青春学園中等部の立役者   作:O.K.O

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こんにちは、O.K.Oです。
この小説をお読みいただきありがとうございます。

ついに、書きたかったところが書ける……笑

それでは第10話、行ってみましょう。


第10話

「い、今の立川のサーブ、見えたか……?」

 

「いや……でも、サーブの跡はしっかりコートに残ってるぞ……」

 

ギャラリーがざわつく中、悠は先程のサーブをもう一度センターに叩き込む。

 

「さ、30-0!」

 

「うぉぉぉぉ!すげぇ!」

 

「やべぇぞあいつ、今までサーブとか手を抜いててやってたってことかよ!」

 

「河村先輩が全く反応できてない……なんてデタラメなスピードしてやがる!」

 

ギャラリーが悠のサーブに歓声を上げる中、冥は呆気に取られたような表情をしていた。

 

「ま、全くボールの軌道が見えない……。ていうか、悠ってあれほどのサーブを今まで温存してたってこと?!」

 

「これは驚いた……。しかもあのサーブ、ただスピードがあるだけじゃない……」

 

「え?スピードだけじゃない?」

 

その問には不二に変わり、冷や汗を浮かべている菊丸が答えた。

 

「んにゃ。立川のやつ、サーブをセンターに打ち込む時に、クロス側のサーブにはリバース系の回転、逆クロス側のサーブにはスライス系の回転をかけて、ボールのバウンド時にタカさんの体から離れていくような軌道にしてる」

 

「徹底したコースにあのスピード……そう簡単に取れないよ」

 

「か、回転までかけてるんだ……って、2人も2人だよ?!あのサーブの回転まで見えてるってどんな動体視力してるの?!」

 

「動体視力には自信ありだかんね。ただ、こんな感じで第三者的な目線で見るのと、タカさんの目線で見るのは体感速度がまるで違う」

 

「やっぱり悠、すごい……」

 

(烏野さんの言う通り、立川君はすごい。けど驚くべきなのは、まだ彼に余裕があるように見えることだ……)

 

そうして3人が話し合っている間に、悠はサービスゲームをキープする。

 

「ゲーム、立川。ゲームカウント、1-1」

 

「あ、また悠のサービスエース!河村くんに追いついた!」

 

「このゲームはサーブ4本……立川もやるじゃん。でも、タカさんとのラリーで打ち勝てないと試合に勝てないよ」

 

「いや、英二……逆だ」

 

そんな発言をした菊丸に、またも不二が口を挟んだ。

 

「逆って一体どういうことだよ。前のゲームでも同じようなこと言ってたけど、どう見ても立川が力負けしてるじゃん」

 

「……次のゲームで分かると思うよ」

 

-----

 

「ゲーム、立川。ゲームカウント1-1」

 

ふぅ、サービスゲームは危なげなくキープ出来たな。

そう、俺が先程のゲームで放ったサーブは山吹中の千石さんの技である虎砲を応用したものだ。

あのサーブ、自分で打ってて思うけどスピードが半端ねぇよ……。鳳さんのスカッドサーブももちろん早いけど、あれといい勝負してるんじゃないか?

スピードの点で言うとやっぱりスカッドサーブに軍配が上がるけど、なんていうか、小柄な俺に合ってるのかスカッドサーブより打ちやすいんだよな。

 

「おチビちゃん、小さい体して随分ショッキングな球打つじゃねーの!」

 

「ありがとうございます、このままリターンゲームもブレイクさせて頂きますよ!」

 

「そう簡単に……」

 

そう言って河村先輩はトスを上げる。

 

「やらせてたまるか!バーニング!」

 

1ゲーム目と比べ、全く威力の落ちる気配のないバーニングサーブがセンターに入った。

 

「うぉ!やっぱり強烈なサーブ!」

 

確かに河村先輩の球は重い、けど……。

 

「ふっ!」

 

もうタイミングは分かりましたよ!

 

「おー!立川のやつ、河村先輩のバーニングサーブを完璧に捉えてる!」

 

「ちっ!オラオラ、グレイト!」

 

ここで、河村先輩から強烈なスピードボールがクロスに放たれるが、俺はめいっぱい腰を落とし、重心移動により全体重をボールに乗せて返球する。

 

「ぐっ……!」

 

「え?!河村先輩が押された?!」

 

俺の返球に対し、河村先輩はボールをネットにかける。

 

「0-15」

 

よーし、このまま押し切らせてもらいますか。

 

-----

 

「そ、そういうことね……不二が言ってた意味が分かったよ……」

 

「わ、私も分かった……悠ってば、一体どんな身体能力してるのよ……」

 

先程のポイントのプレーにより、納得したような表情を浮かべる菊丸と冥。

2人の言葉に不二が頷くと口を開いた。

 

「そう、タカさんのパワーショットはすごく重いボールで、普通に打つとほとんどの人が力負けしてしまう。けど、立川君はそれに対してめいっぱい腰を落とし、体重を効率よくボールに伝えることで、自分の体重と、加えてタカさんのボールの威力を上乗せして返球してるんだ」

