その間でも感想で数々の嬉しいお言葉ありがとうございます。
これからも更新を続けていく所存ですので、今後ともよろしくお願いします。
それでは第18話、いってみましょう。
「遂に始まった。確か原作では、リョーマは壊滅的にダブルス能力が無かったはず……。そこをどうするか……」
俺はコートに立つ2人をじっと見つめる。
リョーマのダブルス適性が皆無なのは原作では有名な話、しかも桃城先輩とのダブルスはひたすらに相性が悪い。
そこの懸念をどうクリアしていくか気にはなるけど、ここは原作通りいけば……。
「泉!」
「おうよ!」
「っ!やっぱりそこか!」
玉林中のペア、やっぱりリョーマと桃城先輩の真ん中を狙ってきた!
ってことは原作通り、ストリートテニスで事前に対戦してたってことか……。
良いコース……ストリートテニスをしてなかったら、お見合いをして失点してたところ……でも、原作通りなら!
「阿ーっ!」
「呍ー!!」
で、出たー!やっぱり
ナイスボールだけど、本当に叫ぶんだなぁ……。
俺の眼前ではリョーマがボールを譲り、桃城先輩がローボレーを決めきる様子が繰り広げられた。
「っ!返しただと?!そんな、この前は!」
「おお!意外と息あってんじゃん桃と越前!あの掛け声は妙だけど……」
「越前、バッチリじゃん」
「ん、桃先輩も」
「まあ昨日あれだけ合わせたんだ。阿吽戦法、舐めんなよって」
2人は正にしてやったり、というような表情でお互いのラケットをコツンと当てる。
そうして、真ん中のボールを阿吽の掛け声により完璧に対処した2人は1ゲーム目を
よし、まず最初のゲームを取れたことは大きい。
にしてもやっぱり、掛け声が異質すぎるな……。それでもダブルスの基本、
「くそっ!真ん中を克服してきたってことかよ……」
「焦るな布川、揺さぶれば必ずボロがでてくる……見てろよ」
やっぱりそう簡単には諦めてくれないですよね……。まあでも試合展開は
ん……?ちょっと待てよ……。
「あっ?!」
「うぉ?!な、なんじゃ立川。急にどうしたんだい?」
「この展開は……あ、いえ、なんでもないです。すんません……」
待て待て待て!青学にとって良い流れだから見逃しかけたけど、これ原作通りじゃないぞ?!
なんで、リョーマと桃城先輩がゲームを
原作通りなら、最初のゲームは玉林中が取っていたはず……。
「……これが
「立川!なーにをブツブツ言っとるんじゃ!応援しないのなら、その頬をムニッと」
「っ!青学ぅ〜、ファイ!」
とりあえず、今は様子を見るしかなさそうだな。
今は応援に専念しよう。竜崎先生に頬をやられるのも痛そうだし……。
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「桃先輩!」
「くっ…!」
リョーマと桃城先輩の空いたスペースに泉がスピードボールを打ち込む。それに桃城先輩が見事な反応を見せ辛うじて返球するが、ボールは完全に浮き玉、チャンスボールとなった。
これはさすがにきつい……。
「布川!チャンスボールだ!」
「おう!」
そうして、布川がスマッシュをコートに叩き込んだ。
「ぐっ……さすがに取れねぇ」
「「っしゃー!!」」
「ゲーム玉林、ゲームカウント1-2!チェンジコート」
「おいおい、これやばいんじゃねぇのか……」
「うおぉぉ!青学相手に負けてねぇ、行けるぞ!玉林!!玉林!!」
ゲームカウント1-2か……。んー、やっぱり原作通りと思わない方がいいよなぁ。さっきから微妙に展開が違う。
現在、リョーマと桃城は最初のゲームを先取したが、真ん中のボール以外の、シングルスにはない動きに翻弄され、拮抗した試合となっていた。
息のあった玉林ダブルスに対し、青学側は即席ペアのボロが出始めたといったところだ。
チェンジコートによりリョーマと桃城が軽く笑みを浮かべる竜崎の元へと歩み寄る。
リョーマと桃城先輩は、合わない動きを互いのせいにし始めイライラした様子だ。
こういう所は原作通りなんだな……。
そんなことを考えていると、横にいた不二先輩に話しかけられる。
「ははっ、2人とも仲良いね」
「あ、不二先輩。確かに、喧嘩するほど仲が良いって言いますしね。まあリョーマと桃城先輩なら大丈夫だと思ってます」
「……その様子なら僕の思い違いだったみたいだね」
「……?」
「いや、思い悩んだような顔をしていたからね。てっきり不安になってるのかと思ったんだ」
「え?!あ、いえ、全然大丈夫ですよ!」
「ははっ、なら良かったよ」
「ご心配おかけしてすいません」
しまった……不二先輩に気を使わせてしまった。
傍から見ると心配した感じになってたのか。気をつけないとな。
「まあ何はともあれ、ここからエンジンがかかるんじゃないかな」
「え?」
「彼ら、手塚と竜崎先生に発破かけられたみたいだしね」
