花妖怪の君と過ごした最高の日々   作:『向日葵』

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花妖怪の君に泣き叫んだ日

 

 

『ひっ!?ば、バケモノッ!!』

 

 

 

どこで、間違ったのだろうか......?

 

 

 

僕には、産まれた時から使える妙な力があった。

心の底から何々を守りたいと思ったら、不思議な力が働き、守りたいと思ったものを守ってくれるという力。

 

 

守りたいと思ったのは、花であった。

 

 

小学三年年の時だ。

友人を部屋に遊びに連れてきた時に、事件は起こってしまった。

その頃から花が好きだった僕は、自分の部屋に沢山の花を置いておき、その花達を友人に自慢していた。

 

今思えば、友人は単なる悪ふざけのつもりだったのだろう......。

 

僕が少し席を外し、部屋に戻ってみると、友人が花に手を伸ばしていたのを目撃してしまった。

その光景を見た時に、僕は咄嗟に願っていたんだ。

 

 

―――花を、守りたい......。

 

 

友人の手が花に触れる寸前で、異変が起こった。

友人はまるで何かに弾かれたかの様に吹き飛び、僕はそれを驚いた表情で見ていた。そして同時に、僕は友人の手を見て更に驚愕した。

 

 

―――友人の手が、奇妙な方向に折れていたのだ。

 

 

友人は泣き叫んだ。骨がありえない方向に曲がっているんだから、痛いのは当たり前だ。

友人は泣き叫びながら、僕をこう罵った。

 

 

『バケモノ』......と。

 

 

その友人は即病院に連れていかれて、緊急手術を施された。

友人は事無きを得たが、同時に、僕への恐怖心が生まれたようだった。

学校でその噂が広まり、僕は孤立した。

 

『おい見ろよ、バケモノが居るぜ......』

 

『アイツに近づくな。大怪我するぞ』

 

『どうしてあんなバケモノが生きてるんだ?早く死ねばいいのに......』

 

誰も、僕の話を聞こうとはしなかった......。それどころか、僕の両親でさえ、僕の事を気味悪がったのだ。

 

独り、だった......。

 

どうして?

どこで間違った?

僕が、君達に何かしたの?

ねぇ......どうして、僕を独りぼっちにするの......?

 

友人は居ない。両親でさえ僕を気味悪がる。『幼なじみ』とも、縁は切られた......。

 

僕には、何も残っていなかった......。

 

だからこそ、僕は新しい生活を始めようと決意した。

実家を離れ、親に頼んで生活費だけを送ってもらい、マンションで一人暮らし。もちろん高校だって、僕の事を知らない人達がいる場所にした。

 

けど......未だに、友人と呼べる者はいない。

 

不安に思ってるんだろう。友人を作ったってまた、『バケモノ』と呼ばれるんじゃないのか、ってさ。

だから、高校生活は上手くいってなかった。......けど。

 

 

 

―――そんな時、君が来たんだ......幽香さん。

 

 

 

初めての出会いは、そりゃ衝撃的だったね。正直、コイこの人と一緒に住んで大丈夫なのか?と思うほどだったよ。

だけど、君と話していく内に、君とバカ騒ぎしていく内に、君は僕にとって、とても大切な存在になっていたんだ。

 

だからこそ......だからこそ僕は、君と分かり合いたい。君と、本当の意味で信頼し合いたいんだ。

 

これが、僕の過去。

『バケモノ』と呼ばれ続けた、僕の力。

一人で孤独だった頃の、僕のトラウマ......。

 

 

 

 

 

 

「これが、僕の心の闇。僕が、幽香さんに秘密にしていた事......」

「......」

 

沈黙。

僕と幽香さんとの間に、静寂が流れる。

 

幽香さんが無言になるのも無理はない。

いきなり同居人に、『自分には、危険な力があるんだ』なんて言われたら、信じられないか危険だと思うのが当然だろう。

 

でも......それでも......。

 

「幽香さん......君は、この話を聞いてどう思った?」

「......どうやら、嘘を言っているようじゃないわね」

 

