青春学園中等部の立役者   作:O.K.O

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この小説を読んでいただきありがとうございます。
諸事情により、投稿少し遅れたことは申し訳ありません。

それでは第15話、行ってみましょう。




第15話

「タカさーん!冥にゃーん!」

 

「あ、菊丸くん!いいところに!」

 

「あれ?英二、試合結果の記入所の管理はいいの?」

 

悠と不二が試合をしているコートに向かってきた菊丸が、試合観戦をしていた冥と河村に話しかけた。

 

「んにゃ、他のやつに変わってもらった。海堂も誘ったんだけど、あいつ俺のこと睨んできてさー」

 

「ははは……そう言えば、海堂も1年の越前にしてやられたんだっけ?立川も同じ1年だから、あまり気乗りしなかったんじゃないかな?」

 

「へぇ、そうだとしても、後でお仕置きだなあいつー。あ、ところで試合どうなってる?立川、不二にやられてる?」

 

二へへ、と笑いながら菊丸が問いかける。

 

「もう、菊丸くん茶化さないで。今すっごくいい試合になってるよ」

 

むっとした様子で冥が菊丸の言葉に反応する。

 

「はー、冥にゃんも相変わらずだね。ていうか、立川のやつ不二とやり合えてるんだ。ゲームカウントは?」

 

「英二、4-4だよ」

 

軽い調子の菊丸の問に、今度は河村が口を開いた。

 

「え?!4-4?!大接戦じゃん?!」

 

まさか、といった様子で菊丸は驚いた様子である。

 

「だから、いい試合になってるって言ったの。ていうか、この試合、心臓に悪いよ……。一つ一つのプレーも見逃せない」

 

「へぇ……立川やるなー。そんなに面白い試合なら最初から見てればよかったなぁ。それに、相手が不二でこんなに競った試合はなかなか無いもん」

 

菊丸は興味深そうにそう述べた。

しかし、冥は少し表情を暗くする。

 

「そうだよね。でも、不二くんもやっぱりすごいよ。今は完全に不二くんの流れ。悠、もう少しなのに……」

 

「あー、なるほど。その感じ、やっぱり不二が勝つのかぁ」

 

「いや、まだ分からない」

 

菊丸の言葉を河村が否定する。

 

「え?タカさん?」

 

「まだ、不二が勝つとは決まってない」

 

「んー、でもこの終盤で不二が流れ掴んでるんでしょ?流石にそれは……」

 

「立川、俺との試合の最後に出した技を、まだ出していない」

 

「え?でも、あれって悠もたまたまって言ってたんじゃ……っ!待って。今、悠の雰囲気が……」

 

冥がコート上に立つ悠の異変を察知する。

菊丸も感じ取ったのか、先程までの軽い感じではなく、真剣な顔つきに変わる。

 

「立川のやつ……一体何をする気だ……?」

 

3人の視線は悠へと向けられた。

 

-----

 

(……?立川の雰囲気が、変わった……?)

 

現在、流れに乗っている不二。だが、その不二も悠の違和感を感じ取っていた。

 

(何か、嫌な予感がする……何故だ?完全に流れは僕の方にある。このまま押し切れるはず……それとも、まだ君には何かあるのかい?)

 

「立川、何をする気か分からないが、勝たせてもらうよ!」

 

「行きますよ……ふっ!」

 

そうして立川が強烈なスカッドサーブを放つ。

しかし、不二はこの速度にもう追いついていた。

 

(サーブのスピードはすごいが……もうついていけるよ!)

 

タイミングを掴んだ不二はスカッドサーブを捉え、クロス側にベースライン際の深いボールを放った。

 

「すげぇ!不二先輩、もう完全にタイミングがあってる!」

 

「しかもベースラインギリギリのボールだ!立川、あれをスライスで返すとオウム返しの餌食だぜ!」

 

(さあ立川、どうする!)

 

「やっぱり、青学はすごい。でも……勝つのは、俺だ!」

 

そうして悠が放ったのは、別段代わり映えのない、()()()()()()()()()打球であった。

 

「あー!立川、ここに来て体力切れか?!」

 

(一体どういう作戦か分からないが、油断はしない!これで決める!)

