花妖怪の君と過ごした最高の日々   作:『向日葵』

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花妖怪の私が彼を意識した日

『レン君のことが、好きなんですね』

 

 

 

 

 

 

 

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ーーー早苗のあの言葉から、私の心はだいぶ困惑していた。

 

だって、そうじゃないか。そうでないとおかしいではないか。『自分で自分がわからない』だなんて。

 

「…………」

 

「ゆ、幽香さん?どうしたのかな、そんなに睨んできて」

 

「……別に」

 

そう、別に。別にだ。別に、なんともないはずだ。いつもと同じ蓮花が、いつもと同じように花達に水をやっているだけ。そう、たったそれだけなのだ。

 

なのに……どうして。

 

 

ーーーどうしてこんなにも、彼から……蓮花から、目が離せなくなっているのだろうか。

 

 

蓮花の笑顔が好き。だから、それが原因で早苗と色々あったのも認める。だがしかし、それとこれとは話が別なはずだ。彼の笑顔が好きなことと、彼のことを好きというのは、意味合いが全然違う。

 

「……幽香さん?」

 

確かに蓮花は良い人間だ。今まで生きてきて、何千何万もの人間たちを見てきたのだが、彼みたいな人間は初めて見る。そしてそんな彼が、良い人間というのもわかっている。

だが良い人間だからと言っても、それだけ。それだけなのだ。だから好きとか、そういった感情は湧いてこない……はず。そう、そのはずだ。

 

「幽香さーん?おーい?」

 

蓮花は優しいし、いざって時に頼りになるし、なんやかんや言って私のことをいつも考えてくれている、ってそうじゃなくて。

 

あーもう、どうして蓮花のことを考えると、こんなにも困惑しちゃうのよ。それもこれも蓮花のせいだ。ここは一つ、文句でも言ってーーーって、

 

「幽香さん?どうしたの?顔が赤いけど」

 

「ーーーちょっ、ちかっ……!?」

 

蓮花に八つ当たり、もとい文句をつけようと、彼の方を向くと、なんと彼の顔がすぐ近くまで来ているではないか。

これには数多の修羅場をくぐり抜けてきた百戦錬磨の私でさえ、冷静な判断をできず、オロオロとしてしまう。

 

……しかし、そんな私の様子を見ていた蓮花は、こともあろうに、笑っていたのだ。……あぁもう、やめなさい、その笑顔。誰のせいでこうなってると思ってるのかしら。

 

「……何を笑ってるのよ」

 

「あはは。いやぁ、こういった幽香さんを見るのは久しぶりで……ワンピースを買った時以来かな」

 

あぁ、あの、冷静に考えたら肩とか結構露出してるしヒラヒラだしで、なんか自己嫌悪に陥っちゃったからタンスにしまってるやつね。……でも、まあ。蓮花が初めて褒めてくれたやつだから、大事にしまってるけれど。

 

「って、それがあなたが笑っていることとどう関係あるのよ」

 

「あ、いや、その……だから、ええと」

 

理由をさらに追求された途端、しどろもどろになる蓮花。何故か顔も赤い。あれか、おかしかったとでも言うのだろうか。笑えるほど陳腐だったと?よし、殴るわ。

 

蓮花は、しどろもどろになりながらも、言葉を続けた。

 

「だから、その……可愛いな、って、思った」

 

「……え?ーーーっちょ、何をっ!?」

 

恥ずかしいから言いたくなかったんだ……!なんて悶えてる蓮花のことなど気にならないほどに、今の私は羞恥に満ちていた。

 

『可愛いな、って、思った』

 

確かに、蓮花はそう言った。誰に?私に?そんな馬鹿な。いやでも

今この部屋には私と蓮花しかいないわけであって……蓮花が自分に言った?いやいやそんなわけない。じゃあ誰に?……私?

 

思考がぐるぐると回る。顔がすごく熱い。心臓がドキドキして、上手く物事を考えられない。

 

「ち、ちょっとでかけてくるわ!!」

 

「へ?あ、幽香さん!?」

 

蓮花の静止の声などどこ吹く風、っというかそもそも、今の私は蓮花の前から姿を消したいという気持ちでいっぱいだった。なぜか、とても恥ずかしかったからだ。

 

そうやって私は、蓮花の家から飛び出して、一人で町中に向かった。

 

 

 

 

 

 

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蓮花の家から飛び出して来た私は、もちろん計画などあるはずもなく、近くの公園のベンチに腰掛けていた。人の影はどこにもなかった。人気がないのだろうか?いや、いまそんなことよりも、だ。

 

「……はぁ。あぁ、もう。ワンピースを着ていた時に言われた時は、こんなに恥ずかしくはなかったのに」

 

そうだ。早めにこの問題をどうにかしなければ、蓮花の家に戻れないではないか。いやまあ、おそらく時間とともに落ち着いていくだろうが。しかしこの問題をどうにかしなくては、私はこれから、蓮花にどんな顔をして会えばいいのだろうか。

 

それに、蓮花に昔言われた時。あの時だって可愛いって……いや、あの時は、綺麗、だったか。

 

「き、綺麗、か……」

 

って、そうじゃなくて。何を思い出して頬を染めてるの私。それでも大妖怪か。……でも、上手くは言い表せないけど、この感じ。

 

ーーー満たされる。

 

蓮花に褒められると、認められると、必要とされると。いつもいつまで思う。何故こんなにも満たされるのか、と。今回だってそう。満たされていたが、まあ、恥ずかしくなって、その場にいられなかった。蓮花の顔を見てると、顔が沸騰しそうたったから。

 

ほんと、わからないものだ。自分で自分が、わからない。私の気持ちはいったい?私は彼のことをどう思っている?

 

「そもそも、私がここに来たのは、彼の『状態』を確かめることであって……」

 

だからこそ、この世界に来て、彼に会えたのは、とてつもない奇跡。さらに一緒に住む、なんて。本来の計画では、とりあえずなんとか衣食住を手に入れ、彼を探すつもりだったのだ。それが、まさかこんなにも早く済むとは。

 

「…………」

 

本来ならもう、私がこの世界に、外の世界にいる意味は無い。目的は達成してるんだし、蓮花の体には何の異状もなかった。だから、本来なら私は、とっくの昔に幻想郷に帰ってるはずだったのだ。

 

「……居心地が、良すぎたわね」

 

困ったことに、まさにその通りなのだ。居心地が良すぎた。長居しすぎた。彼のことを、知りすぎた。だから、放っておけなかった。何かの力になりたいと思ってしまった。かつては人間なんて殺めまくっていた大妖怪が、聞いて呆れるわね。

 

それほどまでに、神谷蓮花という人間から影響から受けた影響が大きすぎたのだ。ほんと、不思議な人間。私の花畑に『一度来た時』は、まさかこうなるなんて、予想もしてなかったわ。

 

……だからこそ、私は。

 

 

 

ーーーこの気持ちがわかるまで、帰るわけには行かない。

 

 

 

とは言ったものの、現時点では何もわからず、早苗の言ったことしか手がかりはない、か。はぁ、ほんと。

 

「あーもう、なんなのよ、この気持ちは……」

 

公園のベンチで、ぽつんと呟いた私の言葉。呟いたはずの、私の言葉。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ。困っているようね、幽香」

 

 

 

 

 

 

 

 

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