青春学園中等部の立役者   作:O.K.O

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第20話

「立川どうしたんだ?緊張でもしてるのか?」

 

「え?立川緊張してんのー?」

 

「あ、まあ……そんなところです」

 

大石先輩と菊丸先輩に声をかけられるが、俺は1つの不安を隠すようにそう答えた。

不安というのも、ダブルスが出来るかどうかの不安ではないんだよな……。

問題なのは……大石先輩と菊丸先輩がダブルス2で、俺と不二先輩がダブルス1というこのオーダーの順番だ。

もちろん原作通りとは限らない、それはとっくに分かり切ってはいるが、相手を見る限り今回は不安を抑えきれない。

俺の視線の先では、ガタイのいい大柄な人物が気合を入れるため、トレードマークとも言える頭のタオルをきつく巻き直している姿があった。

恐らく、大石先輩と菊丸先輩の相手は、あの石田さんと桜井さんであろう。

 

「おおいしー、あの人凄い筋肉だね」

 

「そうだな……見る限り、パワープレイヤーのようだが……」

 

そうです、お二人の言う通りバリバリのパワープレイヤーです。

石田鉄、原作ではこの時河村先輩と不二先輩が戦った相手だ。そのパワーを生かした技、波動球を必殺技として持ち、あの河村先輩の腕を痛めさせ、棄権にまで追いやっている。

それに、石田さんのペアである桜井さんも侮れない。不動峰一のダブルス職人であり、柔軟性のあるプレイヤーで精神力、粘り強さも持っていて一筋縄ではいかない相手だ。

 

「それじゃ、行ってくるよ」

 

「うんにゃ、おおいしーがんばろー」

 

「おー!行け行け青学!押せ押せ青学!」

 

「青学のゴールデンペア、頑張れー!」

 

2人がコート内に足を踏み入れると、青学部員の割れんばかりの声援がこだまする。

そんな中、俺はやはり不安を拭えないままでいた。

 

「波動球か……何も無ければいいんだが……」

 

正直、原作知識をありのまま青学メンバーに伝えることも考えた。だが、それでは本当の意味では強くなれないだろう。というのも、全てが全て原作通りに進む訳では無い、試合中に対処法を考えなければいけない時があるからだ。そして、いざという時に強いのはそれが出来るプレイヤーだ。それに、そういう知識を俺が持っているっていうこともおかしいしな……。

 

「立川、ちょっといいかい?」

 

「っ?!あ、不二先輩」

 

そんなふうに考え込んでいると突然、背後から不二先輩に話しかけられた。

俺は驚きにより両肩をビクリとさせる。

 

「すまない、驚かせたようだね」

 

「い、いえ!そんなことないです」

 

すいません、正直めちゃめちゃビックリしました。

いや、死角から声かけられるのって結構焦るものがありますよ?

そんなことを考えていると、不二先輩は微笑んだまま、俺に対して口を開いた。

 

「……そんな不安そうにしなくても大丈夫だよ」

 

「へ?」

 

俺は不二先輩の言葉に思わず、気の抜けたような声を出してしまう。

 

「大石と英二なら大丈夫。それに……」

 

「それに……?」

 

「何かあっても、後ろには頼れる後輩達が控えていることだしね」

 

不二先輩……ほんと、この人が青学で良かった。

ただ、そうなると……。

 

「それリョーマと海堂先輩ならともかく、俺には重すぎるプレッシャーですね」

 

「そのプレッシャーも楽しんでるみたいだから丁度いいんじゃないかな?」

 

そう話す不二先輩はいつものにこやかスマイルを浮かべている。

こういうところも不二先輩らしいな……。

 

「ははっ……、プレッシャーは置いといて、それなら期待に応えないとですね」

 

「うん、僕に勝ったんだからそれくらいしてもらわないと」

 

「ぐ……」

 

うわー不二先輩、にこやか度がマックスです。メーターが振り切れててもう怖いです。

ふー、これは何がなんでも頑張らないとな。

 

「あと、ちょっとした確認なんだけど、立川ってダブルスの経験はあるの?」

 

んー、なるほど。ダブルスの連携確認ってわけですね。

まあ、それも当然な話だよな。不二先輩はともかく、俺がダブルス経験あるかどうかっていうのは大事なところだ。そして俺のダブルス経験というと……。

 

「少しならあります」

 

主に前世に限定した話ですが。

だって、この世界に来てダブルスをする機会なんてなかったんだもん。

 

