地面に置かれた木箱の中をのぞきこめば、黒いのや白いの、金色みたいなのまでちらほら混じっていた。
長さもまちまちで木箱に斜めに詰められてるのや、他の杖に埋もれて先端しか見えないやつ、木箱のサイズと似通った長さのやつと微妙に違う長さのやつ。同じ杖は一つとしてない。
そんなのが、木箱に乱雑にぎっしりと詰められている。
まさにカオス。
片付けられない、捨てられない人の荷物代表みたいな有り様である。
杖が痛ましくなるほどにギュウギュウだ。
暴発とか暴走とオリバンダーさんは言っていたが、こんな地獄絵図みたいな現状で杖はストライキとか起こさないんだろうか。
「な、なんじゃ?」
「・・・・いえ」
片付けられていない自覚はあるのだろう。
そうでなければ、私にオリバンダー製の杖が合わないと感じたときに真っ先にこの木箱を持ってきていたはずだし。
祖父の代から詰め込んだ木箱は地面に置かれたまま悲鳴を上げるかの様にミシリミシリと音を鳴らしているが、オリバンダーさんが杖を一つ振りハーマイオニー御用達、『修復呪文』を唱えると強制的に沈黙させられてしまった。
ああ、こうしてこの杖たちは何百年と木箱に詰め込まれて来たのか。
もしかしたら、まだこの木箱はオリバンダーさんの家のほんの一部で、家にはまだまだそれこそ序ノ口と思える程の杖が木箱に詰められているのかも知れない。
魔法の杖なのに。
そこら辺の木の棒より少し上等なだけの扱いとは。
「魔法界って、結局は現実なのかぁ。」
「ええいっ!いいから、箱の中を覗いてみなさい!
この箱の杖は私には判断出来ぬ物が多いのじゃ!
何か気になる杖はないのか!」
「そりゃ、こんな扱いをされたら・・・」
反抗的にもなるよね。
最後の言葉はバレてそうだが、一応呑み込み気を取り直してわくわくする心を思い出しつつ、覗き込む。
木箱から出たくて私の杖になってくれる杖さん、居ましたら何か合図くださいねー。
とはいえ、初めに覗き込んだときに、どうしても惹かれる杖があったのは確かだ。
意を決してその杖を箱から引っ張り出す。
握った瞬間から、杖から不思議な暖かさとわくわくするような、今にも走り出したくなるような、そんな気分が伝わってくる。
今までの杖からは一切、全然、全く、感じられなかったこの感覚!!!
「ふむ?それはナナカマドの杖じゃな。防衛力にとても優れる。
長さは15センチとずいぶんと短いが、お嬢ちゃんには取り回しが良いじゃろう。
どうじゃ?」
傍で杖について説明をしてくれるオリバンダーさんには悪いが、私の中では振る前からこの杖に決まっていたような気がしてくる。
私の為に造られたような安心感、試しにひと振りしてみれば、穏やかだが、力強い光が杖から溢れてくる。
「おお!素晴らしい!
杖の反応が今までとはあまりにも違う!」
「じゃ、じゃあ!」
「うむ!その杖こそ、お嬢ちゃんの杖じゃ!」
「~~~~~~~っ!!」
やった!感動だ!苦節一日弱!数々の試練を私は乗り越え、ついに魔法使いの相棒をこの手に!!!
くるくると杖と周りつつ喜ぶ私はオリバンダーさんが呟いた不穏なフラグを聞かなかった。
それが、良かったのか悪かったのか。
それは、私にはわからない。
老人「はて?あの杖の芯材はなんだったのか。
・・・いや、まぁ、よいじゃろ。うん」