※7/19 泉布川の挑発に対し悠が笑う描写を修正しました。
「おつかれー」
「お疲れ様っしたー」
今日も激しい練習を終えた青学テニス部員らは現在部室で着替え、帰宅する準備をしている。
そんな中、地区予選も間もなく始まるということで、堀尾、カチロー、カツオの1年トリオが試合について話し合っていた。
「いよいよ明後日から地区予選が始まるね」
「都大会に進めるのは優勝、準優勝の2チームだけかぁ。少ないんだなぁ……」
カツオが不安そうな表情をする中、堀尾は得意げな表情で口を開く。
「ウチの先輩達が地区予選でもたつくかよ。第1シードだし」
3人の前のボードには、地区予選のドローが張り出されていた。青学は堀尾が言った通り、堂々の第1シードである。
「ダブルス2試合、シングルス3試合の団体戦……リョーマ君と立川君はどっちをやるんだろ?」
「はっ、協調性のかけらもない越前がダブルスなんて想像出来ないぜ」
「ははは……でも、立川君はどうだろうね。ダブルスでも活躍できそうだけど……」
「あー、そう言われると分からないな……。でも、立川がダブルスしてるとこなんか見たことないぜ」
そう言って3人は部室を出ると、堀尾がリョーマと悠の姿が見当たらないことに気づいた。
「あれ?そういえば越前と立川は?」
「さっき帰っちゃったよ。リョーマ君は桃ちゃん先輩と、立川君は烏丸先輩と帰ったよ」
「ぐっ、立川のやつ……。いいなぁ、俺も烏丸先輩みたいな美人な人とお近づきになりたい!」
「「むりだね」」
堀尾の言葉に、カチローとカツオは声を揃えてそう言うのであった。
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リョーマは現在、桃城の自転車の後ろに乗り、団体戦のメンバーについて話し合っていた。
「なぁ越前、団体戦のメンバーどう思う?」
「メンバーってダブルスとシングルスのことっすか?」
「おぅ。俺の推測だと、シングルス1は手塚部長に間違いない。シングルス2は不二先輩……いや……」
そこで桃城は言葉に詰まった。
「立川、っすか?」
「かもしれないな……。校内戦では実際、不二先輩に勝ってるわけだし……。ん?ちょっと待て!」
桃城は何かに気づいたような様子だ。
「……ってことはシングルス2、3で不二先輩と立川になるのか?」
冷や汗をかく桃城であったが、リョーマは桃城の言葉にニヤリと笑みを浮かべた。
「桃先輩、シングルス3は俺がやりますよ。ダブルスは性にあわないですし、何よりあいつにだけは負けられない」
「……ははっ!それもそうだ!俺もあいつに借りがある。もぎ取ってやらないとな!ってことで、シングルス3は俺だ」
「いや、俺っすよ」
「いいや俺だ」
リョーマと桃城は残り1枠であろうシングルスを譲らまいと、お互い睨み合う。
「でも、オーダーは試合直前に
リョーマのその言葉に、桃城も口角を上げた。
「いいねー!その案のった!お前って本当ケンカっぱやいな!」
「そっちこそ、人のこと言えないくせに」
「よーし、そうと決まればどこかナイター設備のコートに……」
そうして2人が試合をしようと決めたところに、ボールを打つ音が聞こえてきた。
音源はどうやら、2人の近くの階段上にあるようだ。
「ボールの音……あんなとこにコートなんてあったっけ?」
「いいじゃん、行こーぜ越前!」
そうして、2人は階段を上っていく。
このあとの展開は原作通りである。
先にコートで打っていた、地区予選の対戦相手でもある玉林中のダブルスペアに勝負を挑まれ、全く息の合わないリョーマと桃城は1ゲームマッチで敗北を喫してしまう。
加えて挑発された2人は、地区予選にダブルスで挑むことを決めたのであった。
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リョーマと桃城がストリートテニス場に向かった頃、手塚は学校に残っていた、顧問であるスミレの元を訪れていた。
「竜崎先生、折り入って相談があります」
「ん?どうした手塚よ」
スミレは手塚が訪れたことで、作業していた手を止め振り返る。
「地区予選のオーダーについてのことですが、立川の出場試合はできるだけ減らしてください。出すとしても、決勝だけに抑えていただきたいです」
「……どういうことだ?」
スミレは手塚の予想外な相談に、真剣な表情を浮かべた。
「明後日から地区予選、全国までの道のりは長い。持つ手札が多いことに越したことはありません。そして、その手札は見せびらかすよりも然るべき時に切る方が良い」
「なるほど……その手札が立川ということか?」
「あいつは校内戦で不二にも勝っています。その実力はかなりのものです」
スミレは手塚の言い分を理解しつつも、悩む素振りを見せる。
「だが、立川自身はそれでいいのか?」
「立川にはすでに伝えています」
「ふむ……まあ本人の了承もあるならそれでいいだろう。だが手塚、分かっているな?」
「はい、油断せず行きましょう」
そう言うと、手塚はラケットバックを肩にかけ、立ち去っていった。
「あやつらしいな……。それにしても、立川、か……。リョーマもそうだが、今後の成長が楽しみだ。芽をつむことだけはせんようにしないと……全く、嬉しい悩みだよ」
スミレも笑みを浮かべると、手元の書類を片付け帰宅する準備を始めるのであった。
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現在、俺は地区予選試合会場にいる。
俺は久々の公式戦の雰囲気に、何とも言えない高揚感を味わっていた。
「今日から地区予選か、いよいよ全国までの道が始まる。くぅ……ほんとに楽しみだ!」
「立川、テンション高いね」
「いや、だって公式戦ってワクワクしないか?!リョーマもそっちタイプだろ?!」
「別に」
こいつ、やっぱり生意気だ。
いいんだいいんだ、俺はわかってるぞリョーマ。本当は楽しみで夜も眠れなかったんだろ?……いや、それ俺だよ。
まあでも、今回試合に出られるか分からないんだよなぁ。手塚部長のことだから何か考えがあっての事だろうけど、やっぱりうずうずする。くそー、やっぱり俺も試合したいなぁ。
そんな事を考えていると、手塚部長から小さい声で話しかけられた。
「お前の出番は必ず来る」
なっ……部長、エスパーですかい?
