また、誤字報告もありがとうございます、本当に助かります!
筆者のテンションも右肩上がりです。笑
それでは第14話、行ってみましょう。
「あ、あの子……1年生のはずじゃ……」
「芝、これはすごいぞ!不二くんのつばめ返しを攻略するとは!」
悠のベータドライブに、芝と井上も驚愕の様子である。
そして、そうしている間にも、不二のつばめ返しは、またも悠のベータドライブによって攻略される。ギャラリーの興奮は高まるばかりだ。
「うぉぉ!また返したぞ!まぐれでも何でもねぇ!」
「な、なんだよあれ!不二先輩のつばめ返しが返されたの初めて見たぞ?!」
「立川、すげぇ……」
「この試合、もしかしたら、もしかするぞ」
コート上に立つ不二も、悠のプレーに冷汗を浮かべている。
「立川、その技……」
「ベータドライブ。不二先輩……つばめ返し、攻略しましたよ」
悠がニヤリとしながら不二に言葉をかける。
また、レギュラー陣は先の悠の技を分析していた。
「ベータドライブ……なるほどな。あの1年、恐ろしい程の技量を持っている」
「立川のやつ……こりゃ大変。だが乾、俺にはただのドライブ回転をかけた打球にしか見えなかった……何故跳ねずに転がったんだ?」
大石の疑問も最もである。
悠のベータドライブは、傍から見てもそれほど回転を過多にかけている様子はなかったのだ。
しかし、乾はそのカラクリを理解し、大石に返答した。
「まあ、そう思っても不思議じゃない。あの技のポイント、それは不二のつばめ返しの打球が
「それはどういう……っ!まさか?!」
乾の言葉に、大石は何かに気づいた素振りを見せた。
「あぁ、そのまさかだ。あの1年は不二のつばめ返しのスライスに、あえてトップスピンをかけることで、その回転量を爆発的にアップさせている。そして、トップスピンの超回転がかかったボールは……」
「つばめ返しのようにコート上を転がるってわけか……」
「そういうこと。しかし、あの1年も大胆なことをする」
乾は自身のノートにペンを走らせつつ、言葉を続ける。
「大胆ってのは?」
大石は乾の言葉にまたも疑問を呈する。
そして、その疑問に対して、手塚が口を開いた。
「立川のベータドライブ、あれは不二のつばめ返しがあってこそ、初めて成功する技だ。つばめ返し以外の打球を返球する時、ボールが転がる、までの変化はしないだろう」
「それはつまり……対不二専用の技ってことか?」
「そういうこと。でもそれにより、不二はもうつばめ返しを打てない。あの1年は不二にとって、難敵そのものだ」
「なるほど……こりゃ大変。面白くなってきた」
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同時期、大石たちとは別の場所で、リョーマと桃城が話し合っていた。
「……立川、そうでなきゃね」
「あいつ、半端ないな……」
リョーマは立川のプレーに笑みを浮かべ、桃城は目を見開き純粋に驚いた様子である。
そんな2人であったが、突然堀尾が疑問を投げかけた。
「確かに、立川もすごいけど……」
「ん?どうした?」
「いや、立川の技って、不二先輩のつばめ返しをノーバウンドで返す技じゃないですか?なら、不二先輩、立川にノーバウンドで取られない位置でつばめ返しを打てばいいんじゃないかって……」
「おぉ!堀尾のクセして、たまにはいいこと聞くじゃん!」
「あぁ?!クセってなんだよクセって!」
堀尾の指摘に小坂田が賞賛の言葉をかけるが、堀尾はその言い方に対して反発する。
「おー、確かに、今のはいい質問だ」
「で、ですよね?!桃ちゃん先輩もそう思いますよね?!」
「あぁ……だが、そこも立川は徹底してる」
「え?また立川のやつが何かしてるんすか?」
桃城の返答に堀尾は驚きの声を上げた。
「ほれ、あれを見てみろ」
そう言って、桃城は悠のプレーを見るようリョーマ以外の1年の視線を促す。
そこには、不二の深い打球に対してはスライス回転をかけて対応し、不二の打球が浅くなったところで、一転して攻めに転じる悠の姿があった。
「立川のやつ、ああやって、もしつばめ返しを打たれてノーバウンドで取れない位置にいる時は、スライス回転をかけて返球してる」
「スライス回転をかけて……?それになんの関係が……」
堀尾はまだ理解していない様子で、そこにリョーマが口を挟む。
「堀尾のばーか。相手のスライス回転にスライス回転をかけたら、回転量は自然と少なくなる」
「ば、ばかって、越前お前……」
「リョ、リョーマくん……。でも、私も分かった」
「え?!桜乃も分かったの?!」
竜崎の言葉に小坂田は驚いた様子だ。
竜崎の言葉に、桃城は頷きつつ口を開く。
「お、やるじゃねぇの。まあ、つまりこういうことだ。不二先輩のつばめ返し、あれは相手のトップスピンを利用して初めて成功する技だ。じゃあ、相手のスライス回転の打球につばめ返しを使うとどうなるか……それは回転が打ち消しあって、ボールが跳ねなくなる回転量にはどうしても届かない、つまりただのスライス回転がかかった打球になっちまう」
「あ!なるほど!……ってことはそれって……」
「あぁ、不二先輩はつばめ返しを完全に封じられた。今この状態のままだと、立川が圧倒的に有利だ」
「す、すげぇ!」
「だが、そこは不二先輩。どれほど不利になろうと、俺はこのまま試合が終わるとは思えねぇな。思えねぇよ」
桃城はこの試合の行方がどうなるか、全くの検討もついていなかった。
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「不二先輩、勝たせてもらいますよ!」
(ぐっ……!やはり打球が重い……っ!)
