花妖怪の君と過ごした最高の日々   作:『向日葵』

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花妖怪の君と幼なじみが出会った日

『わあっ!すっごいすっごい!お花さんがいっぱいだよ!』

 

『ふっふっふ。当然よ。なんて言っても、私の自慢の花畑だもの』

 

とある花が辺り一面に咲き誇っている畑に、二人の声が響く。片方は顔や体全体が全くと言っていいほど『直視』できず、声にもノイズが走っているため歳などはよくわからないが、話し方からして女性のようだ。

もう片方は、まだ7にも満たないほどの歳の少年。......いや、僕、『神谷蓮花』。

 

『ねぇねぇお姉さん。このお花の名前はなんて言うの?まるで太陽さんみたいで、とてもキレイ!』

 

『いいわ、教えてあげる。この花たちの名は向日葵。私の一番大好きな花よ。それにしても、ふふっ。太陽みたいだなんて、貴方、将来有望ね。......それに、貴方の笑顔も、まるで太陽みたいにキレイだわ』

 

あぁ、不思議な夢だ。やっぱり、幼かった頃の『僕』と話している君を、見ることはできないんだね。なんか、悔しい。

 

『ねぇ、貴方。貴方は、花が好きかしら?』

 

『うん!結構好きだよ!でも、お姉さんに色々お花のこと教えてもらってたら、もっと好きになっちゃった!』

 

そう言って『僕』は、未だに僕の目では直視できない女性にありがとうと頭を下げた。

それを見て、女性は何やら嬉しそうに笑う。いや、直視できてないから、表すとしたら、笑ったような?って言ったほうがいいのかな?

 

『そう。それはよかったわ。ねぇ、貴方さえよければ、この花畑にもう数日居てみる?花について教えてあげるわよ?』

 

『え?いいの?』

 

『もちろんいいわ。貴方自身に聞いたところだと、どうやら貴方は外の世界の人間みたいだし、どの道あのスキマ妖怪が来ないと帰れないんだから』

 

そう提案された『僕』は、どうしよかなぁと小声で言って数秒考えると、首を縦に頷いた。どうやら腹を決めたらしい。

まあ、多分だけど、女性の方はこうなるって予想してたんだろうけどね。

 

『そう。じゃあ、これから数日よろしくね。スキマ妖怪には、数日経ったら来てくれって言っておくわ。安心なさい』

 

『うん!ありがとね、お姉さん!』

 

『ふふっ。いいこと?そのスキマ妖怪が来たらね、そいつにもお姉さんって呼んであげなさい。とっても喜ぶわ』

 

『ふぇ?なんで喜ぶの?』

 

『女性はね、歳のことを気にする生き物なのよ。だから、歳をとってるそのスキマ妖怪には、お姉さんって言っておきなさい。泣いて喜ぶから』

 

......あれ?ちょっと、待って。この会話......覚えてる。いや、思い出した?

なんだろう。段々と、意識が遠のいていく。夢の中なのに意識が遠のくって、それはそれで不思議だ。......って、そうじゃなくてだね。

 

 

 

 

―――そう、確か、この後『僕』が言った言葉は......。

 

 

 

 

『それってまるで......』

 

 

 

 

 

それってまるで......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『―――子供みたいなお姉さんなんだね』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......っていう夢を見たんだけどさ、早苗はどう思うかな?」

 

場所は学校から変わり、僕の家までの通学路。あの後学校の屋上で早苗と色々話していた時、彼女の『レン君の今の家に行ってみたいです!』という発言により、急遽早苗を僕の家へと迎えることになった。

僕としても、早苗ともっと話していたかったから、早苗の僕の家に来たいという案を呑んだ。

 

そして今現在。

 

話のネタを探していた僕は、今朝見た不思議な夢の話を早苗にした。しかもその夢、恐らく昨日見た夢の続きだ。何故かそう思う。いや、思ってしまう?よくわからない。

早苗は、僕のどう思うという問いかけにうーんと考える素振りを見せた後、口を開いてこう言った。

 

「多分ですけど、その夢はレン君の『何か』に繋がっているのだと思います。その『何か』が私にはわかりませんが、とても、とても重要なことのような気がしてならないんです......」

 

「......ふむ」

 

確かに、そう考えることもできる。いくら幼かったと言っても、あんなに一面に向日葵が咲いている印象的な場所なんて、そうそう忘れる訳が無い。なのに忘れている。普通じゃありえないことだ。何故?いや、それこそわからない。

 

......まさか、とは思うけど......忘れさせられている?