 

「1ゲーム目の悠のミスも、その体重移動のタイミングの微調整中だったってわけだ……」

 

「タカさんがパワーショットを打てば打つほど、立川君からは威力が増したスピードボールが返ってくる。かと言って、タカさんがパワーを緩めて打つと、それを立川君は見逃さない」

 

「んー、それに立川のサービスゲームにはあのものすごいスピードサーブを打たれるわけだ。タカさんやべぇじゃん……」

 

菊丸と冥はごくりと固唾を飲んでコートを見る。

 

(タカさん、どうする……)

 

不二はいつになく真剣な表情で河村を見つめていた。

 

-----

 

悠が河村のスピードボールに対応し始めた後、完全に流れは悠のものになり、ラリーが続く展開になっても河村に押し勝つ場面が多く見られた。

そして悠のサービスゲームでは虎砲(改)により河村はまともに返すことが出来ず、悠にキープを許す状況が続く一方であった。

 

「ゲーム、立川。ゲームカウント5-1」

 

「はぁ……はぁ……」

 

(ちくしょう、立川にパワーで押せば押すほど、更に威力が増した球が返ってくる……。ラリーになると、最後は押し負けてネット……このままじゃジリ貧だ。それに、あのサーブもどうにかしないと……)

 

「河村先輩、息切れしてる!」

 

「無理もないだろ……立川のボールよく見ると河村先輩の球よりも早いし威力あるんだ。何度もパワーショットを打ってるのに立川のボールはネットにかかるどころか、そうして確実に自陣のコートに返球される……しんどいに決まってる」

 

「パワー自慢の河村先輩に真っ向勝負でここまで……立川やばすぎだろ」

 

「うぉぉ!バーニング!」

 

「っ!ここだ!」

 

河村は変わらない姿勢でボールを打ち続けるが、体力が減るにつれその威力も徐々に落ちてきていた。

そして、そこを悠は見逃さない。

 

「あいつ、前に出た!」

 

(ぐっ……重い……っ!立川が前に?!しまっ……!)

 

「ふっ!」

 

スピードボールに押され、河村の球が浮いたところを悠はボレーで得点する。

 

「0-15」

 

(やはりこのままじゃズルズル行ってしまう!ちくしょう……もう少し、パワーがあれば……)

 

そんなことを考えていると、何故か、コートの周りで部員の話している声が、河村の耳に鮮明に届いてきた。

 

「いやー、それにしても立川、体の使い方うめぇよなぁ」

 

「うん、あの無駄のないフォーム、俺も参考にするわ。河村先輩の球も憧れるけど、あの筋力があってこその球だしな」

 

「っ!」

 

(そうだ。何故、俺は自分の筋力ばかりに頼ろうとしてるんだ……。確かに、ボールの威力を上げるために筋力は必要……だけど!その力をボールに100%伝えられないと意味がないだろ!立川は小柄だけど、俺より重い球を打ってる、あの動きを見ろ!)

 

「うぉぉ!また立川、強烈なボールを!」

 

(鍛えてきた筋力を最大限に活かすには……体を前に!)

 

悠のスピードボールに対し、河村は腕の力だけでなく、体を前に押し出すようにすることでボールに体重を乗せて放った。

 

「おらぁ!グレイト!」

 

「っ!!」

 

「お、おい見ろ!河村先輩の球が!」

 

「ぐっ!重い!」

 

そうして、威力の増した河村の球により、悠はボールをネットにかける。

 

「15-15」

 

「カモンベイビー」

 

「河村先輩……さすが……。このまま勝たせてはくれないか」

 

-----

 

「ゲーム、河村。ゲームカウント2-5」

 

「悠が河村くんの球に押し負けてる?!」

 

「タカさんやるな……おったまげ……」

 

完全に悠の流れになっていた試合であったが、そこを盛り返した河村に対し、菊丸と冥は目を見開き驚いていた。

 

「タカさん、立川君のプレーを見て自分の筋力を最大限に生かす打ち方になってる。ああやって体重を更に前にかけることで、立川君の球威を上回ったんだ」

 

不二もここに来ての河村の踏ん張り用に驚いた様子である。

 

「でも、次は悠のサービスゲーム……。あのサーブで……え?!」

 

「おチビちゃん、そのコースはもう読めるぜ、カモーン!」

 

冥の瞳には、悠のセンターへのサーブをリターンする河村の姿が映った。

 

「河村くん、ここに来て悠のサーブに対応し始めてる!」

 

「……確かにあのサーブはものすごいスピードだ。だけど、恐らくセンターのコースに特化したサーブなんだろうね、ああしてずっとセンターばかりに打っていると、いずれ対応されてしまう」

 

「ぐっ……!」

 

そうして、またも悠がボールをネットにかけ、河村に得点を許した。

 

「0-15」

 

「うわー、これまた面白くなってきたね」

 

「展開が、読めない……」

 

(タカさんがここに来てまた成長してる……。立川君にとってはマズい状況のはずだが……)

 

不二がコートの方に視界を移すと、そこには嬉しそうに佇む悠の姿があった。

 

(立川君……また何かする気だね……。本当に底が知れないな……)

 

悠の姿を見て、不二もまた微笑むのであった。

 

-----

 

「0-15」

 

やっべぇ……河村先輩、ここに来て球威がえげつなくなった。原作の球を受けたことないから分からねぇけど、波動球くらいあるんじゃないのか?それに、虎砲(改)まで……やっぱり原作レギュラー陣は半端ねぇな。

 

「カモーン!どんどん行くぜ!」

 

まさか、虎砲(改)を返されるとはね……なら!

