青春学園中等部の立役者   作:O.K.O

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こんにちは、O.K.Oです。
この小説を読んでいただき本当にありがとうございます。

では第6話、行ってみましょう。


第6話

「あのー、先輩、俺仮入部に参加したいんですが……」

 

「そんなの明日以降でも大丈夫だ!それより、俺と打った方が練習になると思うぞ?」

 

うわー、めちゃめちゃニヤニヤしてるよこの人……。

現在、俺は桃城先輩と共に青学の近くにあるストリートテニス場に来ていた。いや、この場合連行されたという方が正しいだろうか……。

 

「そうかもしれませんが……足は大丈夫なんですか?」

 

「ははっ!一丁前に心配か?平気平気この通りだ」

 

そう言って桃城先輩は右足をぶんぶん振り回す。

いやいや、昨日気にしてたのに今日で完治してるわけないじゃないっすか?

 

「それに、別に越前とテニスをするわけじゃねぇんだ。本気でしようとも思わねぇよ」

 

「……へぇ」

 

あ、今のは少しキタ(・・)かも。桃城先輩、そんなこと言っちゃうんだ、なるほどね……。

ん?てか、今思うとこれチャンスじゃね?桃城先輩もれっきとした青学レギュラー、ここで実力を見せておけば校内戦に参加できる可能性も……。

……あ、いいこと思いついちゃった……。桃城先輩、舐めきってて後悔しても知りませんからね?

 

「……いいですよ。テニス、やりましょうか」

 

「おっ、やっと乗り気になってくれたようだな!」

 

「ただし、1つ条件があります」

 

そう言って俺は人差し指を1本立てる。

 

「ん?条件?」

 

「1ゲームマッチ、それも桃城先輩のサーブゲームで俺がブレークしたら、次の校内戦に出させてください」

 

俺の言葉に桃城先輩は驚いたような表情をする。

 

「っ?!……立川、一応怪我してるとはいえ、俺が青学レギュラーってわかって言ってるよな」

 

「はい。だからこそ、この条件なんですよ」

 

すると桃城先輩は嬉しそうに笑い出した。

 

「……ははっ!おもしれぇ。乗ったぜ、その条件。元より無理言ってここに来てもらってるんだ、俺が負けたらバァさんにでも部長にでも掛け合ってやるよ」

 

「先輩、言質は取りましたからね」

 

「あぁ。……面白くなってきやがった」

 

-----------------------

 

「さて、まずは一本目、どこに打つか……」

 

(立川悠、得体の知れないやつだ……。今年の1年、越前ばかりの話が上がっていたが……こいつの実力を見極めるいい機会だな。だがそれよりも……)

 

「試合するからには、勝たなきゃいけねーよな、いけねーよ!」

 

桃城はセンターに強烈なサーブを放った。

 

(まだ本調子とはいかねーが、7割ほどは戻ってきてる!さぁ、どうくる!)

 

すると、立川はバックハンドで桃城の左ストレートに強烈なリターンを返す。

 

「なっ……!」

 

立川のリターンに意表を突かれた桃城は、なんとかボールに追いつき立川側のコートへボールを返球する。

しかし、その返した先には……。

 

「ふっ!」

 

「……どうやら、越前を倒したって噂は本当みたいだな……」

 

ネット前に詰めていた立川のスマッシュが決まる。

 

0-15。

 

「先輩、どんどん行きましょう」

 

「ったく、今年の1年は……そらっ!」

 

先程よりも威力の増した桃城のサーブが立川に向けて放たれる。

 

「確か、スーパーライジング、だったっけな……」

 

(??何をするつもりだ……っ?!)

 

桃城は立川の行動に驚嘆する。それもそのはず、立川は桃城の深いサーブに対し、下がって守るのではなく、更に前に詰めたのだ。そして次の瞬間、桃城の弾丸サーブをバウンド直後で捉えたかと思うと、そのサーブの威力を利用して更なるスピードボールを桃城の右ストレート側に放った。

急激なテンポの変化に桃城はついていくことが出来ず、立川のボールはそのままリターンエースとなる。

 

(くっ、テンポが早いっ!……追いつけねぇ……)

 

0-30。

 

「おいおい、越前だけでも腹いっぱいってのに……」

 

(ははっ!こりゃとんでもねぇのが紛れてやがった!)

