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それでは第4話、行ってみましょう。
「悠〜!早く早く、学校行くよ!」
風が吹くたびに桜が舞う、正に春真っ只中な朝、深い眠りの中にいた俺は、外からの冥が呼ぶ声でゆっくりと目覚めた。まだ眠気は残っているため、窓から指す日差しがとても眩しく感じる。
あー、なんだよ。冥のやつ、人の快眠を妨げやがって……。
「朝からうるせぇ……ったく今何時だと思って……?!」
……え、8時?!ちょっと待った、確か今日青学の授業初日だったよな?!え、やばいやばい、初日から遅刻とかシャレになんねぇ!
俺は大慌てで制服に着替え始める。そこに、ドタドタと2階の俺の部屋に向かってくる足音が聞こえてきた。しかし、焦っている俺に、その音に構う余裕などあるはずもない。
そうして、俺の部屋のドアがガチャりと開いた。
さて、ここで問題です。着替えてる俺は現在パンツ一丁なわけで、そこに冥が入ってきました、この時の冥の反応を答えよ。正解は……。
「悠!早く学校に……きゃー!」
「ぐふっ……?!」
俺の視界に冥の登校用カバンが入ってきたと思うと、次の瞬間、俺の顔面に強烈な痛みが走った。
「悠の変態!着替えてるなら言ってよ!」
「いっ……てぇ!冥、入ってくるならノックしろよ!勝手に部屋に入ってきてカバンぶん投げるやつがいるか?!」
「こんな時間に着替えてるなんて思うわけないでしょ?!もう早く着替えて!今日新学期最初の登校日なんだから!」
そう言うと、冥は顔を真っ赤にして1階に降りていった。
いや、確かに寝坊しかけた俺も俺だけど、なんであんな全力投球でカバン投げてくるんだよ!
あー、いってぇ……顔赤くなってねぇかな……。
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「悠も今日から青学かぁ……。ずっと入りたがってたもんね」
「まあ、そうだな。ようやくって感じかな」
あの騒動の件は和解し、現在俺は冥と青学に向かって登校中である。
今日からあの青学に入るのかぁ、正直実感ないな……。でも、早くレギュラー達ともテニスしてみたいし、めちゃめちゃ楽しみだな。
「それにしても、まさか悠までテニス部に入るっていうと思わなかったよ」
「あれ?そうだっけ?まあ、俺は個人的にテニス好きだからっていう理由だけどな」
「へぇ、悠のテニス姿かぁ……。見てみたいかも……」
「ん?なんか言った?」
「へ?!え、あ、いや、何でもないよ!」
ん?冥のやつ、なんで赤くなってんだ?
でもそうか、テニスラケットを買ってもらって以来、両親以外にテニスしてることを言ってなかったんだっけ……。まあ、リョーマ以外とテニスしたことないからな。え?ボッチじゃねぇ。
それよりも、実は冥も硬式テニス部なんだよなぁ。それも、冥の話を聞く限り、かなり上手いみたいだ。このこともあって、冥には俺がテニスしていたことを話していない。だってそうだろ?俺が今の技術をどこで学んだって聞かれた時にかなり面倒なことになりそうだからな……。
まあ、いずれはバレるだろうけど、青学に入ってからならいくらでもごまかせる。
「でも、大丈夫なの?」
「ん?何が?」
「だって、青学の男子テニス部って全国的にも有名な部活だよ?練習とかもきつそうだし、悠が怪我したりしないか心配だよ……」
おー、優しいですな冥さんや。まあでも、青学には今年全国優勝してもらわないと困るんだ。練習もきつくしてもらわないとねぇ(白目)。
「まあ、やれるところまで頑張るよ。心配ありがとな」
「う、うん……」
そうこうしているうちに、青学に到着した。周りには青学の制服を着た中学生が結構歩いている。
ほう……やっぱりこう実際に見ると感慨深いものがありますな……。なんていうか、こういう所は原作通りで安心した。
「ん、あれは……」
ん?誰かこっちに走ってきてるな。……って、あれってまさか!
「冥ちゃーん!おはようだにゃー!」
「やれやれ……こら英二、朝からはしゃぎすぎだぞ。おはよう烏野さん」
「菊丸くん、大石くん、おはよう。菊丸くんは朝から元気だね」
やっぱり!菊丸パイセンと大石パイセンではないですか!2人とも原作と全く変わらないなぁ。特に大石先輩、その髪型は反則です。危うく吹きかけましたよ……。
あれ?ていうか冥はこの2人と知り合いですか?