 

そうして、不二がバウンドしたボールを叩こうとした、その時である。

 

ガシャ!

 

「っ?!」

 

手元にあったはずのボールがそこにはなく、不二の驚愕と同時に、不二の後方、テニスコートに立てつけられた金網に何かがぶつかる音が聞こえた。

 

「ぼ、ボールが消えた?!どこにいった?!」

 

「おい、見ろ!不二先輩の立つ後ろの金網に!」

 

(まさか……?!)

 

不二が後ろに振り返ると、金網に挟まっているテニスボールがそこにあった。

 

ファーストセレクション(第1の選択)、神速消滅」

 

-----

 

「……」

 

悠の技により、ギャラリーは静まり返った。

そう、驚愕により誰も言葉が出ないのだ。

 

「すいません、コールお願いします」

 

「あ……フィ、15-0!」

 

「うぉぉぉ!なんだ今のはぁ?!」

 

「おいおい!見えたか今の立川の打球!バウンド直後に打球が消えたぞ?!」

 

「で、気づいたら金網に挟まってやがった!なんて技だよ!」

 

悠の言葉を機に、ギャラリーの興奮は最高潮である。

しかし、これにはレギュラー陣も驚きの様子を隠せないでいた。

 

「い、乾……」

 

「今の立川の打球、全く見えなかった……手塚、見えたか?」

 

乾は手塚に問いかけるが、手塚も首を横に振る。

 

「いいや……。立川、やはり隠し持っていたか」

 

「手塚も見えなかったのか?!こりゃ大変!立川、本当に面白いやつだ!」

 

大石も興奮気味の様子である。

一方、冥達も悠の技に驚愕していた。

 

「あ、あれって、河村くんの時に見せたやつじゃ?!たまたまじゃなく、悠の技?!」

 

「立川、やっぱり君はすごいよ。菊丸、今のバウンド後の打球見えた?」

 

河村が動体視力に秀でた菊丸にそう問いかけるが、菊丸は目を見開き、その額には冷や汗を浮かべていた。

 

「み、見えない……」

 

「き、菊丸くんにも見えなかったの?!」

 

「うんにゃ……全く、見えなかった……」

 

菊丸はそう言って自分の目を擦る。しかし、先程悠の打球が見えなかったのに変わりはない。

それもそのはず、先程悠が放った打球、神速消滅。この技、バウンド後の打球のスピードは原作後々の神尾の技、音速弾(ソニックブリット)や、海堂の技、ジャイロレーザーよりも早いのだ。

 

「やっぱり立川、まぐれとかじゃなかったね」

 

実際に神速消滅を受けた河村は、驚愕というよりも感心した様子で悠を眺めていた。

 

-----

 

(今のは、タカさんとの試合の最後で見せた……)

 

不二は冷や汗を浮かべつつ、先程の悠の放った技について思考を巡らせていた。

 

(神速消滅……厄介ってレベルじゃない。見た目は何ら変哲のない打球である分、予測がつかない……。バウンドする前に返したいところだけど……)

 

そうして不二は、悠とのラリーで前に出ようとするが、そこでできた隙を悠は見逃さない。

 

「うぉぉぉ!今度は強烈なダウンザラインのボール!」

 

(やはり、あの技に気を取られてると隙をつかれる……。かと言って、残り少ないポイントの間にあの技を攻略するのは難しい……立川、予想以上だよ!)

 

「不二先輩、俺は負けない。たとえ、全国でも!」

 

「っ!全国……立川、君との試合は最高だよ!」

 

そうして、悠の技が出てからは、流れが完全に悠のものとなった。

悠の技、神速消滅に不二は最後まで、その攻略法を模索し続ける。

その間の不二の表情は、圧倒的不利な状況にも関わらず、誰が見ても心からテニスを楽しんでいる、そんな表情をしていた。

そして……。

 

「ゲームセット!ゲーム、ウォンバイ立川悠、6-4!」

 

悠VS不二の試合は悠の勝利で幕を閉じたのであった。

 

-----

 

