこけてしまった姿を。恥ずかしいでしょ?確かに行儀良いかもしれないけど、リスク高いでしょ?僕はそんなリスクの高いことをしたくありません!

 

......まあ、いいや。ここまではまだいい。まだ我慢できる。だがしかし、二つ目の理由はダメだ。我慢できない。皆が殺気立つ大まかな理由が、二つ目になるのだから。

 

そう。その二つ目の理由とは......。

 

 

『どーもーどーも〜。みなさんのアイドル的存在、校長先生、で〜っす!いやはや、時が流れるのは早いもんだね。あんなに長かった夏休みも、今日で終わりを告げました!皆、いい夏休みは過ごせたかな?え?俺?いや、俺は夏休みに入った途端にナンパしまくったけど?まっ、全部ダメだったけどね〜。だけど大丈夫!星の数ほど女はいるんだ。君たちチェリーボーイたちにもいい出会いはきっとあるはずさ!あっ。いい女いたらさ、俺に紹介してね?よろしちょリース!』

 

 

う......うぜぇぇぇぇぇぇぇ!!

 

もうわかったよね?わかったでしょ!?ってかわかってお願いします!これが皆の苛立っている理由さ!ただでさえ痺れる足を我慢して正座をしているっていうのに、このチャラい校長の話を聞かされるんだよ?そりゃ皆殺気立つわ!しかもこの校長、無駄に話が長い!その間でさえ僕たちは正座をしなきゃいけないって、このクソ校長わかっててやってんの!?......なんでこの学校、こんな人を校長にしてしまったのだろうか?校長だけでなく、この学校の教員たちも頭が湧いているのだろうか......?

 

 

『つーかさ。良く考えたら、俺の学校の女子生徒たちって発育良くね?ちょっとそこの娘、今夜は俺と一夜を過ごさないかい?あぁ大丈夫。退屈はさせないよ。なんなら、高級レストランにでも連れていってあげるよ?ま、それなりの対価は払ってもらうけどな!......もちろん、体で。うへへっ』

 

『『『アンタよく校長になれたな!?』』』

 

 

男子生徒一同、心からのツッコミ。皆の心が一つになった瞬間でもあった。もちろんそのツッコンだ中には僕もいる。っていうか女子生徒引いてるよ。もうドン引きだよ。そりゃそうだ。教員からの、それも学校の最高責任者からのセクハラ発言。女子生徒だけでなく、男子生徒の何割からも引いている。ま、まあ、その気持ちは男子ならばわからないことでもないけれど......。

 

 

『あ、大丈夫だから安心しなチェリーボーイたち。先生は可愛い顔した男子もウェルカムだぞ!!』

 

『『『ドン引きだよ!!』』』

 

 

ここにきてまさかのカミングアウト!? 流石の僕らも、それにはドン引きだよ!!

そんな僕らの反応も何のその。そう言わんばかりに、校長は話を続ける。

 

 

『いやでも、よく見たらお前ら全員ブサイクだったな。やっぱいいや。ごめんな、ブサイクども。お前らは一生チェリーボーイのままなのさ!アッハッハッハッハ!!』

 

『『『てめぇちょっと表出ろやぁっ!!』』』

 

 

よっしゃボコす!あの校長今日こそボコす!!......などと息を荒げて校長へと向かう男子生徒たちを、必死で止める教員たち。まったく。ブサイクとかチェリーボーイとか言われただけであんなに冷静さを失うなんて。みんな、まだまだだなぁ。

 

......ちょっと国春先生(古典担当)、そこどいて。そのチャラ男殺せない。

 

 

『でも俺は、そんなお前らが大好きだぜ?だから気にすんなよ!いくらお前らがこの俺のパーフェクトでクールなナイスフェイスを妬んだとしても、結局お前らがブサイクってことに変わりはねぇんだからよ!!ハッハッハ!』

 

『『『よっしゃぶっ殺してやるよぉぉぉぉぉぉぉっ!!』』』

 