不二は悠のベータドライブを警戒し、つばめ返しを打てずにいた。
そして流れも悠に徐々に傾きつつあり、悠がラリーを制するシーンが多く見られ、不二はジリジリと追い詰められる。
「うぉぉ!立川のやつ止まらねぇ!あのベータドライブが相当不二先輩にとってネックになってきてる!」
「ゲーム、立川。ゲームカウント4-2」
今も悠の猛攻により徐々に点を奪われ、不二は悠に大きくリードを許してしまう。
「……ふっ!」
しかし、悠の打球に対し、それでも不二は負けじと食らいつく。
「うぉぉ!すげぇラリー!不二先輩も全く諦めてねぇ!」
「不二先輩の、ベースライン際の深いボールだ!でも……」
不二の攻めた深いボールに対し、悠は徹底してスライス回転をかけたボールで持ち直す。
(攻めきりたい所で、またスライス回転か……!)
「あぁ、やっぱり!立川のやつ、つばめ返し対策は徹底してる!」
「純粋なラリー勝負なら、河村先輩に引けを取らない立川が有利!不二先輩マジでまずいんじゃねぇの?!」
「ぐっ……!」
そうして不二は悠の打球に耐えきれず、ネットにボールをかけてしまう。
「あぁ!ネット!完全に立川ペースだ!」
「乾、どう見る?」
大石が乾に話しかける。
「不二にとっては、かなりまずい状況だ。あの1年の打球はかなり威力がある。あれを真っ向からラリーで勝負するとなると、さすがの不二も体力を奪われて、今みたいにネットにかけてしまうだろう。かと言って、不二が攻めたいところであの1年はスライスで間を取り、対応してくる。まさか、あの1年がここまでやるとはな」
「まさか、不二がこれほど苦戦するとは……立川、本当に面白いぞ!」
ギャラリーが、悠の勝利を現実として考えつつある中、乾と大石も新入生の台頭に、今後の楽しみを見出していた。
「だが、不二のやつもこのまま終わるつもりは無いみたいだ」
「え?」
「見てみろ、不二の表情」
「……不二のやつ、笑ってる……?」
大石は、不二の表情を見て驚いた様子だ。
それもそのはず、不二は普段からテニスの試合において、感情を表に出すことがなかったからだ。
手塚も、この不二の変化に少なからず驚いている。
「不二……お前も、本気になれ」
手塚の呟きは、大石と乾の耳には届くことは無かった。
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「15-0」
(立川、君は本当にすごいよ。ここまでとは、正直想定外だ)
「不二先輩、このまま行きますよ!……ふっ!」
「……」
「さ、30-0!」
悠が強烈なスカッドサーブを放つ。
不二はピクリとも動かず、サービスエースで悠にポイントを奪われる。
「うぉぉ!ここに来て、立川のあのサーブかよ!全くスピードも落ちてねぇ!」
「不二先輩、今の1歩も動いてなかったぜ?!こりゃ本当に立川勝っちまうぞ!」
「……」
悠のサーブに沸き立つギャラリーとは対照的に、不二は静かなままである。
しかしその内心では、不二は今までに味わったことのない高揚感に浸っていた。
(これほどの崖っぷちに立ったことは何回あるだろう……。これほど、テニスにゾクゾクして、楽しいと思ったのはいつぶりだろう……)
「ふっ!」
「立川のやつ、また行ったぁ!」
「うぉぉ!これも立川のサービスエースに……?!」
(そして、これほど試合に勝ちたいと思ったのは……いつぶりだろう!)