 

「......なんて、ね」

 

「ん?どうかしましたか?」

 

「いや、なんでもないよ。ちょっと考え事をね」

 

自分で考えた選択肢を自分で否定した後、ついつい口に出してしまった。おかげで早苗に心配されてしまったようだ。まあ、嬉しいんだけどね。早苗の昔と変わらない優しさに安心したよ。

 

「いいですか、レン君。何かしらの悩み事や、一人じゃどうしようもないような問題が起きてしまった場合は、私を頼ってください。絶対ですからね?」

 

......あぁもう、本当に、こいつは......。

 

昔と変わらないどころか、昔以上に優しくなっている幼なじみの姿に、ついつい感動してしまった僕。

なんでだろう。最近、虐め癖のある人に色々とやられてたからかな?なんかもう、少し優しくされただけで心に来ちゃう僕がいるんだよね。なんて軽い男になってしまったんだろうか、僕は。

 

......んん?虐め癖のある人?

 

あれ?な、なんだか、とっても大切なことを忘れてる?それこそ、早苗を家に連れてきてはいけないような感じの、大切なことだと思うんだけど......。

 

早苗と再開できたどころか、上手く仲直りできたことで色々なことを忘れてしまっているのだろうか?と、不安に駆られてしまう僕。......いや、でも。

 

「ふふふっ。レン君と一つ屋根の下で二人きり。これはもう、進展すること間違いなしっ。えへへ〜。まずは他愛ない話から、徐々に、徐々に距離を縮めて、最後は......きゃっ♪」

 

早苗の、花が咲いたような笑顔を見ていたら、そんなことすらどうでもよくなってくるよ。

 

っていうか早苗さん、もしかして自分の世界に入り込んでいらっしゃる?何言ってるか小声でわかんないけど、すっごい満面の笑みだから、別にいいのかな?いやでも、このまま自分の世界に入り込んで事故とかにあったら嫌だしなぁ。

 

そう考えた僕は、とりあえず、意識がしっかりしているかだけは確認しておこうと思い、早苗に声をかける。

 

「ねぇ、早苗」

 

「いやんっ。もう、レン君ったら、大胆なんだから......」

 

返事がない。完全に自分の世界に入り込んでいる。ってか、小声でブツブツ言わないで。なんか怖いから。そしてさっきから僕の背中に何故か冷や汗が流れてるんだけど、もしかして早苗のせい?

 

「おーい。早苗ー」

 

「その出来事がきっかけで、私達は晴れて夫婦に。思い出作りのハネムーンはどこにしようかな......」

 

「さーなーえーさーんー?おおーい!早苗ー!」

 

「お帰りなさいあなた。ご飯にする?お風呂にする?それとも、ワ・タ・シ?な、なーんて!あはっ、あははは!」

 

なんか笑い出した!?ちょっ、なんか怖いよ早苗さん!?本当に大丈夫!?

 

「さ、早苗!気をしっかり持つんだ!一体どうしたのっ!?」

 

「うえっ?あれ、あなた?お帰りなさい。今日はお仕事早いのね。もしかして、私と居る時間をもっと伸ばしたかったから?もう、仕方ない人。えへへ〜」

 

「早苗!?」

 

ま、まずい。重症だ。これは早急に病院に診てもらわないと......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とかなんとか。そんなゴタゴタだらけの早苗との一緒の帰宅は、まるで昔に戻ったみたいに、面白おかしかった。

 

そしてこの時の僕は、これから数刻後に後悔をすることになる。

そう、ある存在を忘れたことによって......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから僕らが目的地――と言っても僕の住んでるマンションなんだけどね――についたのは、早苗が元に戻ってから数分経った頃だった。何気に近いんだよね、僕の住んでるマンションから学校って。

まあ元に戻ったと言っても、早苗が『常識に囚われてはいけないんですよね、神奈子様、諏訪子様......』とか言い出した辺りで、流石の僕も救急車を呼ぶか真剣に悩んだ。

 

「ここが、レン君の家のドア......」

 

そんな早苗と言えば、僕の家のドアを見てそう感涙している。 ......いや、ドア見て感涙っておかしいでしょ、と思ったが口に出さない。もうこれ以上ツッコミを入れるものか。これ以上ツッコンだら僕の身がもたない。

 

とりあえず早苗は無視して、家の扉のドアノブを回す。ついでに、ただいまと言うのも忘れてはいけない。

 

 

「ただいま〜............あ」

 

 

そして今、全てを思い出した僕の顔は、一体どうなっているのだろうか?恐らく、相当不味い顔をしていたに違いない。

 

だって、今の今まで忘れていた存在は、早苗と再開して仲直りまでできたことに喜びすぎて、舞い上がりすぎて忘れていた存在は、目の前からこちらに笑顔で小走りをしてくる......、

 

 

 

 

「お、おかえりなさい、蓮花。き、今日は朝早かったのね。出ていったの、全然気付かなかったわ。それよりほら、早く入って私の相手を............貴女、誰?」

 

 

 

 

早苗を見た瞬間笑顔を無くした、僕の同居人、風見幽香さんなのだから......。

 

 

 

僕、この戦いを生き残ったら、守矢神社に行くんだ。願いを叶えてくれて、ありがとうって。えへへ......。

 

 

 

 

 

 

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