 

今日こそ引導渡してやるよ、この怨敵がぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあHR始めるぞー。皆席につけー」

 

所変わって僕らの教室、1-A組。あの後ちょっとした暴動が起きたのだが、怪我人は一名だけという比較的軽い結果で事態は収まった。その一名が誰なのかは、まあ、みなまで言うまい......。自業自得とはまさにこのことだと、そう思えるほどの仕打ちを受けていたから。主にチャラ男が。

 

「さて、先ほどの体育館での件だが......お前ら、よくやった。先生はお前ら男子を誇りに思うぞ」

 

ねぇもうなんなのこの学校?校長――一応もう一度言うが、あれが最高責任者である――に対して殴る蹴るの暴行を働いた生徒を誇りに思う学校って本当になに?先生、僕もう転校したいです!

 

「そんなお前らに朗報だ!なんと今日は、転校生がこのクラスに来るんだぞ!新しい仲間だ。ちゃんと仲良くやれよ?」

 

そんなことを思っていると、先生が突然重大発表をしてきた。これには流石にクラスの皆も驚いているようだ。色々な思案を口々に言っている。

 

『この時期に転校生?』『どんな子なのかな?』『可愛い子だったらいいぜ。ここの女って女らしくねぇからなぁ』『まったくだぜ。少しは大和撫子ってやつを理解してほしいよ』『なんですって!?そこに直れ男子共!!』

 

......この会話たちに参加できないのが、やっぱり悔しいなぁ。改めてそう思う。今の僕には友達がいない。あぁもう、なんでこんな時に上手く会話に入れないのかなぁ僕ってやつは......。そこから話を膨らませて、友達になることだって可能なのだろうに。その一歩が踏み出せない。

 

そうこう考えている間にも、クラスのざわめきは広がっていく。

 

『俺はお淑やかな淑女に一票』『だったら俺はツンデレに一票だな』『何言ってんだ。転校生はドジっ娘って相場が決まってるんだよ。てなわけでドジっ娘に一票だぜ』『てめぇら理解してねぇ。多分転校生はこう言うはずだ。だからこそ俺は、我が魔眼は、見たもの全てを滅ぼす邪悪な力を秘めている......くく、くくくっ。そんな力を持つこの我に、本当に勝とうとでも?に一票だ』

 

うんごめん最後のおかしい。君一回病院に診てもらった方がいいよ?多分結果は厨で始まって病で終わるあの病だ。間違いない。

 

「ほらお前ら、静かに静かに。お前らがそうやって騒いでたら、転校生が入るには入れないだろうが」

 

先生のその言葉に、今まで騒いでいたクラスが嘘のように静まる。先生は一度扉を開け、『いいか?』と何やら質問をしている。扉の外で待っている転校生に準備はいいかと聞いているのだろう。

 

それから数秒。先生は扉を開けたまま教卓の前までくると、扉に向かって手を拍手をした。

 

「さぁ、転校生とのご対面だ!ほらお前ら拍手!」

 

パチパチパチ!まるで歓迎遠足みたいノリだな......とは言わない。言っちゃうとなんか僕がものすごく心の病んでる人に見えちゃうから。一応僕も拍手を送る。

 

そしてようやく、その転校生が扉からクラスに入ってきて............。

 

 

 

 

「............は?」

 

 

 

僕は多分、生涯でこれほどまでに間抜けな顔を晒したことはないだろう。自分でもそうわかるほどに、今の僕がどんな顔をしているのか安易にわかってしまったのだ。だって......だって、クラスに入ってきたその転校生は......。

 

 

 

 

 

「転校生の、東風谷(こちや) 早苗(さなえ)です。みなさん、何卒よろしくお願いしますね!......そしてお久しぶりですね、レン君......」

 

 

 

 

あの時行ってしまった僕の、もう会えないだろうと思っていたたった一人の幼なじみだったのだから......。

 

 

 

 

 

 

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