次の瞬間、不二はラケットの芯で悠のスカッドサーブを完全に捉えた。
「っ!不二先輩の動きが!」
「あのサーブを返した?!」
「立川!僕は、負けない!」
そうして、不二はスカッドサーブのリターンに成功する。
これには悠も驚きの表情だ。
「っ!……それでこそ、不二先輩だ!」
そこから、両者シングルスコートを目いっぱい使ったラリーが展開される。
「す、すげぇ……なんてラリーだ……」
そして、不二がベースライン際に鋭いスピードボールを放った。
「不二先輩、それは効かない!」
「あぁ!また立川スライスで!不二先輩どうする?!」
悠はつばめ返しを打たせないために、スライス回転をかけて不二のボールを返球する。
そうして、不二がまたも攻めあぐねる光景を誰もが思い浮かべた、その時であった。
「っ!不二先輩、何を考えてるんだ?!」
「立川に背を向けた?!試合を諦めたのか?!」
不二は、ボールの方向ではなく、ネットの真後ろの方向に振り返った。
一見、試合を放棄したようにも見えるこの行為、だが、不二に諦めるという言葉は一切なかった。
(僕も、本気になれる……!)
「来たか、不二……」
手塚の呟いた直後である。
不二は後ろを向いたまま、超回転のスライスをかけ、ボールを放った。
「っ?!」
悠は驚愕と共に、何かに気づき全力で前に走り出すが、ベースラインの後ろにいたため間に合わない。
不二の打球は、悠のコートに入ると同時に、まるでつばめ返しのようにコート上を
「オウム返し……この試合、負けないよ」
「不二先輩……最高ですよ!」
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不二のプレーに、ギャラリーの興奮は一気に高まった。
大石と乾も、不二の今まで見たことのない技に驚愕の様子だ。
「い、乾!今の不二の技!」
「あぁ……恐らく咄嗟に思いついた新技だろう……」
リョーマサイドも同様に驚愕の様子である。
「桃先輩……今のは……」
「越前、立川も化け物だが……あの人は天才だ」
「ど、どういうことですか?!不二先輩、つばめ返しを封じられてたんじゃ?!」
堀尾も興奮状態である。
だが、そうなるのも仕方がなかった。不二のつばめ返しはトップスピンのボールに対し効果がある技のはずであるからだ。
「オウム返し、そう不二先輩は言っていた……。相手のスライス回転に対し、後ろを向いてつばめ返しを打つことで、結果的に回転が倍増されて、つばめ返しのような変化が起きたんだ……」
「す、すごい……。ていうか、スライス回転にスライス回転で返すからオウム返しって……名前も理にかなってるよ……」
「やっぱり、あの人は天才だ……。対して立川は、つばめ返しとオウム返しの両方は防げない。こりゃあマジで分かんねぇ試合だぞ」
桃城はこの試合をそう評する。
そうして、不二のオウム返しにより、不二は流れを盛り返し、悠から連続でゲームを奪った。
「ゲーム不二。ゲームカウント4-4」
「不二先輩がとうとう立川に追いついた!」
「こりゃやべぇぞ!不二先輩のオウム返しが出てから立川が攻めあぐねてる!このまま不二先輩、逆転するぞ!」
ギャラリーと同様、レギュラー陣も不二の新技により、逆転の可能性は十分あると考えていた。
「不二の新技、オウム返し……。天才はまだ発展途上、か……」
「あの1年はよくやった。不二を追い詰め、新技まで引き出したんだ。充分すぎる成果だよ」
乾が悠を素直に賞賛する。
「だが、やはり家のNo.2は強いな!頼もしい1年も入ったことだし、これで地区予選の準備も万端、なぁ手塚!」
大石が手塚に同意を求め、振り返る。
しかし、手塚は神妙な面持ちでコートを眺めていた。
「手塚……?」
「果たして、このまま不二が勝つだろうか」
誰もが不二の勝利を確信する中、手塚は疑問を呈した。
「え?いや、でも、手塚も見てただろ?不二が立川を圧倒してるじゃないか」
「そう……だな……」
(本当に、このまま終わるのか?確かに、不二が押してるのはこの上ない事実だ。だが、それでも俺には、奴にまだ何か、何かあるように感じる……)
手塚の疑念に的確な答えを与える者は、誰もいなかった。
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「マジかよ、不二先輩。あのタイミングで、しかも原作にない新技を思いつくか普通……。でも、それでこそ、不二先輩なんだよな……!」
このまま行っても、流れは完全に向こう側にある……。
ははっ……河村先輩も、不二先輩も、原作レギュラー陣は半端ねぇ、試合の間にどんどん強くなっていく……。
本当は切り札として置いておきたかったが……俺もここで
俺の真骨頂は、ここからだ。
「行きますよ、
その瞬間、悠の纏う雰囲気が変わった。
いよいよ、悠VS不二の試合も次話で決着です。
ちなみに、オウム返し、シックスセレクションはオリ技となっております。