青春学園中等部の立役者   作:O.K.O

8 / 25
こんにちは、O.K.Oです。

数々のお気に入り登録と感想、評価ありがとうございます。
感想では何か気になることございましたら、些細なことでも良いですのでご指摘お願いします。


それでは第8話、行ってみましょう。




第8話

トスの結果、サーブは俺からだ。

よし、校内戦の大事な初戦、このサーブゲームから勢いに乗っていこう。

 

「サーブは俺……。ここから全国優勝までの道は始まっているんだ。しっかり気合い入れてかないとな」

 

そうして俺はサーブの構えをするが、辺りはまだざわめいている。

そんな中、俺の呟きが聞こえたのか、林先輩が苛立った声で言葉を発した。

 

「おい、何を1人でブツブツ言ってるんだ立川。緊張で腰でも抜けたか?」

 

……林先輩、その発言をしたこと、後悔させてやりますよ。

 

「行きますよ……。ふっ!」

 

そうして俺はセンターライン上のコーナーに、ファーストサーブを叩き込んだ。

 

「……っ?!」

 

林先輩は俺のサーブに反応することもできない。1ポイント目、俺のサービスエースだ。

俺がサービスエースを取ると、あれだけ騒がしかったギャラリーが一瞬で静まり返った。

 

「ふぃ、15-0……」

 

審判がカウントをコールすると、静まり返ったギャラリーに今度は俺の侮蔑とは違う、歓声が巻き起こった。

 

「す、すげぇぇぇ!見たか今のサーブ!」

 

「なんだ今のは?!めちゃめちゃ早いじゃん!それも、あのスピードでセンターラインコーナーきわきわだぞ?!取れるわけねぇ!」

 

「立川ってあんなにテニス出来たのか?!誰だよ馬鹿にしてたやつは?!」

 

よし、出だしは完璧だな。なんとか試合の空気を変えることが出来た。

 

「不二、今のサーブ……」

 

「……まぐれ、ではなさそうだね。まぐれであの狭いコーナーに、あれだけのスピードのサーブを入れることは出来ない。彼、うまいよ」

 

「……俺たちも、負けてられないね」

 

そうして、このサーブゲームはそのまま俺のサーブ4本で終わった。

 

「すげぇ……立川のやつ、まだ林のやつに1本もボールに触れさせてねぇ……」

 

「……お、俺、やっぱり立川に賭けようかな」

 

「はぁ?!お前ずるいぞ!だったら俺だって!」

 

皆さん、手のひら返すの早すぎでしょ……。まあ、これで流れは完全にこっちのもんだ。このまま攻めさせてもらいましょうか。

 

「さ、サーブはやるようだが……それだけじゃテニスは、勝てねぇよ!」

 

林先輩……それじゃあ、サーブ以外も見せてあげますよ!

そうして俺は林先輩のワイドのサーブに対し、前に突っ込んだ。

 

「はっ!やけくそになったな……っ?!」

 

まあ、そう見えても仕方ないのかな?だが……。

次の瞬間、右ストレートに鋭い打球が飛び、俺のリターンが決まる。

 

「ら、0-15……」

 

「なんだ今のは?!」

 

「あいつ、林のファーストサーブに対して前に出て打ったぞ?!」

 

そう、俺が使用したのは対桃城先輩の時に使ったスーパーライジングだ。ダウンザラインで完璧なコースだった俺のリターンエースにより林先輩は青ざめ、戦意喪失している。

このプレーでギャラリーにまたも歓声が沸き起こる中、不二先輩は冷静に俺のプレーを分析していた。

 

「ライジングショット……バウンド直後のボールを叩くことで速いテンポで返球し、相手に余裕を与えないストロークの高等技術だね」

 

「あ、あいつそんなこともできるのかよ……」

 

(……それだけじゃない。ライジングショットは有効的な一打だが、その分ラケットのスイートスポットを外しやすくミスに繋がる可能性が限りなく高い。しかし、彼はそれを相手のファーストサーブのリターンで使って見せた……。よほど自分の実力に自信が無いとできない芸当だ)

 

「タカさん……彼、来るよ」

 

「うん……でも俺もレギュラーになりたい。負けてられないよ」

 

「不二くん!河村くん!」

 

「あれ?烏野さん?」

 

「あの、このコートで悠が試合してるって聞いたんだけど……って、いた!」

 

「ううぉー!立川のやつ、またいったぁ!」

 

そうして俺はまたもスーパーライジングで、今度は左ストレートにリターンエースを決める。

うん、感触は絶好調だ。

 

「お、おい、あそこ見てみろよ!」

 

「っ?!烏野先輩?!試合見に来たのかな?」

 

「やっぱり烏野先輩可愛いなぁ……」

 