発破?一体どんな……そう尋ねようとした俺の言葉を遮るように、不二先輩は微笑んでコートに視線を移すのであった。
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「おやおや、なんてざまだい」
スミレはゲームを奪われたリョーマと桃城に対し、軽く笑みを浮かべている。
「んー、どうもしっくりいかないっス。頭で分かってても体が反応して」
「外の敵より内の敵っす。タイミング狂わされて」
「なんだと!?言ってくれんじゃねーか。お前こそ出しゃばりすぎだっつーの!」
思い通りにならないゲーム展開に、2人は不完全燃焼である。
そんなベンチで揉め合う2人のそばを、玉林中の2人が面白そうに通った。
「よう、もう仲間割れか?」
「クックック、ざまぁねぇなー」
あからさまな挑発である。
だが、これほど分かりやすい挑発に乗るバカはいない、そう思いスミレは余裕を感じさせる表情である。
「バカな連中だ。あの程度の挑発に乗るとでも思ったら大間違い……って、ん?」
「「あの野郎!」」
「乗るんかい!!」
ここに2人ほどいたようだ。
呆れるスミレを前にリョーマと桃城は目をギラつかせ、頭に血が上った様子だ。
「人選間違えたかの、手塚よ」
「……」
スミレは横に座る手塚に話しかける。すると、手塚が重い口を開いた。
「二人とも、良く聞け」
「っ!部長……?」
「ここで自分のプレーが出来ないようならダブルスのみならず、今後シングルスも任せられない」
「「っ?!」」
「立川の前で浮き足立つのも分かるが、本来のプレーを思い出せ」
「「……」」
手塚の言葉に、2人は目を覚ましたようだ。
そうして、何かに気づいたような素振りを見せる。
「本来のプレー、か……。なーるほど。なぁ越前、難しいこと考えるのはやめにしようぜ」
「あ、桃先輩も同じこと考えてるみたいっすね」
2人はニヤリと口角を上げ、コートへと向かう。
「ふぅ、何とかなりそうだな。手塚よ、助かった」
「いえ、二人とも立川が見ていることで力んでいたように感じたので」
「違いない。まあ元々ダブルスに向いていないっていうのもあるだろうがな」
スミレは苦笑して手塚にそう返すのであった。
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「ゲームカウント2-1!青学リード!」
「いけいけ玉林!このまま追いついちまえ!」
「頑張れ、桃!越前!」
んー結局、発破ってなんの事だったんだ……。不二先輩にははぐらかされるし……お?
ここで、俺はコート上の異変に気づいた。他の人もそれに気づき始め、ざわざわし始める。
「うっし、ややこしいことはやめだやめ!俺はこっち半分担当するからそっちは任せるわ」
「やっぱり桃先輩、俺と同じこと考えてたっすね。そっち半分でミスんないでくださいよ」
そう話すリョーマと桃城先輩が立つコートの真ん中には、コートを縦半分に割るような直線が引かれている。
「おいおい、あいつらコートを縦半分で割ってるぞ!」
「半分担当って、まさか……?!」
や、やっぱりそうするのかよ?!なんちゃってシングルス戦法(俺命名)じゃないですか!
でも、あれが出たってことはもう大丈夫そうだ……。
そう、リョーマと桃城先輩が今からしようとしているのはシングルスである。ダブルスなのにシングルス、一見わけが分からないが、2人はコートを縦半分に分けることにより互いに干渉せず、互いにシングルスを行おうという作戦だ。
前世では考えられない作戦であるが、2人の驚異的な守備範囲の広さがそれを可能にしている。また互いに干渉しないため、自分のコートに来た球を打ち返すことだけ考えればいいという2人にとっては絶好の作戦でもあった。その結果……。
「こっちのコートじゃ決めさせないよ」
「っ?!なんてデタラメな守備範囲だよ!くっ!」
相手の決め球でさえも、自分の半分のコートでは決めさせまいとボールを拾いに拾うリョーマ。
そして、浮き玉が桃城先輩の前に上がると……。
「そーら!もらったー!」
「なっ?!ダンクスマッシュ?!」
「どーん」
おぉ……お二人共本来のプレーが戻ったようで……。
ただ、あの変わりようなほんと別人だな。あれは相手も精神的にきつい。
ちょうどその頃、乾先輩も同じ意見を述べていた。
「まるで水を得た魚だ。あんなのを決められて玉林サイドが平気でいられるはずがない」
ははは……おっしゃる通りで。
もうここから、2人は止まらないだろうな。
そうして--
「ゲームセット!ウォンバイ青学、6-1!」
見事、リョーマと桃城は玉林中ダブルスに対し勝利を収めたのであった。
また、それと同時に立川の存在が明確に周りにも影響を与え始めていた。
地区予選編、ようやく更新できました。
次話もよろしくお願いしますm(_ _)m