 

当たり前だ。嘘なんか言ってたら、信頼関係なんて出来ないんだから......。

しかし、これで幽香さんも僕が言ったことは嘘じゃないと理解したようだ。

 

だとしたら後は、幽香さんが僕をどう思うかで全てが決まる。

 

「......幽香さん?」

「......ハァ。分かったわよ。じゃあ、私が思ったことを言うわよ?」

「うん、いいよ。......覚悟は、出来てるから」

 

そうだ。

僕は、決意したんだ。もう逃げないって。幽香さんと、正面から向き合うって。

 

 

『おい見ろよ、バケモノが居るぜ......』

 

 

うるさい。僕は、バケモノなんかじゃない。

 

 

『アイツに近づくな。大怪我するぞ』

 

 

そんなの、お前らが勝手に決め付けた事だ。

 

 

『どうしてあんなバケモノが生きてるんだ?早く死ねばいいのに......』

 

 

違う。僕は人間だ。バケモノなんかじゃ、無い......!

 

 

「今の話を聞いて、私が貴方に抱いた思いを言わせてもらうわ」

「―――ッ!!」

 

 

覚悟は、決めていた筈だった。

決意は、確かにしていた。

 

それでも、いざ言われると、体が強ばって......どうしようもなく、恐くなって。

 

そして幽香さんは、口を開いて......確かに、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――とても、素敵だと思ったわ。貴方の力も、貴方の成し遂げた事も、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「............え?」

 

 

僕は最初、幽香さんの言っている意味が分からなかった。

 

あの話を聞いて、どうしてそんな答えが?

分からない。分からないよ。

 

 

「どうし......て?」

 

 

だから僕は、震える声で幽香さんにそう訪ねた。

対する幽香さんは、『あら、そんなの当然じゃない......』と軽く言い、次の言葉を発した。

 

 

 

 

 

「貴方は、その力で花の命を守ったわ。分かる?命を、守ったのよ。他でもない貴方自身のその力でね.。.....だからその力は、とても素敵な力よ」

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!!」

 

気付けば、涙が溢れていた。

なんで涙が?そんなの、理由は簡単だよ。

 

 

―――嬉しかったんだ。

 

 

この力を、素敵だと言ってくれたことに。僕を、『バケモノ』だなんて思わなかったことに。

 

 

―――あぁ、嬉しい。ただただ、嬉しい......。

 

 

誰かに認めてもらえることが、こんなに嬉しいだなんて思わなかった。

 

 

「独りで寂しかったでしょ?辛かったでしょ?―――大丈夫。私が居るわ。貴方の傍に、私が居る。だから、貴方はもう独りなんかじゃない......」

「うん......うん......!」

 

 

涙が、止まらない。むしろ溢れ出てくる。

頬を伝って流れる雫はまるで、今までの悲しみを外に出しているかのようだった。

 

幽香さんは、微笑んでいる。

見たものを安心させる、まるで聖母のような、そんな微笑みを......。

 

 

「蓮花。今だけは......今だけは泣きなさい。我慢してきた分、泣きなさい。私が、見てあげるから......」

「―――ッ!!......あ、ああ、うあああああっ!!」

 

 

 

 

 

 

その時僕は、久しぶりに泣いた。

大声で、それはそれは、みっともなくね。

けど、不思議と嫌じゃない。むしろ清々しいとさえ思えてくる。

 

 

 

 

 

―――あぁ、それにしてもチョロい。僕は本当に、チョロいなぁ......。

 

 

 

 

あんなにも世界は汚いって思っていたのに。あんなにも僕はこの世界に必要な存在なのだろうかと悩んでいたのに。

少し優しくしてもらったかだけで......僕を、僕の存在を認めてもらえたってだけで......。

 

こんなにも......こんなにも......。

 

 

 

 

 

―――こんなにも、もっと頑張ってみようと思えるだなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、妙な力を使える花が大好きな普通の高校生と、不器用だけど本当は優しい花妖怪の恋物語である......。

 

 

 

 

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