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それでは第11話、行ってみましょう。
悠が河村が試合をしていると同時に、別のコートではリョーマと海堂の試合が行われていた。
激しいラリーが行われている中、海堂が放ったボールに堀尾が驚愕する。
「で、出た！ビデオで見たやつだ！あんな角度で……」
「何度見ても海堂のあれは強烈だな」
「あれがリーチの長い海堂だからこそ出来るスーパーアングルショット……スネイクだ」
大石と乾が海堂とリョーマの試合を見に来ており、先程の海堂のプレーを賞賛している。
現在、ゲームカウントは1－0のリョーマリード、しかし2年レギュラーメンバーの海堂の必殺技であるスネイクが繰り出され、試合は混戦模様である。
（この先輩、バギーホイップショットの使い手なのか、厄介だな。確か、
海堂のスネイクでコートの左右に走らされる中、リョーマは海堂のスネイク攻略のため思考を巡らせる。
（ぐっ……！だけど、この先輩はあいつと違い、バギーホイップショットで左右に振ってくる……。このままじゃ体力を削られるばかり……なら！）
「ふっ！」
「ほう……ライン際に低く良い球だ。だが……フィニッシュ」
そうして海堂がフィニッシュショットを放ち、決まったかと思われたが、リョーマは驚異的な脚力でボールに追いついた。
「すげぇ！追いつきやがった！」
「アウト！」
しかし、リョーマの放ったボールはサイドに逸れアウトとなる。
「惜しい！けど、お互い1歩も譲ってねぇ！……ひっ！」
ギャラリーの声に、海堂が睨みをきかせた。
「ふぅ……今日は暑いっすね、先輩……」
（ただで走らされる気はありませんからね、海堂先輩……）
「……ふんっ」
そうして、ゲームは海堂がスネイクによりリョーマを左右に走らせる展開が続き、対してリョーマは
－－－－－
「ふっ！」
（さあ、そろそろ堕ちるはず……）
海堂はスネイクでリョーマを走らせることで、リョーマの体力切れを見計らっていた。
しかし、なおもリョーマは海堂に対し、ライン際の球を打ち続ける。
（またライン際か。バカの一つ覚えみてぇに……）
そう思っていた海堂であったが、ある違和感に気づく。
（おかしい……奴の体力はもう限界のはず。なのに、奴の打球がどんどん鋭く、重くなってきている？！そんなはずは……）
「ねぇ。海堂先輩も、すごい汗だね……。そろそろその上着、脱いだら？」
「っ？！」
（な、なんだと……奴の打球は早くなっていない……。まさか、俺の反応が？！）
海堂はリョーマのボールをスネイクで返球しようとするが、自身の足が止まりリョーマのポイントとなる。
そこで乾がトレードマークのメガネを光らせ、自身のノートに何かメモを取りつつ口を開いた。
「あれだけ低く深い打球を毎回足元へ打たれれば、ヒザを曲げっぱなしでショットをさせられたことにより、通常の2、3倍は体力を使うことになる」
（俺の反応が遅れている？！まさか……）
海堂の瞳に、得意げに笑うリョーマの姿が映った。
（罠にハマっていたのは俺の方だったのか？！）
－－－－－
「海堂がオチた？！」
「ど、どういうことだよ？！海堂が押してたんじゃなかったのか？！」
「お、俺にもわかんねぇよ！」
ふらついた海堂を見て、ギャラリーが一斉に湧き立つ。
リョーマの試合を見に来ていた桃城も驚いた様子だ。
「……こりゃ一杯食わされたな」
「え？！どういうことですか？！」
現状を分かっていない堀尾達に、桃城が先程の乾と同じ説明をする。
そんな中、またも海堂の反応が遅れリョーマのボールをネットにかけた。
「や、やっぱりリョーマ君はすごいよ！」
「よっしゃー！いけー、越前！」
そうしてリョーマの布石にギャラリーが盛り上がる中、2人の試合を見ていた手塚が1人、呟いた。
「疲れている量は五分でも……相手が隠し持っているジョーカーに気づいていたものと、土壇場まで自分の優位を信じてそれに気づかなかったものとでは、精神的疲労度が全く違う。策に溺れたな、海堂……だが」
そこで手塚は言葉を区切る。
その瞳には、海堂の粘り強さにリョーマがボールをネットにかける姿が映っていた。
「それでも海堂の気力は生半可なものではない。越前……ここからどうする」
－－－－－
「俺が疲れているのは認めよう……だが、精神力で負けてるようじゃ、レギュラーは務まらねぇ！」
「にゃろう……」
（海堂先輩の目……まだ諦めてない。なんて体力してるんだよ……どうやって最後、勝ち切るか……）
そんなことを考えていると、リョーマの耳にギャラリーの声が飛び込んできた。
「おい！あっちのコートでやってた河村先輩と立川の試合なんだけど……」
「はぁ？そんなこと今はどうでもいいだろ？！今はそっちの1年よりも、今こっちの1年がすげぇんだよ！どうせ河村先輩がボコって……」
「それが、立川が勝ったみたいなんだよ！」
「は、はぁ？！」
