花妖怪の君と過ごした最高の日々   作:『向日葵』

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花妖怪の君を疑問に思った日

 

 

 

『うぅっ......ぐすっ、ひっぐ......!』

 

 

 

沢山の向日葵に囲まれた幻想的な場所に、泣いている少年が居た。

 

僕は何故か、その子を遠目で見ていた。僕は咄嗟に理解する。ここは、夢の中なのだと。

......それにしてはこの夢、かなり現実味がある。それにあの子、見覚えが......。

 

 

 

『うえぇっ......おうち、どこぉ......?』

 

 

 

―――あぁ、思い出した。あの子供は、幼かった頃の僕じゃないか......。

 

泣いている幼い僕に、何時の間に居たのか、隣に居た人影が話し掛けてきた。

その姿を僕は、何故か直視することができない。その人物を見ると、視界がぼやける。まるで霧が掛かっているかのように、何も見えなくなる。

 

 

 

『あらあら。もしかして貴方、迷子かしら?』

『ぐすっ......うん。おうち、わかんない......』

 

 

 

何で、僕があそこに居るんだ?何で、ちっさい僕に話し掛けているあの人を見ることが出来ないんだ?何で僕は、この光景を、とても懐かしく思えるんだ......?

 

夢のハズなのに。何故か、そう思ってしまって.........。

 

分からない。分からない事だらけだよ。

 

 

ねぇ......君は、誰?

 

 

 

『クスクス。安心なさい。私が責任を持って、ちゃんと人里に送り届けてあげるわ』

『あ、ありがと......ねぇ、おねぇちゃん、名前は......?』

『あら。私としたことが、まだ名乗ってなかったわね......。いいわ、教えてあげる。

 

 

私の名前は―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......変な、夢」

 

夢から目覚めたばかりの僕が最初に吐いた言葉は、そんなものであった。

 

本当に、変な夢だった。

初めて見た筈なのに、どこか懐かしくて、何故か嬉しくて......そして、

 

 

―――絶対に思い出しては、いけない様な気がして......。

 

 

「......」

 

あの夢は、多分僕の過去だ。

僕は幼い頃あの場所で迷子になり、そこをあの人に助けてもらった。そういう、過去。

......けど、何故か本人である僕にはその記憶がない。何故覚えてないのかは、分からない。

ただ、懐かしいと思ったのだ。だから、あの夢は本当にあった事なんだと理解した。

 

思い出そうとしても思い出せない。

まるで、思い出そうとするのを拒んでいるように、頭の中で『何か』が引っかかる。

 

「......起きるか」

 

どうせ思い出せないんだし、後から考えればいいや。

そう結論を出し、まだ起きてないであろう幽香さんにご飯を作る為、ノロノロとした動きでキッチンへ向かう。

 

さて、今日は何を作ろうか......。

 

 

 

 

あの夢の事は、既に僕の頭の中にはなかった......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、蓮花。ちょっと気になった事があるんだけど、いいかしら?」

「ん、なに?」

 

所変わってリビング。

目玉焼きや味噌汁と言った手頃な料理を僕が作っていると、匂いに釣られたのか、寝間着状態の幽香さんがリビングへと向かって来た。......因みに寝間着は僕のだ。比較的使ってないやつを幽香に貸した。

 

そしてご飯を作り終えた僕は、料理をリビングに置かれているテーブルまで運び、今幽香さんと一緒に食べている最中なのだ。

 

そんな中、ふと幽香さんが話し掛けてきた。

僕は一旦食事を止め、幽香さんの方を見る。

 

「貴方、最近体の調子に異常とかは無い......?」

「異常?」

 

どうして、今そんな事を聞いてくるんだ?

 

幽香さんの突然の質問に、つい疑問にそう思ってしまう。

もしかして、僕の事心配してくれて......いや、それは無いか。

 

一瞬そんな事を考えたが、幽香さんに限ってそれは無いな、と割り切ることにした。

 

「いや、別に異常なんて無いよ?日々健康に生きてるからね、僕は」

「そう......。なら、イイわ。突然変な事聞いてごめんなさいね。今の質問は忘れて......」

 

幽香さんはそれだけ言い、食べ終わった食器をキッチンまで持っていくと、『もう一眠りするわ......』と言い残して、自分の部屋へと向かって行った。

 

「......」

 

......幽香さんの様子が、何かおかしい。

 

いきなり......それも、あの幽香さんがあんな事を聞いてくるとは思えない。そしてさっきもそう。異常なんて無い、と僕が言った時の幽香さんは、どこか安堵に満ちていた。

 

不可解。考えてみれば、不可解すぎる。

 

一体幽香さんは、何でいきなりあんな事を聞いてきたのか?

一体幽香さんは、何故僕の異常が無いと言う言葉に安堵したのか?

一体幽香さんは、どうして僕との生活にそこまでこだわるのか?

 

そして何より......。

 

 

 

 

―――一体幽香さんは、僕に何を隠しているのか......?

 

 

 

 

幽香さんが僕に何かを隠しているのは、まず間違いない。けど、それが何なのかは分からない。

幽香さん。君は一体、何をそこまで僕に秘密にしてるの......?

 

 

ねぇ幽香さん......君は、さ。一体何をそこまで、『恐れて』いるの......?

 

 

幽香さんは、僕に気づかれていないんだろうと思ってるみたいだけど、僕は気づいている。

幽香さんが、僕に何かを隠しているのも。幽香さんが、僕の何かにこだわっているのも。

幽香さんが、僕の知らない『何か』を恐れているのも......。

 

 

「......よし!」

 

 

だから僕は、決意した。だったら僕の隠している事も幽香さんに言って、幽香さんにも僕に隠している事を言ってもらおう、と。

 

実のとこ言うと、僕も幽香さんには隠していたことがあったんだ。

『幼なじみ』の事とか、自分の両親の事とか、どうして僕が花を好きになったのか、とか......そして。

 

 

―――産まれた時から持っていた、妙な力の事......とか。

 

 

本当は、打ち上げるのが怖い。

僕はこの力のせいで、過去に闇を抱えている。

『バケモノ』と呼ばれ続けた、過去のトラウマ。

この力の事を彼女に言って、彼女にまで『バケモノ』と呼ばれるんじゃないだろうか......?

 

そう考えると、本当に怖い。どうしようもなく怖いんだ。

 

「......でも」

 

―――でも、互いに信頼し合うためには、互いの心を吐露するのが一番なのだ。

 

そうする事によって初めて、信頼関係というのは成り立つ。僕は、幽香さんを信用したい。幽香さんにも、僕を信用して欲しい。

だからこそこれは必要な事なのだ。トラウマがどうとか、今だけは言ってられない。

 

 

僕は食べ終わった食器をキッチンに運び、そのまま幽香さんの部屋の目の前にまで来る。正直、かなり緊張しています。心臓バックバクです。

......とりあえず落ち着くため、扉の前で軽く深呼吸をする。

 

「......うっし」

 

そして僕は、遂に幽香さんの部屋の扉を開けた......。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――さぁ幽香さん。お互い、秘密にし合うのはもうやめようぜ......?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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