青春学園中等部の立役者   作:O.K.O

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こんにちは、O.K.Oです。
お気に入り登録のペースが早く、めちゃめちゃ驚いております……。

どうぞ、この作品を何卒よろしくお願いします。


第2話

ども、立川悠17歳です。いや、元17歳です。現在は12歳の小学校6年生でございます。……自分で言っててわけわかんねぇよ。そうです、勘のいい方なら察したと思いますが、転生しました。それもテニスの王子様の世界です。

そもそも、俺が転生したことに気づいたのは、遡って物心ついた時になる。急に激しい頭痛がし出したと思ったら、前世の記憶や、あの自称神様(いや今となっては自他ともに認める神様ってのは分かってるよ?)に出会った時のことが一斉に頭の中に入り込んできまして、全てを思い出したわけですよ。

いや、記憶が蘇った当初は転生なんか半信半疑だったけど、両親がつけっぱなしにしてたテレビにある人物が写っていて、それを見た瞬間に転生したことを確信した。

--越前南次郎。あのテニプリの主人公である越前リョーマの父親であり、世界でのテニス戦績が37戦全勝とかいうバケモンだ。

彼を見た瞬間に、俺は驚きと同時に歓喜した。だって、自分の大好きな漫画の世界に転生できて、加えてその原作に介入できるんだ、嬉しくないわけがない。

そうして、転生したことを自覚した俺の行動は早かった。俺はまず、両親に自分専用のテニスラケットの購入を迫った。幸い、俺の両親もテニスをやっていたらしく、すんなりと俺の要求を受け入れてくれた。あ、一応だが、俺の名前はこの世界でも立川悠で変わっていない。どんな偶然だよ……。

そうして、マイラケットを手に入れた俺は、まず神様からもらった特典というやつを確かめることにした。どういう能力か聞かされていなかったため、ひとまずはラケットでボールを打とうと近くのテニスコートに行き、自分の能力を把握しておこうと思ったのだ。

しかし、そこで事件が発生した。当時、まだ物心ついてすぐの幼い俺とラリーをする人などいるはずもなく、俺は1人で1本打ちをすることにしたのだが、俺が手出しで1本打ちをした時だ。ギュルルル!っと俺が打った球が尋常ではないドライブ回転をして相手コートに落ちたと思うと、そのまま転がったのだ。もう一度言おう、''そのまま転がった"のだ。

そう、これは関東大会決勝で越前リョーマが真田弦一郎との試合のマッチポイントでみせたCOOLドライブである。俺は実際にテニプリの技が現実で再現できた喜びと同時に、驚愕で開いた口が塞がらなかった。だってそうだろ?まだ原作が始まってもないのにCOOLドライブ打てたんだから……。ただ、これはやり過ぎると今の体が壊れると本能的に理解した。そのため、結局その日はそれで終わり、後日他にも、原作の技ができるかどうか試した。

--結果、ある程度の技はできた。逆に言うと、できない技もあった。たとえば、手塚ファントムのような極端に体に負担がかかる技だ。恐らく、経験値が足りないのと、まだ骨格などが成長しきってないためだろう。COOLドライブを連発できない理由も恐らくそこにある。ただ、それでもサーブやストロークのフォームは文句のつけようがないくらい綺麗だし、中盤くらいまでの原作キャラの技はほとんど使える。神様がくれた能力チートすぎるだろ……。

こうして、幼少期は自分の能力の幅を確認するため全てを注ぎ、現在に至るわけであるが……1つ、問題があった。

 

「友達がいねぇ……」

 

そう、俺、12歳立川悠には友達と呼べる友達がいなかった。いわゆるぼっ……いや、なんでもない、断じて違う!

俺がこんな現状なのには理由がある。一見テニス好きの少年として周りから好かれそうではあるが、実は俺氏、他人とテニスをしたことがありません……。だって、こんな小6の坊主がテニヌできるなんておかしいだろ?!それに俺は青学に入らなけりゃならない!変な大人に目をつけられても困るしね!断じて、クラスメイトに「テニスしよ」って言った時に、「テニスダサい!」って言われてショックを受けたわけじゃないんだ……。

そんな深ーい事情があり今に至るわけであるが……。

 

「悠、見て見て!自由の女神!」

 

はぁ……もうちょっと小学校で人気者になってみたかったなぁ……。

 

「ちょっと悠!なんで無視するのよ!って、あんた目が死んでるけど大丈夫……?」

 

「あ、うん……。大丈夫だよ冥、ちょっと、昔に浸ってただけ」

 

「む、昔って……。あんたそんな人生経験豊富じゃないでしょ……。悠、たまにおっさんみたいなこと言う時あるよね」

 

まあ、精神年齢は前世プラス今世で29だからな、とは口が裂けても言えない。

あ、この喋りかけてきた子は俺の幼馴染の烏野冥という女の子で、冥は俺の2つ上の14歳、青春学園中等部に通う中学二年生だ。俺が物心ある時には隣にいて、俺にとっては姉のような存在でもある。

 

「折角、悠の青学合格祝いで、私の家族と悠の家族でアメリカに来てるのに、悠がそんな調子でどうするのよ」

 

「あ、ごめんごめん」

 

そう、現在俺は青学合格祝いでアメリカに来ている。俺は物心ついた時から青学を目指し勉強していて、やっとその努力が実ったというわけだ。前世で高校生だったとは言え、めちゃめちゃ難しいんだよ、中学入試って……。