「まあ、美人だよなぁ。でもやめとけやめとけ、烏野先輩これまでに告白されてオッケー出したことないらしいぜ?噂によると、好きな人がいるらしい」

 

「ま、マジかよ……」

 

あれ?ギャラリーの方々がまた騒いでる気がするんですが……まあそれはいいか、集中集中。とりあえず、この試合は決めさせていただきますよ。

 

「た、立川……」

 

「林先輩、まだまだ行きますよ?」

 

俺の言葉に林先輩は冷や汗ダラダラだ。こうなればこの試合は決まりだな。

 

「ゲームセット!ウォンバイ立川、6-0!」

 

こうして、俺は林先輩との試合を6-0で勝利したのであった。

 

-----------------------

 

「あ!もう試合始まってる!」

 

なんかすごい盛り上がってる……。なんで校内戦に悠が出てるのかは後で聞くとして、悠頑張ってるかなぁ。

そうしてコートに近づくと、不二くんと河村くんの姿が目に入った。

 

「不二くん!河村くん!」

 

「あれ?烏野さん?」

 

「あの、このコートで悠が試合してるって聞いたんだけど……って、いた!」

 

「ううぉー!立川のやつ、またいったぁ!」

 

っ?!今のボールは……ライジングショット……?ま、待って!今打ったのって悠だよね?!

 

「不二くん!今のって……」

 

「うん……見事なライジングショットだね」

 

「ま、待って!あのボールを打ったのって悠だよね?!私の錯覚じゃないよね?!」

 

「か、烏野さん?ちょっと落ち着いて……」

 

「あ……ごめん」

 

しまった、不二くんを困らせちゃった……。そうだね、一旦落ち着こう。深呼吸深呼吸……。

 

私が落ち着くまで2人は待ってくれた。そして、私が落ち着いたのを確認すると河村くんが口を開いた。

 

「えっと、まず烏野さん。悠?っていうのは立川のことであってるかな?」

 

「うん、悠は私の幼馴染なんだ」

 

「へぇ、それは驚いたな……。てことは、立川くんがあれだけテニスが上手いのは烏野さんのおかげかな……あれ?でも、烏野さんも立川くんのプレーに驚いていたよね」

 

「そうなの!私、悠がテニスできること全然知らなくて……。悠がテニスの練習をしていたっていうのも今朝知ったくらいで……。あんなに悠ってテニス上手だったんだ……」

 

私の言葉に不二くんは頷いて納得したような表情を見せるが、すぐさまその表情が曇った。

 

「なるほど……それで烏野さんも驚いていたんだね。ただ……加えて彼の真の実力は誰も知らない、全くの未知数ってことだね」

 

悠の真の実力……?

 

「不二、一体どういうことだ?」

 

こうしている間にも、悠の試合は淡々と進んでいる。

あ!すごい、またリターンエースだ!とても綺麗なバックハンド……それも逆クロスにあれだけの鋭い角度で……ん?ちょっと待って、悠の表情、全くミスすることを恐れてないみたい……ていうより、()()()()()()()()()()を持って打ってる……?

 

「不二くん、まさか……」

 

「うん。あれだけのプレーをしているけど、立川くんはまだ本気じゃない。もしかしたら、越前君より強敵かもしれないね」

 

「……悠」

 

不二くんの言葉に、私は驚愕すると同時に、自分の胸の内が熱くなるのが分かった。

 

-----------------------

 

「す、すげぇ。あいつ、汗ひとつかかずに勝ちやがった」

 

「立川、もしかしたらレギュラーも狙えるんじゃないか?」

 

「馬鹿言え!このグループにはレギュラーの不二先輩と、あのバーニングで最も勢いのある河村先輩がいるんだ、立川は確かにうまいが、あの二人には適わねぇよ」

 

「あー、そっか……このグループにはその2人がいたんだ……でも、あいつなら何か起こしてくれそうな気がするよ……」

 

林先輩との試合が終わり、ひとまず俺は校内戦初勝利をおさめた。

 

「ふぅ、とりあえず一勝だな。やっぱ試合は楽しいなぁ。3試合後と4試合後が本当に楽しみだ……」

 

俺は3試合後、4試合後に控えた河村先輩と不二先輩との試合に焦点を当てていた。

やべぇ、2人とする試合のことを考えるだけで緊張とワクワクが止まらん……。早くやりたいなぁ……。

そんなことを考えていると、俺は聞き覚えのある声に呼び止められた。

 

「ゆ、悠!」

 

「冥?!試合見てたのか?!」

 

いや、校内戦見に来るとは言ってたけど、手塚部長の試合見に来たんじゃなかったのかよ?!