「ん?冥、この2人は知り合い?」
「うん、2年の時にクラスが同じだったの。それにこの2人もテニス部なんだ。こっちが大石くんで、こっちが……」
「あー!!」
うぉっ!びっくりしたぁ……。菊丸先輩、俺に指さして叫ばないでくださいよ、急にびっくりするじゃないですか……。
てか、なんで俺に指さしてるの……?
「大ニュース大ニュース!おおいしー、あの冥が、男連れてるよ!」
「ふぇ?!」
「おー、こりゃ珍しいな。烏野さんが男の人と2人で登校してくるなんて。あ……もしかして、俺たち、お邪魔だった……?」
「お、お邪魔?!い、いやいやいや、全然大丈夫!てか2人ともそんなふうに考えるのやめてよ!これはただの幼馴染で、今日からこの青学に入学するの!」
おいおい、これってモノ扱いかよ。てか、冥さんなんでそんなに顔赤いんですか?
「ほう……おおいしー、これはついに冥にゃん……」
「英二、その辺にしておけ。烏野さんも困ってるだろ」
「む、おおいしつまんないのー」
いやいや、2人とも、ぼそぼそ言ってるようですが俺にはばっちり聞こえてますからね?冥の言う通り、俺と冥はただの幼馴染ですよ。まあ冥は今オロオロしててそれどころじゃなさそうだけど……。
てか、冥彼氏とかいないんだな。美人だし、面倒見とかいいからてっきりいるのかと思ってたわ。
--そう、冥は幼馴染の俺視点からしてもかなりの美人である。過去にも何人かに告白されたことがあるらしいが、冥には好きな人がいるらしく全て断っているらしい。
まあそれはおいといて、これは俺が自己紹介する流れかなぁ。
「ども、冥の幼馴染の立川悠といいます」
俺の言葉を聞いて、2人はまたぼそぼそと話し出す。あー、今度は聞こえねぇ……。
「おおいしー、これは……」
「こりゃ大変。烏野さんは苦労しそうだな」
なんて言ったんですか2人とも。気になるじゃないっすか。
そこで、冥が復活し、会話に口を挟んだ。
「あ、そうだ。大石くん、菊丸くん、悠がテニス部に入るみたいだから仲良くしてあげて」
「へぇ、立川がうちのテニス部に入るのかぁ」
「おー!いいじゃないか!よろしくな、立川」
「あ、はい!よろしくお願いします」
そこで冥が俺に小さく囁いてきた。
「大石くんと菊丸くんは青学テニス部のレギュラーなんだ。だから悠も2人にテニスのこと色々聞いたらいいよ」
「へ、へぇ……そうなのね……」
しまった、思わず棒読みになってしまった。冥さんや、お顔がすごく近いです……。
まあでも、このゴールデンペアとも試合してみてぇよなぁ。
いつか機会が来るだろうけど、楽しい試合になることは間違いない。
そこで、校舎からチャイムが鳴り響いてきた。
「あ!いっけね!早く教室行かなきゃ!おおいし、行くよー!」
「はいはい、じゃあね烏野さん、立川。立川はまたテニスコートでな」
そう言って2人は校舎の中へ走っていった。大石先輩、爽やかだなぁ。
そんなことを考えボーッとしていると、冥が俺の手を掴んできた。
「へ?」
「ほ、ほら、ボーッとしてないで、私達も行くよ!」
そうして、大石先輩と菊丸先輩に続き俺達も急いで校舎へと向かうのであった。
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「2組の教室は……っと。ここか」
青学登校初日、俺は2組にクラス分けされた。
あー、やっぱ初めてクラスに入るのは緊張するねぇ。原作で誰か知ってる奴がいればいいけど……。
そうして俺は教室の中に入り、黒板前に貼ってある座席表に従い、自分の席に座った。すると早くも仲良くなったのであろうか、2人の女の子の話し声がふと耳に入る。
「桜乃!今すんごいかっこいい人とすれ違っちゃった!ねっ、見に行こ!」
「えぇーっ、私はいいよ」
え、このフレーズ、原作で見覚えあるぞ……。
俺はその声の方向に振り返った。
「っ!!」
なっ?!おいおいマジか……あの二人が同じクラスってことは……っ?!