 

「桃城先輩、怖気づきましたか?」

 

「はっ!そんなわけあるか!行くぞ!」

 

「……そうこなくっちゃ」

 

(このままサーブを打っても勝てねぇ。センターはあいつが前に出てくるし、ワイドはあのライジングの餌食、足が完治してねぇ今は追いつけねぇ。なら……)

 

「ここだ!」

 

「っ!」

 

桃城は弾丸サーブを対応しにくい立川の正面に放つ。

 

「さすが、青学のレギュラー……すぐにでも対応してくる。だが……」

 

立川はすかさず、俊敏な動きを見せフォアハンドで打つ体勢をとった。

 

「返せねぇ球じゃねぇ!」

 

正面の打ちにくいボールに対し、立川はなんなく対応する。

 

(まあ、返ってくるよな……。でも、あのボールからリターンエースは狙えねぇ!)

 

そうして、狙い通り、ラリー勝負に持ち込んだ桃城であったが、立川の鋭く、重いスピードボールに押され、ネットにかけてしまう。

 

0-40。

 

「お前、ラリーの球もあんなに深くて重いのかよ……」

 

「桃城先輩、何がなんでも校内戦には出させてもらいますよ」

 

「まだ終わってねぇ……っよ!」

 

そう言って引き続き、桃城は立川の正面にサーブを放った。

しかし、先程のポイントで読んでいた立川は回り込んでバックハンドでリターンする。

 

(守りに入ってちゃ勝てねぇ!)

 

「っ?!」

 

桃城は立川の意表を突くドロップショットを打つ。

 

「さすがです、でも……」

 

(は、はやい?!)

 

それでも立川は止まらない。

 

「っ!!」

 

(体勢を低くしてスライディング?!)

 

「リョーマ、少し技を借りる……ドライブB」

 

立川がネット際のボールを、上方向におおきく振り抜き一見アウトに思われるボールを放つ。

 

(焦ったな立川!そこからそれだけ打ちゃあアウトだっ?!)

 

しかし、そこで本日何度目とも分からない驚愕を桃城は味わう。

立川の一見アウトに見えたボールは、強烈なドライブ回転により急激に落ち、そのままコートに入ったのだ。

 

「ま、マジかよ……」

 

(立川悠……。こりゃぁ、マジモンだ)

 

「桃城先輩、俺の勝ちだ」

 

こうして、立川VS桃城の1ゲームマッチは立川に軍配が上がったのだった。

 

-----------------------

 

立川と桃城が戦った翌日、青学テニス部の部長副部長である手塚と大石、そして顧問の竜崎スミレの3人は、3日後から行う校内戦のグループ分けについて話し合っていた。

 

「ふぅ、まあレギュラー陣のグループ分けはこんな感じでいいかな」

 

「そうだな、よくバランスも取れておる。それにしても、新入部員は良い感じだね。今年も期待できそうな1年が入ってきたよ」

 

「越前、ですか?大歓迎じゃないですか!強い奴がいる方が、みんなの競争心も上がるでしょうし」

 

「まあ、でもうちには、1年は夏まで試合に出られないという規則がある。とは言っても、それを決めるのは部長である手塚の判断だがな」

 

「手塚……」

 

「それに、1年にはリョーマもそうだが、あともう1人……。そう言えば、大石にはまだ言ってなかったのかね」

 

「1年で越前以外に注目している奴がいるんですか?聞いてませんよ、何ていう名前ですか?」

 

「……立川悠」

 

その問には、今まで口を閉ざしていた、青学テニス部部長、手塚国光が答えた。

 

「た、立川?!」

 

「なんじゃ大石、知っとるのか?」

 

「まあ知り合いの知り合い、という感じですけどね」

 

(立川悠……確か、烏野さんの幼馴染のあの子だ。でも、烏野さんから話を聞いた限りでは、そこまで注目されるような子ではないはず……)

 

「なぜ、立川が注目されているんですか?」

 

手塚が立ち上がり、窓ガラス越しにテニスコートを眺める。そしてそのまま口を開いた。

 

「桃城が先日、立川と1ゲームマッチをした」

 

「桃が?で、結果は?」

 

「……桃城はまだ万全な状態でないとはいえ、桃城のサービスゲームで、立川のストレート勝ちだ」

 

「っ?!」

 

「その立川だが、どうやら以前リョーマも倒しているらしくてね」

 

「越前にも勝っているんですか?……こりゃ大変」

 

「くくっ、今年は本当に面白いよ。レギュラーメンバーもおちおちしていらないねぇ。手塚よ、どうする?」

 

「……都大会出場、そして全国優勝に向け、最善の判断を選択するまでです。大石、行くぞ」

 

「おい、手塚!」

 

立ち去った2人をそのまま見送ると、校内戦用のグループ分けのシートがスミレの目に入った。

 

「ん?おやおや」

 

そこには、《越前リョーマ(1年)》と《立川悠(1年)》と記載されていた。

 

--2日後。

 

「おらぁ!」

 

ううぉ……すげぇ跳ぶな桃城先輩。あの様子だと、足の方は完全に治った感じだな。

 

「す、すげぇ!越前、見たか今の桃城先輩のダンクスマッシュ!桃城先輩、お前と試合した時は右足を捻挫してて本調子じゃなかったそうだぜ!まあ、レギュラーが1年と互角なわけないもんなぁ」

 

「へぇ……」

 

リョーマ、悪い顔になってるよ。あれか?臨戦態勢ってやつか?