 

「うん……その……」

 

「あ、ごめん!校内戦出るってこと、今朝言おうとしたんだよ……。でも、タイミングが合わなくて……」

 

やっべ、また今朝みたいに怒られる……そう思った俺であったが、冥は首を横に振った。

 

「ううん、いいの。今は試合に集中したいだろうし、それは全部終わってから教えて。それもそうなんだけど……」

 

え?待って違うの?それじゃあどういうこと?

 

「悠、テニスすごく上手だった。私、あんなに悠がテニス上手いと思ってなかったよ。それにテニスしてる悠、すごく生き生きしてて、かっこよかった」

 

なるほどねぇ、かっこよ……っ?!冥さん、今、なんとおっしゃりましたか?

 

「冥、今なんて……?」

 

すると冥は手で口を抑え、はっとしたような表情をした。

 

「ふぇ?!え、今、私……?!いや、違うの!そういう事じゃなくて!」

 

かぁぁ、っと冥の顔が真っ赤に染まっていく。

 

「と、とりあえず校内戦頑張って!悠ならレギュラーになれるよ!私応援してるから!それだけ、それだけ言いたかっただけだから!」

 

そう言って冥はあっという間にどこかへ走り去っていった。

 

「冥さんや、今のやつ、幼馴染視点からでもかなり破壊力あったぞ……」

 

今の、一瞬ドキッときた……。でも、冥からしたら幼馴染としてかけた言葉だろうし、俺が深読みしすぎるのも良くないよな。

ん?なんか周りからの視線が痛いんですが……。

 

「今の……まさか烏野先輩の想い人って……」

 

「立川のやつ……烏野先輩と……」

 

「立川を許すな!河村先輩や不二先輩の試合と言わず、俺らでやつを倒すぞ!」

 

え?!なんで先輩方そんなに目がギラギラしてるんですか?!

そうして俺は、何故かヒートアップした先輩たちに殺意を持った目で試合を挑まれたが、2試合目、3試合目もゲームカウント6-0で勝利し、残すは河村先輩と不二先輩の2試合のみとなった。

 

-----------------------

 

「大石、試合結果の書き込み、交代するから休憩行っていいよ」

 

「あ、乾」

 

グループ表が張り出されたボードの前には乾と大石がいた。2人は自身の校内戦の調子について、軽口を挟みつつ話し合っていた。

 

「その感じだと大石は順当に行けそうだな」

 

「乾もだろ?いつも通りみたいだし」

 

「まあな。でも、あの1年も予想以上にやるな。まだ1ゲームも落としていない」

 

「越前か。お前と同じグループだったな。あの子もかわいそうに」

 

「フフ……いや、俺より前に厄介な相手がいるだろう。2年に」

 

「ケンカ売ってんすか……先輩」

 

そうして話す乾の後ろの木の影には、2年のレギュラーである海堂薫の姿があった。

 

「ハハ、海堂も相変わらずだな」

 

海堂は異様な雰囲気を放っていたが、いつもの事なので大石と乾は軽く受け流す。

 

「試合なんで、行きますよ」

 

「おう、頑張ってな」

 

そうして海堂が立ち去った後、そこに不二が歩いてきた。

 

「お、不二」

 

「2人とも、調子はどうかな」

 

「まあまあといった所だ。ところで、確か不二は()()1()()()1()()と同じグループだったな。どんな感じだ?」

 

「うん、立川君、越前君と同じでまだ1ゲームも落としていないよ。彼、要注意人物だね」

 

不二のその発言に、乾と大石は驚いたような表情を見せる。しかし、その理由は真逆であった。

 

「不二がそこまで言うとは珍しいな」

 

「やはり、それほど……」

 

大石の反応に不二が眉をピクリとさせる。

 

「大石、彼について何か知っているみたいだね」

 

不二の言葉に大石は困ったような表情を見せる。

 

「まあ、別に大したことじゃない。不二も油断せずにな、お前なら大丈夫だろうが……。立川の次の相手は誰なんだ?」

 

不二は何か言いたげであったが、大石が話題を変えたためそれに乗った。

 

「次は、タカさんだね」

 

「河村か……立川のデータが全くないからデータを取りたいところだが、俺は海堂とこっちの1年(・・・・・・)の試合を見なくてはならないからな。まあ、普通のやつなら河村のパワーショットにネットも超えないだろう」

 

「そうだね、普通、なら……。まあ、僕もタカさんが勝つとは思うけど、注目の試合だね。そろそろだし、僕も見に行くよ」

 

そう言って不二は立川と河村の試合が行われるコートに立ち去っていった。

 

「不二のやつがあの1年に違和感を持っている確率、95%ってところか……。不二とあっちの1年の試合、見に行けたら見に行くか」

 

「乾?」

 

「なんでもない。俺もそろそろ行く」

 

「あぁ、頑張ってな」

 

今回の校内戦、2人の1年が波乱を起こそうとしていた。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。