俺は黒板前に貼ってある座席表の名前を確認した。
するとその中に、“越前”の2文字が含まれているのを発見する。
「やっぱりそうか……あの二人、竜崎桜乃と小坂田朋香がいるってことは、リョーマもいるよなぁ……。あ、ちゃっかり堀尾の名前もある」
でも、これはこれで良かったな。リョーマが同じクラスなんだ、親睦を深めていこう。
--そうして放課後になり、俺はすぐさまテニスコートに向かう……ということはしなかった。今日は行くつもりは無いのだ。
なぜかって?あのタチの悪い2年の林とマサやん?って先輩が開催する詐欺まがいの集金イベントに参加したくないんです。今日行ったら絶対絡まれるからな。それに、確か今日はレギュラーメンバーが遠征でいないはずだ。
てか、リョーマのやつ、俺が同じクラスってことにぜってぇ気づいてなかっただろ。あいつ授業中はほとんど寝てるし、授業が終わったと思ったらすぐさまテニスコート向かいやがったからな。決して俺の影が薄いからとかいう理由ではない。
まあいっか、リョーマには明日話しかけるとしよう。どの道明日はテニス部の仮入部に行くつもりだしな。集金イベントは原作通り、リョーマに処理してもらおう。
こうして、持ってきたラケットを持って家に帰ろうとした時である。
「あ、そのラケット、同じクラスの人だよね?!私、小坂田朋香って言うんだけど、テニスコートの場所が分からなくて……。テニス部希望でしょ?テニスコート行こうよ!」
「ちょ、ちょっと朋ちゃん……」
「ほらほら、桜乃も早くしないと、あのかっこいい人見失っちゃうよ!」
「あ、いや、俺は……」
「ごめん!案内お願いします!」
な、なんでこうなるんだよ……。俺はどうも原作介入の才能があるみたいです……。
反抗する間もなく小坂田の勢いに負け、3人で俺を先頭にテニスコートに向かう。
「ほんと、ごめんね……。えっと、名前は……」
「立川悠だ。まあ、さっきのことは気にしなくていいよ」
「ありがとう……。あ、私は竜崎桜乃。これからよろしくね」
あー、竜崎は気が弱そうだけどやっぱり優しいなぁ。小坂田も小坂田でリョーマのこと相変わらず好きだし、登場人物のキャラは変わってないっていう感じかな。てか、どんだけリョーマのこと好きなんだよ……。
テニスコートに向かうあいだも、小坂田は竜崎にリョーマのかっこよかった所を話し続けている。
そうして、そうこうしているうちにテニスコートに到着した。
「キャー!桜乃、いたいた!」
「え?どこどこ?」
「ほら、あの学ランでラケット持ってる人!」
「あれ?リョ、リョーマ君?!」
あ、リョーマ発見。ん?リョーマの横の人……あのツンツンヘアーで高身長……間違いない……。
「なるほど……お前が例の“越前リョーマ”か。出る杭は早めに打っとかねぇとな。桃城武、2年だ!」
やっぱりね。てことは、集金イベントは終わって、これからリョーマと桃城先輩で試合って感じかな?やったラッキー、じゃあここはゆっくり観戦でもしますか!
そこで、リョーマが俺の存在に気づいた。
「?!た、立川……?」
あ、やっと気づいてくれた。まあまあ、頑張ってくだされ。
「おー、リョーマ、久しぶりー」
「え?!立川君、リョーマ君と知り合いなの?!」
「まあ、ちょっとね」
「そ、そうなんだ」
ごめんな、竜崎さん。リョーマは俺がもらう!って違うか。
「越前!マジで2年のレギュラーと試合すんのかよ!?」
「……まあね。あんまり乗り気じゃなかったけど……」
ん?リョーマのやつ、なんで俺の方を見る?
「ちょっと、燃えてきた」
そうして、準備が出来たリョーマはネット前に向かった。
「バアさんから聞いたんだけど……ツイストサーブ打てるんだって?」
「そーなんっすか?!」
「まあ、打てるけど……上には上がいるよ。あいつみたいにね……」
「あいつ……?」
え、なんで桃城先輩までこっちの方見てるんだよ……。えと、なんか俺の顔についてますか??
「あの、学ランのやつか?……冗談はやめてくれ、俺が1年で話を聞いてるのは越前リョーマ、お前だけだよ」
「……そのうちわかるよ。それと、全力で行くからね」
「……そうこなくっちゃな」
こうして原作通り、越前リョーマVS桃城武の試合が始まろうとしたのであった。