花妖怪の君と過ごした最高の日々   作:『向日葵』

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花妖怪の君と遊びに出掛けた日

「ふぅん。ここが貴方の言ってた『ゲーセン』、って所なの?」

「うん。まぁ、正確にはゲームセンターって名前なんだけどね」

 

そう言って僕は、幽香さんにこの場所の主な説明をする。

聞いた話だと、幽香さんの居た『幻想郷』にはこう言った娯楽場所が無いらしい。

だったら、いい機会かもね。

 

僕が幽香さんに自分の秘密を打ち明けてから、現時点で二時間ほどの時が過ぎていた。

内三十分ほどは、幽香さんの言葉に泣いていたため、僕の中では黒歴史に入っている。だけど、幽香さんが秘密にしている事は、彼女にはまだ言えないらしい。

ちょっと残念だったけど、何時か話してくれるということで、その場は納得することにした。

 

そのままいたたまれない雰囲気が流れたため、僕はその雰囲気をなんとかしようと、幽香さんにある提案をした。

息抜きも出来て、なおかつ心も遊びに切り替えられる場所。

 

それがここ、ゲームセンターだ。

 

「ねぇ幽香さん。なんかしたいゲームとかある?」

「う〜ん。そうねぇ......。こうも沢山あると、何をしようか迷っちゃうわ......」

「ハハッ。まぁ、それがここの醍醐味だからね」

 

唸る幽香さんの姿を見て苦笑する。

こういった場所は初めてなんだし、悩むのは当然だろう。

そうして幽香さんと共に、無駄に広いゲームセンターのエリアを歩いていると、幽香さんが急に立ち止まった。

反射的に、僕も立ち止まる。

 

「ん、どうしたの幽香さん?......パンチングマシーン?」

「へぇ......これって、パンチングマシーンと言うのね」

 

ふむ、なるぼど。

どうやら幽香さんはこのゲームをやりたいようだ。

僕はパンチングマシーンの説明――と言っても殴るだけだが――を幽香さんにして、百円を入れ込む。

 

パンチングマシーン......か。

幽香さんの力は確かに驚異的だが、グローブを付けてるのなら大丈夫だろう。

生身で殴るより、グローブを着けて殴る方が威力は半減されるからね。

 

......お。どうやら幽香さんも準備出来たようだ。

 

 

 

「じゃあ行くわよ?―――てりゃっ」

 

 

 

 

可愛い掛け声と共に放たれた幽香さんの拳は、そのままパンチングマシーンの的に一直線。

幽香さんはグローブを装着していた為、威力は半減されるハズだ......と思っていた数秒前の自分を殴ってやりたいと、僕は本気で思った。

だって......だってさ......。

 

「ねぇ幽香さん。人はグローブを装着すると、パンチの威力を半減されるハズなんだけど......?」

「あらそう。初めて知ったわ。......それで、何が言いたいの?」

「どうしてそのパンチで、パンチングマシーンの的が吹っ飛ぶんだって言いたいんだけど!?」

 

この人、本気で分かってないのか?だとしたら、いつか死人が出るぞ!?......あ、よく考えれば、幽香さんつて妖怪じゃん......。

 

「ほら。次に行くわよ蓮花。ここって、よく見ると面白い場所ね!」

「あっ......」

 

そうやって項垂れていると、ふいに、幽香さんが僕の手を引っ張ってきた。

突然のことだったため、なすがままにされてしまう僕。

手と手を介して伝わる幽香の温もりはとても嬉しくて、とても恥ずかしかった。

だって幽香さんは絶世の美人なんだよ?そんな美人と手をつないで歩くだなんて、恥ずかしいって。

けれどもやはり、嬉しいと言う感情の方が勝っているだろう。

幽香さんの方を見てみると、まるで子供のようにハシャギながら周りを見渡している。

いつもはもっと大人な雰囲気を出しているのに、こういう時とかはまるで童心に帰ったかのよう......。

 

 

何と言うかこう......、

 

 

「子供みたいで可愛いなぁ......」

「―――へっ!?」

「......あっ」

 

 

ヤバっ!

 

咄嗟に口を覆ったが、時すでに遅し。

無意識に出た僕の言葉を、幽香さんはしっかりと聞いていたようだ。

一瞬で顔を朱に染め、口をパクパクと開いたり閉じたりしている。

 

その様子を見た僕は、慌てながらテンパった口調で言葉を発した。

 

「あ、い、いや違うんだ幽香さん!た、ただその、いつもは落ち着いていて大人な雰囲気を出している幽香さんは綺麗なんだけど、こうやってハシャいでる幽香さんは可愛いなって思っただけで!だ、だからこういう幽香さんも凄くいいなって思ってしまって......」

 

「―――っ!!」

 

な、なんだと!?さらに顔が赤くなった!?

 

これ以上赤くなるなんてないと思っていた幽香さんの顔は、さらに赤みを増していた。その様子に、驚きを隠せない僕。

そのまま幽香さんは、顔を僕と反対方向に向けると、繋いでいた手に力を込めて引っ張ってきて......って。

 

「痛い痛い痛い!!ちょっと幽香さん!痛いってば!!と言うか、前にもこんな事あったよね!?絶対ワザとだろ!!」

「―――ッ!!う、うるさい!!だ、だだだだ黙ってなさい!口を開かないで!!永久に!!」

「理不尽だ!?」

 

暴君だ!ここに暴君が居るよ!!僕はこんな理不尽を見たことない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局その日は、僕が何か言う度幽香さんが顔を赤くしていた。

なんかこう、違う意味でいたたまれない雰囲気になってしまったよ......。

ゲームセンターを気に入ってくれたのはこっちとしても嬉しいけど、これじゃ本末転倒......か。

 

 

 

 

―――残り数日で夏休みも終わり。

 

 

 

 

こんなのでこれから先の学校生活、上手くやっていけるのだろうか......?

 

 

 

 

 

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