花妖怪の君と過ごした最高の日々   作:『向日葵』

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花妖怪の君が初めて遊園地に行った日

向日葵畑。

 

僕が見る夢の中だけでの、向日葵しかないその畑に、僕はそう名付けることにした。いつまでも名前がないただの畑だったら嫌だろうしね、この立派な畑も。

とにもかくにもまあ、そんな向日葵畑に、いつもどおり『僕』がいたのである。そしてこれまたいつもどおり、向日葵たちの世話をしていた。

 

......が、今回はちょっとだけ、いつもどおりではないようだ。

 

理由は単純。直視できない日傘の女性の他に、もう一人誰かいるからだ。いつもは『僕』と日傘の女性だけだというのに。

 

『あら、危険度が極めて高い気性の荒い貴方が、普通の人間の子供を気に入ってるだなんて珍しいわね......?』

 

『まあ、私自身そう思ってるわ。普通なら殺すところなのに、花を好きなこの子を不思議と気に入っちゃったのよ。あと、誰が短気ですって?殺すわよ?』

 

軽口の言い合い。だが、それだけでわかる。この日傘の女性と話をしているもう一人は、とても長い付き合いなのだろうな、と。

 

声からして女性なのだろう。声からして、というのは、何故かこの人も直視できないからである。だが、何故か扇子を持っていることだけはわかる。なんでだろうか......?やはり、何もわからない。

 

二人と少し離れて向日葵の世話をしていた『僕』は、新しく現れたその女性に気付いたのだろう。二人のいる場所に笑顔で走ってきて、こう言った。

 

『貴女がお姉さんの言ってた、スキマのお姉さん?綺麗ですね!』

 

『今の聞いたかしら――っ!私、この子を気に入っちゃったわ!』

 

『だからって撫で回すとその子に迷惑よ?あと、力加減を間違えないように。首が折れかねないから』

 

『わかってるわよ!ほらほらー、お世辞がうまいのね貴方は。でも、そう言ってくれるのはとても嬉しいわよ?』

 

『わっ。く、くすぐったいよスキマのお姉さん......』

 

『―――っ!?あーもうこの子可愛過ぎでしょ!橙くらい可愛いわ!』

 

頭を撫でられる『僕』に、撫でている女性に、そんな二人を見てクスクスと笑うもう一人の女性。平和だ。のどかすぎる。だから、『僕』じゃなくて僕は。

 

 

なんて幻想的で、素晴らしい光景なんだって思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「さぁ、そんなこんなでやってまいりました遊園地!今日はレン君も風見さんも、遊びつくしますよ!」

 

「あ、あはは。今日はまた一段とテンション高いね、早苗」

 

「ふん。なによ、こんなの子供騙しの遊具じゃない。何が面白いと言うのかしら?」

 

そう言いながらもジェットコースターやメリーゴーランドとかに目線をチラチラ向けてますけども、幽香さん。初めて来るから気になってるんでしょ?まったく、素直じゃないなぁ。......言うと殴られるから言わないけどね。

 

さて、突然だが僕たちは今、遊園地に来ている。

 

この遊園地に来た目的はズバリ、『これを期に仲良くなろう』ということである。主に幽香さんと早苗の仲、だ。これを提案した早苗には大いに感動したものである。僕としても、ずっとあんな雰囲気のまま二人に話し合って欲しくはない。これを期に、二人には仲良くなってもらわないと困るのだ。

 

......と、いうことで。

 

「じゃあまずはあれに乗りましょうそうしましょう!ジェットコースターは遊園地の定番なんですから早く行かないとどんどん列が溜まってしまいますから早く行いきましょう!」

 

「うんちょっと落ち着こうな幼なじみ」

 

まずは暴走気味の早苗を止めようかな。

 

ってか、幽香さんそっちのけで自分だけ楽しもうとするんじゃない。二人で話し合って仲良くやってよ。遊園地で浮かれるのもわかるけれど、それじゃあまるで子供だからね?自重しようか?とりあえずステイ。

 

ほら、幽香さんからも何か言ってやって......え?私もあれに乗りたい?......さいですか。まあ確かに、ジェットコースターに目線をチラチラ向けてたのは知ってましたがね。

 

「あれはどういった遊具かしら?とりあえず、早いということだけわかるわ」

 

「あれはですね、ジェットコースターと言って、乗っている人のアドレナリンを最大限に分泌させる乗り物でして......」

 

「サラリと嘘を教えないでよ早苗!幽香さんも『なるほどぉ』みたいな感慨深い頷きをしないで!そんな乗り物ないから!」

 

それだとジェットコースターに乗ってる皆が最高にハイってやつだー、になっちゃうから!なんか怖いから!異常な光景だから!集団麻薬やってるみたいじゃないか!