その言葉に様々な場所から驚愕の声があげられる。
「な、何？！タカさんが？！」
「立川のデータは全くない……こっちの1年ばかりマークしていたからな……」
「うそ？！立川君、あの河村先輩に勝っちゃったの？！」
「お、同じクラスから2人も……。カチロー、カツオ！明日は立川の試合も見に行こうぜ！」
「うん！立川君も凄かったんだ……リョーマ君ばかりに気を取られてたよ……」
「やっぱり、あいつが来たか……」
「え？桃ちゃん先輩？」
「いや……なんでもねーよ」
立川の勝利の知らせに、リョーマは微笑を浮かべる。
（立川が勝ったのか。俺に勝ってんだからそれくらい当然……。俺も負けてられない！）
「ねぇ、スネイクってバギーホイップショットの事だよね？」
「何？！」
するとリョーマは、ラケットを斜め上に振り上げ、ボールを擦るように打球を放った。ボールはリョーマがかけた回転により軌道を変化させ、スネイクの軌道を描く。リョーマの打ったスネイクは海堂の意表を突き、そのままリョーマのポイントとなる。
「ス、スネイク？！なんであいつが？！」
「こ、こっちはこっちで……リョーマ君凄すぎ！」
「おいおい、
桃城が冷や汗を浮かべている。
そして普段ポーカーフェイスの海堂も驚いた様子だ。
「
「お前……スネイクを見ただけで……」
「乾、何ショットだって？」
「バギーホイップショット、大きなループを下から上に描き、遠心力を利用して強烈なスピンをかけるショットだ。海堂のスネイクはそれを応用したもので、テクニックがいるから昨日今日では打てないよ」
大石の質問に対して、乾が正確な答えを述べる。
その後ろでは手塚がなにか思案している様子だ。
「テクニック……それよりも気になるのは、明らかに越前が試合慣れしている事だ、それも相当力のある相手と。そして……実物
リョーマからスネイクショットが飛び出したことで、流れは完全にリョーマのものになり、ゲームが進んでいく。
そして数十分後。
「ゲームセット！ゲーム、ウォンバイ越前リョーマ、6－4！」
こうして、レギュラーをかけた校内戦初日は2人の1年の活躍により波乱模様となった。
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校内戦初日を終え、今俺は冥と帰りの道中です。
いやー、なんとかパワー属性の河村先輩に勝てたが……。
『カモーン！どんどん行くぜ！』
『諦めて溜まるもんか！グレイト！！』
やべぇ、思い出すだけで鳥肌が立つ……。
打てば打つほど、河村先輩の気迫が伝わってきて……やっぱり、テニスは楽しいな。
でも、思った通り原作レギュラー陣は一筋縄じゃいかない。油断してるとあっという間に流れを持っていかれそうになる。
明日は不二先輩との試合か……頑張らないとな。
そんなことを考えていると冥の言葉が耳に響いてきた。
「ねぇ、悠ってば！今の聞いてた？」
「え……あー駅前のカフェの話だっけ？」
「違うわよ！だから、今日の悠すごくかっこ……」
「かっこ？」
「あー！もう何でもない！悠のバカ……」
そう言って冥が怒った様子でプイっと顔を背けた。
いや、ほんとにすんません……。
んー最近、冥に怒らせるようなことばかりしてるよな……。今もあんなに顔真っ赤にしてるし……。それこそ、カフェでお詫びしないと。
「冥、悪かったって。ほら、駅前のカフェ行った時は好きな物食べていいからさ、機嫌直して」
「そういう事じゃない！」
俺の言葉に冥の怒りは収まるどころか悪化の一途を遂げた。
あれ、俺やらかした？
「あー！とりあえず、明日は頑張って！相手は不二くんでしょ？難しい試合になると思うけど、楽しんでやってきてね」
「あ、あぁ……。ありがとう」
ん？ど、どういうこと？冥、怒ってない……のか？
ま、まあ怒ってないなら良かった！これにて一件落着！
「そ、それと……」
すると冥が顔を俯け、何やら言いにくそうな雰囲気を醸し出す。
え？これまたどうしたんですか？
「明日、また応援行ってもいい……？」
……そんなこと？
「そんなの、いいに決まってる。ていうか、こっちからお願いしたいくらい」
「ほんと？！じゃ、じゃあ明日も行こっかな！悠、本当に頑張ってね！」
「お、おう」
俺の言葉に冥は表情を輝かせている。
ま、まあ機嫌直してもらえたようで何よりです！
「じゃあ、私帰るね！また明日！」
そう言うと、冥は自分の家の方向に向かって走り去っていった。
んー……女心、いと難しき……。
まあでも、明日は本当に頑張らないとな！冥にかっこ悪い姿とか見せたくない。
よし、そうと決まれば……。
「少し、打つか」
今日初めて、対人戦であの技を使ったが、咄嗟のことで若干キレが落ちてた……。明日の試合はあの不二先輩、また使うことになるかもしれない。
そうして俺は1人、近くのテニスコートへと足を運んだのだった。
今回のお話はリョーマメインでした。
少し原作部分も多かったとは思いましが、お楽しみいただけると嬉しいです。