「それなら良かったよ。越前みたいにダブルスが初めてなら色々考えないといけなかったからね」

 

おぅ、不二先輩ちゃっかりリョーマにチクッとしたこと言ってますね。

 

「ダブルスの動きの基本とかは大丈夫だと思います。後は細かい連携ですかね?」

 

そう言うと不二先輩は少し考え込むような表情を見せる。

 

「連携……うん、そうだね。それについてなんだけど、少し提案があるんだ」

 

「提案?」

 

「立川、少し話そうか」

 

そうして、俺は不二先輩とアップも兼ねて、共に少し離れた場所に移動した。

そこで不二先輩の提案と言うやつを聞き、俺の中で驚愕とワクワクが同時に押し寄せてきたのであった。

 

-----

 

現在、コートでは決勝のダブルス2の試合が行われていた。

俺は目の前で繰り広げられる不動峰のダブルスペアのプレーに驚愕していた。

 

「タカさん……不動峰ってこんなに強かったんすね」

 

「だね……まだ駆け引きは始まったばかりだろうけど、純粋にすごいラリーだ……」

 

俺は隣にいる桃の言葉に賛同する。

不動峰……強いな。大石とラリーを繰り広げる桜井って人のトップスピンは相当キレてる。現にラリーは互角みたいだ。

 

「だけど、うちのゴールデンペアはそれだけじゃ崩せないっスね」

 

桃がそう発した直後、コートでは不動峰陣をかき乱す英二の姿があった。

英二は大石と桜井のラリー展開に割ってはいるように、機敏な動きでボレーを決めていた。英二得意のアクロバティックテニスだ。

 

「残念無念また来週ーってね」

 

「ナイスだ英二!」

 

いつ見ても英二の動きは凄いなぁ。あんな軽々バク転や宙返りをされると嫌でも相手後衛は英二が視界に入るからね。意識せざるを得ない。

 

「英二先輩まるで猫っスよね。あの動きに俺も何度やられたか数えられないっス」

 

「そうだね。だけど英二があれだけ自由に動けるのも、大石の技量があってこそだ」

 

視線の先では、英二が動いたことによってできたオープンスペースにすかさず大石がカバーに入り、何事もないかのようにラリーを続ける様子があった。

そしてラリーの末、英二が桜井のボールを捉える。

 

「っ!しまった!」

 

「きく、まる、ビーム!」

 

英二が放ったハイボレーは、不動峰ダブルスペアのコートに突き刺さる。

 

「いよっしゃぁ!菊丸先輩ナイスボール!」

 

「大石先輩もすげぇ粘り強さ!さすがゴールデンペア!このまま押し切れー!」

 

決して派手じゃない大石のプレースタイルと英二の激しいアクロバティックテニス、この2つが絶妙なバランスだ。

そのままゴールデンペアがどんどんポイントを積み重ねていく。不動峰も負けじと粘るが、自力の差もあることから、ゴールデンペア優勢だ。

 

そうして--

 

「くっ!」

 

「へへーん、ほいっと」

 

英二が機敏な動きで不動峰ダブルスのボールを捉えた。

英二のボレーが決まり、そのポイントがそのままゲームポイントとなる。

 

「ゲーム青学!ゲームカウント4-1!」

 

「おー!いけいけ青学!押せ押せ青学!」

 

「おっしゃぁ!この3ゲームの差は大きいぞ!」

 

英二ナイスボール!

良い感じに押してるぞ。

ここで一旦チェンジコートのため、両者自陣のベンチに戻って行った。

 

「不動峰ダブルスの精神力も中々っすけど、ゴールデンペアがそれを上回ってるって感じっスね」

 

「確かに、正直不動峰の実力には驚いたけど、全国区のあの二人は試合経験豊富だし安心して見ていられるよ」

 

まだまだ2人は行けそうだし、さすがゴールデンペア、これならダブルス2は大丈夫そうだ。

そんな風に考えているとアップをしにどこかへ行っていたのか、不二と立川が戻ってきた。

 

「河村先輩!試合どうなってます?!」

 

「お、おい立川……」

 

た、立川……なんでそんなに焦った感じなの?