 

まったく、と思いながら、早苗の代わりに僕が幽香さんにジェットコースターについてを教える。横ではその早苗が『冗談ですよぉ。あはは』とか言っている。でもね早苗。幽香さんはこういったものは初めてなんだから、そんな冗談も鵜呑みにしちゃう恐れがあるんだよね。早苗が幽香さんに変なこと教えないか心配になってきたよ......。

 

と、まあ、そんなこんなでジェットコースターについての説明が一通り終えると、幽香さんはなるほどと言った表情でうんうんと頷き、

 

「大体わかったわ。つまりあの乗り物は、上げて落とすのが好きな人が作り出したもので、上げて落とされるのが好きな人達が乗る乗り物、というわけね」

 

そう表現してきた。

 

うん。まあ、そう、なんだけど......大体合っては、いるんだけれども......あるぇ?

 

おっかしい。普通のことのはずなのに、幽香さんが言うと酷く悪いように聞こえてくる。『ふむ。SMプレイとはまさにこのことね』とか幽香さんが言ってるけれどあえて何も聞こえなかったことにしよう。うん、そうしよう。

 

......まあ、それでもさ。

 

「まあ、偶にはそういったのも悪くはないわね。それじゃあ蓮花、あれに乗りましょう」

 

こうやって幽香さんに笑顔で言われると、そんなことどうでもいいようにさえ思えてくるんだよね。......本当に、不思議なことにさ。

 

 

 

 

 

 

 

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「近くで見ると、これはまた......人も多いし」

 

「まあ、遊園地と言えば遊ぶにはもってこいのテーマパークだしね。人が多いのは当たり前だし、そんな人達を楽しませるために作られたものだから、大きさも尋常じゃないんだ」

 

そう言いながら、係員の人に僕らは予め買っていたパスを見せ、ジェットコースターに乗る準備を始める。と言っても、やることと言えばシートベルトを付けるくらいだが。

 

僕と早苗は手馴れた手つきでシートベルトをつけ、ジェットコースターが発進するのを待つ。まあ、幽香さんはこういったのは初めてだったので、シートベルトを付けるのに手間取っていたが。

ちなみに席としては、僕の右隣に早苗、左隣に幽香さんが座っている。このジェットコースターが一席三人乗りでちょうどよかった。

 

......が、ここに来て、僕はある重大なことに気がついた。

 

「......っ!?」

 

「?どうしたんですか、レン君?そんな血走った目をして。気味が悪いですよ?」

 

「馬鹿みたいに目を見開かないでよ。出目金のモノマネ?」

 

お前ら本当は仲いいだろ絶対に!何そのシンクロ攻撃!

 

っていや、そうじゃない。僕が目を見開いた理由はそんなのじゃない。注目するは、早苗と幽香さんのとある部分。そう、それは......

 

―――胸だ。

 

まあ、自分でもこれはセクハラだろってわかっている。でも、でもね。幽香さんはいわずもがな、早苗も結構あるんだよ。どこがとは言わないが。

そんなところが、シートベルトで押しつぶされてみろ。......男なら、わかるはずなんだ!

 

「......レン君から、ものすごい邪気を感じるのですが?」

 

「そうね。私もそう感じたわ。帰ったらお仕置きかしらねこれは」

 

「イヤーだなー、何を言ってるんですかオフタリトモー!ハッハッハ!」

 

ま、まずい。女性陣からの反応が冷ややかだ。もうこれ以上は何も考えないようにしとかないと。......でも、たまに、たまーにチラ見しても仕方が無いよネ!だって男の子だモノ!

 

『乗客の皆さんは、シートベルトを着用しましたか?それでは、これより―――』

 

「あ、ほら、ついに始まるみたいだよ二人とも!こっちに集中しよう!」

 

「なんかはぐらかされた感がハンパじゃありませんが......わかりました。折角ですし、楽しみましょう!」

 

「ふふっ。なんかこういったのもいいわね。......あ、蓮花は後でおしおきね」

 

「ちくしょう!」

 

幽香さんだけははぐらかせなかったか!上手いことアナウンスがなったと思ったのに!

 

......まあ、いいや。今回は、僕も楽しむとしようかな。久しぶりに......本当に久しぶりに、幼なじみと遊ぶわけだしね。

 

改めて早苗とやっと仲直りできたことに関する感慨深さと、こうやってまた遊んだりできる喜び、そして、隣で幼なじみが笑顔になっていると、自然と笑顔になる。

 

......そうやって笑顔で、早苗の方を向いていたからだろう。僕は気付けなかった。気付くことができなかった。

 

 

 

「............」

 

 

 

幽香さんが、露骨に不機嫌な顔をしているのに、僕は気付けなかったんだ。

 

 

 

 

 

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