俺はトスをあげると、今度は手首にスナップをきかせ、サーブを放った。

 

「っ!!」

 

そのサーブはセンター、ではなくワイドの方向へと飛んでいき、河村先輩は反応できずエースとなる。

 

「ふぃ、15-15」

 

「一球入魂……ってね」

 

「うぉぉぉ!立川のやつ、センター以外にサーブを打ったぞ!それも、この土壇場でスピードがまた上がった!」

 

「さっきまでのサーブが最高速度じゃなかったのかよ?!」

 

「悠のサーブ、またスピードが?!」

 

「わ、ワイドにも打てるんじゃん……」

 

ギャラリーが沸き立つ中、冥と菊丸先輩の声が俺の耳に入る。

いやー、でも菊丸先輩、今のは正直たまたまなんですよ……。

そうして、俺はもう1度、スカッドサーブを放つが今度はネットの白帯にあたる。

あ、やっちゃった……。

 

「ふぉ、フォールト」

 

「なるほど、あのサーブを立川君が打ってなかった理由が分かったよ」

 

さ、さすが不二先輩……。もうお気づきですか。

 

「ど、どういうことだよ不二……」

 

「あのサーブ、スピードは段違いに速い……だけど、その分コントロールが利かないんだろうね。加えて立川君は身長があまり高くない。この2点の懸念からあのサーブはそれほど率が高くならないんだろう。だから今まで率の高いセンターへのスピードサーブしか打っていなかった」

 

「な、なるほど……」

 

大当たりですよ不二先輩……。現にリョーマとの試合の時にこのスカッドサーブ打ったんだけど、何回かダブルフォールトしたしね。コントロールに難ありなのです。

でも……。

 

「こ、今度は入った!えげつねぇ……」

 

「30-15」

 

「セカンドなのに、またあのサーブ打ったよ?!」

 

「なるほど、入れば取れないから2本ともあのサーブを打っているんだろうね」

 

「ま、まあ理にはかなってるね……」

 

そうそう、入ればなかなか取られない。ってことでもう1発!

俺のサーブがボディのコースに入り、河村先輩の股下を抜けるノータッチエースとなる。

 

「ぐっ……」

 

「40-15」

 

「うぉぉ!立川のやつ止まらねぇ!マッチポイントだ!」

 

「ここに来て更なるサーブを見せられる精神的ダメージは大きい。タカさん……」

 

「河村先輩、決めさせてもらいます……よっ!」

 

しかし、今度のサーブはセンターのコースに入る。

あ!そのコースはやばい!

 

「舐めるなよ!バーニング!」

 

しまった、今まで虎砲(改)で散々打ったコースだから取られる!

やべぇ、またあのパワーショットが来る!

そうして俺はリターンを返球すると、どっしりと構えている河村先輩の姿が映った。

 

「諦めて溜まるもんか!グレイト!!」

 

「河村先輩、ここに来て今日1番のボールだ!立川どうする?!」

 

「悠、危ない!まともに打ったら腕が壊れちゃうよ!」

 

冥が思わずといった様子で叫ぶ。

確かに、冥の言う通り()()()()()()で打てばやべぇかもな……。すげぇ威力のボールだよ、河村先輩。

まさか、ここで()()()を使うことになるとは思わなかった。

次の瞬間、俺は河村先輩のボールがラケット面に触れたと同時に体を引いて衝撃を受け止め、ボールを放った。

 

「立川のやつ、あれを返しやがった!」

 

「だけど、ダメだ!打ち負けて威力が無い!もう1発河村先輩に打たれたら……」

 

「オラオラ、そうだ!1度返して終わりじゃねぇぜベイビー!もう1発……っ?!」

 

そうして河村先輩がバウンドしたボールをフォアハンドで叩こうとした時である。

ラケット面に当たるはずの軌道を描いていたボールは、()()()()()()()

 

シックスセレクション(6つの選択)……」

 

「げ、ゲームセット!ウォンバイ立川、6-2!」

 

目の前にあったはずのボールは河村先輩の後ろの金網に転がっていた。

 




悠VS河村先輩決着です。
テニプリではパワー系VSパワー系のマッチがほとんどだったので、ゲーム展開非常に迷いました。
お楽しみ頂けていると幸いですm(_ _)m

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