桃はその様子がおかしかったのか隣で笑っている。

 

「立川、今すげぇ顔してんぞ。ってお前?!汗だくじゃねぇか!走ってきたのか?」

 

「ははは……試合経過が気になりまして……。ってか、この汗は不二先輩にいじめられたせいなんですけどね?!」

 

立川は首筋に大粒の汗を浮かべつつ、後ろへと恨めしげに振り返る。

するとそこには、いつもの柔らかな笑みを浮かべた不二が涼しげに立っていた。

俺と桃はそんな不二を見て引きつった笑みを浮かべる。

 

「不二先輩容赦ねぇ……」

 

「不二……ちょっとやりすぎじゃ……」

 

「アップだからこれくらいで良い感じだと思うよ」

 

「アップの意味分かってます?!」

 

不二のやつ……校内戦のことを根に持ってるな……。

爽やかに見えて、意外と負けず嫌いなとこもあったんだな。

 

「まあ今はそれよりも……試合、どんな感じです?」

 

「ゲームカウント4-1で勝ってるよ」

 

「4-1、さすがゴールデンペア……」

 

俺の言葉に、立川はほっとしたような表情を浮かべた。

 

「その展開なら大丈夫そうだね。立川、試合経過が気になって仕方なかったみたい。アップの最後あたりはそわそわし始めてたから」

 

「そりゃあ……決勝戦の一本目ですからね。やっぱり気になってしょうがないですよ」

 

「ふふ……まあそれもそうだね」

 

そうか、2人は最初からアップに行ってて試合を見れていないのか。

 

「大石と英二はいつも通りって感じだよ。大石がつないで英二が決める、そんな展開が多いね」

 

「不動峰の()()()()()()()()()と桜井って人のトップスピンは中々のもんだが、それにやられる2人じゃねぇよ、うちのゴールデンペアは」

 

「っ!?石田さんの堅実なプレー……?」

 

俺と桃の言葉に立川の表情が変わる。

 

「どうしたんだい?」

 

「あ、その……石田さんの体格を見る限り、パワープレイヤーな気がしていたんで、意外だなって……」

 

「あぁ、それは俺も思ったけどなぁ。そう言われると重そうな球は何球かあったけど、桜井のトップスピンの方が厄介そうだぜ」

 

「……」

 

立川は桃の言葉に無言になり、視線を逸らす。

その先には、不動峰サイドのベンチがあった。橘が石田にアドバイスをしている様子が見られる。

 

「次のゲーム、気をつけた方がいいかもしれません……」

 

「え?立川どういうことだ?」

 

「おいおい、押してるのはこっちだそ?」

 

この流れなら、大丈夫とは思うんだけど……。

そう思っていると、不二も立川の意見に賛同するように口を開いた。

 

「いや、立川の言う通りかもしれないよ。彼らの顔つき……」

 

不二はチェンジコートのため対面のコートに移動する不動峰ダブルスを見てそう言った。

石田と桜井は先程までよりも更に気を引き締めた表情で、何やら話し合っている。

 

「……全然諦めてはいないみたいっスね」

 

「確かに……ただ、それ以上にまだ何か、仕掛けてくるみたいだね」

 

最後まで油断は全く出来ないみたいだね……。大石、英二、頑張れ。

 

-----

 

一方その頃、不動峰サイドのベンチでは、石田が橘に何やら頼み込んでた。

 

「橘さん、次のゲーム、()()を使わせてください」

 

「っ!」

 

「おいおい石田、お前それは腕を痛めるからって……」

 

橘は一瞬不意を突かれたような表情を見せる。

 

「今の流れを変える一発が必要だ。そして、それを俺は持っている」

 

「……確かに、次のゲームは勝負所。お前の120%の力を込めたフラットショットは誰も返せないだろう……。だが、腕に負担がかかりすぎる。それはお前が一番分かっているだろう」

 

しかし、石田はそれでも食い下がる。

石田は橘に対し頭を下げた。

 

「ここしかないんです」

 

「……」

 

「橘さん、石田はもう自分の中で決めてます」

 

チームメイトも石田の頼みを後押しする。

橘は少し考え込んだ後、ため息をつき表情を緩めた。そして、右手の人差し指を1本立てる。

 

「……しょうがねぇなぁ。ただし、1回きりだぞ」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

「お前の力で、もう一度不動峰に流れを引き戻せ。桜井、石田のサポートを頼む」

 

「はい!石田、頼んだぞ」

 

「任せとけ。よし!やるぞ!」

 

そうして、2人は不動峰ベンチを後にした。

 

 

 




如何でしたでしょうか。
では、また次話で会いましょう。
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