 

「おー、桃のやつ気合い入ってるねぇ、今回は間に合わないと思ったのになぁー」

 

「ただ戻ってきただけじゃない。以前よりもスマッシュの重みが増している……。これはもう一度データを取り直さないとな」

 

おー、菊丸先輩と乾先輩は相変わらずな感じですね。アクロバティックとデータテニス、いつかやり合いたいなぁ。

え?俺は何をしているかって?

 

「こらー!1年、声が出てないぞ!」

 

「せいがくぅー!ファイ!」

 

見ての通り、球拾いと声出しですよ。1年生はまだ練習参加できませんからね。

しかし……本当にこの調子で校内戦に出れるのかどうか……。桃城先輩、校内戦出れなかったら恨みますからね……。

そんなことを考えていると、竜崎先生がコートに入ってくるのが見えた。

 

「全員、練習をやめ1コートに整列!」

 

手塚部長の指示に従い、全員が1コートに整列する。

 

「青学テニス部顧問の竜崎だ。新入部員も沢山入ってきてくれて喜ばしい限りだよ。基本1年生は夏まで試合に出場出来ないが、それまでに少しでも実力をつけ、レギュラーを目指しておくれ。そして、2、3年!分かってはいるだろうが、もうすぐ全国まで繋がる地区大会を控えている。全国までは長い道のりだが、負けたらそこで終わりの一発勝負だ、絶対に負けられん!明日からはそのメンバーを決めるための校内戦が始まるが、各々悔いのないよう、全力を出し切ってくれ。私からは以上だ」

 

そこで竜崎先生は後ろに下がり、代わりに手塚部長が前に出てきた。

 

「明日から行う校内戦のグループ分けを張り出す!各々自分のグループを把握するように!以上だ、解散!」

 

え、もう張り出されちゃうんですか?!俺の名前あるかなぁ……。

グループ分けの表が張り出され、あちこちから様々な声が聞こえる。

 

「うわ!俺不二先輩と同じグループだ……」

 

「いや、お前俺なんて部長と同じとこだぞ……」

 

そんなあたりの悪さを悲観する声も少なくなかったが、それ以上に皆の興味を引く案件があった。

 

「見て見て!リョーマくんの名前がある!」

 

「ま、マジかよ越前!お前校内戦に出るのか?!」

 

「みたいだね」

 

カチローがリョーマの名前をいち早く見つけたようだ。おー、原作通りにことが進んで何よりですな。で、肝心の俺の名前は、っと……。

そんな中、堀尾が驚いたように言葉を発する。

 

「ちょ、ちょっと待て……。越前は上手いから校内戦に出ても納得出来るんだけど……なんで、立川の名前もあるんだ?!」

 

おー!あったあった!ナイス桃城先輩、これで俺も校内戦に参戦ってことね!

堀尾の言葉に、事情を知らない2、3年生もざわざわし始めた。

 

「越前の他にもう1人1年が出るのか?!え……立川って、あの立川?」

 

「いや、流石になんかの間違いじゃねぇの?そもそも、俺あいつがテニスしてるとこ見たことねぇよ」

 

あー、なんか変な視線をギスギス感じるんですが……。こ、ここは一旦ドロンさせてもらおっかな!

そうして、そそくさと帰ろうとした俺であったが、あの荒井先輩が俺の肩を掴んだ。

 

「うぉっ?!」

 

「……立川、てめぇどういうことだ?越前は百歩譲って納得できるが、なんでお前まで、校内戦のグループに組み込まれてるんだ?あぁ?!」

 

ちょ、荒井先輩まじ怖いんですが。だ、誰か助けてください。

すると、そんな俺の思いが伝わったのか、手塚部長が口を開いた。

 

「やめろ荒井!」

 

「ぶ、部長しかし!」

 

「それは俺の判断だ。文句があるなら俺が聞こう」

 

「……くそっ」

 

「それと、立川の人選に疑問を持っている奴が多いようだが、その理由も明日分かる」

 

ぶ、部長カッコよすぎ……。ただ、その言い方は俺にめちゃめちゃプレッシャーかかるやつですけどねぇ?!

こうして、手塚部長の言葉に異議を唱えるものは誰もおらず、辺りはしんと静まりかえるのであった。

 

 

 


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