ちなみに、何故か冥は俺の希望進路を聞いて「私も青学に行きたい!」と言い出し、先輩として2年前に青学に入学している。

 

「でも、素直に楽しんでるよ。冥も、応援してくれてありがとう」

 

「え、あ、いや……私はただ……」

 

俺が素直に感謝の意を伝えると、冥は急に顔を赤くしてどもりだした。んー、最近こういうことがあると、いっつもこんな感じなんだよなぁ……。でも、まさか俺に好意があるとかじゃあるまいし……。そんなことを考えている内に、冥は激しく顔を横に振り、話題を変えた。

 

「あ、悠!見て見て!日本人の男の子がいるよ!あの子、小さいのにあんなに大きいラケットバック背負ってる」

 

「へぇー、アメリカに来てテニスかぁ……。まるでどこかの……っ?!」

 

その時、俺の体に電撃が走った。あの白のFILAの帽子とラケットバック……間違いないっ!

 

「すまん冥!先にホテルに戻っておいてくれ!夕方までには戻る!」

 

「え?!ちょ、悠?!」

 

後ろで冥の慌てる声がしたが、俺は気に留めず日本人の少年を追いかけた。

 

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パァーン!とラケットでボールを打った時の快音が辺りに響き渡る。俺の瞳には、1人壁当てをする越前リョーマの姿が映っていた。

 

「あれが越前リョーマか……。当然と言っちゃあ当然だが、容姿は原作のまんまだな。でも、何故彼がこんなところに……」

 

独り言を言う俺は傍から見たら変人そのものだが、そんなことは気にしない。どのみち俺と彼以外、人なんていないしな。

そうして、1人思考を巡らせていると、視線の先の越前リョーマがこちらに振り返った。俺は一瞬ドキッとしたが、これで逃げるのも変なので視線を返す。

 

「あんた、なんか用?見たところ日本人のようだけど」

 

うわ、生意気な所も原作そっくりだな。でもやっぱり越前リョーマはこうでないとなぁ。

 

「いや、日本人で俺と同じくらいの歳の子を見かけたから、何してんだろうなぁと思ってさ」

 

「別に……見たまんま、テニスしてるだけ」

 

「普段ここで打ってるのか?」

 

「いや、今日は近くで試合があったから寄っただけ」

 

あ、そうだ、思い出した……。確か、越前リョーマは青学に入る前はアメリカのジュニアの部で4連覇してたんだったっけ……。てことは、時期的に日本に帰る直前くらいなのか?

 

「あー、そう言えば俺はここに観光できてるんだけど、君ももうすぐ日本に帰る予定?」

 

「日本、ねぇ……。俺は帰らないよ。日本のテニス、レベル低いって聞くし」

 

え、待った、今なんつった……?

 

「え、ちょっと待った。もっかい聞く、日本に帰らないのか?」

 

「いや、だからそう言ってんじゃん。なんでそんなあんたが驚いてんの」

 

……はぁぁぁぁぁ?!待て待て待て待て、これは予想外すぎる!まさか、これも原作と違う点ってことか?!神様の野郎……越前リョーマがいない青学が全国優勝出来るわけねぇだろうがァ!

えー……ここ、絶対重要な分岐点だよな……。ど、どうしようかなぁ……。

 

「そうだ、あんたはテニスはしないの?」

 

どうやら幸いなことに、越前リョーマには俺の内心の驚愕は伝わっていないらしい。

 

「え、テニス……?したことあるけど……」

 

「へぇーじゃあちょっとそこのコートで打たない?気分転換したいんだよね」

 

そこで、俺に神(自称神様のあいつ以外の神)の天啓が頭の中に流れた。

確か、越前リョーマは負けず嫌いだったはず……そうだ、これなら……っ!

 

「テニス、やるのはいいんだが、1つ条件がある」

 

「……条件?」

 

越前リョーマは頭にはてなマークを浮かべているが、俺にはこれ以外の案は思いつかないんだ。やるしかねぇ。

 

「俺と、1セットマッチで勝負だ。俺が勝ったら、日本に戻ってほしい」

 

「……は?俺と、あんたが?」

 

「あぁ、俺もちとばかしテニスの腕には自信あるんだ。日本のテニスレベルを馬鹿にされるのは納得いかなくてなぁ」

 

完全に口から出任せだが、俺、よくこんなそれっぽい嘘を咄嗟につけたな……。

 

「ぷっ……あんた面白いこと言うねぇ。で、俺が勝ったら?」

 

確か、越前リョーマはファンタに目がなかったはず!これなら乗ってくる、はずだ!

 

「ファンタ10本買ってやる」

 

「……20本、それと味はグレープね」

 

「ぐっ……あぁ、それでいい……」

 

ちくしょう、生意気なクソガキが!え?俺も?俺は精神年齢29だからガキじゃねぇ!……しかし、まだ対人で試合したことはねぇが、いけるか……?まさか、初戦が越前リョーマになるとか夢にも思ってなかったぜ……。

 

「どうしたの?怖気付いたとか、言わせないからね」

 

「なーに、そんなことあるわけねぇ。とっとと試合やろうぜ……」

 

「……まだまだだね。フィッチ?」

 

こうして、俺は越前リョーマの帰国をかけた勝負を挑んだ。

 


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