「か、勝った……」

 

本当に、ギリギリの試合だった……。この序盤で、シックスセレクション(6つの選択)の1つ、神速消滅を使うことになるとは……。

原作レギュラー陣、ほんとに戦えば戦うほど強くなる。伸び代ありすぎるだろ……。特に不二先輩なんか新技まで出してきて……マジでこっから展開どうなるの。

まあでも、やっぱり俺にも反省点は多いよな。あそこのクロスのボールに対しては体重移動が甘くなってたし、後半は反応が遅れつつあって対処も遅れた。

シックスセレクション使わないと確実に負けてた試合だ……俺もまだまだって事ね。

そんなことを考えていると、ネット越しに不二先輩から話しかけられた。

 

「立川、楽しかったよ。ありがとう」

 

不二先輩はそう言うと、右手を差し伸べてきた。

 

「俺も、楽しかっ「ただ、」……え?」

 

俺は不二先輩と握手をしようと右手を差し出し、言葉を口にしようとすると、不二先輩に遮られた。

 

「ただ、この借りはいずれ返させてもらう。神速消滅だっけ?あれも次の試合で返すよ」

 

そう言うと不二先輩は笑顔で俺の差し出した右手を握った。

げっ……その笑みは何か根に持たれてそうなんですけど……。でも、次も負けませんから。

 

「不二先輩、次も俺が勝ちます。また、試合やりましょう」

 

「うん、楽しみにしてるよ」

 

そうして俺はコートの外に出る。

コートの外は、俺の勝利という結果に驚きと賞賛の混じった歓声が挙げられている。

 

「立川、お前不二先輩に勝つなんてすげぇよ!」

 

「俺も俺も!正直校内戦にお前が入ってるの場違いだと思ってたけど、俺が間違ってた!」

 

「ははっ……先輩方ありがとうございます」

 

俺は先輩方の手のひら返しに苦笑するばかりだ。

その中で、冥が駆け寄って話しかけてくれた。

 

「悠!まさか、不二くんに勝っちゃうなんて!本当におめでとう!それに、悠の技にもびっくりしたよ!」

 

「あ、冥。ありがとう。正直……この試合勝てたのは冥のおかげかも。なんたって冥が応援してくれてるのが途中で見えたから」

 

この言葉は俺の本心だ。

必死に応援してくれてる幼馴染に、恥ずかしいところは見せられないしね。

すると、俺の言葉に冥は何やら顔を赤くさせはじめた。

 

「っ!えへへ……それなら応援に来た甲斐があったよ……」

 

「おう、次もできたらよろしく!」

 

そして、その冥の反応を見たギャラリーは、先程までの俺に対する賞賛ではなく、非難の声をあげるようになる。

 

「なっ?!おい、やっぱり立川は有罪だ!」

 

「ギルティ!ギルティだ!俺はあいつが嫌いだぁ!」

 

え、いや、俺何もしてないっすよ!

俺に不穏な視線が多数向けられる中、河村先輩が歩み寄ってきた。

 

「立川、おめでとう。やっぱりお前なら何かしてくれると思ってたよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「俺もまだレギュラーになれないわけじゃない。明日は不二との試合だけど、今日の立川の試合を見て俺も、って思ったよ」

 

「河村先輩……頑張ってください!」

 

そうして、話していると、また別の人物が駆け寄ってくる。

あ、あの人……まあ来るとは思ってたけど……。

 

「ちょ、君!確か、立川くんだよね?!私のこと覚えてる?」

 

「あー……『月間プロテニス』の芝さん、でしたよね?」

 

「そうそう!覚えててくれたんだ!まさか不二くんに勝っちゃうなんてね。ちょっと、期待の新人として取材させてくれない?」

 

いやいや、こちらも手のひら返しですかい。

まあ、それに対する俺の返答はただ一つ……。

 

「あれ?取材は2年後じゃなかったんですか?」

 

「っ!そっちも覚えてなくていいのー!」

 

俺はその後も芝さんの取材願いを躱しつつ、校内戦2日目を終えたのであった。

 

 




ではでは、また次話もよろしくお願いします。

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