俺は内心を悟られ動揺するが、手塚部長はその一言だけ述べると受付へと向かっていった。
「おい、立川!何をぼーっとしてるんだい、受付行くよ!」
「あ、竜崎先生!すみません!」
出番は来る……ならそん時は大暴れさせていただきます!
俺は試合をしたいという欲を発散するように先輩らの元へと走った。
「全員揃っているな……。青春学園中等部、レギュラー8名の受付をお願いします」
「青学だ……くそぅ、強そうだなぁ……」
「キャー!手塚さんかっこいい!」
うわー、ほんとに青学って強豪校なんだなぁ。てか、手塚部長モテモテかよ。
俺は受付の間、群衆の声に耳を傾けていた。すると、とある所から俺とリョーマに向けたであろう声が聞こえた。
「おい!あのチビ2人見てみろよ!どう見ても1年だろ?!」
「余裕だね青学は……」
チビ……?今、俺のことチビって言ったのか?
「立川、どうしたの?見たことないような顔してるけど……」
「不二先輩……俺はチビじゃない!」
ほかの罵声はいいけど、身長に関してのいじりは許さねぇ!
中一の平均身長よりは高いし、周りがでかいから相対的にそう見えるだけだろうが?!
最近は冥よりでかい(数cm)し、絶対チビじゃねぇ!
「立川、落ち着いて」
「はっ……不二先輩、すません……」
いけない、先輩に迷惑かけるのは良くない……。
くそっ、あいつら黙らしたいなぁ……。
「気持ちは僕もわかるけどね。試合で見返そう」
「ふ、不二先輩……」
あぁ、持つべきものは良き先輩かな。
そうだ、試合で見返してやる。驚愕でものも言えなく……ってあれ?俺、今日確か、そんなに試合出られないんじゃ……。
そんなことを考えていると、原作のキャラがふと視界に入った。
「おい布川、あれ……」
「おとといのヤツらだ……」
2人はリョーマと桃先輩を見てそう呟いた。
んー、確か玉林中のダブルス、泉と布川だったっけ……?
あ!てかそうじゃん。リョーマと桃先輩、原作でこの2人にストリートテニスで負けてるんじゃ……まさか。
「これ、さっき受付に登録したオーダーだよ」
「越前と桃がダブルス?!」
や、やっぱり……。
「2人の希望だそうだ。竜崎先生も直前まで悩んでいたみたいだけどね」
本当に大丈夫かな……。リョーマ、ダブルスの素養皆無だからなぁ。
まあ原作通りいけば大丈夫なはずだけど、俺の介入でどれだけ誤差が出てるか分からないし油断禁物って感じだな。油断せず行こう、うん。
こうして、地区予選が始まろうとしていたのであった。
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「――シングルス1、青学手塚。玉林鈴木。以上、5試合中3勝した方が勝ち進めます。なお、この試合は青学が初戦のため決着が付いても5試合全て行います。試合は1セットマッチ」
「あのチグハグコンビがダブルスだとよ?!一勝は確実じゃないか?」
「ミスったな青学……」
ふぅ、もう試合が始まるな。
何やら泉と布川が言ってるけど、リョーマと桃先輩を信じよう。
ってか、本当にこの試合どうなるんだか……ある意味非常に楽しみなんですが。
そんな事を考えていると、竜崎先生が話しかけてくれた。
「立川、悪く思わないでくれ。これも作戦だ」
「先生、大丈夫です。見てるだけでも楽しいですから」
「まあ、それよりもあやつらの方が心配だ……」
いやいや竜崎先生、オーダー組んだの先生では?
俺は少し可笑しくなり、口角を上げる。
「お、始まるねぇ……。立川、応援頼むよ」
「ははっ……はい!頑張ります!」
さて、原作通り行くのか、異変が生じるのか、見させていただきましょう!
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「第1試合ダブルス2、前へ!青学、桃城越前ペア!玉林、泉布川ペア!」
「お前らが天下の青学だったとはなぁ。いろんな意味でびっくりだ」
「いやぁ、ラッキーかな。シングルスならお前らに分があったのにな!」
泉と布川が桃城とリョーマに挑発をかける。
「まぁ、シングルスなら分があったとは思う……けどさぁ」
「ん?」
「相手の土俵で叩きのめした方がユカイだからね。それに……」
リョーマは玉林の2人の挑発を挑発で返すと、青学ベンチ横に立つ悠の方へと振り返った。
「あいつが見てる前で負けられない」
「おぉ、越前。そいつぁ珍しく同感だ。うし……いっちょやるか」
こうして、2人は集中力を高め臨戦態勢となった。
ここから全国への切符をかけた長い戦いが始まる。
--青春学園、全国へ向け始動。
お読みいただきありがとうございました。
次話もお楽しみに、よろしくお願いしますm(_ _)m